Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo DS>
  4. コロぱた
≫コロぱた
■発売元 ラックプラス
■ジャンル 自律キャラお使いアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税別) / DSiウェア版:1000円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■消費ブロック数 73(※DSiウェア版)
■その他 ニンテンドーWi-Fiコネクション対応(※追加ステージ配信)
■総説明書ページ数 16ページ
■推定クリア時間 130時間〜200時間(エンディング目的)、350〜400時間(完全攻略目的)
ある日、母親におつかいを頼まれたひまわり。
早速、出かけるひまわりだったが、その行く手には数々の障害が待ち受けていた…。
果たしてひまわりは無事、一人でおつかいを成し遂げられるのか?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆オブジェクトのリアクションから主人公の機嫌推移までしっかり考慮した上で指定された動きを構築していかなければならない、単純ながらも手強さ満点のゲームルール
◆物理演算処理による、生々しさ満点のオブジェクト動作(驚くほど滑らかに動く)
◆生々しいオブジェクトの動作が醸し出す、驚異的な中毒性(試行錯誤だけで3時間以上経過してた…なんて事も)
◆同じく生々しいオブジェクトの動作が演出する、歯応えあり過ぎの難易度と凄まじい達成感
◆目的地到達から指定動作実行まで、明確な個性付けの上手さが光るステージ構成
◆タッチペン一本しか使用しない、手軽で取っ付き易い操作性
◆難易度の高さも相まって、桁外れの充実感に富んだ総計ボリューム
◆本編に物足りなさを感じた人も納得のボリュームと手応えに富んだ配信専用の追加ステージ
◆丁寧で可愛らしいドット絵が光るグラフィック(特にキャラクター周り)
◆世界観と沢山の試行錯誤が求められるゲーム性と適度にマッチした、良質の音楽
◆4コマ漫画風の演出と台詞回しが印象的な寸劇シーン
◆日常系の内容でありながら、意外性のある展開が盛り沢山のストーリー(特にエンディングは必見)

--- Bad Point ---
悪く言えば、歯応えあり過ぎの難易度設定(人によっては序盤で心を圧し折られる)
◆地獄過ぎる難易度を演出する、物理演算処理によるじゃじゃ馬過ぎるオブジェクト動作(1ドットでもずれれば不正解確定になるなど、柔軟性が無い)
◆悪く言えば、時間泥棒過ぎるにも程がある中毒性(試行錯誤だけで凄い時間を吸い取られる…)
◆模範解答デモの非搭載(再プレイ時の参考にもなるので、搭載しておいて欲しかった)
◆取っ付き易いが、オブジェクト微調整の煩わしさがタマにキズなタッチペンによる操作
▼Review ≪Last Update : 12/9/2012≫
見守り続けた末に…?

