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≫F-ZEROX(エフゼロ エックス)
■発売元 任天堂
■ジャンル レース
■CERO A(全年齢対象)
■定価 NINTENDO64版:6090円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii):1000Wiiポイント
■公式サイト ≫NINTENDO64版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 振動パック対応
■総説明書ページ数 32ページ
■推定クリア時間 15〜20時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
そのレースは、3年前に禁じられたはずだった。
だが、熱狂的ファンの熱い支持を受け、レギュレーションの大幅な改訂、公式ルールの見直しを行い、再びそのレースは大会名を改めて開催される事となった。

禁じられしレース。
その名は『F-ZERO X グランプリ』…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆秒間60フレームが実現した、前代未聞・時速1000キロ以上もの圧倒的なスピード感
◆従来のレースゲームとは違う、ダメージとクラッシュの概念がユニークなF-ZEROマシン
◆周回数が3周に減り、よりテンポの良いレース展開が楽しめるようになった『グランプリ』
◆テンポの良さを反映させ、より激情的な仕掛けを多数凝らした、全24ものレースコース
◆各レースごとの戦略の深さを助長させる新要素『カスタマイズ(速度調整)』機能
◆1台1台の特徴とパイロットごとの背景描写が光る、総計30台ものF-ZEROマシン
◆自機のエネルギーゲージを消費する、リスク&リターンの概念を取り入れた新生ブーストシステム
◆レースゲームとしては異質の『破壊の面白さ』を抽出した新アクション『サイドアタック』
◆かつて無い充実感と破壊への欲求を助長させる、素晴らしいマシン撃破演出と効果音
◆その破壊への欲求に答える、グランプリにおけるマシン撃破数のカウントシステム
◆破壊の面白さを限りなく追及した新ゲームモード『デスレース』(構成はあっさりだが、中毒性満点)
◆遊ぶ度に毎回、コースが自動生成されるシステムが斬新な『Xカップ』(1000回遊べる)
◆仮想の相手との一騎打ちの面白さを秘めた、『タイムアタック』の『スタッフゴースト』
◆全体的に軽くなり、より大胆にマシンを動かせるようになった、抜群の操作性
◆ミスへの恐怖感と勝利への希望を巧妙に織り交ぜた、絶妙極まりないゲームバランス
◆ゲーム展開を大いに盛り上げる、メタル全開の音楽(名曲も満載)
◆心臓に悪くなくなった、ミス時のマシン爆発の演出(笑)

--- Bad Point ---
◆スーパーファミコン版独特の「届かなそうに見えて、実は届いてしまう」というギリギリなバランスが薄れ、魅力も奥深さも半減してしまった『タイムアタック』
◆無意味に強過ぎる『スタッフゴースト』(どれも容易に勝てない…)
◆使用するだけでも気分が悪くなる、スライドターン(効果音の悪さが影響してる)
◆ほとんど存在意義の無い、『プラクティス』(これは要らなかった…)
◆数が多過ぎる為、全特徴を掴むのにひと苦労な、全30台のF-ZEROマシン(覚え易くする為の配慮は万全だが…)
◆地味過ぎる対戦モード『バーサス』(デスレースのような遊びがあったら面白かったかも)
▼Review ≪Last Update : 11/24/2007≫
未知の領域…1000Km/h。

世界最速にして1000回楽しめるレースゲーム、ここに降臨。


スーパーファミコンの拡大・縮小・回転機能を効果的に取り入れた演出と圧倒的なスピード感、熱過ぎるタイムアタックで、数多くの熱狂的ファンを確立した、任天堂の伝説的レースゲーム『F-ZERO』の待望の続編。

