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  4. 高速カードバトル カードヒーロー
≫高速カードバトル カードヒーロー
■発売元 任天堂
■開発元 インテリジェントシステムズ
■ジャンル 高速カードバトル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 (※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、80〜90時間(完全攻略目的)
サトルは公立門広中学校に通う中学2年生。何事も「それなりに」楽しむのがモットーの彼はある日、幼馴染のハルカに話題のカードゲーム『カードヒーロー』を紹介される。現在、各地の中学校では『カードヒーロー部』が続々と誕生、全国大会も開かれるほどのブームになっているらしい。
ハルカに誘われるまま、サトルはそんなカードヒーローを始める。
最初こそ、いつものように「それなりに」楽しむことにしていたサトル。
だが、ある少年との出会いが彼を目覚めさせることになる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆最大数値が低くて難しい計算も無い為、すんなりと習得できる敷居の低さが見事なメインゲームルール(救済処置も万全なので、カードゲーム初心者も安心!)
◆前作同様に全編チュートリアルとも言うべき、思い切った内容で構成されたメインストーリー(ストーリーの内容も解説臭さが皆無で、取っ付き易い)
◆社会人プレイヤーには有り難いストーリーの再プレイ機能(復習が容易にできる)
◆簡素な作りながら、終始油断できぬバランス調整が見事な新ルール『スピードバトル』
◆新カード登場で多彩な戦略が組めるようになった『ジュニア』を始めとするオリジナルルール
◆フリーバトル『センターモール』、カード収集など、無駄に充実したやり込み要素
◆真っ当なモンスターに魔女っ子など、個性豊かなものが盛り沢山の全150種類ものカード
◆『高速』の名に相応しい、スピーディな持ち運びが秀逸なCPルーチンの思考時間
◆「不利に陥るほどチャンスが巡ってくる」という基本スタンスが秀逸なゲームバランス
◆「ジジジ…」という効果音が動かす面白さを演出する、自然なタッチペンによる操作感
◆あまりに熱過ぎる音楽(特にバトル系音楽の完成度の高さは格別!)
◆前作ファンならば感度必至のファンサービス群(懐かしのキャラやネタも数多く登場)
◆前作の「ヘンてこさ」を華麗に(?)継承した、凄まじく個性的な登場キャラクター達(驚異の知能指数を持つパンダ、重症患者、挙句の果てにはワ●オなど今回も濃い!)

--- Bad Point ---
◆前作とは比較にならないほどつまらなくなったストーリー(キャラは良いのだが…)
◆煩わしいことこの上ない、カード入手後に行われる強制セーブ(しかも地味に長い)
◆壊滅的に「おバカ」になったCPルーチン(不利な状況で余計不利になる行動をしたりと、あり得ない動きをする。前作のレベルの高さは何処へ?)
◆修正されていない、先行有利のゲームバランス(せめてハンデがあれば…)
◆同じく修正が加えられていない、ゲームの面白さを崩すモンスターカード『ヤミー』
◆レア度の調整しか搭載されてないWi-Fi対戦のオプション(せめて強力なカードを封じるオプションぐらいは…)
◆面倒臭いことこの上ない、カードの使い込みによる新カード入手
◆前作ファンには賛否両論な世界観のデザイン変更(何処と無くロックマンエグゼ…)
▼Review ≪Last Update : 11/29/2008≫
そうだ、我々は…待っていたのだ!

7年という年月はあまりに長かった!長過ぎた!


ゲームボーイ末期に発売され、間口の広いゲームシステムと圧倒的な中毒性で多くの熱狂的ファンを生み出した名作『トレード&バトル カードヒーロー』、待望の続編。開発は前作と同様、任天堂とインテリジェントシステムズが担当。