真相は本編で。


下請けとして、様々なゲームソフト開発などに携わってきた実績を持つ有限会社ラックプラス初の自社ブランド作品となる、完全新作のアクションパズルゲーム。

物理演算処理によってもたらされた地獄の難易度で送る、近年稀に見ぬマゾゲーだ。

ゲーム内容はステージクリア方式で進行する、思考型アクションパズルゲーム。自動的に動くプレイヤーキャラクターこと主人公のひまわりに指定された動きをさせるべく、ステージ上に配置されたオブジェクト(物)を適切な場所に設置し、微調整を繰り返しながら指定された行動の具現化を目指すというものである。
いわゆる『ピタゴラ装置』、NHK教育(現:NHK Eテレ)で放送されている教養番組『ピタゴラスイッチ』のオープニングとエンディングで登場する、あのカラクリ装置(ループ・ゴールドバーグ・マシン)を作るゲームというとイメージし易いだろうか。あの装置で言う所のボールが主人公のひまわりであり、オブジェクトはそのボールが到達地点(ゴール)まで流れていく為の道を作るのに必要な素材という位置付けとなっている。
基本的に今作は『オブジェクトの配置』、『キャラクターとオブジェクトの動作実行』の二つの手順を繰り返す形で進めていく。各手順は画面左下側に設置された『再生&一時停止ボタン』を押して切り替える形で実行。より具体的に解説すると、『一時停止』の時にオブジェクトの配置をし、『再生』で配置した状態での動作を実行していく仕組みとなっている。最終的に『再生』の手順で目標として設定された動作が具現化すればステージクリア。次のステージへと進み、また目標達成の為、オブジェクトの配置と動作実行を繰り返していくというのが今作の大まかな流れだ。如何にも思考型のゲームらしい、試行錯誤による地道な検証に重きを置いたゲーム性を持ち味としたゲームデザインとなっている。
また、各ステージ及び画面構成は横スクロールのアクションゲーム風。一画面の中に主人公のひまわりと舞台の地形、オブジェクト、アイテム等が配置された構成になっている。ステージ上に配置されたものの中で、プレイヤーが動かせるのはオブジェクトとアイテムの二つだけ。それら以外のものには一切、干渉できない仕組みとなっている。
なお、オブジェクト、アイテムの配置と移動、角度の変更と言った細かな操作は全てタッチペンで行い、上手く地形にはめ込んだりしながら、目標達成に繋がる道筋を作っていく事になる。各ステージごとに設定された目標もひまわりのゴール到達と言った基本的なもの以外にも、指定動作の実行、オブジェクトの特定地点までの到達など、バリエーション豊か。更に目標を達成するに辺り、ただオブジェクトを適切な位置に置けばそれでOKという訳ではなっていないのもミソ。
と言うのも、今作でプレイヤーがサポートする主人公のひまわりには『機嫌』と『体力』という二つのステータスが設けられており、これらを上手く管理する事も求められてくるようになっている。地形だけでなく、キャラクターにも気を配らなければならないのだ。基本的にこれらのステータスは全て、ひまわりの動作に関連してくる。『機嫌』はオブジェクトに対する動作に関連していて、例えば野球ボールの場合、機嫌が良い時はきちんとそれを持ち上げ、上方向に投げ飛ばす動作を行ってくれる。だが、逆に機嫌が悪いと蹴り飛ばして垂直方向にボールが飛んでしまい、上方向には行かなくなってしまう。上にボールを投げたいと思っても、機嫌が悪ければ不可能になるのだ。逆の場合、横に投げたいと思っても、機嫌が良い状態でもまた然り。なので、上に飛ばしたい時は機嫌を良い状態に保ち、横に飛ばす場合は機嫌を悪くする調整が求められてくる。進路を確保するとかだけに留まらず、今作ではそう言ったキャラクターの管理と言った事までしなくてはならないのだ。もう一つの『体力』も重要で、これが尽きてしまうとひまわりが泣き出してしまい、以降、目標達成が不可能になってしまう。それを防ぐ為、必要以上に体力が減り過ぎない為の短い道筋を作ると言った、緻密な調整と試行錯誤も求められてくる。純粋に目的達成に至る道筋を作れば良いだけと、基本ルール自体は単純で、取っ付き易い。オブジェクトの操作、配置にしてもタッチペンだけで行うので敷居は低く、手軽に遊べる作りとなっている。だが、取っ付き易さと手軽さの裏には、キャラクターのステータス管理と言った緻密なプレイをも行わねばらなないという鬼の一面が隠されている。
見た目こそ、ほのぼのとしているが、その実態は試行錯誤の連続という思考型ゲームとしてのお約束に忠実過ぎる作り。羊の皮を被った狼も同然な、歯応え抜群のゲームに仕上げられているのである。
しかし、ここまで紹介したステータス管理に関しては、今作の歯応えにおいては1〜2割の部分を締めるに過ぎない。残りの8〜9割を締める要素こそが、今作の歯応えを象徴する最大の主犯(?)である。それがオブジェクト全般の動作に仕込まれた、物理演算処理。今作最大の特徴にして最大の売り、そして悪魔的な要素なのである。

