Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo64>
  4. スターソルジャー バニシングアース
≫スターソルジャー バニシングアース
■発売元 ハドソン
■ジャンル シューティング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫ハドソン:商品ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 振動パック対応
■総説明書ページ数 16ページ
■推定クリア時間 1〜2時間(エンディング目的)、10〜11時間(完全攻略目的)
AD2092年、人類は『ゼオグラード』名乗る存在によって壊滅的な被害を受けていた。
その状況下、SIA(Special Interception Airfoce)チームは最新鋭のF92ソルジャーブレイドを最前線に投入。強行突破の末、ゼオグラード軍を撃破した。F92ソルジャーブレイドはその戦闘によって致命的なダメージを受け、再起不能となったものの、SIAが戦闘記録を得る為に回収。地球に持ち帰る事に成功した。

そして人類に平和が訪れたかに見えたが、後にゼオグラード軍が独自の社会を構成するミクロの機械だった事が発覚。再びゼオグラード軍が地球に襲来する可能性が浮上する。これに対しSIAは次のゼオグラード軍襲来に備え、F92ソルジャーブレイドの戦闘記録を元に最新鋭戦闘機3機を開発する。
そしてAD2098年、ゼオグラード軍二度目の襲来の時が来た。
人類の存亡をかけ、SIAは新たに開発した3機を用い、これを迎え撃つ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆見た目は現代風だが、基本は昔ながらのシューティングというクラシカルな作風全開のゲームデザイン
◆手に違和感なくフィットする、秀逸な操作性(スティック、十字キーに両対応)
◆限られた時間で高得点を目指す、熱くてやり込み甲斐のある『キャラバンモード』
◆「攻撃が最大の防御」というこだわりの哲学が反映されたゲームバランス
◆「撃つ事に没頭できるシューティング」というテーマが見事に反映されたコンボシステム
◆ローリングバリア、噴射による攻撃など、地味ながらも個性的な動きを見せる自機
◆恐ろしく両極端な違いが表された全3種類の難易度(ビギナーはビックリするほど温く、マスターは激辛と違いが露骨)
◆測定機能としての一面と極める楽しさが織り交ぜられた、ラピッドファイアゲージ
◆暇潰しならサクッと、極めると深く遊べる適切な総計ボリューム
◆爽やかな曲調ながら、本編を大いに盛り上げてくれる良質な音楽
◆3Dポリゴンの売りを最大限に活かしきった、凝った演出(主にスクロール周り)

--- Bad Point ---
◆3Dポリゴンで構築されたグラフィック特有の視認性の悪さ(敵弾が見え難い場面が…)
◆インフレし過ぎで、上達を感じ難いスコア(余裕で1億を超えてしまったり…)
◆先制攻撃の重要性を推した故に弾幕が薄く、避ける楽しみの乏しさが露呈しているゲームバランス(ボス戦は例外)
◆ジョイカード64(連射パッド)が無いと出現しない隠し要素の存在(一応、救済処置はある)
◆やや軽い感じが否めない爆発音
▼Review ≪Last Update : 4/3/2011≫
攻撃こそ最大の防御なり。

西部劇の如く、撃つ前に仕留め続けろ!


1986年にファミコンで発売。ハドソンの全国キャラバン(スコアアタックイベント)で取り上げられ、当時の子供達を熱狂の渦に巻き込んだ傑作縦スクロールシューティング『スターソルジャー』の系譜に連なる新作。当時のキャラバンにてヒーローとして崇められたハドソン伝説の男、高橋名人こと高橋利幸氏がプロデューサーとして関わった作品でもある。