スーパーファミコン版とはまるで別物ながらも、秒間60フレームによる圧倒的なスピード感と斬新なゲームシステムが異彩を放つ、完成度の高いレースゲームだ。

ゲーム内容、…基本となる部分はスーパーファミコン版と同じ。時速1000キロ以上もの現実離れした最高速度を誇る『F-ZEROマシン』を操縦し、個性豊かなライバル達と総合順位を競い合っていくハイスピードレースゲームである。
ゲームシステム面でも、操縦するマシンには『ダメージ』の概念があり、エネルギーゲージがゼロになるとマシンが大破しリタイア扱いとなる、またコースアウトをした場合も救済策が無く、そのままマシンが大破してリタイア扱いになるなど、ゲーム内容の方と同じく、スーパーファミコン版でもお馴染みだったのものを継承している。
だが、スーパーファミコン版と同じと言えるのはそれ位。他のゲームとしての手応え、並びにレースゲームとしての印象は、最初にも話した通り、全くの別物になってしまっている。
それらの中でも、特に象徴的なのが基本ルールとも言えるレースの周回数。スーパーファミコン版では、1レースごとに5周するのが基本ルールとなっていたのだが、今作では何と3周ルールに変更。1つのレースが比較的早めに終了するようになり、結果として、各レースごとの”密度”が大幅に薄くなってしまった。これにより、『F-ZEROの代名詞』とまで称され、今作でも当たり前のように収録されている『タイムアタック』は劣化。『「MUTE CITY」、58秒の壁』を髣髴とさせる、「届かなそうに見えて、実は届いてしまう」というあまりに絶妙なバランスとギリギリ感もどのコースでも味わえなくなり、他のレースゲームにあるような、如何にも”普通”なタイムアタックに成り果ててしまっているのである。あのあまりに秀逸で奥深さに満ちたバランスに酔いしれた、前作の熱狂的ファンにとってこのルール変更は、あまりに腹立たしい改悪と言える。
早めに終わる利点を考慮してか、『スタッフゴースト』なる仮想のライバルと1対1で争う、『ディディーコングレーシング』のタイムトライアルを髣髴とさせられる遊びも盛り込まれており、一応の中毒性を引き出してはいるのだが、それでも前作のインパクトの強さには遠く及んでおらず、残念ながら取って付けた感が否めないのが苦しい。
このルール変更だけでも本作が、F-ZEROという名のレースゲームとは明らかにかけ離れたゲームとなってしまってる事は、想像に難くないだろう。
だが、このルール変更が及ぼしたのは劣化ばかりではない。当然ながら進化も及ぼしており、特にメインモードでもある『グランプリモード』のテンポが向上し、1プレイが比較的、短過ぎず長過ぎずのバランスに落ち着き、繰り返しプレイに耐え得るようになったのは特筆すべき所だ。更に、過激なギミックが取り入れられたコースに長く縛られ、無意味に神経をすり減らされる事も無くなったのも特筆すべき改善点。プレイ中に無意味に疲れる事もほとんど無くなり、適度な爽快感と満足感を味わえるようになったのはかなり大きい。
それでも、前作の魅力が削ぎ落とされてしまった感じは否めないが、グランプリのリプレイ性の向上、並びに適度なスリルが味わえるジェットコースター風のノリを実現させた、その功績自体は文句無しに評価に値する。
このように、ルールが違う為、別ゲームとしての印象は極めて強い。しかし、ルールを変えたならではの進化もあって、よりレースゲームとしての遊び易さ、魅力も備わった、改悪のようで実は改善してるという、実にアンバランス極まりない作りを、本作では全編において魅せているのである。何とも珍妙且つ、衝撃的な光景だ。

