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≫あわたま
■発売元 インターチャネル(現:ライトウェイト)
■開発元 Mekensleep
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 8時間〜10時間(エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
シャーマンの役目、それは迷えるタマシイを探し、現実の世界へと導くこと。
だが、タマシイはとてもデリケートで、外の空気に長い時間、触れていられない。

迷えるタマシイをシャボン玉に入れ、外敵や障害物から守りながら、現実世界へ導こう。

見習いシャーマン、ミークの冒険のはじまり、はじまり。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆泡に息を吹きかけ、ゴールまで持ち運ぶ、単純明快で取っ付き易い基本ルール
◆オールタッチペンで、ボタン操作も絶妙に絡ませた、手触り感抜群の操作性
◆瞬時に軌道修正が行える、プレイヤー側の制御が効き易く調整された『泡』(持ち運ぶ際のストレスは皆無)
◆トゲや敵の攻撃に触れない限りは絶対に割れない頑丈仕様の『泡』(安心感抜群)
◆息を吹く以外にも敵を攻撃したり、ツタを切ったりなど、多彩なアクションをお披露目してくれる主人公のミーク
◆泡を作る、斬る、縮小させるなどの個性的なアクションが満載の『お面』(切り替え操作も対応したボタンを押しっぱなしにするだけと、大変快適)
◆類似ネタが無く、全てが独立したものとして完成された全8ワールド40ステージ
◆泡を盗む敵、吹き矢トラップなど、泡を守って運ぶ独特のゲーム性を引き立てる多彩なステージギミック群
◆丁寧で、説明し過ぎない丁度良さと遊びの多さが面白いチュートリアル
◆ひょうたん集め、高ランクチャレンジなど、地味ながらも充実したやり込み要素
◆コンマ1秒を競う、レースゲームさながらの熱さに富んだやり込み要素『タイムアタック』
◆難し過ぎず優し過ぎずの職人的な調整が素晴らしい、絶妙なゲームバランス
◆物理演算に基づいた「ぷよっ」とした動作と効果音が気持ち良い、泡のグラフィック
◆幻想的な世界観を丁寧に描いた、美しくてセンス溢れる背景グラフィック
◆環境系の曲が中心ながら、透明感溢れる音質が「癒し」を与える、独特の音楽
◆各種アクションの気持ちよさと操作の楽しさを演出する、質感満点の爽快な効果音

--- Bad Point ---
◆息切れ発生の見極めとなるのに非搭載の『息の残量ゲージ』(入れるべきだった)
◆構成は多彩だが、基本、泡運びに終始する全ステージ(派手さはないので、好みが分かれる)
◆癒し系だが、悪い意味で捉えれば面白味に欠ける音楽
◆ポーズ画面でしか確認できない上、表示されるまでに僅かに待たされる仕様が嫌らしい、集めた『きらきら星』の数(上画面に表示すべきだった)
◆泡を運ぶゲームならではの地味な演出(派手さに欠ける)
◆海外製ゲーム特有の濃いキャラクターデザイン(特に敵周り)
▼Review ≪Last Update : 4/18/2010≫
タッチペンで息を吹く。息を吹く操作はタッチペン。

大事な事なので二回言いました。


フランスのデベロッパー『Mekensleep』が開発し、欧州で高評価を得たアクションアドベンチャー『Soul Bubbles(ソウル バブルズ)』の国内移植版。『イルミスライト ひかりのパズル』に引き続き、インターチャネルがローカライズを担当。

