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≫ワリオランド2 盗まれた財宝
■発売元 任天堂
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 3675円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー対応、スーパーゲームボーイ対応、ワリオのヒゲシール同梱
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 4〜5時間(エンディング目的)、20〜30時間(完全攻略目的)
あるとても静かな朝。
様々な宝物を探して世界中を駆け回っていたワリオ。
その日は疲れて自らのお城でぐっすりと眠っていた。

そこに現れた数体の怪しげな影。
その影はそっと、ワリオの城の中に忍び込んできた。
さて、この影の正体は!?
この後、ワリオに何が起きるのか?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆数種類の結末が用意された、やり込み甲斐抜群の分岐方式による本編構成
◆体当たり、振動攻撃を始めとする、ワリオらしい豪快なアクションの数々(操作性の改善と一部攻撃の強化で、豪快さは前作以上にアップ)
◆ありそうで無かった、驚愕の「プレイヤーが死なない」設定が異彩を放つ不死身システム
◆不死身、リアクションの売りを引き立てる作り込みが見事なステージ構成
◆不死身システムならではの独特の緊張感と新鮮な味わいに満ちたボス戦
◆特定の攻撃を喰らう事で特殊なアクションが可能となる、個性的なリアクションシステム
◆移動速度を始めとする挙動周りの改善で、劇的にレスポンスが向上した操作性
◆簡単と思わせて、意外と手応え満点というギャップの激しさが面白い、練りこまれたゲームバランス
◆ステージ総数50以上、宝物集めを始めとするやり込みも完備した圧倒的なボリューム
◆シャッフルクイズ、解読パズル、更には『ゲーム&ウオッチ』の某ゲームまで、強烈なインパクトに秀でたミニゲーム
◆ドット絵の描き直しと背景描写の精微化で、大幅に見栄えが良くなったグラフィック
◆キャラクターの仰々しいリアクションと無茶苦茶な展開で魅せてくれるデモシーン

--- Bad Point ---
◆白黒とカラーの個別で作られ、互いの共有は一切行えないという謎としか言い様の無いセーブデータ管理の仕様(これならカラー専用ゲームにすべきだった)
◆たった1つしか作成できないセーブデータ(前作は3つ作れたのに何故か1つに縮小)
◆不死身システムの「絶対死なない」という特徴故の緊張感とスリルの無さ
◆微かに挙動が重くなり、手応えの気持ち悪さが増した泳ぎのアクション
◆宝物入手の前に度々行われるシャッフルクイズのミニゲーム(宝物を素直に入手できないのが煩わしい)
◆全体的に大人し過ぎる音楽(特にボス戦周り。良い曲もある事はあるが…)
◆何故かドアに入った時などの暗転演出の度に途切れる音楽(デモシーンですら)
▼Review ≪Last Update : 8/28/2011≫
「猪口才な〜ッ!」

怒れるワイルドヒーロー、再降臨!


マリオには真似のできない豪快なアクションで好評を博した『スーパーマリオランド3 ワリオランド』の続編にして、ワリオランドシリーズ第三弾(※第二作目はバーチャルボーイの『ワリオランド アワゾンの秘宝』に該当する)。ゲームボーイカラー本体と同時発売されたタイトルで、元は旧ゲームボーイ向けソフトとして製作されていた過去を持つ。

