≫糸井重里のバス釣り1 決定版!
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■発売元 |
任天堂 |
■開発元 |
HAL研究所、ダイス |
■ジャンル |
バスフィッシング |
■CERO(推定) |
A(全年齢対象) |
■定価 |
7140円(税込) |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式) |
■その他 |
振動パック対応、つりコン64対応 |
■総説明書ページ数 |
44ページ |
■推定クリア時間 |
25〜40時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的) |
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スーファミの末期に発売された糸井 重里氏監修のバスフィッシングゲーム、『糸井重里のバス釣り1』がグレードアップしてロクヨンに登場。3Dになり、文字通りに現実味を増したブラックバス達が、貴方を待ち構える!
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆プレイヤーの意のままの釣りが楽しめる、極端過ぎるほど自由度の高いゲーム内容
◆現実のバス釣りの厳しさをリアルに反映させた、珠玉のゲームバランス
◆同じく現実のブラックバスの性質に基づいた、あまりにリアルなバスの行動パターン
◆バスが溜まりそうな場所を推理し、ポイントを絞り込んでいく、実際のバス釣りさながらの高い戦略性とギャンブル性
◆バスがヒットした際の嬉しさとファイト時の臨場感をリアルに表現している演出
◆その臨場感溢れる演出とノリの良い音楽で展開される、熱過ぎるバスファイト
◆数は少なめだが時間と天候、季節によって様々な顔を見せる、個性的なマップ(湖)
◆フリーフィッシングにミッション、マップ探索など多彩に盛り込まれた遊びの要素
◆村の住民達との釣り比べにお宝集め、怪物バス探しなど、盛り沢山のやり込み要素
◆ヘルプ機能、難易度選択機能などそれなりに整っているサポートシステム
◆プレイヤーの好みに応じた幅広さと手触りの良さが秀逸な操作性
◆湖底の地形に自然物など、荒めながらも生々しい描写が見事なグラフィック
◆時に爽やかで時に激しくなる、二面性を持った珠玉の音楽(名曲満載)
◆ひこねのりお氏による可愛らしいデザインが秀逸な、動物キャラクター達
--- Bad Point ---
◆専門用語で埋め尽くされた台詞回し(この時点で既に初心者を拒否してる…)
◆専門用語で埋め尽くされている為、根気を持って望まないと理解する事すら難しい、敷居の高すぎるヘルプ機能
◆現実に基づいているのもあって、異様に釣れるまでの時間がかかるバス釣り
◆名前があまりに複雑で、個々の特徴がいま一つ分かり難い釣り道具
◆基本バランスの影響もあって、個々の特徴が出てない感のある各難易度
◆本来の移動方法を否定するかのような便利さが気になる、全体マップ使用による簡易移動システム
◆主観視点で展開する為、人によっては3D酔いし易いメインのマップ移動システム
◆専門用語を乱発する為、見た目の可愛さが伴ってない動物キャラクター達
◆もはや運頼みでしかない、『外道王』の称号&お宝獲得条件(地獄…)
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▼Review ≪Last Update : 5/3/2008≫
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おじさんを舐めちゃダメよ〜…。
あの人、只者じゃありませんから。
スーパーファミコン末期に発売された、バス釣り好きの糸井重里氏監修のバスフィッシングゲーム『糸井重里のバス釣り1』の続編にして、完全版。開発は前作同様にHAL研究所とダイスの二社が担当。
バス釣り好きのバス釣り好きによる、バス釣り好きの為の一本である。
ゲーム内容は、文字通りのバスフィッシングゲーム。『つりずき村』と呼ばれる架空の村を舞台に、プレイヤーは村の住民達とバス釣り勝負をしたり、ミッション(課題)に挑んだりしながら本編を進めていく。住民達との勝負をしたりせず、自由気ままに湖(マップ)を行き来しながら一人でバス釣りを楽しむ事も可能。極めて自由度の高い内容となっている。
だが、本作はバス釣り好きのバス釣り好きによる、バス釣り好きの為の一本。
