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≫ブレイザードライブ
■発売元 セガ
■ジャンル MYSTICKERバトルRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※セクシャル描写あり
■定価 5229円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 45ページ
■推定クリア時間 22〜25時間(エンディング目的)、120〜200時間(完全攻略目的)
環境破壊が進む近未来、環境開発のテストケースとして選ばれた東京23区は自然と都市の融合をテーマに再開発が行われ、トウキョウXII区として生まれ変わっていた。
この都市のエネルギー源として採用されたのが『NEXT社』の開発したMYSTICKER(ミスティッカー)。貼り付けた場所にエネルギーを生み出すスティッカーの形状をしたこの新エネルギーは、瞬く間に人々の暮らしの中に溶け込んで行った。

ミスティッカーは本来、人体への使用は危険な為、禁止されていた。だが、これを体に貼り付け、特殊な力を引き出す者達、『ブレイザー』が現れるようになった。
ブレイザーの中にはミスティッカーの力を悪用するものも存在し、心あるブレイザー達は悪事に手を染めるブレイザーに対処すべく『ガーディアン』を結成。日々、ブレイザー絡みの事件を追っていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆両腕にシールを貼って戦う、独創的なアイディアと戦略性に富んだ戦闘システム
◆カウンター攻撃『オーバーディフェンス』、パートナーとの連携攻撃『テクニックバースト』など、戦闘での戦略性の高さを際立たせる要素の数々
◆攻守の概念がきちんと確立された、絶妙な戦闘バランス(不利な状況でも十分挽回可能と、一方的な展開に陥り難い)
◆ミッション遂行方式で展開する、シンプル且つ分かり易いゲーム展開
◆負けても戦闘開始前からやり直せる、親切設計のリトライシステム
◆シンプルなゲーム展開とは裏腹の充実したゲーム全体のボリューム(本編クリアだけでも25〜30時間ほどかかる)
◆丁寧なチュートリアルとゲーム進行に応じて各要素を開いていく、気の利いた構成
◆DSらしからぬ美麗なグラフィックと構成が強烈な印象を残すフィールドマップ
◆スティッカー集めからサブミッションまで、盛り沢山のやり込み要素
◆少年漫画の王道を極めた熱血系のストーリー
◆ニンテンドーDSの限界を超え過ぎたグラフィック(戦闘時キャラクターのアニメーションもかなり滑らか且つ、美麗)
◆SF風の世界観にマッチした、完成度の高い音楽(戦闘系の曲の出来が秀逸)
◆物量的にニンテンドーDSの限界に到達してるも同然の高クオリティのアニメムービー
◆同じく物量的にニンテンドーDSの限界に到達してるも同然なボイス演出

--- Bad Point ---
◆統一が図られてない操作性(マップ移動はボタン操作に対応してるのに対し、一部がタッチペン操作以外非対応など)
◆グラフィックは綺麗だが、見難さも否めないフィールドマップ
◆遅めの戦闘テンポ(雑魚との戦いでも最低5〜6分はかかってしまう)
◆戦闘テンポの遅さを際立たせる、ミスティッカードライブのデモ(カット不能)
◆お使い系のモノが大半を占める、単調さの否めないミッション
◆基本的にスピードが早い方が有利になり易い戦闘バランス(唯一の穴)
◆丁寧ではあるが、テキスト主体な為、読んでいて疲れ易いチュートリアル
◆簡潔過ぎて能力などの情報が取得できない、ミスティッカーの説明文(もっと詳細なものにした方がベストだった)
▼Review ≪Last Update : 7/18/2010≫
「限界まで…飛ばす!」

色んな意味で飛ばし過ぎ。(※褒め言葉)


月刊少年ライバル(講談社)の岸本聖史原作の漫画『ブレイザードライブ』を題材としたゲーム。セガと少年ライバル、原作の岸本氏のコラボプロジェクトによって誕生した作品である。プレイステーション3の傑作『戦場のヴァルキュリア』のチームが実開発を担当。

