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≫スーパードンキーコングGB
■発売元 任天堂
■開発元 レア
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3500円(税別) / バーチャルコンソール版(3DS):411円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 6〜7時間(エンディング目的)、10〜15時間(完全攻略目的)
元祖ビデオゲームのヒーローにしておサルの長老クランキーコングは、ドンキーとディディーに説教をしていた。前回の冒険(スーパードンキーコング)は綺麗な絵と最新のサウンドさえあれば、黙っても子供達には受けるだろうと。
これにカチンと来たドンキーは前回はゲームが面白かったんだから受けた、と反論。ディディーも自分達の冒険に色数や画面の綺麗さなんて関係ないと付け加えた。

それを聞いたクランキーは8ビットのゲームボーイでも面白い冒険を楽しませてやるのか、と一言。これに対し、ドンキーとディディーは当然だ、と断言。その事を聞いたクランキーは、キングクルールに再びバナナを隠させるよう連絡し、彼らのお手並みを拝見しようと言い出した。かくして、まんまとクランキーの作戦に乗せられてしまった二人は、新しい冒険(試練?)に旅立つことになるのであった。

果たして、二人の前にはどんな敵達が待ち受けているのか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズ伝統の交代プレイ制を取り入れた、戦略性の高いゲームシステム
◆ローリングアタックからのロングジャンプも含め、スーパーファミコン版の仕様を完全に再現したプレイヤーアクション
◆海底遺跡、都市、飛行船など、ごちゃ混ぜ感満点の新しいコース地形群
◆空飛ぶ子豚に迫り来るアンモナイトなど、見た目も含めてインパクト抜群の新しい敵キャラクター達(特にアンモナイトことノーチラスはトラウマモノの恐ろしさ)
◆挙動周りまでスーパーファミコン版を完全再現した、良好な操作性
◆ゲームボーイの限界に挑戦した美麗なグラフィック(描写の細かさは必見)
◆スーパーファミコン版に劣らない、滑らかなキャラクターアニメーション
◆ワールドは4つと少ないが、コースは30以上とやり応え抜群の総ボリューム
◆ゲームボーイでも健在なボーナスステージ探索のやり込み要素(収録コースは全て新作なので、やり応えもバッチリ)
◆スーパーファミコン版とは異なる、シリアスな作風が売りの音楽(今回も名曲盛り沢山)
◆バナナ色のインパクト抜群のカートリッジ

--- Bad Point ---
◆綺麗だが、ゲームプレイに甚大な障害も及ぼしているグラフィック(特に白黒GBでプレイした時に起きる、敵キャラクターが背景と同化する『カメレオン現象』は致命的)
◆未搭載の相棒キャラクター表示機能(この為、プレイヤーのステータス把握が困難)
◆高過ぎる所から飛び下りると、例えその下に足場があったとしても落下ミスと判定される仕様(プログラムミス?)
◆グラフィックの問題により、理不尽スレスレに落ちぶれたゲームバランス
◆コース名表記無し、次のワールドへの移動手段が分かり難いなど、細かい配慮に欠けたワールドマップ(但し、攻略状況を示すサインは表示される)
◆たった二体と、少な過ぎるアニマルフレンド(しかもカジキのエンガードがいない)
◆カジキのエンガード未出演で、大幅に難易度が上昇した水中コース
◆地獄のコース『空中迷路』(今作屈指の挫折ポイント)
◆ハメ殺し可能のラスボス(一方的な展開にはならないが)
◆質素過ぎるエンディング
▼Review ≪Last Update : 11/7/2010≫
「クエーッ!?」

※今作のテレビCMより、ドンキーの叫び声。


最新CGによる美麗なグラフィック、優れたゲーム性で300万本強の大ヒットを記録した、『スーパードンキーコング』まさかのゲームボーイ版。開発はスーパーファミコン版と同じく、イギリスのソフトハウス『レア』が担当。

