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≫バンジョーとカズーイの大冒険
■発売元 任天堂
■開発元 レア
■ジャンル 3Dアクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力描写あり
■定価 6800円(税別) / Xbox LIVEアーケード版:1200MSポイント
■公式サイト ≫NINTENDO64版 / ≫Xbox LIVEアーケード版
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 振動パック対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 25〜30時間(エンディング目的)、55〜70時間(完全攻略目的)
クマのバンジョーと相棒のトリ、カズーイがのんきに暮らすクルクル山のふもと。この山の近くの砦に住む悪の魔女『グランチルダ』はある日、魔法の鍋に向かって「世界で一番、綺麗なのは誰か」と聞いていた。
それに対してナベは一度、グランチルダの名を出すが、もっと綺麗な子がいると言い放つ。その子の名は『チューティ』。バンジョーの妹だった。
その事実に怒ったグランチルダは、チューティを誘拐。彼女から美しさを搾り取り、自分が一番美しい女性になろうと砦の中で怪しげな機械を使っての儀式(?)をし始めた。

カズーイに起こされ、ようやく事態を知ったバンジョーは、チューティを救う為、グランチルダの砦へと向かう。
果たして、二匹の運命や如何に…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆『スーパーマリオ64』とそっくりながら、謎解きに主眼を置いた独自性に富んだゲームデザイン
◆二匹で行動を共にするその仕組みが斬新な、バンジョーとカズーイのコンビプレイ
◆コンビプレイの特性を最大限に活かした、独特のテイストに富んだアクション
◆少しずつ行動範囲が広がっていく楽しさに満ちた、アクション習得システム
◆山に砂浜、巨大生物の体内など、ぶっ飛んだ世界観で構築された全8つのワールド
◆量よりも密度の濃さで勝負した、やり応え満点の総計ボリューム(とにかく深い)
◆パズル、大ボスとの戦い、人助けなど、バリエーション豊かな各ワールドのイベント
◆レースにクイズショーなど、無駄に凝った作りのイベント上のミニゲーム
◆ジグソー集めからオンプ集めまで、レア社らしい無駄に充実したやり込み要素
◆レア社らしい、細部まで徹底した描き込みが光る、見応え満点のグラフィック
◆地形ごとに曲を変化させるなど、インタラクティブな遊びに富んだ愉快な音楽
◆メルヘンチックな世界観を全く髣髴とさせない、毒々しさに満ちたストーリー
◆イギリス流(?)のギャグセンスが炸裂した、奇天烈な台詞回し(登場キャラクターの面々も、かなり奇天烈…)
◆デモからエフェクト周りまで、無駄な仰々しさが炸裂している演出周り

--- Bad Point ---
◆劣悪の一言で簡単に締められる、最悪のカメラワーク
◆カメラワークの恩恵を受けて、雑さが際立つゲームバランス(主にアクション周りで、要らぬミスを引き起こし易い)
◆もっさりとした動作が返って気持ち悪い操作性
◆ワールドを出ると、また0から集めなおすハメになるキーアイテムの『オンプ』
◆謎解きがほとんどでボス戦などが少ない、若干華やかさにかけたゲーム展開
◆『チートコード』無しではまともに勝負すらできない、理不尽過ぎるラスボス戦
◆セーブ終了で必ず挿入される、うざったいゲームオーバーデモ
▼Review ≪Last Update : 5/3/2009≫
妹の前の名前⇒ピッコロ

助けたくなるような名前じゃない…。


スーパードンキーコングシリーズに『ブラストドーザー』、『ゴールデンアイ 007』など、多くの名作を世に排出してきたイギリスのソフトハウス『レア社』が放つ、完全新作の3Dアクションゲーム。