具体的にどういう事なのか解説すると、今作のオブジェクトは全て、現実の物理法則に則った動きをするようになっている。実際に積み木でも何でも構わないので、斜めに傾いた場所に置いたり、地上から少し離れた所から落とす事をやってみて頂きたい。それと全く同じ動きを今作のオブジェクト全てがする。実在する物体と同様の動作をするのだ。
これが何で悪魔的な要素なのかというと、僅かな配置場所の間違いすら許さぬ超緻密な計算をプレイヤーに強いる、阿鼻叫喚のゲームバランスを演出しているからである。つまり、ステージ上に配置したオブジェクトがたった1つであろうと、想定外の動きをしてしまったらアウト。全てのオブジェクトが物理法則に基づいた正確な動きをするように調整しなければ、ステージをクリアするなど絶対に無理と言っても過言ではない、地獄の難易度を実現してしまっているのだ。
実際に先に紹介した積み木による簡単な物理実験をすれば、今作の難しさが容易に想像できると思う。まさにその積み木のようにオブジェクトが「じゃじゃ馬」な動きをする。これで大丈夫だと思って配置したブロックが、重力がかかり過ぎで進路を外れて穴に真っ逆様、坂道でボールが転がして離れた場所に飛ばそうと思ったら、勢いが付き過ぎて盛大にコースアウト、また位置が悪いと勢いすら付かなかったりと、「初見でそんな細かい事が分かるか!」と、絶叫して泣きたくなってしまうようなリアルな動きをして、プレイヤーを徹底的に翻弄するのだ。そんな動きをする為、オブジェクト配置と動作実行の試行錯誤も相当な回数を強いられる。ステージによっては200回以上は当たり前、終盤になれば酷い場合だと1000回ぐらいしないといけないほどだ。念の為だが、これは誇張表現ではない。実際に筆者が経験した回数(推定)である。冗談抜きにそれぐらいの気の遠くなるような試行錯誤が求められてくるのである。
しかも恐るべき事に、こんな難易度のステージが最初から普通に出てくる。今時のゲームとしては珍しく、序盤からプレイヤー(の頭)を殺しにかかってくるのだ。一応、最初という事で、そこまで過激という訳ではないが、それでも微調整なくしてのクリアは不可能と言ってもいいバランス。人によっては血の涙すら浮かびかねない有様となっている。無論、最初からそんな難易度という事は終盤はその数十倍は難しいという事。こっちは血の涙どころか、精神崩壊に陥る恐れすらあるほどだ。更に極めつけ、今作のステージ総数は120以上。この難易度設定では心が折れかねないボリュームである。
もはや今作が手軽に遊べるタイプのゲームではないのは、言うまでもないだろう。ルールは単純で取っ付き易いのに、物理演算処理が異様な試行錯誤をプレイヤーに要求する。本当に強靭な精神力と覚悟無しにエンディングを迎えるのは無理と言っても良いほど、ドきついゲームになっているのである。世界観は可愛らしいのにゲームはマジどころかマゾ。羊の皮を被った狼以前にケルベロスとも言える恐怖が詰まった内容になっている。だが、単に難しいだけの内容であるという訳ではなく。確かに難易度は地獄同然だが、全120ものステージに使い回しはほぼ皆無、ステージ内の仕掛けも物理法則の面白さ、意外性にこだわった作り込みが成されており、職人的なセンスとサービス精神に溢れたものに完成されている。また、沢山の試行錯誤が求められる作り故に中毒性も驚異的で、道筋の検証を行っていたら3時間以上もの時が過ぎていたなんて事も起こる。そして、それらの試行錯誤の末、回答に導けた時の達成感も素晴らしく、思わず快感になってしまうほどの魅力に満ち溢れているのも侮れない所だ。また、実際の物理法則に基づいた動きをするオブジェクトも、単に見るだけでも楽しいものに仕上がっており、ここでしか堪能できない魅力がギッシリ詰まっている。
オブジェクトが物理法則に基づいて動く、それによって演出された凶悪な難易度は冗談抜きに大火傷必至ではあるが、それに他のゲームにない独自の味わいと手応えがあるのも事実。膨大な試行錯誤による中毒性の高さも桁違いで、プレイヤーを今作の世界へと一気に引きずり込んでしまう。まさに「出会ってはいけない者(要素)同士が出会ってしまった」を体現してしまった一品と言うべきか。それ故の恐るべき部分と素晴らしい魅力の双方が詰まった、色んな意味で怖過ぎる作品となっているのである。見た目の印象から、何を大袈裟なと思う方もいるかもしれないが、騙されたと思って一度、試してみて頂きたい。只者ではない事が嫌というほど分かるはずだ。

