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≫ゼルダの伝説 夢を見る島DX
■発売元 任天堂
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO B(12歳以上対象) ※犯罪、セクシャル描写あり
■定価 ゲームボーイ版:3675円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):600円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー対応(※一部、専用的な部分あり)、スーパーゲームボーイ対応、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応、ポケットプリンタ対応
■総説明書ページ数 46ページ
■推定クリア時間 15〜20時間(エンディング目的)、18〜23時間(完全攻略目的)
邪悪の王ガノンの魔の手からハイラルの平和を取り戻したリンクは、新たな災いに備え、修行の旅に出発した。そして異国での修行を終え、懐かしいハイラルに帰る航海の途中、それまで穏やかだった海が突然荒れ始める。波に翻弄され、稲妻に打たれた船は真っ二つに割れ、リンクはその残骸と共に深い海の底へと沈んでいった。

やがて澄んだ闇の向こうから、女の子の声が聞こえてきた。
リンクの目の前には彼の目覚めを喜ぶ少女の姿があった。
彼女の名はマリン。リンクは奇跡的にも『コホリント』と呼ばれる島に流れ着いていた。
このコホリント島は、真ん中の山に大きなタマゴを頂く不思議な島であった。
その中には『風のさかな』という神が眠っているという。

やがて元気を取り戻したリンクは、無くした剣を探しに海岸へと向かう。すると彼の前に不思議なフクロウが現れ、全ては『風のさかな』の目覚めが答えてくれると、謎めいた言葉を残して去っていった。

『風のさかな』とは何なのか。その目覚めにはどんな意味があるのか。
見知らぬ南国の島で、『風のさかな』をめぐる不思議な冒険が今、始まろうとしている。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆プレイヤー好みの装備をしたリンクが作れる、魅力的な仕様が異彩を放つ新型の装備システム
◆ジャンプに盾を構えての障害物移動など、より多彩で動かす楽しさも増したリンクのアクション
◆装備システムとアクションの多様化で、気持ちよさと嬉しさが更に増した珠玉の操作性
◆ダンジョン名の表示、フクロウによる目的地誘導を促すイベントなどの追加で、今まで以上にテンポ良く進めていけるようになったゲーム本編
◆小さめながら、視認性の高さとネタ密度の高さで存分に楽しませてくれる珠玉のマップデザイン
◆サイズの小ささを思わせぬ密度の高さが異彩を放つ、全8種類のダンジョン(中間ワープポイントの追加で探索の快適性も飛躍的に向上)
◆冷静に考えればサクっと解ける絶妙な難易度設定が素晴らしい、ゼルダ伝統の謎解きネタ
◆過去のゼルダシリーズに勝るとも劣らぬ総計ボリューム(やり込み要素も充実)
◆ゼルダシリーズとしては異色の切な過ぎるシナリオ(特に中盤以降の展開は必見)
◆クリボー、ワンワン、更にはカービィと、無駄に豪華なゲストキャラクター達(任天堂好き必見)
◆地味ではあるが、派手なエフェクト演出などで大いに魅せてくれる良質のグラフィック
◆シナリオの切なさを大いに引き立てる、印象的で何処か物悲しさに富んだ良質の音楽
◆記念写真集め、スペシャルダンジョンとアイテムなど、豪華な追加要素の数々
◆衝撃の店主ビーム

--- Bad Point ---
◆プレイヤー好みのリンクが作れるとは言え、いちいちメニューを開かねばならない為に若干、煩わしさもある装備システム(ゲーム展開などで緩和する策は取られてはいる)
◆岩などを持ち上げる際の奇妙な操作(何故か十字キーを逆方向に入れなければならない)
◆寄り道要素とされたレベル2の剣入手イベント(必須にすべきだったのでは…?)
◆レベル4ダンジョンのボス、アングラーの異様な弱さ(雑魚敵同然…)
◆追加要素『記念写真』の一つが強盗行為を推奨するものとなっている(地味に嫌らしい)
◆あまりに高く設定し過ぎな弓矢の値段(ただ、カラー専用ダンジョンに救済処置がある)
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
その親父、最強につき。