任天堂制作じゃないのに、任天堂らしさ大爆発!
抜群の手触り感の良さと練り込まれたステージが秀逸な、隠れた大傑作だ。

アクションアドベンチャーと称されているが、実質的な内容は横スクロールのステージクリア型誘導アクションゲーム。5つの魂を閉じ込めた泡に息を吹きかけたりしながら、ゴールまで運んでいくというものである。
ゲーム本編における操作は、全てタッチペンで行う。「息を吹きかける」という事から、実際にDS本体のマイクに向かって息を吹いてプレイすると想像してしまうかもしれないが、そんな事は一切求められない。あってもゲーム開始直後のオープニングで、プレイヤーキャラクターのミークを呼び出す際にやるぐらいだ。肺活量に自信が無いとか、そんな心配は不必要。タッチペンだけで、泡に息を吹きかける、親切設計となっている。
タッチペンによる息の吹きかけ操作にしても非常にシンプルだ。息を吹きたい方向に沿って、泡をペンでスライドするだけ。これだけの操作で、泡を望んだ方向に動かす事ができる。また、プレイヤーが本編で操作する主人公・ミークは、画面内のあらゆる場所をタッチする事で、瞬時にそのタッチした所への移動が可能。なので、仮に泡が望まぬ方向に進んでしまった場合、その方向に先回りし、瞬時に泡の軌道修正を行う事もできる。
この手のプレイヤーの意思通りに動いてくれない物を運ぶゲームというと、その動きのワガママと軌道修正の難しさに苛立ちを覚えたりすることがザラだが、今作は先の通り軌道修正がとても簡単。そして、直感的に行う事ができる。なので、プレイ中には意外にも苛立ったりする事は皆無。それどころか、簡単に軌道修正が行えるので、スムーズに物を運ぶ面白さを味わえてしまう。苛立ちとは切っても切り離せぬ縁のこの手のゲームにしては、何とも珍しい仕上がり。完全に思い通りに動いてくれる訳では無いのだが、それなのにストレス皆無というすこぶる快適なプレイ環境を確立させる配慮が凝らされた作りとなっている。
更にその快適さを助長する工夫として、泡の頑丈さがある。普通に泡と聞くと、壁とかに触れるだけですぐ割れてしまう、モロいものと連想してしまうが、今作の泡は壁とかに触れても一切割れない。単に跳ね返るだけ。さすがにトゲに触れたり、壁と壁に挟まれると割れてしまうが、普通の泡以上に固いので変に神経を配る必要も無く、スムーズな泡運びができる。なので、仮に軌道修正が間に合わなくても、余程の事が無い限りは焦る必要も無し。壁に触れたからってミスにならないので、気楽な気持ちで泡運びに集中できてしまうのだ。こう言った工夫も先の軌道修正と同様、誘導系のゲームにしては快適なプレイ環境を確立させている。また、割れにくいからこその「安心感」もあり、誘導系のゲームながら難易度の敷居が低いのも見逃せない特徴。ワリと人を選ばない内容となっているのである。
快適なプレイ環境ばかりでない。今作は単に泡を吹きかけてゴールに運んでいくだけの単調なゲームになってないのも大きな特徴だ。泡を吹きかける以外にも三種類の『仮面』による特殊アクションがあり、これで泡を縮める、切る(繋げる)、作ると言った個性的なアクションも楽しめてしまうのだ。例によって本編には、この仮面の使い分けが必要とされるシチュエーションも沢山用意されており、それらを活かした、多彩なネタの数々がプレイヤーを待ち受ける。泡の進行を邪魔するツタの除去から、仕掛けの解除と、そのネタは多岐に渡る。そしてそれらのネタの数々は時として、本筋の泡運びを忘れさせる事すらあるほど。状況に応じたアクションの使い分け、仕掛けの解除とその作り込みの度合いは、アクションアドベンチャーと称される由縁だろうか。単に遊び易さだけを狙って作られているという訳ではない。ゲームとしても、単純でありながら、それだけで終わらせない工夫と作り込みが徹底されたものになっているのである。泡が頑丈だとか、軌道修正し易いのがゲームの優しさへと繋がってない。きちんと面白さへと昇華させられているのだ。そして、軌道修正のし易さに代表されるようにDSのタッチペン操作だからこその強みも効果的に活かされている。
泡を運ぶというそれはもう、シンプルなアクションゲーム…少々、昔っぽさ漂う内容ではあるが、その作り込みの度合いは桁違い。勿論、遊び易さも抜群。取っ付き易くて、何処と無く新しさがある。そんなアクションゲームとなっているのだ。