また、ルールのみならず、プレイヤーが使用する事になるF-ZEROマシン周辺のシステム・要素も、レース開始前に常にマシンの速度調整(カスタマイズ)が行えるようになった事、選択できるマシンの総数が30台になったなど、これまたがらりと変わってしまっている。中でも選択できるマシンの総数が30台になったのは、圧巻の一言。マシンそれぞれの個性も1つ1つが引き立っており、またパイロットキャラクターのバックグラウンドも一つ一つ、細やかに描かれているなど、尋常でないこだわりと職人的な作り込みが光る。
その分、選択時にどれを選んで良いのかが分かり難くなった他、各マシンの能力把握が非常にし難くなってしまった感は否めないが、いきなりゲーム序盤から30台全てを選べるようにはせず、最初に選べるのは6台だけで、各難易度のグランプリで優勝して『☆』を3つ集めるにつれ、6台ずつ、選べるキャラが増えていくようにしてるのは上手い。それでも若干、迷い難さがありはするが、この仕組みもあって意外とすんなりと各マシンの特徴を覚えていける。またそれらのマシンを順に覚えていく過程で、お好みのマシンが必ず1〜2台は見つかるように仕組まれてるのも、なかなかニクい所だ。
続編モノと言うと、いたずら新要素を複雑化させ、そして返ってゲームとしての分かり難さを生み出してしまうものが意外と多かったりするが、そんな沢山の新要素を導入しながらも、自然な分かり易さを徹底した本作は、まさに希少種と言うに相応しいだろう。改めて、制作スタッフのプレイヤーを想う気持ちの深さを実感させられる。
他にも、これは全てのマシンに共通するものだが、新しい要素として、R、或いはZトリガーを二度押す事で、左右に強力な体当たりをする『サイドアタック』が追加。レースゲームとしてはビックリ仰天、これでライバルのマシンを破壊する事ができるようになったのである。このサイドアタックでマシンを破壊する快感がまた、効果音の素晴らしさもあってか凄く気持ち良い!まるで、アクションゲームのような敵をまとめて倒す爽快感があり、たった1台を破壊するだけでも、もの凄い充実感が得られてしまう。その充実感があまりに気持ち良過ぎて、まだまだマシンを壊したくなる、破壊欲が出てくるのも最高だ。しかも、それでいて意外とマシンを壊すのにはテクニックがいるなど、一筋縄では行かないバランス調整が施されてるのも流石。その影響もあってか、かつてない中毒性を醸し出す事に成功している。
また、敵を倒すと何台破壊したかがカウントされるようにもなっており、グランプリのラストではこのマシンを破壊した撃墜数の合計数値が発表されるなど、スコアアタックの側面を持っているのも、やり込みプレイヤーの闘志を燃えさせる。マシンを破壊する事で、自分に有利なレース展開を持ち運べる事、この破壊の快感を味わうのに徹したゲームモード『デスレース』なるものの存在もまた、レースゲームとしては斬新な所だ。
レースの意味から踏み外れてる印象もあるが、それでもこの要素は、あらゆるレースゲームにおいて、どんなにクラッシュしても壊れなかったマシンの現実味を出し、尚且つそれを上手く反映させた緊張感と異質な爽快感を生み出したという面では、実に意義深い。この、異様な爽快感を味わうだけでも、本作をプレイしてみる価値は文句無しにあると言える。
他にも、体力ゲージを消費して行うようになった、『ブースト』も要注目だ。
このように一連の違いを見るだけでも、スーパーファミコン版と本作が違うものだという事は明確だ。だが、違うものでありながらも、新しい魅力が詰まったゲームだという事のも、ここまでの時点で既に明確だろう。悪く言えば、F-ZEROの名を借りてるだけのゲーム…ではある。だけど、別物ならではの面白さ、レースゲームとしての異質な側面もあり、一概に名を借りただけのものとは称せない、あまりに特殊な内容になっているのだ。

この他、ゲームモードは『グランプリ』、『タイムアタック』、『バーサス(対戦)』、『デスレース』、『プラクティス』の5つを収録。注目は何と言っても、先ほどに紹介した『デスレース』だろう。あっさりとした作りながらも、何度も遊び込める奥の深さは秀逸の一言に尽きる。
『グランプリ』で登場する全24コースの個性豊かなマップデザイン、そして『Xカップ』なる、自動生成コースだけに限定した特殊カップも注目だ。特に後者は、まさに不思議のダンジョンの如く、「1000回遊べる」と言っても過言ではないほど、斬新な作りとなっており、レースゲームの世界に新しい息吹を吹き込んでいる。これだけでも本作のボリュームが半端じゃない事は…目に見えただろう。
操作性、ゲームバランスも快適且つ絶妙。シリーズの醍醐味、圧倒的なスピード感も秒間60フレームの恩恵もあり、尋常でない速さを全編において発揮している。更にメタル全開の音楽もそのスピード感溢れるレースを大いに盛り立ててくれる。名曲も満載で、サウンドテストが無いのが本当、勿体無いくらいだ。

他にもシリーズ初となる対戦モードの導入など、見所は多いが、『プラクティス』の存在意義の無さやスライドターン(ドリフト)の気持ち悪さなど、地味ながらも細かな不満点もチラホラとある。そして、やはりスーパーファミコン版とは別物だと言う点は、何よりも初代を愛した方にとっては憤慨モノに値する所だろう。
それでも繰り返すが、本作の出来はすこぶる良い。初代を愛した方でも、別のレースとしての認識を持ってでも、プレイしてみる価値はあると言える。
テンポの良いゲーム展開と圧倒的なスピード感、そして爽快なゲーム性とレースゲームの新しい魅力と面白さが詰まった本作。総評して、文句無しにお薦めの逸品だ。
レースゲームファンも、未経験者も含んだロクヨンユーザーも要プレイ。
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