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  4. 救急救命カドゥケウス2
≫救急救命カドゥケウス2
■発売元 アトラス
■開発元 ヴァンガード、ベイシスケイプ(音楽)
■ジャンル SF外科手術アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、殺傷、薬物描写等あり
■定価 4800円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 29ページ
■推定クリア時間 10〜14時間(エンディング目的)、60〜75時間(完全攻略目的)
3年前、『デルフォイ』なる組織が起こした奇病『ギルス』による世界医療テロから、人類の危機を救った国際機関『カドゥケウス』。そのカドゥケウスのメンバーの中で、最も活躍した外科医・月森孝介は、多くの病気の人を治療する為、助手の利根川アンジュと共に世界各地を飛び回っていた。

そんな月森が現在滞在している、アフリカ・コスティガのザカラキャンプ。
彼の新たなる戦いは、この地から始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作譲り、病魔を倒して患者を救う『使命感』が異彩を放つ、独自のゲームシステム
◆同じく前作譲り、タッチペンならではの魅力を存分に引き出した快適な操作性
◆リトライ&台詞スキップ機能等が実装され、格段に向上したプレイアビリティ
◆Wii版で登場した骨折手術、新登場のマイク手術など、バリエーションが大幅に増えた全50種類以上ものオペ
◆バリエーションの増強で、より目まぐるしくなったゲーム展開(単調さ皆無)
◆成功判定の改善などにより、使い勝手が大幅に向上した全10種類以上もの手術器具(特に縫合とヒールゼリー)
◆本編進行中に自由に切り替え可能なのが優しい、難易度選択システム
◆効果時間が延び、前作以上に使い勝手が強化された必殺技こと『超執刀』(強くなりながら、難易度の軟化に一切起因しないバランス崩壊技になっていないのが素晴らしい)
◆一番低い難易度でも伝統の「厳しさ」は健在の、巧の技が光るゲームバランス
◆スコアアタックに高難易度オペ、更には難易度制覇など充実しまくりのやり込み要素
◆前作プレイ前提だが、相変わらずの『熱さ』に満ち溢れた展開が秀逸なストーリー
◆グロさが更に軽減され、よりクールなものに進化した臓器関連のグラフィック
◆音質と曲のクオリティ共に爆発的に向上した、熱過ぎる音楽
◆如何にも手術をしている「生々しさ」をリアルに演出する、質感溢れる効果音
◆特殊環境下のオペが増えた恩恵で、格段に派手になった演出

--- Bad Point ---
◆一部、前作よりも狭まってしまった手術器具の当たり判定(特にピンセット)
◆上記当たり判定の狭さのせいで、無駄に難易度が高い『開錠オペ』
◆ストーリーデモにおけるうざったいボイス演出(オペ時のボイス演出は別)
◆広範囲オペにおける、手術器具アイコン誤タッチ率の高さ
◆完全に前作プレイ前提とされた、一部ギルスとの戦い(もう少し事前説明を細かくするなどの処置を取って欲しかった)
◆賛否両論なキャラクターデザイン(Wii版と同じな為、好みが分かれる)
◆助ける使命感が弱過ぎる、ラストオペの患者(何故にあの人…)
▼Review ≪Last Update : 4/12/2009≫
「救命救急」ではありません。

意外と間違え易いんだよね…。


SF外科手術アクションと言う新ジャンルを確立し、海外も含め多くのユーザーから賞賛された『カドゥケウス』シリーズのDS版第二弾。開発は『SDガンダム GジェネレーションDS』等を手掛けたヴァンガード、音楽を『ファイナルファンタジータクティクス』等の作曲で知られる、崎元仁氏率いるベイシスケイプが担当。