ゲームプレイを妨害する、見難いグラフィックがタマにキズな佳作アクションだ。

ゲーム内容はスーパーファミコン版『スーパードンキーコング』に準拠。横スクロールのステージクリア型アクションゲームで、ドンキーとディディーの二人のキャラクターを操り、ジャングルや洞窟などの様々なコースを攻略していくというものだ。
ゲームシステムも、ドンキーとディディーの能力の異なる二匹を使い分けるキャラクターチェンジシステム(交代プレイ制)、秘密のコース(ボーナスステージ)を発見する探索要素など、スーパーファミコン版に準拠している。
しかし、ハードがゲームボーイに移行した都合により、一部のシステムが変更。特に象徴的なのは、スーパーファミコン版で登場したコングファミリーの未出演。彼らのサポートによるヒントシステム、ワールドマップ移動システムは削られてしまっている。セーブ担当のキャンディーコングも、だ。その為、今回のセーブシステムはスーパーファミコン版で全部集めると残機が増えるアイテム『KONGパネル』を使った別物に変更。1UPのボーナスを廃止し、全部集めるとセーブが行えるという、癖のあるものに変更された。スーパーファミコン版では、集めずともプレイに支障はなかったが、今作は別。意識的にパネルを集めないと、後の展開が苦しくなる、独特の存在感を放つものへと様変わりしている。それに伴い、ボーナスステージのみだった探索要素も色濃くなり、難易度もスーパーファミコン版より上昇している。地味ではあるが、嫌らしい進化と言える。ただ、意識的にパネルを集めていけばコースクリアの度にセーブが可能。コースを一定数クリアしなければセーブが行えなかったスーパーファミコン版よりも、軟化したので、ある意味では良い改善点であると言える。
更にドンキー達の冒険を手助けしてくれる、『アニマルフレンド』達もたったの二体にまで減少。しかも、あろうことか削られたフレンドの中には水中面で大活躍する、カジキの『エンガード』が。その所為で、水中面の難易度はスーパーファミコン版以上に上昇し、非常に苦しいプレイを強いられるようになってしまっている。只でさえ、水中面が苦手なプレイヤーにとっては拷問同然の改悪である。しかも、後に改めて解説するが、嫌らしい動きをする新種の敵まで登場するので尚更。ゲームボーイの制約で削られたとは言え、これはこれでかなり苦しい変更点と言えるだろう。地味なところではあるが、他にもスーパーファミコン版では二人同時に表示されていたドンキーとディディーが、一人だけの表示になったり、残機数が99から20ほどに減少しているなど、表現面にも細かな変更は行われている。
しかし、削られただけでなく、幾つか新要素も導入されている。先のKONGパネルによるセーブシステム、『コングトークン』なる新アイテムによる1UPチャンスミニゲームは、その代表格だ。また、コースにも新たな地形が登場。スーパーファミコン版ではラスボス戦の舞台だった船、海底遺跡、更には都会など、如何にも外伝作品らしい、何でもありなロケーションが登場する。敵キャラクターにも新たな面子を追加。空中を飛び交うブタ、背後から追いかけてくるアンモナイト(?)など、こちらもまた、地形と同様に何でもありな姿勢が炸裂している。特にアンモナイト風の敵キャラ『ノーチラス』の存在感は相当なもの。今回、プレイヤー側の攻撃手段が封じられた水中面でしか登場しないキャラである為、追いかけられる際には神経がすり減らされる恐怖感に襲われる。スーパーファミコン版でも、敵に追いかけられるコースはあったが、今作は更に恐怖感がアップ。スーパーファミコン版以上のスリルが味わえるようになっている。水中面嫌いには極悪極まりないが、この敵キャラが醸し出すスリルはかなりのもの。良い意味でも悪い意味でも、今作の見所と言っても良いだろう。
このようにシステムはスーパーファミコン版をベースとしつつも、ゲームボーイの制約を考慮して様々な要素を削除。それを逆手に取るスリルや新要素を加え、バランス調整を施した、前作に物足りなさを覚えたプレイヤーに向けた、アッパーバージョン版に近い内容に仕上げられている。裏を返せば、前作に苦労したプレイヤーには厳しい内容。スーパーファミコン版以上に手強いものとしてまとめられている。

