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≫ロックマンX サイバーミッション
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 4179円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー対応、スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 2〜3時間(エンディング目的)、18〜20時間(完全攻略目的)
西暦21XX年。人間と同じ思考を持つロボット『レプリロイド』と人間が共存する世界。この世界では思考回路を乱したレプリロイド『イレギュラー』による犯罪が問題となっていたが、最近はそれも沈静化。世界には平和な日々が戻り、イレギュラー達の問題に対応するイレギュラーハンター達も戦いに明け暮れた日々から遠のいていた。

だがある日、本部の『ハンターベース』のマザーコンピュータが何者かによってハッキングされる事件が起きる。一瞬の内にマザーコンピュータ内に補完されていたデータは書き換えられ、偽りのデータによって世界は混乱に陥っていった。

ハンター司令部はイレギュラーハンター・エックスに出撃命令を下す。かくしてエックスは、過去のデータを甦らせた謎の敵との戦いにその身を投じていくのだった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆スーパーファミコンよりも性能面で劣りながらも、ゲーム性からシステム、アクションに至るまで、ちゃんとロックマンXとして完成されている再現度の高さ
◆少しずつステージを進めていける親切設計と手軽さが見事なオートセーブシステム
◆オートセーブシステムの恩恵で、アクション初心者にも優しくなったゲームバランス
◆シリーズとしては珍しい二部構成で作られたシナリオと独特のゲーム展開
◆ゲームボーイ向けに最適化されながらも、ロックマンXの雰囲気を程好く残したグラフィック
◆過去のアレンジ主体だが、本編を大いに盛り上げてくれる良質の音楽
◆高難易度モード、ボス戦チャレンジなど、地味に充実した特典要素の数々
◆特典要素の多さもあり、そこそこ遊び応えのある総計ボリューム
◆苦手な敵を一瞬で始末してくれる、初心者向け救済処置として機能しているゼロスクランブル
◆地味だが、それなりに派手に仕上げられたエフェクト演出全般

--- Bad Point ---
◆便利ではあるが、完了までにかかる時間の長さでゲームテンポの悪化を招いてしまっているオートセーブシステム
◆オートセーブによるテンポの悪さで皆無に等しい、シリーズ伝統のスピード感
◆無理があり過ぎて若干、煩わしい操作性(特にダッシュ操作)
◆同じ最終ステージを二度も攻略するという奇怪さが如何ともし難い二部構成(更に各部をノーマル、ハードと難易度の名称で表現しているのももの凄く変)
◆攻撃と動きが単調で、戦い甲斐が無い新しいボス『シャドウハンター』(特にザインが酷い)
◆救済処置として使えるが、発動時にいちいちメニューを開かなければならないのが面倒臭いゼロスクランブル(ハード設計上、止むを得ないが)
◆旧ゲームボーイでのプレイ時における激し過ぎる残像(プレイ非推奨)
◆頭の悪い日本語で雰囲気台無し、構成もメチャクチャで面白味無しの出来の悪いストーリー
◆ロックマンXお馴染みの本編構成なのに、隠し要素扱いとされた第三部こと『エクストリーム』
◆何故か効果音付きで人名が表示されていく仕様のスタッフロール
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
イレギュラーハンター、携帯機へも出撃!

スピードが活きぬ世界でも戦え!


ハードな世界観と戦略的なゲームシステム、歯応えのある難易度で根強いファンを多く持つカプコンの看板アクションゲームシリーズ、『ロックマンX』初の携帯ゲーム機向け作品。