劣悪なカメラワークとバランスが尾を引く、勿体無い凡作だ。

ゲーム内容は、アクションアドベンチャー的要素を色濃く含んだ3Dアクションゲーム。クマのバンジョーとトリのカズーイの二匹を操作し、3Dのマップ内に仕掛けられた様々な謎やイベントを攻略し、『ジグソーピース』と呼ばれるアイテムを回収し、そのアイテムで次のマップ(ワールド)への扉を開いていくというものである。
……と、この時点で「おや?」と引っ掛かるものを覚えた方がいると思う。それって『スーパーマリオ64』と同じじゃないか、と。そう、実を言うと、今作は『スーパーマリオ64』と基本的なゲームの仕組みは全く同じ。凄く極端に言ってしまえば、マリオがクマとトリになっただけの『スーパーマリオ64』そのものなのである。
ただ、だからと言って何も、今作が『スーパーマリオ64』のデッドコピーに過ぎないって訳じゃない。肝心の中身そのものはマリオ64とは異なるアプローチ、そして3Dアクションゲームとしては大変珍しい試みの数々が行われた、まさに「意欲作」と言ってもおかしくない仕上がりとなっている。その象徴として上げられるのが、アクションアドベンチャー色を全面に押し出したゲーム展開、バンジョーとカズーイのコンビプレイ(アクション)、マンボ・ジャンボの魔術による動物変身アクション、そして謎解きづくしのスケール感のあるマップ構成の五つ。
特にその中でも、今作独自の売りとも言えるのが、バンジョーとカズーイの二匹によるコンビプレイ。『スーパーマリオ64』ではプレイヤーキャラはマリオ一人であったのに対し、今作ではプレイヤーキャラが二匹。その二人を交互に使い分けたりしながら、ゲームを進めていくようになっているのである。
言うなれば、同じレア社が手掛けた『スーパードンキーコング』のタッグプレイシステムの3Dアクション版、と言ったところ。ただ、『スーパードンキーコング』と違うのは、今作のバンジョーとカズーイは二匹で一匹、つまり一心同体であるということ。一匹一匹が個別に動くのでなく、常に二匹のままで行動するという仕組みになっているのだ。だから体力ゲージは基本、二匹で一つ。どちらかがやられれば、一緒にやられてしまうという感じになっている。
更に、この二匹が繰り出すアクションも非常に独特。まさにコンビで行動しているが故の「らしさ」が滲み出た動きの数々を見せてくれるのである。
カズーイの羽根を活かして滑空したり、鋭いくちばしを活かして連続攻撃を繰り出したり、更には強烈な体当たりを繰り出したりするなどなど。その如何にもコンビだからこそ実現したアクションの数々は、本当に二匹で冒険をしているという確かで、それでいて新鮮な手応えをプレイヤーに提供してくれる。
アクションの数も、ゲーム進行と共に覚えていく(今作では、最初から全てのアクションができるようにはなっておらず、各ワールドごとにいるあるキャラから順次、教わっていくという仕組みとなっている)ものを含めて実に数十種類以上と実に多彩。その新しいアクションを覚える事によって、それまで行けなかった場所へと行けるようになったりする、まるで『ゼルダの伝説』や『メトロイド』を髣髴とさせる、アクションアドベンチャー的な「道が開いていく快感」が実装されているのも特筆すべきポイント。そう言ったギミックが好きなプレイヤーならついつい、色々と試してみたくなる衝動に駆られるだろう。こういう任天堂がお得意とするネタを仕込む、そのオマージュぶりは流石、かの名作『スーパードンキーコング』シリーズを手掛けたレア社と言ったところ。
それでいて単にそっくりにせず、独自性(コンビだからこそのアクションの面白さ)をきちんと演出しているのだから本当、感心するばかり。まさにこのコンビプレイは、そんな彼らの3Dアクションに対する疑問、そして愛情によって産まれた賜物と言っても、おかしくはないだろう。そう言った感情を抱いてなければ、ここまで優れたものなど、そう簡単には作れない。
確かにゲーム自体は『スーパーマリオ64』そのもの。しかし、中身は今作だからこその味付けがたっぷりで、同じなのだけど実際はまるで違うという、不思議な手応えをプレイヤーに提供してくれる。まさに、ただの『スーパーマリオ64』のオマージュではない、『スーパーマリオ64』のインスパイアによって生まれた別次元の作品、とも言うべき、実にハイレベルでオリジナリティの高い内容となっているのである。ただのデッドコピーなどと思ったら大間違い。実際に遊んでみれば、知っているのだけど何かが違う、という手応えを感じ取れるだろう。