プレイヤーが絶対に死なない、驚愕のゲームシステムとアイディアが光る意欲作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型のアクションゲーム。ワリオを操作し、行く手を邪魔する敵や仕掛けを突破しながら、ゴールを目指すというものだ。基本システムは前作とは打って変わり、章単位で進行する一本道構成へと変更。ワールドマップ、エリアマップが廃止された。ただ、ゲームを一度クリアするとセレクトモードが追加。一度クリア済のステージへの自由な行き来が可能となる、少し変わった設計になっている。更にこのシステムの追加に伴い、一周目では見過ごした分岐ルートが分かるようになり、見た事の無いステージが楽しめるようになる特典も。前作のような自由度は薄れてしまったものの、探索要素はより濃いものへと強化。一見、シンプルに見えるが、実態は迷路の入り組んでるという、非常にギャップの大きな構成へとその様相を変えている。
アクション部分に関しては前作である『ワリオランド』を踏襲。ブロックを粉砕したり、敵を吹っ飛ばす『体当たり』攻撃は今作にも継承されている。また前作では体当たりとの兼ね合いでか、ワリオ自身の移動速度が遅めに設定されていたが、今作では前作の『ジェットワリオ』に変身していた際と同様の速度に変更。操作の手応えが大分、軽くなっている。細かい部分でもジャンプの挙動、体当たりの効果範囲などが改善。使い勝手が大分、良くなっている。これらの修正により、重量キャラの特有の重さが失われた感は否めないが、全体的なゲームテンポは大幅に向上。気持ちの良いアクションが楽しめる作りに進化を遂げている。前作の移動速度の遅さにストレスを感じてた方にとっては、これは嬉しい変更点と言えるだろう。無論、快適になったからと言って、ワリオ特有の個性が失われた訳でもなく、体当たり攻撃が醸し出す豪快さはそのまま。相変わらずのマリオでは真似できない強烈な個性は、今作でも放出しまくりだ。
更に今作では、もっとマリオとは真逆の方向性を突き詰めようと、とんでもない新システムが追加された。その名も『不死身システム』。何と今回からワリオが死ななくなった。敵に触れても、その攻撃に当たっても、少し吹っ飛ばされてコインを落とすだけ。弱体化もしなければ、そのステージの最初からやり直しにもならない。アクションゲームの常識を根底から覆す、前代未聞の高性能キャラクターへと変貌を遂げてしまったのだ。ある意味、ありそうで無かったネタと言える。そんな高性能キャラクターを操作するだけに、今作のプレイ感覚は色々とおかしい。そもそも、ステージを進めていても全然スリルがない。いずれクリアできる、と言った楽観的な姿勢でいけてしまうのだ。ミスしてやり直しにならぬよう慎重にゴールを目指す、それがアクションゲームの醍醐味でもある訳だが、今作はそういうのが皆無。ましてや、今作には落ちたら一発でアウトの穴のギミックすらないから尚更。まさに邪道と評されるのも不思議でない作りとなっている。それ以前に主人公が無敵とか、アクションゲームの楽しさなんて無いも同然じゃないか、とツッコミたくなってしまうだろう。
だが、アクションゲームの楽しさが無いのかと言われたら否。確かに緊張感は弱い。しかし、それを補う要素が豊富に仕込まれており、きちんとした手応えを感じ取れる内容に仕上げられている。その一つが『やり直し』を煽る仕掛け。不死身とは言え、その身体を持ってしても進めることは嫌らしい仕掛けがステージには豊富に用意されている。一回、落ちでもしたら特定の地点まで問答無用で戻される急流、一発でも攻撃を喰らえば強制的に中間地点へ戻らされたりなど。不死身でも、その反動と陰湿な仕掛けを前にしてはどうしようもならないのだ。故に本編ではこれらの仕掛けを如何に上手く回避していくかが求められてくる。ボス戦でも、幾ら倒されないとは言え、特定の攻撃を喰らうと戦闘が強制的に中断され、最初からやり直しになるように作られてるから、一切気は抜けない。ゲームオーバーの心配はなくとも、やり直しという名の苦行あり。面倒臭さをプレイヤーに恐怖として訴えかけるという、珍しい設計が成されているのである。主人公が死なないからクリアなんて楽だと思ったら大間違い。それを逆手に取ったトラップが満載だ。そして、それが他のアクションゲームに無い独自の体験をもたらしてくれる。まさに今作最大の見所にして、屈指のセールスポイントと言えるだろう。
また、弱体化が無い事で、変身アクションも今回は廃止されたが、行動に支障をきたす『リアクション』なるものが追加されている。敵の特殊な攻撃を受けると、ワリオがその姿を強制的に変えられてしまう、というものだ。これが時に手助けになることもあれば、やり直しへの伏線となってしまうことも。不死身だからと言って決して無敵ではない、それ故に色んな「どうしようもない事」というのがある…その事実を思い知らされるだろう。
このようにアクションなどは前作を踏襲しているが、不死身システム導入により、その内容は完全な別物と化している。そもそも、これを続編と評して良いのか?と考えてしまうほど、強烈なオリジナリティを持ったゲームに仕上げられている。ワリオランドとしての独立を果たした故にある、凄まじい奔放っぷりなのである。

