Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo64>
  4. ウエーブレース64
≫ウエーブレース64
■発売元 任天堂
■ジャンル レース
■CERO A(全年齢対象)
■定価 初代:10290円(税込)
振動パック対応版:7140円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii):1000Wiiポイント
■公式サイト ≫NINTENDO64版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 コントローラパック対応(2ページ使用、振動パック対応版は2〜123ページ使用)、振動パック対応(※振動パック対応版のみ)
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 6〜12時間(エンディング、完全攻略目的共に)
水上を走るバイクこと、ジェットスキーを題材にした新感覚のレースゲーム登場。ブレーキが一切無いという斬新な要素、そしてロクヨンならではの滑らかな水の表現、美麗な立体空間がレースゲームに新たな一石を投じる。

うねりの激しい波を我が物し、海の王者を目指せ!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆コース上に揺らめく波を如何に自分のものとするかが試されるゲームシステム
◆ブレーキが無く、一切の走行停止が許されない、シビアなゲーム性
◆まるで本物であるかのようなうねりを見せる、リアルな波の動き
◆ジェットスキー本来の危険性とゲーム的な味付けが光る、厳しいレースルール
◆それぞれの特徴が一目で分かる露骨さが秀逸な、4人のマシン(ライダー)
◆難易度ごとに異なったコースを楽しめる特徴がユニークなチャンピオンシップモード
◆如何に上手く走りきるかを競う、ストイック且つリアルな味付けが絶妙な、熱いタイムアタックモード
◆レースゲームとしては異質の「得点を伸ばす楽しさ」を重視した、やり込み甲斐満点の斬新なスコアアタックモード
◆好き勝手に海を走り回れる自由さが秀逸なコース『ドルフィンパーク』
◆少なめながらも、走る事の気持ち良さと海の爽やかさが強調されている全9つのコース
◆コースの少なさに反した、意外にも重厚感のある総計ボリュームとやり込み要素
◆ダイレクトな反応が気持ちよい、抜群の操作性
◆季節感と空気感を見事に表現している、美しいグラフィック
◆世界観に程よくマッチした、秀逸な音楽と質感のある効果音
◆シビアでありながらも、自分の上達甲斐を実感できる、優れたゲームバランス
◆海の動物達を盛んに織り交ぜた、コース上の微笑ましいおまけ演出

--- Bad Point ---
◆良好とは言え、いささかシビアにし過ぎな感も否めないゲームバランス(特にチャンピオンシップの最高難易度)
◆意図を感じるとは言え、やはり束縛されている感も否めないレースルール
◆少ない、ライダーの人数(せめて、5人ぐらいはいた方が良かった気が)
◆ネームエントリー時のアルファべット選択がぎこちない(操作感が重い)
◆ほとんど意義が無いカスタマイズ機能(最終的には能力差の勝負になる)
◆上記と並行して、異議がないカスタマイズマシンのコントローラパックへのセーブ
◆履き違えた発売時期(当時のお話)
▼Review ≪Last Update : 6/23/2007≫
もう、…海の季節じゃないですから。