……と、ここまでの時点では今作、『スーパーマリオ64』と同様の内容ながらも、オリジナリティに富んだ完成度の高いゲームなのだなと、思うだろう。確かに、ゲーム自体のオリジナリティ、完成度は高い。ところが。実は今作、そのような魅力のみならず、かなり致命的な欠点をも所持してしまっている。
その致命的な欠点というのが、カメラワークとゲームバランス。この二つがもう、あり得ないほどに酷い。冗談抜きに今作は、この二つのせいで、「完成度の高い3Dアクションゲーム」が「完成度は高いのだけど、遊び難さが半端で無い3Dアクションゲーム」と、一気に評価を落としてしまっている。何が酷いのかって、どちらもプレイヤー視点に立った調整が成されていない。カメラワークはプレイヤー(バンジョーとカズーイ)を中心にグルグルと回転する仕組みであるせいで、ベストアングルが上手く調整できないのみならず、必要以上に目を回される。しかもその回転は、プレイヤーをものの数分で3D酔いに陥れるほどの破壊力を秘めてる始末。3D慣れしていないプレイヤーなら、僅か5〜6分で3D酔いを引き起こされ、再起不能に陥ってしまうほどなのである。
逆に3D慣れしているプレイヤーなら大丈夫なのかと言われるとそうでもなく。必要以上に回るせいもあり、そう言った方でも、酔いを引き起こし易い感じになってしまっている。正直、まだFPS(ファースト・パーソン・シューター)で引き起こされる3D酔いの方がマシ、と言って良いほど。持久時間が短いのである。 ゲームバランスも、そのカメラワークの恩恵を受けて雑。謎解きの難易度は本当、任天堂らしい、優し過ぎず難し過ぎずの絶妙なバランスでまとめられているのだが、カメラがじゃじゃ馬過ぎるせいで、要らぬミスが起きたり、更にはアングルが調整できないせいで、必要以上の苦労を強いられるハメになる事が多く、見事にその「絶妙さ」が殺されてしまっている。挙句、ゲーム後半以降になるとアクションも含めて更にバランスは崩壊。『チートコード』と呼ばれるバンジョー達を強化するコードを使わなくては、まともに戦い抜く事すら厳しい地獄絵図となってしまう。冗談抜きに、その地獄っぷりは、3Dアクション初心者なら突破はほぼ無理、と言っても良いぐらい。レア社の悪い側面、丸出しになってしまっているのである。
折角、システム面では面白い事をしているのに、こう言ったプレイアビリティの面において、プレイヤーに対する気配りが全く出来て無いというのには本当、心底呆れさせられる。しかも、カメラとバランスはどれも、3Dアクションゲームでは面白さの核を担っていると言っても過言で無いファクター。特にカメラは、『スーパーマリオ64』のプロデューサー&ディレクターを務めた宮本茂氏が、「3Dアクションはカメラで全てが決まる」と発言したほど、このジャンルでは重大な位置をしめているもの。それを疎かにする、まるで「自分達はこのアングルで酔わなかったから、他の人も大丈夫だ」みたいな勝手な判断で調整するだなんて、はっきり言ってプレイヤーを馬鹿にしてるのも同然だ。主観的にも限度がある。
バランスの粗にしたって、真面目にテストプレイしていれば、確実に潰せた箇所のはずである。それを潰さず、そのままにしてしまうだなんて一体、何なのか。 そんな感じに今作は、ゲームの「肝」とも言える箇所の出来が、信じられないほど酷い。その酷さはまさに見ての通り、コンビプレイと言った今作独自の魅力を軽く潰すほどのレベル。全てが無かった事にされてしまっているのだ。 どの箇所も、普通にプレイヤー視点に立って考えれば、確実に修正できたはずのもの。それを何故、修正しなかったのか、全く持って謎としか他に言い様が無い。

その他、3Dアクションゲームとしての遊び難さはカメラワーク、バランスのみならず、操作性、そしてサポート周りのパートにも現れている。操作性はとにかく「もっさり」としており、一つ一つのアクションの反応がゆったりし過ぎていて、非常にタルい。如何にも海外製作のゲームらしい、独特の癖の強さが出てしまっている。同じレア社製作の『スーパードンキーコング』シリーズは、こうもゆったりとした操作感でなかったのに、何故、今作ではこんな海外ゲームお決まりのスタイルを貫いてしまったのか、理解に苦しむ。
サポート周りもチュートリアルなど、それなりに充実してはいるのだが、アクションの説明など、ちょっとザックリし過ぎてしまっているのが惜しい。またゲーム中、常時セーブができる仕様になっていながら、セーブを行うと決まってゲームオーバーになってしまうという変なペナルティが課せられるのは謎過ぎる。何で続きは別の日にと考えて止めただけで、プレイヤーにペナルティなんて課すのか。意味不明にも限度がある。
グラフィックや音楽も、いずれも高いレベルでまとめられてはいるのだが、総じて印象が薄めで、プレイヤーの心に残り難い。音楽は音楽で、いつものレア社らしく良い感じにまとめられているのだが、曲のバリエーションに乏しいのがらしくないというか。もう少し、ハッチャケられなかったのかと悔やまれる。ストーリーは、色々とハッチャケているのだが。

やり込み要素もジグソー集めなど充実はしているが、バランスの悪さもあってあまり熱中できるほどでなく、またジグソー以外にも今作では「オンプ」のアイテムを100個集める要素もあるのだが、一度でもワールドを出ると、それまで中で集めた数がリセットされる(また1から集めなくてはいけない)謎の仕様となっている影響もあり、面倒臭い。他にもボス戦が少なく、華やかさに欠ける展開など残念なところはチラホラ。コンビプレイによる新たな手応えに謎解き攻略中心の展開など、3Dアクションゲームとしては魅力的な面も多く持つのだが、とにかく総じて詰めの甘い箇所が多く、傑作の可能性を持ちながらも、佳作止まりとなってしまっているのが惜しまれる。いずれの要素も、もっとプレイヤー視点に立って作られていれば、かなり光っていたのは間違いないのに、何故、それができなかったのか。
総評としては、3Dアクション初心者にも上級者にも手放しでお薦めできない凡作。遊べなくはないが、人によって酷い3D酔いを誘発させるカメラワークなど、プレイアビリティが壊滅的なので、気持ちよくとまではいかない。3D酔いもし易いので、これを遊ぶぐらいだったら『スーパーマリオ64』をお薦めします。
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