正直言って、前作であるスーパーファミコン版の『バス釣り1』、或いは現実のバス釣りをそれなりに経験した事のある人でなければ、確実に挫折しかねないほど、実際の作りは恐ろしく硬派なものとなっている。あの任天堂のゲームにも関わらず、バス釣りをした事の無い初心者に優しくないどころか、全くそれを想定していない作りとなっているのである。
その「初心者お断り」な作りを体現するのが、ゲーム本編においてマシンガンの弾の如く次々と放たれる、専門用語の数々。キャスト、リトリーブ、ウィード等など、バス釣りを経験した事のない方には何の事やらサッパリ分からない言葉が、住民との会話等で続々と展開されていくのだ。一応、糸井重里氏本人(+タコさん)による、初心者の事を考慮した用語解説やテクニック解説などのヘルプ機能も設けられているのだが、これも例によって専門用語乱発なので、相当な集中力を持ってして臨まないと理解するのは困難。まさに、初心者完全無視!思いっきり、経験者しか想定していない、しんどい有様となっているのである。当然ながら、経験者しか想定していないという事もあって、序盤のゲーム展開も初心者の事はほとんど無視。ロッドやらルアー、そしてワーム等の使い方はほとんど教えてくれないし(ヘルプでカバーできるが)、釣りのコツも「詳しく知りたければ、実際に経験して掴め」と言わんばかりに、突き放したものとなってしまっている。だからそこで、「自分の力で理解してやるぜ!」と言った感じの熱い意気込みと諦めない気持ちが無ければ、その時点でアウトとなる。扱い方を間違えれば、その時点でゲームが終了。ひこねのりお氏デザインによる可愛らしいキャラが光るパッケージに反し、実際の中身はあまりにシビアなのである。だから、可愛いキャラだから誰にでも楽しめるゲームだと思って挑むと、確実に痛い目に遭うのは必至。それなりの覚悟を持って挑まなければ、本当には文字通り『散財』にも成りかねない恐ろしさを持ったゲームとなっている。クマさん、ネコさんとか見た目から可愛いのに…ゲームは可愛くない。それどころか、今作では村の住民達はそのクマさんやネコさんと言った、動物キャラが中心となっているのだが、彼らもまた専門用語を連発するので、可愛げなんて見た目でしかないのだ。
他にも、釣りの際に扱うロッドやルアーなどの名称も複雑なものとなっている為、一目で特徴を掴む事すらも難しい。
もうこれで、十分過ぎるほどに本作が、初心者に全く優しくない、むしろ玄人向けなゲームとなっている事はお分かりになっただろう。任天堂のゲームだからと思って、誰もが気軽に楽しめる作りになってると思ったら大間違い。少しでも気持ちが折れてしまえば、長続きしなくなる危険性をはらんだゲームとなっているのだ。冗談抜きに…しんどい。
だがしんどい反面、コツさえ掴んでしまえば、今作は途端に面白いゲームへと化けるのも事実。それを現すのが、本作の肝である奥深いバスフィッシングである。
実際にやってみると分かるが、今作は適当なポイントを見つけて、そこでキャスト(ロッドを振ってルアーを湖に投げ入れる事)すれば簡単にバスが釣れる…と言うような生易しいものにはなっていない。ちゃんとマップを見て、バスが集まりそうな場所を推理し、釣っていかなければならないという、現実のバスフィッシングに忠実なバランス調整が成されているのである。だから、いそうな場所と言っても、必ずそこにバスが絶対にいるとも限らず、何度キャストしてもヒットしない事もしばしば。じっくりと、且つ忍耐強く待つ必要が生じてくるのだ。現実のバスフィッシングに忠実なゲームバランスを取っているというだけに、とにかく釣れるまでにかかる時間は莫大だ。下手をすれば、1〜3時間はノーヒットなんて事すら余裕である。余程、忍耐の無い人でなければ、途中で投げてしまうのは避けられない。
しかし、本作が上手いのは経験を積むに応じて、ヒットするまでにかかる時間が短くなっていくよう、ちゃんと調整されている事。個人差によるが、ゲームを始めて2〜4時間ぐらいが経過すれば、もう大体、10分程度で簡単にバスが釣れるようになってくる。それと共に、先ほどの専門用語と言った事への理解や興味が深まって行き、ヘルプを常習的に読むようになるのみならず、バスが集まりそうな場所の法則性等も見えてくるので、途端にゲームそのものの面白味まで増してくる。時間は相当かかるものの、そこに耐え切ってコツさえ掴めば、後はトントン拍子で本作の真髄が見えてくるようになっているのである。基本が玄人向けながらも、遊び込んだ方なりに結果がしっかりと返ってくるこの辺の調整の上手さは、実に任天堂らしい。全体的に初心者お断りな作りでありながらも、こうした所は本作、とてもしっかりしているのである。