携帯機を意識したシステムと不可解な二部構成が尾を引く問題作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。主人公のエックスを操作して自由に選択可能なステージを攻略し、最後に待ち受けるボスから特殊武器を得たりしながら最終ステージを目指していくというものだ。基本的に正伝の『ロックマンX』シリーズに準拠。4つのパーツを集める事でエックスの攻撃力や防御力が強化される『パーツシステム』、『壁蹴り』など、ゲームシステム、アクション周りも正伝を踏襲。ゲームボーイという携帯機でありながら、いつものロックマンXを見事に再現した仕上がりとなっている。
ただ例によって、単にゲームボーイでスーパーファミコンの『ロックマンX』を再現しただけの内容では終わってない。システム周り及び全体の構成は、正伝とはまるで異なるものになっている。
システム周りに関しては携帯機を意識した新機能が幾つか追加されている。代表的なものが『オートセーブシステム』。今作では各ステージに中間地点となる『セーブターミナル』なる装置を新たに配置。そこを通過する度に自動的にセーブが行われる便利機能が設けられた。セーブと言った通り、今作はスーパーファミコン版のようなパスワードコンティニューではなく、プレイステーション及びセガサターン版の『ロックマンX3』以降から標準搭載となったセーブシステムを実装。パスワードをメモ帳などに書き記す手間は一切生じない親切設計となっている。そのシステムを強化する目的で、『オートセーブシステム』を新たに導入。概略の通り、ステージ途中で自動セーブが行われるシステムで、それまでステージクリア後にしか行えなかったセーブがステージ途中でも行われるようになった。これにより、区切り区切りでステージを攻略するのんびりプレイが可能となり、ゲームバランス的にもアクションゲーム初心者も遊び易い調整に刷新されている。更に本体の電源を切ってもデータはずっと保存されるので、忙しくて一気にステージ攻略ができなくとも、後でその続きから再開する事も可能に。クリアするのなら一気に突破する必要のあった正伝と違い、少しずつでも本編を進めていけるようになったので、ゲームとしての手軽さも劇的に向上している。一気にステージを駆け抜ける事こそがロックマンXだけでなく、ロックマン全体の魅力と思って止まぬプレイヤーには賛否の分かれる機能だが、携帯機のいつでも何処でも遊べる強みにマッチした作りは実に秀逸。携帯機独特の手軽さと遊び易さを際立たせたナイスな機能に仕上げられている。
更に全体構成に関しては、シリーズ初の二部構成方式に。これまでのロックマンX及びロックマンと言えば、全部で8体のボスが個別に待ち受けるステージを選んで攻略していくのが一種のお約束だったが、今作では一部と二部にシナリオを分割し、それぞれに4体のボスを配置。全てのボスを倒すと最終ステージに突入し、それをクリアすると第二部として新たなボスと最終ステージが登場する、特殊な構成となっている。最初に4体のボスと戦う展開こそ、過去に発売された『ロックマンワールド』シリーズを踏襲しているが、個別の最終ステージをプレイする過程は今作初。何とも奇怪な内容となっている。ただ、二本分のシナリオが用意された構成は新鮮で、これまでのシリーズとは異なる雰囲気が出ているのは見逃せないところ。また、今作で登場するボスは全て正伝の1と2に登場した面々であり、それらがゲームボーイで装いも新たに襲い掛かってくる展開も印象的。加えてそれぞれの部に今作独自のボスも待ち受けているのも必見である。何故か一部をノーマル、二部をハードと難易度名で表現している奇妙さはあれど、シリーズの将来を感じさせるような作りはなかなか。ここもまた、新たなロックマンXを提示するファクターとして、独特の存在感を発揮している。この他にも相棒であるゼロが緊急参戦し、強力な攻撃を行う『ゼロスクランブル』と言った独自の要素が健在。
基本的に登場するボスが1と2から選ばれた面子故、これらの新要素の恩恵もあり、新作と称しても不思議でない新しさに満ちた作りとなっている。携帯機でロックマンXはどう変化するのか。また、携帯機ならではの強みとは何か。そんな新しい可能性とゲーム性を追求した意欲的な試みが炸裂した作品、それが今作なのである。