しかし、手強い内容とは言え、今作のバランスがマニアも納得する良好なバランスだとはとても言い難い。正直言って今作、作り込みがかなり雑なのである。
その象徴と言えるのが、スーパードンキーコング最大の売りとも言えるグラフィック。これがまた、ゲームボーイとは思えぬほど綺麗なのだが、ゲームプレイを邪魔する存在として機能してしまっている。綺麗なのは間違い無いのだが、見難いったらありゃしない。背景の自己主張があまりに強過ぎて、ドンキーや敵を始めとするキャラクター達が、カメレオンのように同化してしまうことが頻繁に起こるのだ。スーパーゲームボーイ、或いはゲームボーイカラーでプレイした場合は、背景とキャラクターが色分けされ、同化現象はほとんど発生しなくなるのだが、白黒のゲームボーイでプレイした際は地獄同然。何気なしに道を進んでいたら、そこに敵がいて、衝突してミスになった…など、理不尽な事故がウンザリするほど多発する。言うまでも無く、激突した際の不快感は相当なもの。「んなの気付くか!」と最悪、ゲームボーイ本体を床に叩き付ける衝動に駆られるほどなのだ。主にジャングル、新地形の岩山のコースで起き易く、スーパーファミコン版にも登場したクレムリン軍団の下っ端兵士の敵『クリッター』がよく同化する。そもそもこの敵自体、背景とほぼ同じ色で描かれていて、完全な差別化ができていない。他の敵にも差別化の甘いのはいるのだが、彼に比べたら可愛いもの。こっちは色が同じでカメレオンのように溶け込んでしまうのだから、余計に性質が悪い。人によっては、殺意が湧くほど。どうしてこんな背景と同じ色にしてしまったのか、もう理解不能だ。
正直、これは最低な差別行為だとしか言い様がない。スーパーゲームボーイで色分けされるから、そっちで遊べとの強要してるに等しい。ゲームボーイの限界を極めたグラフィックを表現する為とは言え、白黒でプレイするユーザーを考えずに作り込むだなんて配慮が欠け過ぎだ。それでいて、白黒でプレイする事をまるで考慮しないバランス調整が図られてしまってるのだから、尚更呆れるばかり。限界を突き詰める姿勢は決して、悪いものではない。でも、それ以上にプレイヤーが遊ぶ事を優先するべきじゃないのだろうか。気持ちよく遊べるという前提を守ってこそ、そのゲームは光るものじゃないのか。正直、今作を作ったスタッフにその姿勢が著しく欠けてる。単にゲームボーイでスーパードンキーコングを表現して世間の注目を浴びようとする、悪質な欲を感じる。こんな表現第一な行為をして、何が楽しいんだと突っ込みたくなる限りだ。正直、もっと遊びを優先してグラフィックの質を落とすなりの配慮を行って欲しかった。あのスーパーファミコン版の名作を手掛けた経歴を持ちながら、映像へのこだわりに走ってしまったことはただひたすらに残念である。
また、単に見難さだけでなく、全体のバランスにもツメの甘さが光る。高所からジャンプして飛び下りたら、穴でないところに着地したはずなのにミスとなってしまったりする辺りは、典型的な一例だ。コースにしても、ワールド3の『空中迷路』なる、下手すら最終面よりも極悪な難易度のコースがあったりと、全体の統一がメチャクチャ。しかもこのコース、アクション初心者どころか上級者でも詰まりかねない難しさと、プレイヤー殺しも甚だしい。スーパーファミコン版でも、統一の図れてない部分はあったが、今回はそれを超越し過ぎである。より難しいものを、という狙いがあったのだとしても、限度を考えて欲しかった。コース以外でも他に、ラストボスがほぼハメ殺し可能であるのもまた、調整が甘いと言わざるを得ない。
しかし、色々と粗はあるとは言え、決してクリア不可能なバランスになってないだけ、まだ救いと言えるか。それでも、相当なパワーが求められるので、余程、腕の良いプレイヤーじゃないと苦しいのが辛いところだが。
ゲームボーイでスーパードンキーコングを再現しようとした、その心意義と再現度の高さは素直に評価に値するものではある。だが、ゲームとして色々と大事な事を疎かにしてまで再現した行為自体は論外。普通に遊べるとは言え、そう言った気配りを忘れ、映像重視に走ってしまったのは本当、残念の一言に尽きる次第である。グラフィックの再現自体はパッと見でも凄いレベルなのは事実なのだけど、ゲームの面白さに直結してないのが辛い。慎重に調整すれば、この酷さも抑えられただろうに、全く持って…どうしてこうなった。

進行システムにも難が多い。特にマップ画面だが、ワールドマップが無く、全ステージが地続きになっている仕組みは地味に分かり難い。クリア済みのワールドから次のワールドへと進む際の操作も、ボス戦のコースで十字キーを右方向に入れるだけと、微妙に煩わしいのがタマにキズ。表現的な無理があったのかもしれないが、せめてワールドマップは導入して欲しかったところだ。コース名が表示されないのもまた然り。ただ、進行周りに難があるのに対し、操作性は良好且つ、再現度が高い。挙動も含め、スーパーファミコン版の操作性を見事に再現している。ローリングアタックを使った高度なテクも可能など、スーパーファミコン版と同じ感覚で動かせる点も見逃せないところである。
ボーナスステージ探しなど、お馴染みのやり込み要素も極め甲斐がある。しかし、コンプリートしてもスーパーファミコン版のような小さな特典すら無いのは、ちょっと寂しい。
また、グラフィックもゲームプレイに致命的なダメージを与えてしまってるとは言え、全体的なクオリティは相当なものだ。ゲームボーイの限界を極めている。更にスーパーファミコン版の売りだった音楽も名曲揃い。スーパーファミコン版に無かった新曲も豊富に追加されており、新鮮な味わいに満ちている。特に新地形の海底遺跡、工事現場、空中で流れる曲は絶品。そして、無駄に熱いボス戦の曲も必聴の価値アリだ。

ボリュームもワールド総数は4つと少ないが、コースは全部で30以上もあり、なかなか充実している。ワールドによっては10もコースがあったりと、少なさを逆手に取ったサプライズが仕込まれている辺りも地味ながら見逃せない。
再現度はそれなり。しかし、グラフィックによるゲーム性の阻害、バランス調整の甘さなど配慮に欠ける部分も多く、遊び難さが際立ってしまっているのがあまりに惜しい。ゲームボーイでスーパーファミコンのゲームを再現しようとした心意気は凄いが、大切な事を意識し損ねたが為、遊び手を選ぶ作りとなってしまっているこの『スーパードンキーコングGB』。
普通に遊べるアクションゲームではあるが、スーパーファミコン版のようにアクションゲーム初心者にはあまりオススメできない佳作である。どちらかと言うと、上級者向け。でも、粗はあれどゲームボーイの限界を極めたグラフィックに名曲揃いの音楽など、捨て難い魅力も多い。出来はいまいちだが、プレイする価値はそこそこある一本だ。
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