シューティングゲームの原点、撃墜する爽快感にこだわり尽くした秀作だ。

ゲーム内容は縦スクロールで展開する、ステージクリア型のシューティングゲーム。自機を操縦して敵の群れを撃破し、7つ以上のミッション(ステージ)攻略に挑むというものだ。
NINTENDO64向けのゲームという事で、背景やキャラクターは全て3Dポリゴンで描かれているが、基本的なゲーム性は2D。3Dポリゴンは演出強化の目的で使われている程度で、全体的にはクラシカルなシューティングゲームの文法に乗っ取ったゲームデザインを軸としている。なので見た目こそ現代風ではあるものの、中身は昔の『スターソルジャー』。単純明快で、取っ付き易い作りとなっている。
ただ、正確に言うと今作は『スターソルジャー』ではなく、PCエンジンで発売された『ソルジャーブレイド』に連なる作品であったりする。しかし、連なってるのはストーリー設定と世界観だけ。システムは今作独自のものとなっている。また、そんなストーリーもほとんどおまけ。なので、別に前提知識、経験が無くとも問題なく遊べる内容だ。あくまでも、それを知っていると少し楽しめる程度。未経験の人お断りな作りにはなってないので、ご安心を。
そんな今作には全部で二種類のゲームモードを収録。7つ以上のミッションを攻略していく『ノーマルモード』、2分間、或いは5分間の限られた時間内で如何にハイスコアを叩き出すかを競い合う『キャラバンモード』が用意されている。各モード内にて選べる機体は全部で三機。前後に拡散する弾を発射する、スタンダードな『VENDIUM』(赤)、強力なレーザーショットと優れた機動性を誇る『LATHYRUS』(青)、そして機動性は悪いが強力な広範囲ショットを得意とする『WISTHERIA』(緑)が用意されている。本編ではこれらの内、一機を任意で選択してミッション(ステージ)を攻略していく事となる。
各機体にはショットや機動力の違いのほか、特徴的なアクションも盛り込まれている。特にその中で際立つのが『ローリング』、『バックファイア』の二つだ。
前者『ローリング』はRボタン、或いは移動キーを押す事で発動。一瞬だけ、あらゆる敵弾を弾き返すバリアを張る事ができる。任天堂の『スターフォックス』シリーズのアクションというと、シューティングに詳しい方ならばピンと来るかもしれない。ただ、今作の場合はミサイルなどの物理的な敵弾まで跳ね返せるのが大きな違いだ(さすがに極太レーザーは無理)。しかし、高性能であるが故に発動後、0.6秒間は使用できない制約が設けられている。その為、使用時はよく考えなければならない。このアクションを活用しなければ、上手に突破できない局面もあるので尚更だ。敵の弾を跳ね返せる性能からして、救済処置として見られかねないが、実は結構、戦略的な使いこなしが求められる作り。なかなかユニークで新鮮な手応えが堪能できる。
後者『バックファイア』も少しユニーク。今作ではCボタンの下を押す事で機体の移動速度を三段階まで上げる事ができるのだが、その速度変更を行った際、機体後部にジェット噴射が起こり、僅かに当たり判定が発生。それで、後方から来る敵を倒す…なんて事ができてしまうのだ。ただ、これはローリングほど使用頻度に恵まれたアクションで無いので、実質的にはおまけに等しい。しかし、時と場合によっては手助けになる事もあったりする。活躍に恵まれない為に存在感は薄いが、それでもアイディア自体は個性的。少しでも味わってみる価値のあるアクションであると言っても良いだろう。
この他、機体以外にもゲーム全体のシステムとして『ラピッドファイアバー』、『ヒットコンボ』なるものが設けられている。『ラピッドファイアバー』は1秒間にプレイヤーが何連射しているかをゲージで表示したもの。このゲージが多いほど、高連射をしている事を意味する。ゲージの最大値は30連射。いわゆる連射測定機能であるが、自分がどれだけ連射できているかを目視で確かめられるというのは地味に面白い。自らの限界を極めたプレイを目指したい方にとっては、この上ないものと言える。なお、ショット連射はマニュアル以外にオート連射(最大18連射)も実装。オプションであえて切る事もできるので、自らの指の限界を極めたい人なら外してみるのも一興だろう。
もう一つの『ヒットコンボ』は、どれだけ敵に弾を連続して命中させたかを現すもの。最大で2万ヒットまで繋げられるが、0.8秒間、ヒットが途絶えるとリセットされる仕組みになっている。稼げば稼ぐほど、高いボーナススコアを得られるので、『キャラバンモード』においては重要な存在となる。また、残機稼ぎにも役立つなど、救済処置として機能しているのも見逃せないところ。限界を極める意味でも、ゲームを安心してクリアしたいのにも役立つという便利さ。アイディアとしては平凡だが、その不変的な面白さと秀逸な対策は侮れない。今作が誇る魅力的なシステムと言っても良いだろう。
そんな具合に今作には個性的なアクション、システムも詰まれている。だが、それらのシステムを詰みながら、本編は単純に目前の敵を撃ち落しまくるだけで普通に遊べてしまう手軽さを重視している。あくまでも昔ながらのシューティングゲームとしての姿に今作はこだわっているのだ。特徴的なシステム、現代風な見栄えを備えながら、シューティングゲームとしては非常にクラシカルで手軽。まさに一世を風靡したシューティングゲームを輩出したハドソンの意地と言ったところか。今風だけど原点追及という、漢気溢れる内容なのだ。