大人しくルピーを溜めよう。


任天堂の看板タイトル『ゼルダの伝説』初のゲームボーイ作品にしてシリーズ第四作『ゼルダの伝説 夢をみる島』をゲームボーイカラー向けに作り直したリメイク作品。

グレードダウンを感じさせない脅威の作り込みが光る、シリーズ屈指の名作だ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開する、アクションアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公のリンクを操作し、舞台となる『コホリント島』の各地で起こるイベントやダンジョンを攻略しながら、島からの脱出のカギとなる『風のさかな』にまつわる謎を追っていくというものである。基本的な作りは前作である『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』を踏襲。強化されたストーリー性、『ダッシュ移動』に『回転斬り』を始めとする多彩なアクションは今作にも継承されている。但し、今回はスーパーファミコンからゲームボーイへと事実上のグレードダウンをしたのもあり、幾つかの要素がハードの性能に見合わせたものに改訂。舞台となるフィールドマップのサイズがゲームボーイの液晶画面内に収まるブロック単位の作りになったほか、操作性もボタン数が初代『ゼルダの伝説』と同じ十字キーとABボタンへと逆戻りした事で、複数のボタンを駆使したアクションができなくなった。
特に今作において、最も大きな変更点が操作性。前作はボタン数が多い事を活かし、剣による攻撃やダッシュ移動などのアクションを特定のボタンに固定した仕様となっていたが、今回はボタン数の少なさから仕様そのものが削られた。特定のアクションが振られたボタンがなくなってしまったのである。では、今回は剣による攻撃にせよ、ダッシュ移動にせよ、どうやって行うのかというと、ABボタンのいずれかに対象のアイテムをセットアップ、装備しなければならない。メニュー画面を開いて、剣はAボタン、ダッシュ移動の為の靴はBボタンと言った感じに振り分けなければならなくなったのである。
その新しい装備システムこそが今作最大の見所。今回はメインボタンに当たるABボタンが『アクションボタン』という扱いになっていて、この二つに個別のアイテムをセットする事で、各ボタンがそのアイテムに応じたアクションボタンに変化する、大変ユニーク且つゲームボーイならではの作りになったのだ。これにより、今回は剣を装備せずに別のアイテムをメイン武器にして戦う、前作では拝見できなかった風変わりなリンクの姿を拝められるようになり、カスタマイズ的な楽しさがパワーアップ。純粋に装備を切り替えるだけでも楽しい作りになっている。更にボタンの少なさというハンデを上手く活用した作りにもなっており、前作にも負けず劣らずの爽快な操作性を実現しているのも特筆に値する部分。ボタンの少なさを感じさせない、その動かすだけでも楽しい手応えには前作をやり込んだプレイヤーも衝撃を覚えること請け合いだ。また、常にスタートボタンを押してメニューを表示させ、装備をし直す必要が生じる作りになった為、煩わしさも増したと思いきや、実際に前作でもスタートボタンを押してサブのアイテムを切り替える要素があったのもあり、大して変わっていないというのも地味ながら驚くべきところである。ボタンの少なさから、煩わしさが出るのも止む無しかと思いきや、それを無くす為の爽快な操作性を構築してしまうこのアレンジの上手さ。前作を下回る環境下でありながら、それを裕に超えてしまったと言っても不思議でないぐらいに見事な仕上がりとなっている。 また、操作性だけでなく、液晶画面に収まるブロック単位に改められたマップも、スケールの小ささを思えないほど一画面に多くの情報が詰め込まれた出来。既存の要素も、今回はストーリー性の強化によって次に向かうべき目的地が非常に分かり易くなったほか、ダンジョンに入った際にはそのダンジョンの名前が表示されるなど、よりユーザーフレンドリーな仕様に進化しているのも見逃せないところだ。
加えて今作『DX』ならではの特別仕様としてグラフィック全般がフルカラー化。更に一部のボスにヒントが追加されたほか、オリジナルには無かった新しいダンジョンも追加されたりなど、より至れり尽くせりな内容に進化を遂げている。
ただ、そんな特別仕様を除外したとしても、今作の徹底した作り込みの数々は強烈極まりない出来栄え。ゲームボーイだから、どうせ小規模な内容なのだろと思って触れるほど、痛い目に遭う仕上がりになっている。ゲームボーイでも、ゼルダは作れる。そして、前作を超えるものにもできる。それを大いに納得させるほど、今作は立派に『ゼルダの伝説』をしている。正当進化系と断言できる出来になっているのである。