しかし、そうも意欲的な試みが炸裂した作品でありながら、今作の完成度は正直言ってあまり宜しくない。オブラートに包まず言ってしまうと悪い。確かにオートセーブ、二部構成などはシリーズとしては革新的な機能、試みが成された内容ではあるのだが、いずれも全くゲームを面白くする要素として機能していない。詰めが甘過ぎるのである。 特に『オートセーブ』は手軽さを強化する一方で、アクションゲームのテンポを著しく損ねるシステムとして働いてしまっているのは褒められたものではない。概略で解説したように、セーブは『セーブターミナル』と呼ばれるポイントを通過する事で自動的に行われる仕様なのだが、このセーブが遅い。通過した際、2〜3秒ほど『オートセーブ』という文字が表示された白い画面になり、ゲームが止まってしまうのだ。
言うまでもなく、それまでステージを進める度に感じられたスピード感は一瞬にして喪失。何とも不愉快な気持ちにさせられるのである。通過する度に止められ、処理が完了する度にキャラクターは初期の止まった状態へと戻される。ダッシュアクションでスイスイ進んでいようと問答無用で、だ。仮にもスピード感のあるテンポの良いゲーム展開が最大の売りでもあるロックマンXで、このような魅力を削ぎ落とす要素を導入するとは言語道断の行為だ。しかも、この『セーブターミナル』はステージ中に4〜5個は配置されてたりするものだから、余計に嫌らしい。そんなに設置するなら、何で処理速度を速めようとしなかったのか。技術的な問題があったから、というのならば処理を高められるゲームボーイカラー専用ソフトにする選択肢があったはず。その選択肢を選ぼうともせず、ノロノロとしたテンポになる対応ソフトを選んでしまった今作のスタッフは何をしているんだ、である。確かにこのセーブを導入したことで、ゲームバランスに大きな変革がもたらされはした。しかし、最大の売りたるテンポの良さを全て損ねてまで実現させる必要があったのか、甚だ疑問だ。幾ら新しさを求めるにしても、守るべき所は守らなくてはゲームとして別物になってしまうだろう。評価できる所があるのも事実だが、正直な所、テンポの良さだけは何よりも優先した作り込みを行って頂きたかった。結果としてそれを反故にし、テンポを損なわせてロックマンX唯一無二の売りにして最大の強みを失わせた罪は非常に大きい。ロックマンXを分かってないにも程がある、実に許し難い暴挙だ。
また、二部構成にしても不可解で気持ち悪い。特に各部にそれぞれ最終ステージを用意する意義がストーリー中で全く描けてないのが、その気持ち悪さを助長させている。何故、それぞれに最終ステージ、それも地形もほぼ同じステージを用意する必要があったのか。普通に『ロックマンワールド』シリーズのように中間ステージを用意すれば、それで良かったのではないのか。スタッフとしてはロックマンワールドとは別路線を狙おうと目論み、捻った構成を組む事にしたのかもしれないが、はっきり言って完全に失敗している。そもそも、ストーリーからして分ける為の描写が適当(出てこなかった敵が居るから第二部スタート)な時点で全く考えて作って無いのがバレバレだ。こんな浅はかで訳の分からない作りにするならいっその事、ロックマンワールドの構成をベースにすればどれほど良かった事か。二部構成にする発想自体は悪く無いのだが、見事なまでに発想止まりで終わってしまっているのには改めて、力量の無さを痛感させられる次第である。 初代1と2に登場したボス達とそのステージにしても、ゲームボーイのハード制約の都合で一部、弱体化していたり、演出的に弱くなっている部分があり、忠実に再現しようとする本気が感じられないのが何とも腹立たしい。
オートセーブ導入で刷新されたゲームバランスは確かに魅力的だ。しかし、そのバランスを目指す為に最大の売りであるスピード感を殺し、アクションゲームとしての個性と売りを失わせた事は断じて許される事ではない。それまでのシリーズが一貫して守ってきた事であり、最大の強みとも言える部分を失わせたら、それではただのぶつ切り構成で歯切れの悪いアクションゲームになるも同然では無いか。何故、ロックマンワールドシリーズのような上手いアレンジを目指そうとしなかったのか。新しさを求める意欲は買うが、この程度のものしか作れないのなら王道を貫いた方が遥かにマシだったのは言うまでも無い。こんな具合に今作にはロックマンXらしさが皆無。あまりに中途半端な仕上がりになってしまっているのだ。初の携帯機版ロックマンXがこの出来とは泣かざるを得ない。

操作性も褒められたものではない。挙動こそ正伝を踏襲しているが、ボタン数の少なさがアダとなり、ダッシュアクションが十字キー二度押し、或いは十字キー下+Aボタンと変更された事により、微妙に出し難くなってしまっている。
ただ、ダッシュ前提となる地形が少なめになるなど、ある程度、緩和策が取られているのはせめてもの救い。また、ゲームバランスもオートセーブの恩恵もあり、シリーズ初心者でも諦めない気持ちと向上心があれば確実に突破可能な難易度となっているのも見事だ。
ボリューム周りは二部構成の不可解さもあり、違和感がある。隠し要素こそ結構な量が用意されているのだが、その不可解さもあってか、あまり満足感の得られる作りにはなってない。量はそこそこあるのに、何故か満足感が得られないというのも、奇妙な話である。
グラフィック、音楽も全体的に並の域を出ない。派手過ぎず地味過ぎずのソツなくまとまった出来、悪く言えば特徴の無い仕上がりになっている。演出周りもゲームボーイという事で少し地味。ただ、ボスの爆発シーンはそれなりに迫力のある仕上がりとなっており、辛うじてらしさを出している。
一方でストーリーはどうしようもない酷さ。『ロックマンX2』と『ロックマンX3』の中間を描いた、ファンには興味深い内容なのだが、不可解な二部構成の存在もあって滅茶苦茶。更に台詞のテキストの質が非常に低く、頭の悪い日本語が次々と乱発される。正直、中学生の方がまだ上手く書けるのではと思ってしまうぐらいの酷さで、シリーズ経験者のみならず、初心者ですらその出来の酷さには悪い意味で溜息が出てしまうだろう。

更にオリジナル要素も酷く、新キャラクターは使い捨て、新たに登場する二体のボスは雑魚同然と散々。如何にも適当に入れました、という乱暴さが滲み出ているのが許し難い。
オートセーブによって刷新されたゲームバランス、不可解とは言えシリーズとしては革新的な二部構成と、色々と光るものもあるのだが、基本的な完成度が低い為、これは素晴らしいと強調して褒められないのが何とも腹立たしい。ロックマンXの新作としても、テンポが悪かったり、レベルデザインが意味不明だったりと、無茶苦茶な出来になってしまっていて、いちファンとしては涙が出る思いだ。
シリーズ初心者には遊び易い作りではあるが、色々と作りの甘い部分が多過ぎる今作。はっきり言って、あまりお薦めできない問題作である。シリーズファンも興味がある人ならどうぞ、と言った感じ。無理にプレイする必要は無い一本だ。
これをやる位なら、ゲームボーイアドバンスのロックマンゼロシリーズをどうぞ。
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