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≫パイロットウィングス64
■発売元 任天堂
■開発元 Paradigm Simulation Inc
■ジャンル スカイスポーツシミュレーション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
大空を自由に飛びまわるパイロット達。彼らの夢は、『パイロット・ライセンス』を獲得し、大空のプロフェッショナルである『ライセンスバッジ』を手に入れる事だ。その為には、ハンググライダー・ロケットベルト・ジャイロコプターの3機種を操り、各機種ごとに設けられた認定試験をこなさねばならない。

個性派揃いの6人のパイロット達と共に、全ての認定試験とクラスを制覇し、大空のプロフェッショナルを目指そう!

……パイロットウィングスの世界へようこそ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆如何にもその場所にいると錯覚させられるほど強烈な空気感と臨場感
◆操作解説、ヒントメッセージにデモなど、充実したチュートリアル
◆パッと見では単調だが、飽きさせない工夫がしっかりと凝らされているゲーム展開
◆大空を舞う気持ちよさを追求した、全6+1種類のメインゲーム&エクストラゲーム
◆一粒で二度美味しいゲーム展開を演出する、パイロット選択システム
◆目的位置の到達からターゲットの破壊、更には写真撮影にロボットの撃破など、バリエーションに富んだ『タスク』
◆建築物から自然物まで、丁寧に作り込まれた4つのフライトエリア(思わず寄り道してしまうほどの完成度)
◆ゲーマーも思わず納得のやり込み要素の数々(特にメダル集めは熱い)
◆ストイックだが、頑張ればなんとかなるレベルを維持している、優れたゲームバランス
◆空気感と臨場感を助長する、緻密に描き込まれたグラフィック
◆同じく、その空気感と臨場感を盛り立てる心地よい音楽(特にバードマンの曲が見事)
◆スーファミ版経験者にとっては嬉しいセーブシステム
◆とんでもない64デビューを飾ったワリオ様(笑)

--- Bad Point ---
◆工夫が凝らされているとは言え、やはり単調さもあるゲーム展開
◆やや癖のある操作性(特に、ハンググライダーは相当な慣れが必要とされる)
◆いま一つ、重さのあるメニュー周りのインタフェース
◆教官がいなくなった影響か、やや素っ気無くなったテキスト
◆セーブファイルが2つしかない(せめて、3つを維持して欲しかった…)
◆存在意義不明のアルバム(しかも、写真を読み出す際に無駄なロードがある…)
◆ロボットの撃破時の演出が地味過ぎる(もっと爽快感を…)
▼Review ≪Last Update : 5/12/2007≫
スコットさんと、黒田教官もいないのか?

いません。(……って、田中さんは?)


スーパーファミコンの機能をフルに活かした演出、突っ込みどころ満載のゲーム展開(?)で多くのユーザーを魅了した『パイロットウィングス』の続編的作品。『スーパーマリオ64』と同じ、NINTENDO64の同時発売ソフトの一つとしてリリースされた。開発はシミュレーターソフトウェアの製作実績を多く持つ、アメリカのParadigm Simulationが担当。