全てにおいてDSの限界に挑戦した、やり込み甲斐満点の隠れた傑作だ。

ゲーム内容はMYSTICKER(ミスティッカー)バトルRPG…、カードバトルの要素を取り入れたロールプレイングゲーム。主人公のシロウとその仲間達を操り、『トウキョウXII区』の各地で起きる事件を解決していくというものだ。
ゲーム本編は章単位によるミッションクリア方式で進行。本拠地(拠点)となる『ガーディアンフェンリル支部』でミッションを受領し、それを攻略。ミッションには本編ストーリーに絡んだ『イベントミッション』を一通りクリアすることで、次の章へと進む仕組みとなっている(それ以外にストーリーに絡まず、何度もプレイ可能な『フリーミッション』が用意されている)。また、マップ構成も全体マップは無く、拠点を中心に町(区)ごとに個別のマップが用意された作り。規模的には狭く、マップを歩き回る自由度は低めだ。更に、ミッション中には敵との戦闘も発生するが、これもRPGでは良くあるエンカウント方式でなく、指定の位置で行われるイベント方式。大体、一つのミッションで何回の戦闘があるかは固定された、極端な制限のかけられた設計となっている。
ここまでの事をまとめると、一本道色が強め。プレイヤーの動き回る自由を徹底して制限した、極端なゲームデザインとなっている。だが、そんなフィールドを歩く自由度の低さも狙った上でのこと。今作は先の通り、カードバトルの要素を取り入れたRPG。カードバトルだから、当然ながらメインは戦闘だ。なので、フィールドを歩くパートは控えめにし、戦闘だけに集中できるよう、そこに力が注がれた作りとされている。要は今作、戦闘主体のRPGということ。主たるゲーム性を戦闘パートだけに絞り込んだ、一本集中型の作りとなっているのだ。
そんな主たるゲーム性を集中させた、戦闘のシステムは非常に独創的。『ミスティッカー』と呼ばれる特殊なシールを左右の腕に貼って攻撃を展開していく、斬新なものとなっている。
詳細なルール周りも、行動順(ターン)は素早さのステータスによる管理方式と、他のRPGでも見受けられるシステムだが、そのターン内で行われる内容が斬新。ミスティッカーを腕に貼る『ドライブモード』、攻撃を行う『アタックモード』、敵の攻撃を腕で防御する『ディフェンスモード』の三つのモードを繰り返しながら展開する、特殊なものになっている。
またこのターンにて扱う腕は攻撃、防御に構わず一度でも行動させると、そのターン内では使用不能に。二つ共使用不能だと、ディフェンスモード時に防御効果が得られなくなるデメリットが生じるようになっている。これは敵も共通で、戦闘ではこの特性を逆手に取ることで状況が大きく変化。如何に相手を早く無力化させるかという戦略が求められる作りとなっている。腕に貼れるミスティッカーも最大4枚まで、且つ『I〜IV』と何枚目の時に貼れると言った独自の制約があり、自由にミスティッカーを貼ることは不可能。ミスティッカーを管理する『デッキ』も最大24枚までの制限で、戦闘時において如何に効率良くミスティッカーを回せるようにする調整が重要となるなど、まさにカードバトルらしいバランスとなっている。
更にゲームが進むにつれ、カウンター攻撃の『オーバーディフェンス』、パートナー(仲間)との連携攻撃『パワー・バースト』などの様々な要素も開放され、戦略が拡大。他に戦闘にて貼るミスティッカーにも様々な種類があったり、ミスティッカーを4枚張ることで特殊な効果が得られる『ドライブスキル』など、様々な要素があるが、話すと長くなるので割愛。ともあれ、このように戦闘システム全般は独創的で尚且つ、奥の深い作り。そして、カードバトル方式ならではの味が引き出されたものに仕上げられている。正直、フィールドの自由度は、他のRPGと比べて最低レベルと言っても不思議でないレベルだ。とにかく狭い。だが戦闘の自由度、そして奥深さは群を抜くもので、そこは並外れたインパクトを放っている。
戦闘システムが濃いから、フィールドの狭さなんて些細なもの同然。まさに戦闘重視のRPGというに相応しい、やり応えのある内容に完成されているのである。戦闘に特化したRPGとしては、屈指の濃さと言っても不思議でないほどだ。