そして今作最大の売りは、まさにその徹底した作り込みの数々である。泡運びという単純なルールのゲームでありながら、操作性、ステージ構成とその仕掛け配置、全体のバランス調整と至る所にまで、徹底した作り込みが成されているのである。単刀直入に言ってしまおう。今作の作り込みの度合いは、任天堂が作ったゲームだと錯覚してしまうほどの凄味に満ちている。もっと具体的に言うと、任天堂が誇る世界的なゲームクリエイター、宮本茂氏が作った新作ゲーム…と本気で思ってしまうぐらいのレベル。そんなバカな、と思うかもしれないが冗談ではない。本当に今作は、そう言っても不思議で無いほど完成度の高いものに仕上げられているのである。
特に操作性はもう、素晴らし過ぎるとしか他に言い様が無い。苛立ちと隣り合わせの誘導系ゲームでありながら、軌道修正が容易且つ、ストレスを感じ難いものに完成されているのは、もはや職人芸の域である。
単に操作がシンプル且つ快適であるだけではない。これから先に進む道の状況を確認できる、視点移動モードが標準搭載されていたり、仮面の切り替えは十字キー(左利きの場合はABXYボタン)の指定方向を押すだけで簡単に切り替えられるなど、気の利いた配慮が徹底されているのも特筆に値する。
そして、各種アクションの最高の手触り感。ツタを切るアクションなど、爽快な効果音との相乗効果で、単に動かすだけでも楽しい気持ちよさを見事に演出してしまってもいるのだ。スーパーマリオとか、あれに相当するほどの任天堂ライクな気持ちよさを。更にステージ上のどうでも良い所まで触れたり、切れたりするなど、遊び心が炸裂しているのも地味ながら秀逸。徹底的に触り倒してやる、というプレイヤー側の欲を大いに刺激させるほど、如何にも宮本茂氏が作ったゲームの「らしさ」が露呈されているのだから、これまたたまげる。仮にも今作を作ったのは任天堂でもなければ、宮本茂氏でも無いのに、こんなにも任天堂作品に近い手触り感と快適さが表現されてしまっているのは、衝撃の一言に尽きる。むしろ、そんな他人がこんなのを実現させてしまった事自体がビックリである。他人の集団が、本家に迫る素晴らしい操作性と手触り感を演出してしまうとか、奇跡に等しい。如何に開発スタッフが任天堂、宮本茂氏を愛して止まないのか、それがヒシヒシと伝わって来るほど。これは再現し過ぎだろうと、下手すれば笑ってしまうほどの凄さなのである。
操作性だけでなく、ステージ構成の完成度も最高クラスだ。とにかく、作り込みの深さが半端じゃない!全部で8ワールド40ステージが今作では用意されているのだが、そのステージに類似したところが一つも無い!全てのステージが独立した一つのステージとして完成されているのである。加えて、全体的な展開の推移(レベルデザイン)も神業の域。進めれば進めるほど、次から次へと新しいネタが飛び出してくる構成が成されているので、全くプレイしていてダレることがない。むしろ、進めば進むほど新たなネタが飛び出すので、常に新鮮な体験が味わえるのである。
ステージのネタの懲りっぷりも相当なものだ。泡を盗む敵を利用して突破する迷路あり、四方八方から泡を割る矢を放ってくる吹き矢だらけの通路あり、更には大量の敵を一網打尽にする某無双なステージありと、無駄に楽しませてくれる。中には泡を弾代わりにしてもの凄いスピードでステージを転がっていく、高速ステージなんてもあるほど。その多彩過ぎるネタの数々には、テンション上がりっぱなしになってしまうだろう。
先に少し触れたが、仮面のアクションを活かしたネタも豊富に仕込まれており、よくぞここまで詰め込んだなと感心させられるほど。単に仕掛けで魅せるだけでなく、タイムアタックやアイテム収集等のやり込み要素も徹底されており、一度クリアしただけでは終わらない深みが演出されているのも見逃せないところだ。
本当、「ここまでやるか!」な出来。ひたすらプレイヤーを楽しませようとするこの鬼気迫る作り込みは、先の操作性と同様、任天堂の所業だと錯覚させてしまうほどのクオリティに満ち溢れている。バランス調整にしてもそれは言え、初めから最後にかけて理に適った上昇をしていく絶妙なバランスでまとめられているのにも驚かされる。単にクリアするだけなら簡単、アイテムを全て集めてやり込むと難易度が高くなる具合の棲み分けが成されてるのも見事だ。その辺の分け方の上手さもまた、任天堂イズムが発揮されている。
繰り返しとなってしまうが、今作を作ったのは任天堂では無いし、宮本茂氏でもない。海外の小さな、新興のデベロッパーである。そんなデベロッパーが作ったゲームにして、この完成度。単に任天堂イズムを再現してしまってるだけでなく、そんな所がこんな所業をやってしまっただけでも、かなり衝撃的であるのは、もはや語るまでも無い。それほど今作、完成度が高いどころか超越したものに仕上げられてしまっている。はっきり言って、数あるDSのゲームの中でも今作は、三本の指に入るクラスのものと評価しても全然おかしく無い。まさに正真正銘、奇跡の作品なのだ。
任天堂のゲームを真似るだなんて無理に等しい。そう思っている方は是非、触ってみて欲しい。思い知らされるだろう、フランスに小さな任天堂が存在する事実を。