NINTENDO64ならではの圧倒的な空気感と臨場感。
加えてより遊び易く、奥深さも大幅に増した、スカイスポーツシミュレーションの傑作だ。

ゲーム内容は、ハンググライダー・ロケットベルト・ジャイロコプターの3つのメインゲーム(機種)にそれぞれ与えられた、『タスク』と呼ばれる課題を次々と攻略し、P(パイロット)証クラスを獲得するのが目的のスカイスポーツシミュレーションゲーム。スーパーファミコン版では、それぞれのレベルを担当する教官から与えられる機種で合格点を目指し、最後のレベルまで進んでいく一本道構成だったが、今作ではクラスごとに用意された機種を自由に選択してタスクを攻略していく、任意方式の構成に変更(但し、最初のビギナークラスのみ強制)。自由度の高い内容に様変わりしている。
また、メインゲーム…機種のクラスごとの扱いも、全てのクラスが3つの機種…ハンググライダー・ロケットベルト・ジャイロコプターで完全に固定されるようになったのも大きな変更点。スーパーファミコン版では一本道という構成を活かし、レベルごとに遊べる機種が違うという起伏のあるゲーム展開が楽しめる枠組みが取られていたが、今作では全てのクラスが3機種だけという固い制約が設けられてしまっており、随分と無個性で起伏の無い、簡素な枠組みになってしまっている。それ故に、あるクラスではロケットベルトだけはやらなくて良し…と言ったような展開とかも無し。基本的に自由とは言え、全クラスで3つの機種をこなさなければならないのである。これには正直、「窮屈」という印象を抱くかもしれない。
しかし、それ以外に機種(ゲーム)がないという訳ではなく、一定の条件を達成すると、エクストラゲームなる別の機種が遊べるようになったり、本作の根幹でもある、機種ごとに用意された『タスク』に関しても、目的位置への着陸や到達と言った地味なものばかりでなく、マップ上に仕掛けられたターゲット(的)の破壊や物運び、更には写真撮影にロボット撃破ミッションなど、如何にもゲームらしさ満点のユニークなものが満載で、決して単調な展開にさせない…プレイヤーを飽きさせない為の工夫はしっかりと盛り込まれている。
また、本作ではパイロットキャラクターを選ぶシステムが新たに加えられている。パイロットは全部で6人で、それぞれ機種ごとに風の影響を受け易い・受け難い、移動速度が速い・遅いなどの特徴があり、選んだパイロットによっては全く遊び応えの異なるプレイを楽しむ事もという、何ともチャレンジ精神をそそられる要素まである。まさに、本作の構成を入念に考慮したからこそできた試みと言うべきか。
このように、全体的には大分、前作に当たるスーパーファミコン版とは違う構成だが、根っこの部分ではかつての「らしさ」がちゃんと活きている、続編ゲームの理想的とも言える作りになっている。窮屈そうに見えて実は全然窮屈じゃない…。紛らわしい上に無個性な所は揺るぎの無い事実だが、この工夫を凝らした作りはお見事の一言だ。

そして本作最大の売りでもあるメインゲームこと機種は、もう紹介済みだがハンググライダー、ロケットベルト、ジャイロコプターの3つを用意。この3つのゲームにプレイヤーはタスクを通じて挑戦していく事になる。
この内、ハンググライダーとロケットベルトはスーファミ版から引き続いて登場の機種で、ジャイロコプターのみが本作初登場。簡単に言うと一人乗りの小型ヘリコプターで、飛行機を操縦するのと似た操作感覚、副装備としてミサイルが備えられているのが大きな特徴だ。特に後者のミサイルは、ターゲット撃破のタスクやロボット撃破のタスクで大活躍する。その手応えはまさにシューティングゲームそのもので、人によってはスーパーファミコン版の忌まわしき対空火器の記憶を呼び起こさせる程のインパクトがある。まさに、新しくて「密かに怖い」機種とでも言うべきだろうか。
他にもエクストラゲームとして人間大砲『キャノンボール』やスーファミ版にもあった『スカイダイビング』、ジャンピングアクションが楽しめる『ジャンブルホッパー』が用意されている。「おいおい、空と関係ないだろ」と一つを除き、突っ込みを入れかねないものばかりだが、いずれも独特の面白さを出している。特に『キャノンボール』の爽快感は格別だ。また、これとは別に『バードマン』なる鳥人間になって、空を自由に飛びまわれるゲームまで用意されており、とことん空中散歩のテーマを追求する熱過ぎる熱意を嫌でも感じさせられる。
4つのフライトエリアの作り込みもかなりのものだ。スーパーファミコン版では、擬似3Dのフライトエリアという事もありあまり空気感が感じられなかったが、本作では全フライトエリアがフルポリゴンで構築されている事もあり、強烈なまでの空気感、そして臨場感がかもし出されている。その空気感を引き立てる、フライトエリア毎の個性付けも素晴らしく、隠し通路があったり、意外な建造物があったりなどと、如何にもそれらが「実在する」と思ってしまうほどの細部に至るまでの作り込みがなされている。その為に、タスクを忘れて他の場所へと脱線したくなる気持ちが爆発する事もしばしば…。(ちなみに、タスク中に他の場所へ移動するのは禁じられていると言った制限は無い)それ位、本作の「自由への誘惑」は強烈、…スルメ並なのである。本編よりも寄り道が面白いと言うのは、かなり稀なゲームではないだろうか。
とにかく、各ゲーム(機種)の面白さもさる事ながら、それらを自由に動かして世界を満喫する欲を爆発させる誘惑が凄いのである。まさに、「ここまでやるか…。」。存在感のある箱庭空間を徹底的に作り出そうとする熱意が伺えてくる。