例によって、今作の見所はその戦闘システムである。シールを腕に貼り、攻撃を展開していく独創的な仕組みもさる事ながら、攻守のバランスが大変しっかりしており、雑魚敵との戦いにおいても常に緊張感溢れる戦闘が楽しめるよう、とても丁寧に作り込まれている。一般のRPGと異なり、今作にレベルアップの概念は無く、戦闘で得た『ブレイザーポイント』で能力アップに特化した『ドライブスキル』を会得し、強化していく仕組みとなっているのだが、それで幾らキャラクターを強化しても、戦闘の流れが力押しの一方的な展開に陥ることは皆無。状況に応じた判断、ミスティッカーの組み合わせがカギとなる、システムの魅力と戦略性を活かす作り込みが成されているのである。
特に秀逸なのは『オーバーディフェンス』を始めとする、豊富な選択肢の数々だ。通常攻撃だけでなく、相手の攻撃を自分の攻撃として跳ね返したり、パートナーとの連携で強力な敵をいち早く沈黙させるなど、多彩な行動を取れるので、戦闘が単調になり難い。また『オーバーディフェンス』にせよ、味方しか使えないなどの差別化も行われてなく、味方・敵構わず使える平等化が図られているので、一方的な展開に陥ることも皆無。敵もこちらと変わらぬシステムで、それに則った行動を取るので、常に緊張感が保たれる。ほとんど対人戦に等しい手応えを感じ取れるのである。更に戦闘の展開も、瀕死の状態になったからと言って、それで負けが確定しないのが絶妙。瀕死の状態になるとステータスが底上げされ、平常時よりも強力な攻撃と防御が可能となり、その後の展開次第では、立場逆転が狙えてしまうのだ。普通に考えて、瀕死になったらもう、挽回は難しいので死を待つだけとなりがちだが、今作ではそうならない。ピンチになっても、挽回どころか大逆転も可能。「瀕死=負け」とはならない、リスクとリターンの概念を最大限に活かした工夫が凝らされているのである。なので、戦闘の展開を予測する事自体も困難。追い込んだと思ったら、逆にこちらが追い込まれるなんて展開も平気で生じるので、プレイヤーを全く飽きさせない。この優れたゲームバランスには、溜息が出るばかり。カードバトル方式という独自の戦略性を効果的に演出、且つそれを最大限に活かす調整の図られたシステムに仕上げられている。
公平さを保つ気配りも素晴らしく、能力を強化したから展開が一方的にならないので、常に戦闘の面白さが保たれるのも凄い。能力強化があると大抵、重ね続けることで戦略性が殺がれ、一方的な無双となってしまいがちだが、今作では個々の要素の存在もあってか、強化し続けても殺がれることが皆無。崩れかねない要素を持ちながら、こうもバランスを安定させるように調整したのは、まさに職人の成せる技。制作スタッフの気合いの入れ様を感じさせられる次第だ。
バランスだけでなく、他の戦闘の方式、及び戦う敵、パートーナーキャラクター達もシステム独自の面白さを引き立てるものとして機能しているのが素晴らしい。中でも敵は非常にバリエーション豊か且つ、思考ルーチンも含めて人間味に溢れており、コンピュータではなくて人と戦っている手応えを感じ取れるのが見事。ルーチンが優れている故に展開もパターン化し難く、戦闘の面白さを底上げする要素として機能しているのも上手い。パートナー…仲間にしても一長一短で、選んだキャラごとに趣の異なる戦闘が楽しめるのも面白い。難易度調整の意も込められていて、シビアな展開を味わいたくば一人でやるか、それとも弱いのを選ぶか、そんな選択の幅の広さが出てるのも、なかなかニクい配慮である。
ただ、基本は二人一組で戦うので、一対二の戦いだと数的不利に立たされ易いのは少し残念ではある。だが、それでも総合的なバランスは驚くほど安定。さすが戦闘に特化したRPGだけにある仕上がりとなっている。
フィールド探索の作りは甘く、その点は他のRPGとも圧倒的に劣る出来だ。だが、それを補うほどの面白さが戦闘システムには満載。しかも、一方的な展開に陥り難い好バランスという、鬼気迫る調整が炸裂。何故、今作はフィールド周りの作りが甘いのか。それも実際に戦闘を体験すれば、痛いほど思い知らされるだろう。カードバトルならではの戦略性に豊富な選択肢、そして安定したバランスと、とにかく隙は一切無し。特化したからこその強みが活かされたシステムとして完成されているのだ。大袈裟な物言いではあるが、そのシステムの完成度は数あるRPGの中でも一、二を争う出来。ニンテンドーDSに限れば、三本の指に入る面白さだと言っても不思議じゃない。