操作性からバランス、ステージ構成だけでない。先に触れたやり込みも魅力的なものに仕上げられている。特に最終ワールドに突入する為に必要となる鍵のアイテム、『ひょうたん』集めは歯応え満点。全部で100個以上と、数も膨大で集め甲斐も相当なもので、シンプルなゲーム本編に程好い奥行きを与えている。その他『キラキラ星』集め、タイムアタックなどのやり込みも極め甲斐があって面白い。
更にグラフィックから音楽の完成度も高い。グラフィックは特に泡の動きが凄い。きちんとした物理法則に則り、「ぷよっ」と伸び縮みする様は見ているだけでも楽しい。背景描写も美しく、幻想的な世界観を丁寧に表現しているのも見逃せないところだ。音楽も環境音楽なのだが、これが本編の世界観と見事にマッチしており、表現しようの無い「癒し」を与えてくれる。音質も素晴らしく、DSとは思えないその透明感溢れる曲調には衝撃を受けること請け合いだ。
しかし一方で、演出は弱い。元々、泡を運ぶゲーム故にか、派手な爆発を始めとするエフェクト表現は皆無に等しいので、見た目のインパクトには欠ける。ただその分、仕掛けなどが大いに見せてくれるので、不思議とその辺に不満を覚える事は無いだろう。とは言え、人にもよるけど。

その他にも丁寧且つ楽しいチュートリアル、妙に個性的な登場キャラクター達なども秀逸で、独特の任天堂イズムが発揮されている。息を吹いて息切れをする際の判断材料たるメーターが無い事、集めた『キラキラ星』の数と総数がポーズメニューでしか確認できないなど、地味な欠点もあり、そこが万全なら完璧に近い出来だっただけに残念だが、それでも十分、今作の完成度は「とんでもない」。任天堂イズム全開の操作性にネタ満載のステージ構成、優れたゲームバランス。何処を取っても完璧に近い完成度を誇るこの『あわたま』。
断言しよう。これはニンテンドーDSが誇る大傑作だ。DSユーザーなら絶対にプレイすべき逸品。これは『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』、『超執刀カドゥケウス』、『超操縦メカMG』、『ピンキーストリート』二作と肩を並べる、DSタッチペンゲームの最高峰だ。「超」だなんて生温い。メチャクチャお薦めです。
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