今更言うまでも無いが、今作最大の売りは不死身システムだ。アクションゲームでは常識でもあったプレイヤーの死という概念を撤廃した思い切りの凄まじさ、そしてそれを逆手に取った、やり直しを強いる独特のゲームバランスなど、他のアクションゲームにはない強烈極まりない要素の数々は、プレイヤーに新鮮な体験と驚きの数々を提供してくれる。
特に不死身システムを活かしたステージ構成は格別だ。やり直しを強いるのをミスとして扱いながら、それに繋がる仕掛けをわざとらしく設置したりせず、ステージの設定(ステージ名)や背景、遊び易さを熟慮した上での理に適った設計に徹している辺りにセンスが光る。また、やり直しという「同じ事の繰り返し」を煩わしく感じさせない為、戻される場所は長過ぎず短過ぎずの位置までと、きちんと計算した上での長さで統一されている辺りにも、入念な調整が図られている事を窺わせる。下手に長くしたりすればモチベーションを下げる要因にもなりかねないし、ましてや過剰に設置するのも芸が無い。如何に自然に配置し、そしてやり直す事に納得してもらえるか。そう言ったプレイヤーの感情を意識し、自然且つ納得の行く構成に仕立て上げた手腕はまさに職人技と言えるだろう。単にやり直しを強いる仕掛けの配置具合の上手さだけに留まらず、ステージ一つ一つもコンセプトがきちんと確立されており、丁寧に作り込まれているのも見事だ。正統派のアクションから探索、迷路と、バラエティ豊かなネタとギミックの数々はプレイヤーをくぎ付けにして放さない。舞台となる場所も個性豊か。森、遺跡、おばけ屋敷、工場、都市など、ワリオならではの何でもありな作風が全開だ。
各章ごとのラストに対決する事になるボス達も、アイディア満載且つ濃い面子ばかり。更にボス達は決まって、一発でも喰らったら速攻でエリアから退場となる攻撃を繰り出してくるのだが、これがまた不死身システムだからこそ成し得た独自の緊張感を醸し出していて非常に面白い。仕留めた際の達成感、開放感も「倒した!」というよりは「守りきった!」と言った不思議な味わいに満ちていて、何とも言い難い余韻をプレイヤーに残してくれる。この奇妙な達成感もまた、不死身という特殊なシステムによる産物と言えるだろう。ここもまた、ステージ構成と並行して要チェックのポイントである。
また、ステージは不死身システムばかりでなく、『リアクション』の魅力を引き立てる作りになってる点も見逃せない。そのアクション使わずして到達できない、突破できない所があったり、またそのリアクションがアダとなり『やり直し』へ繋がってしまうなど、その応用の上手さには溜息が出る。先に詳しく紹介しなかったが、リアクション自体も無茶苦茶なものが多くて見るだけでも楽しい。太ったり、火だるまになったり、ゾンビになったりと、その芸達者振りには改めてワリオの秘められし実力を思い知らされるかもしれない。
主人公が死なないという、アクションゲームの魅力を全否定するかのような概念。そんなにも主人公が強力である故、今作を「初心者向け、甘ちゃん向けのゲーム」だとイメージする人も中にはいたりするかもしれない。しかし、断言しよう。今作はそんなゲームには一切なって無い。むしろ、「初心者向け?そう思って挑んだら痛い目見るぞ!」と突っ込み返したくなるほど、高いやり応えを誇る内容に仕上げられている。主人公が死なないからと言って、今作は誰もが苦労する事無くクリアできるような甘ったるいゲームではない!そして、死なないが故のデメリットというものを沢山ある!実際にプレイすれば「不死身って、良い事ばかりじゃないじゃん」と、締め付けられるほど痛い思いをするだろう。むしろ、アクションゲームが好きな方ほど、今作はプレイする価値がある一本であると言える。そして、そう言った方ほど今作の作り込まれたシステムとステージ構成には舌を巻いてしまうだろう。

難易度設定も絶妙。不死身だからと言って、誰もが簡単にエンディングを迎えられるほど甘くないのは先も話した通り。不要な攻撃を回避する判断能力と的確な操作が求められる、理に適ったバランスでまとめられている。
また後半になるに従い、リアクションを状況に応じて使い分ける謎解きチックな事も求められたりと、調整方針に違いを設けているのも面白い。色んな遊びを一同に盛り込み、適切なレベルにまとめ上げる辺りは如何にも任天堂ならではのこだわりの現れ、と言ったところだ。その細かな作り込みには脱帽である。
全体のボリュームも相当なものだ。コース総数は50以上と過去のマリオランドシリーズと比較しても最高レベルの量。更にマルチエンディング、宝物探し、分岐ルート探索と言ったやり込み要素も豊富に取り揃っていて、満足度も極めて高い。正直、一通り遊ぶだけで、思わず真っ白に燃え尽きるほどの歯応えが堪能できるだろう。
グラフィックも前作から大幅に描き直され、キャラクター周りのドット絵が大きめ且つ見易くなり、見栄えが大幅に向上。対し、音楽は少し大人しい曲が中心の構成になってしまった。しかし、特定のボス戦で某有名クラシックを流すなど、お遊びが炸裂しているほか、曲自体の出来も良好。特にエンディングのスタッフロールで流れる曲は必聴の価値アリだ。

演出全般も、リアクション時やゴール間近になると曲が切り替わるなど、仕掛けが満載で凝っている。章の始めごとに展開するストーリーデモも凝った出来。ワリオの仰々しいリアクションと無茶苦茶な展開はプレイヤーを大いに楽しませてくれるだろう。ただ、ドアに入る度に音楽が途切れるのは少し気になる。
また、演出とは別にセーブデータが1つしか作れないのも残念。更にゲームボーイカラーと白黒ゲームボーイでプレイした際は異なるデータが作られる仕様の為、共有が行えないというのも不親切極まりない。カラー対応ゲームで、これはあんまりだ。ここまで差別化をするのであればいっそのこと、カラー専用ソフトにすべきだった。他にも宝物を手に入れる際、決まってミニゲームをプレイしなければならないというのも面倒。泳ぎのアクションがぎこちないのも気になる所だ。
そんな欠点も目立つが、全体的なアクションゲームとしての完成度、斬新さは特筆すべきものがある。不死身システムによる新たなゲーム性、リアクションによるワリオの芸達者振りなどは、一度でも体験する価値のある魅力に満ち溢れている。前作から大きく様変わりし、ワリオらしさと新しさが大幅に強化された今作。アクションゲーム好きは勿論の事、ゲームボーイを持ってる方ならば是非、プレイしてみて欲しい怪作にして傑作だ。不死身だからって良い事ばかりじゃない。それを今作で思い知ってみるべし。お薦め。
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