翌年にリベンジしても遅いっす。


6月以降から一本も新作が出なかったロクヨンの待望の3本目のゲームソフトとしてリリースされた、マリンスポーツ『ジェットスキー』を題材にした新作レースゲーム。

ブレーキが無い恐怖と波を支配する、新しいスリルと快感。
季節感、そしてスピード感満点の新感覚レースゲームだ。

ゲーム内容は、先述の通りだがジェットスキーを題材としたレースゲーム。プレイヤーは4人の個性豊なマシン(キャラ)をのいずれかを操縦し、全9つもの海を舞台としたコースを駆け巡り、総合1位を目指す。
従来のレースゲームとの大きな違いは、何と言ってもプレイヤーが操縦するのが車ではなくて、ジェットスキーだという事。ジェットスキーは、実際に本物に乗った事のある人、或いは見た事のある人ならばご存知かと思われるが、車とは違ってブレーキが搭載されていないという大きな特徴がある。勿論、本作で登場するジェットスキーにも、本物と同じくブレーキは搭載されていない。つまり本作では、一瞬の急停止さえも許されない、スリルあるレースをこなしていかなければならないのである。それまでブレーキの装備が当たり前だったレースゲームの世界において、このブレーキ未装備の概念は革新的な試み。未だかつて体験した事の無い、緊張感とスピード感に満ちたデットヒートを演出している。
この事を聞いて、「じゃ、ブレーキのボタンにはどんな機能が付けられてるの?」…と疑問を持つ方がいるかと思う。どんな機能がブレーキの代わりにあるのかというと、それがまた本作ならでは『波を抑え込む』というユニークな機能が付けられているのだ。主に波が荒々しく、思ったコントロールができない場面等において、この機能はその真価を発揮する。ブレーキが無い為、自分のスピードを如何に維持し続ける事が大切となる本作にとって、コース上の波はそんな自分のスタイルを妨害するトラップそのものだ。それを制御して、自分の走りを維持させるというこの機能は、まさに本作のそんなゲーム性から生まれた産物。これこそ一線を欠く要素、と言わんばかりのオリジナリティが滲み出ている。
肝心のレースルールも特徴的。コース上に設置された赤と黄色の2色の『ブイ』が指定する方向を通過し、通過した場合はマシンのスピードがアップ、通過しなかった場合はペナルティとしてスピードダウン、5回通過ミスすると失格(強制リタイア)となるという、風変わりなものになっている。予め指定された道を通過しなきゃいけないというのは、正直な所、開発者が指定する道を通るという束縛感があるが、ジェットスキーというのは上手く操縦を行わないと大事故に繋がる危険性を秘めたマシンであり、その事を考えればこのような安全なルートを通過する構成にしたのは、「ジェットスキーは正しく扱いましょう」という制作スタッフの想いの表れなのだろう。そう考えれば、この構成にもうすうす納得できる。
なお、そんな完全に道が決められているという訳でない。ちゃんとフリーにしているもあるし、レースゲームの醍醐味でもあるショートカットもきちんと用意されてる。確かに規制は強かれてるが、プレイヤーが楽しめるような配慮をしているのは「ちゃんとゲームとしても楽しんでほしい」という強い想いの表れなのだろう。現実の危険性とゲームとしての自由度、それを程よいバランスでつなげたこの作りは、さすが任天堂と言ったところである。このように、レースゲームとしても新しくあり、リアルでもあるがゲーム的である、ユニークなゲームに仕上がっているのだ。

ちなみに、プレイヤーが操るマシン(キャラ)は、最初に述べたが4種類。少なめだが4種類ごとに標準、加速、テクニック、最高速度と分けられている為、一目でそれぞれの特徴が分かる、意図的な作りになってるのがニクい。
また、マシンはカスタマイズによってハンドリング、加速、スピードの3種の能力を任意で強化する事もできる。だが、いずれの能力にも限界値が定められており、最終的にはマシンごとの能力差に絞られてきてしまう。これはこれで、失敗してしまってるとしか言い様が無い。また、このカスタマイズしたマシンを別売のコントローラパックに保存できるという機能もあるのだが、先ほどの能力差の事もあり、あまり意味が無いモノとなってしまってるのが痛い。もっと大胆なアレンジが加えられるのならば、そこそこ意義のあるものなってたのだが…、残念である。
並行するようにゲームモードも『チャンピオンシップ』、『タイムアタック』、『スコアアタック』、『対戦』の4種類。メインモードは『チャンピオンシップ』。全部で9つのコースを走破し、総合1位を目指す。コースは難易度ごとに数が異なっており、中には低い難易度だと遊べないコースがあるなど、しっかりとそれぞれの意義を盛り込んだ構成になっているのがユニークだ。また、隠し難易度も用意されており、詳しくは語らないが、これがまたもの凄くユニーク。レースゲームの新たなる可能性を大いに満喫できる。これをやる為だけでも、本作を遊ぶ意義は十分にあると言えよう。
また、『スコアアタック』もそんな一つだ。その名の通り、最高得点を目指して走行するやり込み甲斐のあるモードで、リングをくぐったり、特殊アクションを披露したりしながら得点を稼いでいく。従来のレースゲームにはなかった、タイムを縮めるのではなく、得点を伸ばす面白さというのが全編を通じて出ており、これが実に新鮮。一度、様々なテクニックを披露するコツを掴んでしまうと止められなくなる中毒性も見事だ。レースゲームの新しい可能性を露呈した実に感慨深いモードで、チャンピオンシップの隠し難易度と同様、これの為だけに本作をやる価値は十分にあると言える。
その他のモード『タイムアタック』の熱さもかなりのもの。後述するが、コースがとにかく丁寧に作り込まれてる事とゲーム性の斬新さが、驚異的な奥深さを表現している。
ただ、一方の『対戦』は地味。2人までしかできず、ただ純粋に走るだけの内容なので、盛り上がりに欠ける。無いよりはマシと言えばマシだが、せめてゲーム的に盛り上がる要素(アイテムとか)を入れるなどの工夫を凝らして頂きたかった。
それでもいずれのモードも出来は良い。ブレーキの使えないゲーム性を上手く反映させている他、新しい試みを取り込んでるなど、実にチャレンジフルな作りになってる。また、自由に海を走行できる『ドルフィンパーク』なるコースが用意されており、当時の任天堂らしい箱庭遊びが用意されている点も見逃せない。