これらの雰囲気を更に助長する、グラフィックの美しさもかなりのものだ。少しテクスチャの荒い部分もあるとは言え、各フライトエリア内にある建物や自然物などはかなり丁寧に描かれており、雰囲気がよく出ている。特に、デコボコとした山岳地帯の美しさはかなりのものだ。また、タスクによっては天気が変わると言う演出が盛り込まれているのもニクイ。
また、音楽も大変素晴らしく、これも雰囲気を助長している。とにかく、聞いていて心地の良い曲が多く、その中でもバードマンの機種で流れる曲は絶品で、風と同化してしまったかのような錯覚を嫌と言うほど味わえる。この曲を聴く為だけでも、本作をプレイする価値は十分にある。バードマン以外では変な緊張感と楽しさを演出している、ロケットベルトとキャノンボールの曲もなかなかの名曲なので必聴の価値ありだ。
ただ、…ゲーム的な話に逆戻りするが、その一方でゲームバランスは結構ストイック。序盤はビックリするほど簡単なのだが、B証クラス辺りから急に跳ね上がるのが何とも形容し難い。クラスの少なさを考えれば、この上げ方は妥当と言えば妥当だったのかもしれないが、もう少し緩やかに上げていくのもアリだったのではないだろうか。しかしながら、それでも全体的なバランスは概ね安定しており、プレイヤーのやる気を助長させる、説得力のある難しさを表現しているのが救いだ。流石にスーパーファミコン版ほどの厳しさはない。そういう意味では、かなり遊び易くなった…と言える。

また、スーパーファミコン版とは違い、淡々とゲームを進めていく構成故に、ビックリするようなストーリー風のイベントが無くなってしまったのも寂しい。まぁ、こればかりは路線変更故にしょうがない所もあるが、できればあの無茶苦茶感のある展開を最後辺りにやってくれたらな…と思った。かと言ってそれで、ギトギトに難しい隠し難易度とかまで再現でもされたらたまったもんじゃないが。他にもメニュー周りのもたつき等の地味な欠点もあるが、全体的にはNINTENDO64の門出を飾るソフトとしては文句無しに及第点の域。
随分と堅実的な内容となってしまっている感こそあるが、圧倒的な空気感と臨場感、細部まで作り込まれたフライトエリア、そして自由度の高いゲーム内容とシステム、美しい音楽とサウンド、メダル集めなどのゲーマーも納得のやり込み要素などには、本作でしか体験する事ができない強烈なオリジナリティと面白さが満ちている。
難易度がやや高めである故に、ゲーム初心者にはあまりお薦めできないが(ちゃんとチュートリアルも用意されてはいるのだが)、手応えのあるゲームを求めている方やゲームで空中散歩を楽しんでみたいという方には文句無しにお薦めの作品だ。ロクヨンだからこそできた、壮大な箱庭世界がここにある。
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