名作の続編はやっぱり名作だった。
より遊び易く、より間口が広くなった、最高クラスの続編だ。

基本的なゲーム内容は前作と変わらない。タッチペンで複数の手術器具を駆使し、患者を蝕む病魔達と戦っていく、手術アクションゲームである。ただ、基本的な内容は同じであれど、システム周りは前作とは別物。と言うよりも、今作以前にリリースされたWiiの『カドゥケウスZ』、『カドゥケウスNEW BLOOD』のものをそのまま起用したものに変更されている。エピソードセレクト方式によるゲーム展開、常時切り替え可能な難易度選択システム、そしてリトライ&スキップ機能など。それ故、今作は前作の続編と言うよりむしろ、Wiiの続編としての匂いが強い。前作の続編と思ってプレイすれば、正直、人によってはその違いっぷりに結構な違和感を覚えてしまうかもしれない。しかし、肝心のカドゥケウスとしての面白さは変わらずだ。外側を固める要素こそ完全に変わってしまったものの、内側のゲーム部分に関しては、前作の面白さをそのまま引き継いでいる。いやむしろ、外側が変わったにより、一層、その面白さに磨きがかけられている。
その象徴が、Wiiのシリーズから継承された難易度選択システムとリトライ&スキップ機能の二つ。いずれも前作のDS版には無かった要素で、特に後者に関してはそれが実装されてない事が、ゲームそのもののプレイアビリティを著しく損ねていた。だが、今作は別。それらの機能が実装されているので、手術途中での再開、そして台詞を一気に飛ばして手術本番に直に入ると言った事が、簡単に行えるようになっている。前作のようにオペを最初から再開したい時、ワザとゲームオーバーなる必要など無し!そして、再開する度にいちいちキャラの台詞を読む必要もこれまた無し!ノンストレスの超快適な仕様に改められているのだ。そんな風に改善されてるものだから、今作のプレイアビリティの高さは相当なもの。簡単に最初からの再開、そして手術への集中ができるので、とても気持ち良く楽しめる。リトライを実装した事で、前作独特の「後に引けぬ緊張感」が失われてしまったのは少し寂しいものがあるが、あれが逆にプレイヤー側に要らぬストレスを与え、尚且つカドゥケウスというゲームの面白さに要らぬダメージを与えていたのも事実。断腸の思いだったかもしれないが、テーマ性よりもゲーム性としての遊び易さを優先したその判断に関しては、正しいものだったと言えるだろう。
また、難易度選択システムの実装も、ゲームとしての魅力を底上げする要素として機能していて上手い。一つの難易度しかなかった前作と違い、プレイヤーの腕に応じた三種類の難易度を用意し、誰もがすんなりとカドゥケウスというゲームの世界に入っていける土壌を作り上げたその判断は実に賢明だ。コアなプレイヤー向けだったカドゥケウスは、ライトもコアも楽しめるカドゥケウスへと進化した。
それのみならず、全体的なバランス周りも今作は、かなりの再調整が執り行われており、前作で問題となっていた箇所が軒並み潰されているところも素晴らしい。特に前作でやや精密に線を描く必要のあった『縫合』が、ワリと適当な線でも判定されるようになったのは、地味に有り難いところ。傷を即座に治す『ヒールゼリー』も、効果範囲が拡大した事により、使い勝手が向上している辺りも、前作で少しその癖に悩まされたプレイヤーなら、思わず感動を覚えてしまうだろう。ただ、メスやピンセットなど、当たり判定が極端に狭くなってしまったものもあるので、一概に全てが向上したという訳で無いのがもどかしい限りであるが。
ただ、総じてゲーム自体の遊び易さが劇的に向上したのは事実。リトライとスキップ、そして難易度が選べるようになった事により、コア路線を走っていたカドゥケウスは万人路線へと道筋を変えた。まさに、これぞ進化したカドゥケウス。続編としては申し分の無い改善と進化が図られた、素晴らしいものに仕上げられているのである。