その進化系である事を証明する箇所というのが、ゼルダではお馴染みの要素の質の高さ。具体的には操作性、リンクのアクション、そしてダンジョン構成の三箇所である。操作性はもう散々語ったが、ボタンが少なくなり、且つそれぞれに装備を振り分ける仕様になったのに、全く面倒臭さが無いのが凄い。むしろ、装備を自由に変更できるようになった事で、前作以上に多彩で爽快なアクションを堪能できるようになってしまっているのだから驚きだ。
何と言っても、プレイヤー好みの特徴を持ったリンクを自由に作れるようになったのが大きいと言えるだろう。「いつも盾を持ったままのリンクは嫌、盾を持ってないリンクで遊びたい」というプレイヤー自身が思い描く装備をしたリンクが作れるので、これまで以上に彼自身を動かす楽しさ、嬉しさが倍増している。元々、初代ゼルダの伝説の時から「リンク=プレイヤーの分身」という設定がシリーズのお約束としてあったが、今作はその設定を操作性の刷新で、更にクローズアップさせたとも言える。片方の手でスコップを持ち、もう片方の手で剣を持つ。何を持とうが、このキャラクターは自分自身であるのだから、ケチを言われる筋合いなどない!そんな「自分らしさ」を出せるリンクの操作が面白くないなんて事はあり得るはずもなく。一部装備が固定されてた前作もボタン配置、レスポンスは非常に良好で、気持ちの良い仕上がりとなっていた。しかし、今作はよりプレイヤーの「嬉しい」という感情を刺激させる仕様とし、単に気持ち良いだけでは終わらぬ、究極の操作性へと進歩させた。明らかにボタン数では前作では劣るのに、この突出ぶりである。ボタンが少ないのなら、無理を通すのではなく、プレイヤー自身が嬉しいと感じてもらえるものを作らなければならない。実際にそのような思いを込め、この操作性を想像したのかどうかは制作者のみぞ知る所だが、ハンデを物ともせず、前作を超えるものを作り上げたその手腕には本当、畏敬の念を覚える。不便さを出さずに嬉しさを追求させる辺りはさすがゼルダチームと言うべきか。その発想の転換とゲームへの愛には感服である。
アクション周りもレスポンスの良さはさることながら、前作以上に自由奔放な動きが可能になった事で、爽快感が向上している。中でも新アイテム『ロック鳥の羽』を手に入れる事で習得するジャンプアクションは格別の気持ちよさ。道を遠回りして回避するしかなかった穴を飛び越えられるなど、これまでの欲求不満を吹っ飛ばす秀逸なアクションに仕上げられている。また、前作では飾りに近かった盾も、障害物を押すと言った事が可能になり、よりその魅力溢れる装備アイテムへ進歩しているのも見逃せない。新たなアクションを可能とするアイテムが隠されたダンジョンも、前作に引けを取らない素晴らしい完成度。部屋のスケールこそゲームボーイの液晶画面に対する考慮で狭くなったが、その分、ネタの密度を濃くする施策を打っており、確かな満足感を得られる仕上がりになっている。構成全般も、中ボスを倒す事で開放される『ワープポイント』の導入によって探索し易い作りとなり、2Dアクション風のマップを用意するなど、バリエーション面も強化されている。無論、ゼルダ伝統の手応え抜群の謎解きは今回も健在。相変わらずの程好くプレイヤーの裏を突く絶妙な調整で、大いに唸らせてくれる。更に今回はメインダンジョン以外にフィールドマップでも、謎解きを含んだ大量のイベントが用意されているので、十分な手応えを実感できるだろう。
所詮、携帯機。所詮、スーパーファミコンよりは性能の劣るゲーム機。そんなゲームボーイ自身を馬鹿にするかのような姿勢は何処にも無く、むしろ「ゲームボーイでも立派なゼルダは作れる」、「前作以上の最高のアクションアドベンチャーが作れる」という強い意気込みと職人技の数々が、今作には炸裂している。それでいて、ゲーム自体の出来は確実に前作超えしているというとんでもなさ。ゲームボーイでゼルダほどのゲームを作るのは無理があるだろうと舐めてかかると、痛い目どころか瀕死寸前の重傷を負う内容であるというのは、もうここまで紹介した以上は語るまでもないだろう。小さなゲーム機でもゼルダはそのまま。これぞゲームボーイの本気と言える、究極の作品に完成されているのだ。