また、一回でもヒットした後に、再び「釣ろう!」というやる気が湧いてくる、バスファイト時の臨場感と絶妙な演出もそんな、調整の上手さを物語っている。実際にプレイしてみると分かるが、本作はバスがヒットした時の「嬉しさ」がもの凄い。基本的にバス釣りを始めると、周囲は自然の音…小鳥のさえずりや水の音しか鳴り響かなくなり、一気に静まり返るのであるが、バスがヒットでもすると一変。ノリの良い音楽と共に急に周囲が賑やかになり、RPGの戦闘が始まったかのような雰囲気に様変わりしてしまうのだ。この雰囲気の急激な切り替えがまた実に上手く、バスをヒットさせる事の嬉しさを限りなく表現している。しかも、あまりに雰囲気が一変するが故に麻薬的な性質も秘めており、「もう一回、あの興奮を味わいたい!」とプレイヤーのやる気を助長させるようになっているのも流石としか言い様が無い。それによって、次第に待つ事への苦痛までもが減っていくのだから凄過ぎる。
更に、同じく遊び込む度に見えてくる、リアルなバス達の行動パターンも秀逸。自分で指定した場所で一度でもバスがヒットしてしまうと、もうそこに他のバスが寄り付かなくなったり、時間に応じて別の場所へと移動するなど、如何にも現実らしい凝った動きを披露してくれる。そう言ったリアルな動作によって、バスフィッシングの魅力の一つでもあるギャンブル性と戦略性の高さが全面に推し出されているのも流石の一言に尽きる。舞台となる湖(マップ)も5種類と、数こそ少ないが、時間と天候の概念の存在によって、プレイする度に色々な顔を見せるのが面白い。それにより、同じマップでも別の戦略が求められてくるなど、釣りそのものの奥深さを演出しているのもお見事だ。
それでも結果的に、慣れるまでの時間が長い為、玄人向けな印象を払拭できないが、このようにゲーム自体は遊び込む度にその面白さが増していく作りとなっており、全体的に丁寧な作り込みが成された作品に仕上がっているのだ。その絶妙な調整具合と演出の上手さは、まさに本作が『決定版』を名乗るだけにあると言った所だ。
操作性も申し分が無い。ルアーやワームをキャストし、Aボタンで糸を引いたり、Zボタンで踊らせたりするのは、ただ触っているだけでも気持ち良い。バスファイト時も、3Dスティックならではの微妙な動きが結果に左右されるなど、ロクヨンのゲームらしい調整が光っている。地味ながら、ルアーなどの効果音が素晴らしいというのも見逃せない。
また、移動方式に関しても3D主観視点で移動するタイプのほか、全体マップを高速移動するタイプの二種類が用意されており、好みにあった移動手段が試せる点も秀逸だ。
サポート周りに関しても、硬派な感は否めないがヘルプ機能を始め、釣れ易さの難易度選択機能(優しい難易度でも、一定のコツを掴む必要があるけど)など、それなりに充実。やり込み要素に関しても、『お宝集め』や怪物バス探しなど、盛り沢山だ。中でも前者の『お宝集め』はそのラインナップが強烈で、『ほぼ日刊イトイ新聞』のおサルのトレーディングカードがあったりなどと、色んな意味でプレイヤーを笑わせてくれること、間違いなしだ。
そしてグラフィック、音楽の完成度もなかなか。特に音楽は大変素晴らしく、先のバスファイト時に流れる曲はまさに、名曲という以外、評し様の無い出来を誇っている。各湖ごとの曲も爽やかなものが満載なので、是非とも要チェックだ。
演出もバスがヒットした際の緊張感やファイト時の異様な臨場感など、全体的に丁寧に作られている。特に先ほども紹介したが、バスがヒットした際の嬉しさは半端じゃないので、これを味わう為に本作をプレイして見る価値は十分にある。
登場キャラクター達も専門用語を乱発する難点があるとは言え、結構ユニーク。特にクラブハウスで忙しそうに働いている『おじさん』は、インパクト抜群。また、タイトル画面にて楽しげに歩く、笑い顔が印象的なネコくんも必見だ。
そんな感じにバランス調整が巧みで見所が多いとは言え、基本的な作りは思いっきりバス釣り初心者を想定してない為、驚くほど人を選ぶ作りとなので、硬派なゲームな事に変わりは無い。だが、リアルなゲームバランスと戦略性とギャンブル性の高さ、優れた演出と、純粋にバスフィッシングゲームとしては決定版に相応しい完成度を誇っているので、決して本作がダメなゲームという訳ではない。
とにかく万人には決して薦められないが、バス釣り好きの方やバス釣りを少しでも経験した事のある方ならば是非、遊んでみて欲しい一本である。それまでのバス釣りを題材にしたゲームには無い、リアリティがここにある。逆に初心者の方は、忍耐力に自信があるプレイヤーならばチャレンジしてみる価値はあり。但し、あまりにも硬派である故にかなり人を選ぶ作りとなっているので、挑む際には相当な覚悟をしておくべし。
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