更に改善が図られたのはプレイアビリティ、難易度(ゲームバランス)ばかりでない。今作の肝とも言える手術(オペ)も、大幅な改善が図られている。端的に言ってしまうと、バリエーションがもの凄く多彩になった。
前作は序盤が異物の除去、中盤以降からは未知の寄生虫『ギルス』との戦いがメインという極端過ぎる構成で、少しバラエティー色に劣っていたが、そこが今作にて爆発的に進化。序盤から終盤にかけて、一般的な手術あり、ギルスとの戦いあり、特殊な環境下での手術ありと、驚くほど多彩な手術の数々が堪能できるような構成へと改められたのである。前作みたいに序盤しか一般的な手術が楽しめないだなんてことは無し!中盤以降でも一般的な手術が今回では用意されている!後半はギルスとの戦いばかりで単調と、前作をプレイして思った方ならばきっと、そのバリエーション豊かな展開の数々には燃える思いを抱くこと、間違いなし。そして、その豊かな展開に思わず釘付けにもなってしまうだろう。
また、単に展開が豊富になっただけでなく、続編のお約束として、前作には無かった新たなオペが加わったのも見逃せないところ。Wiiの『カドゥケウスZ』で登場した骨折手術、『カドゥケウスNEW BLOOD』にて登場した臓器移植手術と言った登場済みのものもあれば、前作にも登場した謎の寄生虫『ギルス』の進化系『ネオン・ギルス』との戦いあり、カメラマンのフラッシュが焚かれる異常な環境下でのテレビ取材手術ありと、本当にビックリするほど新たな手術がプレイヤーの前に要求されてくる。更に今回は、現在手術している所とは別の所を調べる事が要求されたりなど、一画面内だけで収まらない、スケール感のあるネタも豊富に仕込まれている。その他にもあの『爆弾解体』を髣髴とさせるような奇怪な手術もアリ、まさかの『マイクを使う手術』アリと、如何にもゲームらしいぶっ飛んだネタも盛り沢山。
一体、あのギルス一本道な展開は何だったんだと、前作をプレイしたユーザーなら、これらのネタ乱舞には思わず圧倒されてしまうのは間違いないだろう。今作初プレイの方なら、この目まぐるしい展開には好奇心を刺激させられるのは必至。「一体、次はどんな手術が待ち受けているのだろう?」と、先を進める楽しさみたいなものを存分に堪能できるだろう。本当、よくもここまでネタを仕込めたなと、スタッフの引き出しの多さには圧倒させられる。幾つかWiiからの流用があっても、それがきちんとゲーム展開の面白さを演出するものとして機能させてある辺りも絶妙としか言い様が無い。
それに、何よりもこの手術のバリエーション増強により、ようやく今作、というかカドゥケウスというゲームが、手術アクションゲームとしての「らしさ」を会得したのが大きい。アクションゲームとして最も大事な、プレイヤーを飽きさせない展開の構成。それが遂に実装されたのはまさに今作最大級の改善点だと言えるだろう。ギルスにこだわり、ネタを徹底して使い回すという芸の無い前作やWiiの『カドゥケウスZ』とは、もはや比較の対象にすらならない。あれもあれで味があるし、面白くもあるが、アクションゲームとはやはり、プレイヤーを飽きさせない構成…レベルデザインを執り行ってこそ、真の意味で面白いものが出来上がるというもの。ゲームとしての純粋な面白さは、今作が勝って同然なのは言うまでも無いだろう。本当、よくぞここまでカドゥケウスを成長させましたねと、スタッフの方々には拍手を送りたい限りだ。
カドゥケウスと言うゲームを真の意味でアクションゲーム化させる。そんな狙いがあったのかどうかは全く謎だが、少なくとも今作でその狙いは完璧に成功したと言っても良い。こんなにも多彩な展開が楽しめるようになっていちゃ、納得しないの自体、野暮だろう。とにかく、今回は単調さ皆無!見事なまでにアクションゲームらしく、最初から最後まで飽きの来ない展開の数々が楽しめるようになっているのだ。この点に関しては、進化というよりは「完成」と言っても良い。カドゥケウスが今後辿っていくべき道、そしてカドゥケウスと言うゲームの真の姿、それらが一挙に味わえるからだ。

その他、前作でも多くのプレイヤーを魅了したタッチペンによる快適な操作性もそのまま。その操作性故にもたらされる、難しいけど敷居が低さも健在で、相変わらずの「DSだからこそのゲーム」という独特の匂いを引き出している。
スコアアタック(ランクチャレンジ)、スペシャルステージ等のやり込み要素も相変わらず。むしろ、今回は三種の難易度全ての制覇というのが導入されたのもあり、かなりやり甲斐のあるものにパワーアップしている始末。完全制覇の困難さはWii版に匹敵するほどなので、やり込み派プレイヤーならば至福のひと時を堪能できるだろう。
シリーズ最大の強みとも言える、グロテスクな雰囲気皆無の内臓グラフィックも、Wii版基準のクールなテイストのものに改め、臓器が苦手な方も普通に見耐え得るものへ進化。音楽も今回はストリーミング再生方式に改められたのもあり、かなり音質が向上している。
それのみならず、今作の音楽は何と『バトルガレッガ』等で知られるベイシスケイプの並木学氏が作曲しているだけに、曲自体のクオリティも強烈。特に最後の手術にて流れる壮大過ぎる音楽には、誰もが聞き惚れてしまうこと間違いなしだ。何気にサウンドテストがおまけ要素として用意されているのも嬉しいところ。抜かりがなさ過ぎる。
そしてストーリーも強引なところはあれど、相変わらずの熱い仕上がり。特に中盤辺りで主人公の月森があるトラブルを起こして以降の展開の熱さは絶品。王道だからこその強みみたいなのを思い知らされるだろう。

操作のレクチャーなどのサポートも万全。お馴染みの必殺技『超執刀』も、前作よりも使用時間が増えて強力になり、いざという時の技としての「らしさ」が増強されたのも良い感じ。強くなったのにバランス周りに何ら支障が出ていない辺りも、流石としか言い様無しだ。
ストーリーデモの随所に挿入されるボイスがもの凄くうざったい(OFFにするとボイスが大事なオペまで消される)、手術が広範囲に及ぶようになった為、誤って器具メニューをタッチする事故が起き易くなった、そして前作と同じく、ペンを酷使するので長時間プレイに向かないなど、残念な所もあるが、ゲーム自体の完成度はかなりのもの。まさに、『カドゥケウスの最終形』と言っても過言ではない、素晴らしいアイディアと改良の数々が盛り込まれた、この『救急救命カドゥケウス2』。 ニンテンドーDSを持ってるユーザーなら、要プレイの名作である。この脅威とも言える面白さは、コアゲーマーだけには勿体無い。ライトの方も是非、プレイしてみて欲しい。大げさな物言いではあるが、超お薦めの逸品です。
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