その他、難易度設定により、凄まじい充実感と絶望感が醸し出されているボリュームに関しては更に一つ、驚愕の要素がある。何と、インターネット経由でダウンロードできる追加ステージが用意されているのだ。しかも、総数も60以上とかなりの量な上、ダウンロードに当たっての追加課金無し、無料というサービスっぷり。本編が物足りないと感じた方へのアフターフォローも万全だ。ただ、今作をエンディングまでプレイすると、ほとんどのプレイヤーは追加ステージとか勘弁してください、と逆に悲鳴を挙げたくなるかもしれない…。
また、操作は先ほどにも紹介した通り、タッチペン主体なので取っ付き易さは上々。ただ、オブジェクト微調整などの細かい操作が求められてくる為、少々煩わしさを感じる部分もある。特に角度調整は時々、設定していたら誤タッチでオブジェクトを動かしてしまったなど、事故が起き易くなっているのがもどかしい。できれば、十字キーで設定できるなどの配慮を施して頂きたかったところである。
グラフィック、音楽に関してはなかなか。グラフィックは丁寧なドット絵で描かれた、可愛らしいキャラクター達と背景が実に印象的。特に一定数のステージをクリアする事で挿入される寸劇シーンでの活き活きとした動きは必見だ。
音楽も世界観にマッチしたほのぼのとした曲が満載。沢山の試行錯誤を強いられる本編との相性もよく、変に嫌らしさを感じない作りになっているのも秀逸だ。

演出周りも物理演算処理によるオブジェクトの動きはそこそこ派手だが、全体的には少し大人しめ。とは言え、ストーリーの寸劇シーンはキャラクターの動作、唐突な一枚絵の挿入など、ツボを抑えたものに完成されており、見ているだけでも楽しい。そのストーリーも基本的にひまわりとその友達、ご近所さんなどの日常を描いた4コマ漫画っぽい内容でありながら、意外性のある展開もあったりと、なかなか面白い内容に仕上げられている。特に終盤のストーリーと結末は凄く意外性のあるものになっており、これを見る為に本編を頑張る甲斐はあると言ってもいいほど。是非、自分の目でお確かめになって頂きたい。きっと、暖かい気持ちになれること請け合いだ。
難易度が地獄同然な為、キャラクターの絵や雰囲気に釣られて買ったりすると、痛い目に遭うどころか精神面をボロカスにされかねない恐ろしさがあるのがタマにキズだが、出来自体は悪くなく、ステータス管理と物理演算によるオブジェクト動作の要素を取り入れた事で、他にないリアリティを持った思考型アクションパズルゲームに完成されている。手強過ぎるけど時間を忘れて没頭してしまう圧倒的な中毒性、アイディア満載のステージ、そして意外な驚きも込められたストーリーなど、単に難しいだけでは終わらない魅力と面白さを持った今作。
今時珍しいマゾさと圧倒的な手応えに富んだ秀作だ。思考型のパズルゲームが好きで、強靭な精神力をお持ちの方は是非、挑戦してみて欲しい。間違っても、ライトユーザーは手を出さないように。某伝説のボクサーの如く、真っ白に燃え尽きかねません。酷ければ心がボキボキに圧し折られて再起不能になります。超要注意。
≫トップに戻る≪