やや劣化した所もあるが、相変わらずの間口の広い仕組みが見事な傑作カードゲームだ。

基本的なゲームルール諸々は前作と変わらない。前衛×2、後衛×2の計4マスで構成されたフィールドに20〜30枚のカードで構成されたデッキから各マスに適したモンスターのカードを配置。技の発動やマジックカード(補助カード)を使用する際に消費する『ストーン』を蓄えながら、相手のモンスターを倒して自身のモンスターをレベルアップさせ、多彩な技を駆使してフィールド中央に鎮座する相手のマスター(プレイヤーの分身となるカード)にダメージを与え、先にマスターの体力をゼロにした方が勝ちとなる、ターン制で展開するトレーディングカードゲームである。
対戦形式もオーソドックスな『ジュニア』、2種類の特殊能力を持ったマスターで戦う『シニア』、そして長期戦仕様の『プロ』と前作と同様のものを収録。対戦の先攻後攻を決めるシステムが『じゃんけん』から『コイントス』へと変更されたりなど、一部、前作とはシステムが変更された箇所もあるが、基本的にはGB版『カードヒーロー』の正当なる続編としてのスタンスを尊重した作りとなっている。勿論、かと言って、ただGB版をそのままDSへとアレンジし直しただけの内容ではあらず。当然のように今作初登場となる新要素も多く導入されている。
その中でも、特に注目の新要素が『スピードバトル』。別名『簡易版カードヒーロー』とも言うべき新たな対戦ルールで、今作ではこの『スピードバトル』からゲームがスタート。その後からGB版にもあったジュニア、シニア…と発展していく仕組みとなっている。簡易版と話した通り、『スピードバトル』の基本内容も他のジュニア、シニアとはまるで異なる。まず、フィールドがプレイヤー相手共に前衛後衛の2マスだけ。フィールド上には最高で2体までしかモンスターが出せない。
更にターンの始めのストーン供給も無し。代わりに『ストーンゲージ』と呼ばれる全6マスのゲージがあり、ここに溜まるストーンを使ってモンスターの必殺技やマジックカードによる補助を行っていく。そしてこのルール最大の特徴がマスターがいないこと。戦闘はモンスターだけで行う。肝心の勝利条件も勿論、マスターのいるジュニアなどとは違い、先に紹介した『ストーンゲージ』を満タンにされてしまった方が負けという、独自のもの。「不利に陥るほどチャンスが巡ってくる」、今作のゲームバランスの売りを最大限に活かした、独特のルールに仕上げられているのである。前作をやり込んだプレイヤーなら簡易ルールと聞き、物足りないものなんじゃないのか…と不安を覚えたかもしれないが、なんのその。簡単な作りだが、シリーズの旨みはバッチリ。シンプルながらも非常にやり応えのあるものになっている。
何と言っても、このルールの導入により、ゲームの敷居が劇的に下がったのは特筆に値するポイント。いきなり4マスにモンスターが配置できるジュニアやシニアとは異なり、2マスしか配置できる箇所が無い為、カードゲームの初心者でも「何処に前衛のモンスターを置き、後衛を置く」かが直に把握できる。またモンスターのレベルアップやマスターの存在と言ったややこしい要素もなく、ただひたすら敵を倒していくだけ(厳密には違うが)のルールも取っ付き易くて優しい。
そして先にも語った今作のゲームバランス最大の特徴「不利に陥るほどチャンスが巡ってくる」もきちんと反映されており、手軽にその醍醐味が味わえるのも秀逸だ。「いきなり4マスは厳しいので2マスから始め、後から足していくようにしよう。」…そのように考えた上でなのかは分からないが、少なくともこのルールの導入によって今作が、より一層、カードゲーム初心者にも優しい作りになったのは言うまでも無い。前作が小学校から大学の流れだったのが、今作は幼稚園から大学の流れとなったと言ったところか。
新ルールの作りの素晴らしさもさることながら、作品にもたらした副作用はもっと衝撃的。まさに7年の歳月がもたらした究極の進化。前作以上にカードゲームが初めての方も安心して楽しめる内容に今作は豹変しているのである。だから、前作の出だしが敷居が高く、馴染めなかった方も今作はダイジョーブ!