そして今作最大の魅力は、そんなシューティングゲーム本来の面白さと原点に徹底してこだわった姿勢の数々である。厳密には、ゲームバランスとステージの構成(レベルデザイン)の二つ。いずれも、シューティングゲーム本来の魅力である「撃って壊す爽快感」を重視した調整と設計が成されている。多数の敵が襲い掛かって来たり、一瞬の間を作らず、直に別の敵を出現させたりと、シューティングとは何も考えず、次々と敵を撃ち落していくから面白いんだと、そんな原点を突き詰めたこだわりの数々が、至る所に注ぎ込まれている。回避ではなく、攻撃こそシューティングの全てなんだ、と。そのこだわりの作り込みは、さすが爽快感重視のシューティングゲームにして今作の原点、『スターソルジャー』を作ったハドソンだけにあると言ったところだ。
特に意図的に先制攻撃を行っていく事で、安全なゲームプレイが確立する巧みなバランス調整には、そんな「攻撃こそシューティングの全て」という哲学が込められている。
実は今作、そのような事を心掛けながらプレイすると、敵の弾がほとんど飛んでこない。というのも、敵がこちらに対して攻撃を行うまでに一瞬の隙が生じるよう、意図的な設定が成されているのだ。なので、その隙に倒してしまえば、もう弾がこちらに飛んで来る事はない。安心してステージを進めていけるようになるのだ。まさに「攻撃こそ最大の防御」とはこの事。『撃って壊す』に強い意味を持たせた調整が図られているのである。回避に神経を尖らせるより、撃つ方が気持ち良いし、楽しいものだろう!?…とまるで問いかけるかのように。それには、仰る通りですと返す以外に言葉が無い。確かに回避よりも、弾を撃って雑魚敵を蹴散らす方が何倍も楽しい。自分の力を誇示するかのような制圧感が味わえるし、好き勝手に撃ちまくるのは単純に楽しく、気持ち良い。そう言った本質的な面白さと気持ちよさに焦点を合わせ、「安全な進行」という対価が生まれるようにしたのは、シューティングゲームの原点からして、この上ないほど真っ当な調整方針だと言えるだろう。加減を誤るとトラウマになりかねないスリルより、何度も味わいたくなる爽快感の方が気持ち良い。その説得力に富んだ考え方には納得せざるを得ない。
それでいて、何も先制攻撃を意識してプレイすれば、誰でも簡単にエンディングを迎えられるほど甘くないのも絶妙。時々、一気に対処できない量の敵が襲い掛かってきたりする事もあるし、ボスに至っては耐久力が高いから、弾を撃つ前に仕留めるなんてのはまず無理。なので、回避する事が非常に大切となる。しかし、そこも今作はローリングのアクションによって、回避自体の敷居を下げている。行動が間に合わなくとも、他に対策はあるから回避するのに恐怖を覚えないで、という配慮なのだろう。無論、そのローリングにしても連続して発動できないという制約があるので、使い所をよく考える必要があるが。しかし、極力大らかにしながらも、確かな手応えが堪能できるように仕立て上げている辺りは本当に見事だ。シューティングを知り尽くしてるが故の結果か。そのこだわり尽くした仕上がりには、改めてシューティングブームの立役者としての力を痛感する次第だ。
撃つ楽しさへのこだわりばかりでなく、シューティングが初めて、苦手な人に向けた配慮の数々も素晴らしい。残機アップの機会が豊富、敷居の高いクレジット制は無く、諦めない精神さえあれば必ずクリアできる緩さ、そして初心者向けに用意された難易度『ビギナー』の過剰なサポートっぷりなど、誰もが撃つ楽しさを堪能して欲しいという配慮がそこかしこに盛り込まれている。特に『ビギナー』は本当に優しく、シューティング入門編としてもこの上ない良調整だ。その上の通常難易度『レギュラー』も、極めて適切な調整。対照的に最高難易度のマスターでは敵を倒す度に『打ち返し弾』が発生するので、全然違うゲームになっている。そんな露骨なまでの個性分けもユニークだ。
今作のプロデューサーである高橋名人こと高橋利幸氏は、今作の説明書で「撃つ事に没頭できるシューティングを作りたかった」と述べている。同時に「左手よりも右手の感性」、「敵の攻撃より早くこっちの弾を撃ち込むのがシューティングの本質ではないのか」とも。それを考えると、今作のバランスからシステムの立ち位置、ゲームコンセプトは見事に氏の思いを体現していると言っても良いだろう。それにこだわったあまり、ステージの構成が単調気味、敵の動きにこちらを倒そうとする殺気が無いと言った欠点もあるが、撃つ楽しさに没頭するゲームなのだから、その調整と設計も当然なのである。まさに「撃ちまくるからシューティングって気持ち良いんでしょ?」という事を教えられるゲーム。それが今作なのだ。