また、今回のゼルダはストーリーも素晴らしい。いつもとは異なる島からの脱出を目指す移植の内容なのだが、中盤から後半にかけ、島に関する衝撃の真相が明らかとなっていき、最後には誰もが思い描かなかった結末を迎える。その結末はゼルダシリーズ屈指の切なさ。一体、何がリンクの身に起きるのか、そして島にどんな秘密があるのか。その真相は是非、本編で確かめてみて欲しい。このストーリーを楽しむだけでも、今作を遊ぶ価値は十分にある。
全体のボリュームもダンジョン総数は8つ以上、更に道中に複数の小さなダンジョンやイベントが用意されているので、やり応えは申し分無し。隠しエンディング、カラー専用の収集要素と言ったやり込みも完備されているので、結構長く何度も遊び込める内容になっている。
グラフィックもさすがに前作よりも劣るが、デモシーンなど、結構凝った出来。後にメトロイドシリーズの作曲担当となる濱野美奈子&ワリオシリーズの作曲担当の石川こずえ両氏作曲による音楽も素晴らしい出来で、特にメインテーマである『風のさかなのうた』は要チェックだ。またダンジョンごとに違った曲が用意されているのも、地味に見逃せない。

演出全般も例によって前作には劣るが、ゲームボーイの限界を突き詰めた出来栄え。ラスタースクロールによる派手なエフェクト、仰々しい効果音の数々はゲーム本編を大いに盛り上げてくれる。その他、小ネタも多く、あらゆる意味で最強の店主やマリンの暴走など、普通に遊んでいると気付かないようなものが仕込まれているのにも驚かされるばかり。ゲストで任天堂の著名なキャラクター達が登場するのも必見だ。
欠点と言えるようなものも皆無で、強いて言うならば装備切り替えの際に常にメニューを開かなければならない為、多少の面倒臭さがある事、カラー専用のやり込みで犯罪行為を行わなければならなくなる事ぐらい。あとは少し気になるレベルのものがチラホラある程度で、全体を通してみても大変丁寧に作り込まれた内容に完成されている。
シリーズ屈指とも言える秀逸な操作性、ハード限界を物ともしない圧倒的な密度、そして切なくも印象深いストーリーなど、シリーズ最高傑作と言っても不思議でない完成度の高さを誇るこの『ゼルダの伝説 夢をみる島』。
シリーズファンはさることながら、ゲームボーイをお持ちの方ならば要プレイの傑作である。ゲームボーイとは思えぬこの圧倒的な密度とやり応えは、唯一無二の感動を提供する。是非、プレイすべし!かなりお薦め!
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