また、前作の大きな魅力でもあった「全編チュートリアル(ゲームルール解説)」とも言うべき本編の構成も健在。ただ、その仕組みは前作とはまるで別物。前作はいわゆる『ポケットモンスター』みたいにフィールドマップがあり、そこを移動しながら進めていくRPGテイストの強い構成となっていたが、今作は極端に言ってしまえば選択肢とコマンドメニュー無しの『ファミコン探偵倶楽部』。シナリオクリアタイプのアドベンチャーゲームスタイルで完全一本道、ひたすらバトルの恐ろしくスッキリした構成に改められている。それに伴い、カードを購入するお店と言った施設も、各シナリオの終了後に表示されるメインメニュー画面から直行できる簡易仕様に変更。加えて、各シナリオは一度クリアしてしまえば、後から自由に何度もプレイできるようになるなど、このスタイルだからこそ実現した救済処置も搭載されている。
特にこの「一度クリアしたシナリオが再プレイ可能となった」のは、極めて大きな進化。前作は後戻り不可能の完全一本道構成で、また改めてルールを学ぶのならば最初からやり直す必要があった(一応、救済処置も凝らされてはいたが)だけに、この再プレイ可能は大変有り難い。忙しい社会人プレイヤーも、これなら諸事情で大きなブランクを開けても無問題。まさに、時代のニーズに合わせた理に適った改良点と言える。本編の流れもシナリオ主導の一本道となった事により若干、味気なくなった感は否めないが、その分テンポ周りは劇的に向上。より自然に、段階的にプレイヤーの理解が深まっていく確かな手応えが感じ取れる、魅力溢れるものへと進化している。
肝心のゲームルール解説の恐ろしいまでの違和感の無さ、本編のストーリーとの絶妙な染まりっぷりも相変わらず。登場キャラクターの台詞のどこをどう捉えても「これはルールの解説ではない」と思わせてしまう、その驚くべき技には溜息が出るばかりだ。プレイヤーへのルールの伝達順序…カリキュラムの構成も見事で、いきなりドバッと行くのではなくて少しずつ小出しにしていく、GB版でもお馴染みのスタイルがそのまま継承されているのも流石。特に今回は新ルールの『スピードバトル』導入で、その小出しっぷりがより一層、磨き込まれたものに進化。カードゲームが初めてな方にも親切なその絶妙な展開には、改めてプレイヤーの引き込ませ上手な任天堂の職人技を思い知らされるだろう。
だが、前作の魅力とも言えたものが削ぎ落とされてしまっているのは流石に残念と言わざるを得ない。特に今回のメインストーリーがまさにそうなのだが、はっきり言ってつまらな過ぎ。大きな展開も無ければ、見せ場も無いので、感情移入できない。酷く素っ気ないものに仕上げられてしまっているのである。前作は大人しい主人公がマジギレしたりなど、プレイヤーも思わず感情移入してしまう魅力溢れるシーンが数多くあり、純粋に一つのお話として面白いものに仕上げられていただけに、今作のこの悪夢とも言うべき劣化ぶりには正直言って、目を疑いざるを得ない。今回はゲームが肝!…という意図があり、このようにシナリオを素っ気無くしたのかもしれないが、だとしてもせめて大きな山場とか見せ場を作中に一つ〜二つぐらいは用意して欲しかったところだ。折角、キャラクター周りはちゃんと出来てるのに、勿体無い。
ただ、そんなシナリオの悲しい出来を抜いても、今作のメインの流れが絶妙であることに代わりは無し。カードゲームが初めてな方にも優しい、そのあまりにプレイヤー思いな作りは前作未体験のプレイヤーならば是非ともチェックである。

その他、カードゲーム特有のカード集めやフリープレイモードの『センターモール』でのチャレンジなど、やり込み要素もバッチリ。特にカードは前作の110種類を上回る150種類が登場するなど、大幅にボリュームアップ。前作と同じカードでも容姿や名前が大幅に異なっていたりなど、7年の歳月が及ぼした進化とも言うべき小ネタも凝らされているので、前作ファンなら相当な関心を持って集め込んでしまうはずだ。
また、操作もタッチペンメインなのだが、いわゆる「無理矢理感」と言うものが無く、非常に自然に且つ、快適に動かせるものになっているのも衝撃的。特にカードをタッチし、スライドした際の「ジジジ…」という効果音の気持ちよさは格別で、DSならではの動かす面白さと言うものをとくと堪能できるだろう。
そして今回は音楽が爆発的に進化!特に戦闘周りの曲が大変素晴らしいものに仕上げられており、正直言ってこれらを聴く目的で買っても決して後悔はしないと言っても良いほど。更に前作ファン感涙のあの『カードヒーローのテーマ』も7年の歳月がもたらした感動的なアレンジを加えて収録!どの場面で流れるかまではトップシークレットだが、きっとファンならば「これは絶妙すぎる!」と唸ってしまうだろう。また、それのみならず他にも前作の曲は収録。そのあまりに前作ファンを大事にし過ぎなサービス精神には、スタッフ、分かり過ぎているにも程があるの一言に尽きる限りだ。

しかし、一方でグラフィックはやや退化。現代的なノリに改められた世界観もそうだが、何よりも戦闘中の3Dポリゴンで描かれたモンスター達がこれまた荒々しいモデリングになってしまってて辛いものがある。DSの性能を考えればこれが限界だったのかもしれないが、もう少し玩具っぽい感じが出せなかったものか、悔やまれる。
ゲームバランスも対戦相手(CPU)のルーチンがおバカ(不利な状況で自爆行為をしてくるなど)になってしまった影響で壊滅的に劣化。加えて前作で対戦スタイルを根本的に破壊する『ヤミー』の強さが改善されてない、先攻有利のスタンスが直されていないなどと、かなり痛い調整不足が見受けられる。特に後者はリアルカード版の1ターン目ドロー無しのハンデがあればあらかた解決していただけに何故、それを見送ったのか…理解に苦しむ限りだ。CPルーチンもDSの方がもっと高度なのが作れるはずなのに何故、それ以下のものが出来上がってしまったのかが謎。正直、プログラマーの技術レベルの低さに落胆する限りである。
そんな嫌らしい欠点もありはするが、ゲーム自体の完成度は名作の続編だけにある高さ。カードゲーム初心者から上級者まで楽しめる、その驚異的な幅広さが見事なこの『高速カードバトル カードヒーロー』。前作のGB版経験者は勿論のこと、DSを持っているユーザーならば是非ともプレイすべき逸品である。この面白さ、やってみなくちゃ分からない。
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