また、操作性も良好且つ取っ付き易い。特に移動周りだが、基本は3Dスティックとしていながら、十字キーにも対応させているなど、クラシカルなスタイルならではの魅力を残そうとする配慮が成されているのはお見事の一言に尽きる。何気に3Dスティックでプレイするのも悪くなく、ローリングの存在もあって遊び易いのも好感触だ。
ボリュームも一周単位は控え目。しかし、サックリ遊べて止められるお手軽さは濃密さが売りのロクヨンソフトでは極めて希少で価値のある物だ。無論、単にクリアしたら終わりという訳でなく、隠しミッション探しなどの特典も用意されているので、ワリと深みはある。やり込み甲斐も相当なもので、キャラバンモードのスコアアタックの熱さは格別だ。
グラフィック、音楽の完成度も総じて高い。しかし、グラフィックに関してはこの手の3Dポリゴンで構築されたシューティングゲームの宿命か、弾が見え難かったりする視認性が悪さが目立つのが残念。ある意味、今作最大の敵はゼオグラード軍でなく、グラフィック群だと言っても不思議でないほどだ。弾を見易くする為にも、背景を少し暗めの色彩にするなど工夫して欲しかったのだが、一切成されてないのが惜しまれるばかりだ。対照的に音楽は文句の付け所無し。非常に良質でゲーム本編を盛り上げる曲が揃っている。中でもミッション2やミッション4の二曲は要チェックだ。

演出全般も、その部分で高い評価を得た『ソルジャーブレイド』の世界観を継承しているのもあってか、結構凝った作り。英語音声のナレーションが挿入されたり、3Dポリゴンである事を活かし、画面奥の方にスクロールする場面があったりなど、なかなか魅せてくれる。何処と無くタイトーの『レイストーム』を豊富とさせる感じなのはご愛嬌。
細かい部分でオートセーブ機能、デモカットなどの親切な機能も揃っており、プレイ中にストレスを感じさせない作りも見事。撃つ事にこだわり過ぎた故の粗(ステージ構成など)、インフレし過ぎなスコア、やや軽めの爆発音などは賛否が分かれるが、シューティングの原点「撃って壊す爽快感」にこだわったゲームバランスとクラシカルで取っ付き易いゲームデザインと操作性など、完成度の高さはかなりのもの。高橋名人のシューティング観、そして多くのシューティングゲームを世に送り出したハドソンの哲学が豊富に注ぎ込まれた今作。
シューティング初心者から上級者まで、幅広くお薦めできる傑作だ。万人向けシューティングゲームの決定版と言っても良い内容なので、機会があったら是非、お試しあれ。
≫トップに戻る≪