そんなコースに関しても数は9つと少なめだが、いずれも走る事の気持ち良さと海の爽やかさが強調されており、ただ走るだけでも気持ち良い作りになってる。ロケーションも豊富で、ネオン輝く都市があったり、何故か氷の海があったりとハチャメチャさ満点。また、寄り道要素があったりと、細かい所まで作り込まれてる点も見逃せない。
全体的なボリュームも申し分なく、先ほど述べた隠し難易度の存在もあって、コース総数が9つだけという数の少なさをあまり感じさせない密度があり、確かなやり応えを演出している。
そしてグラフィックも抜群の美しさ。特に本物のようなリアルなうねりを見せる波の動きは必見。各コースごとの背景グラフィックも事細かに描かれており、全体的に妥協の無い姿勢が伝わってくる。音楽も世界観にマッチしており、特に『サザンアイランド』で流れる南国感たっぷりの曲は必聴の価値アリだ。音楽だけでなく効果音も大変素晴らしく、あまりにリアルで気持ち良い水の音は爽快感満点。
更に操作性も抜群。全体的に「3Dスティックはレースゲームを遊び易くする為に生み出された発明品だ!」と言わんばかりの気持ちよさを実現しており、とにかく反応がダイレクトでもの凄く良い。ただ、動かすだけでも気持ちが良いのは、さすが任天堂と言わざるを得ない。
しかし反面でゲームバランスはやや練り込み不足。特にチャンピオンシップの最高難易度以降の間口の狭さ…2人のキャラクターでないとまともに攻略できないという間口の狭さは痛い。遊びの要素の少ないレースゲーム故の弊害…とも言えるので、仕方が無い面もあるが…できれば、他のキャラでもなんとかなるバランスを実現して頂きたかった。

この他、レースルールに関してもあまり縛りが濃くないとは言え、やはり人によっては縛りを感じてしまう事、カスタマイズの意義の無さ、そしてネームエントリー画面におけるアルファベット選択のぎこちなさ等もバランスと並行して、残念な所。
だが、何よりも本作…残念だったのは発売日だ。既に海の時期から外れた、9月…秋に出したというのは…季節はずれも良い所。開発スケジュール等の問題故の結果だったのかもしれないが、それならせめて次の年に回すとか…そう言った配慮を取ってほしかった(翌年に振動パック対応バージョンを出すのなら)。まぁ、出さなかったら出さなかったで、ロクヨンは深刻なソフト不足に陥ってたから、これはこれで良い判断…でもあったが。それにこの事はゲームとは直接関係の無い話だし、それに…年を改めれば夏の気分が味わえるようになるのだから、…さほど致命的でもないし。
ともあれ、ゲームとしての完成度はかなり高い本作。あまりに季節感を重視してるので、時期をずらすと臨場感が伝わってこない妙な側面もあるが、それを無視してでもかなり楽しめる逸品である。普通とは違ったレースゲームを遊んでみたいという方、それからレースゲームが好きな方共に是非、体験してみて欲しい、マリンスポーツレースゲームの決定版だ。
他では味わえない、リアルな海と滑らかな波がここにはある。
≫トップに戻る≪