戦闘システム、バランスばかりでは無い。今作はグラフィックから音楽、演出もあり得ないクオリティとなっている。とにかく、一言で言ってしまうとド派手。大きなアニメ絵のグラフィックが仰々しく動く、DSとは思えぬ美しい映像が画面いっぱいに繰り広げられるのである。挙句、本編ではフルボイスによるイベント、アニメムービーも満載。しかもそれが推定1時間強はあるという、これまたDSとは思えぬ大ボリューム。更にアニメムービーに至っては、常に高画質で荒れが一切無しという高クオリティである。まさにセガ…何したの?と突っ込みたくなる出来栄え。戦闘の面白さもさることながら、こう言ったところも今作、突出した完成度を誇っているのである。そのクオリティは、かのスクウェア・エニックス製ゲームに迫るほど。実際に見てみると、DSのポテンシャルの高さを痛感させられるだろう。
また、ゲーム全体のボリュームも充実。メインで25時間ほど、クリア後のシナリオも含めると50時間強と非常に長く遊び込むことができる。更にWi-Fi対戦も実装。それにはまり込むと100時間は裕に超えるなど、中毒性も相当なものだ。
シナリオも王道の少年漫画全開の仕上がりで、とにかく熱いの一言。登場キャラクターも主人公のシロウを始め、味方から敵を問わず非常に好感の持てる面子ばかり。彼らの掛け合いも楽しいものになっているので必見だ。

システム解説の丁寧なチュートリアルなどのサポートも充実。しかし、解説がテキスト主体且つ、冗長で少し煩わしい。システム的に仕方が無かったのかもしれないが、出来ればもう少し簡略化するなりの配慮を凝らして欲しかった。
操作性にしても難あり。十字キーとボタン操作に対応していながら、タッチペン操作以外を受け付けない箇所があったり、戦闘はタッチペン操作限定など、統一性の無さが際立つ。特にフィールドにおいて、タッチペン操作以外を受け付けない部分があるのはいささか疑問。ボタン操作にも対応させるなら、ちゃんとそれで全てが行えるよう、調整して欲しかったところだ。他にミッションが変化に乏しい、戦闘テンポが遅いなどの欠点もあったりするが、ゲーム自体の完成度はかなりのもの。DSのゲームとしても、一つのRPGとしても、群を抜く面白さと熱さを秘めている。一応、原作付きのゲームでもあるのだが、その手のゲーム特有の甘さも無く、しっかり一つのゲームとして作り込まれているのも大きな評価に値する。
まさに戦闘に特化したRPGというに相応しい面白さを誇るこの『ブレイザードライブ』。ニンテンドーDSのRPGの中では、屈指の傑作である。これはDSを持ってるユーザーなら是非、プレイして頂きたい逸品。この優れたバランスと熱さ、半端じゃない。原作付きとかの先入観は捨ててチャレンジしてみて欲しい。この本気っぷりは見逃せない。
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