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≫ロックマンX2 ソウルイレイザー
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 4179円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー専用(※カラー以前のゲームボーイでは遊べません
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 2〜3時間(エンディング目的:エックス編&ゼロ編)、4〜6時間(真エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
レプリロイドのプログラムが突如、消えてなくなる。まるで魂を抜かれたかのように、レプリロイドが二度と動かない鉄屑に変化してしまうこの原因不明の現象は『イレイズ』と呼ばれ、恐れられた。

そして後に大事件が起きる。
レプリロイド研究施設のある南洋の島『ラグズランド』のレプリロイド反応が一瞬にして消え去る。大量のレプリロイドがイレイズされたのである。

ラグズランドで何が起こっているのか。
イレギュラーハンター、エックスとゼロはすぐさま現場へと向かう。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆セーブ時間高速化で、ゲームテンポを阻害しない作りに進化を遂げたオートセーブシステム
◆オートセーブの進化により、復活を遂げたロックマンXシリーズ伝統のスピード感
◆エックス編、ゼロ編と意義ある分割が行われ、自然なものへと改められた二部構成シナリオ
◆テンポの改善とスピード感の復活で、更に深まったロックマンXとしての再現度の高さ
◆特殊武器の変更、新たな巨大ボスに地形など、前作以上に強化されたオリジナル要素
◆躍動感溢れる動きで真剣勝負を挑んでくるよう、改善が図られた新しいボスキャラクター達
◆集めたソウルで強化パーツを購入する、救済処置として上手く完成されたソウルシステム
◆両方のシナリオを攻略しないと最終ボスを戦えない仕様になった事で、密度が大幅に強化された全体のボリューム
◆前作同様、相変わらず地味に充実した特典要素の数々
◆カラー専用の恩恵を受け、より派手でバラエティー豊かになったステージギミック
◆作風は前作と一緒ながら、派手なエフェクトなどの追加で地味に進化したグラフィック
◆良アレンジの音楽(特にボス戦イントロ曲はオリジナルのロックマンX2よりも臨場感倍増)
◆文字サイズが大きくなり、見栄えが良くなったメッセージテキスト
◆文字サイズ改善とグラフィックの強化で非常に綺麗になったストーリーデモ
◆オペレーターとしてまさかの再登場を果たした、『ロックマンX4』のヒロイン・アイリス

--- Bad Point ---
致命的過ぎるライフアップ取得キャンセルバグ(気をつけないと大変な事になる)
◆一部、統一性の無いステージギミックの存在(特に激流のギミックが酷い)
◆前作と同様、頭の悪い日本語によるテキストで台無しのストーリー
◆相変わらず煩わしい操作性とそれを考慮しない、ダッシュアクションの使用前提地形を増やしたステージ構成
◆一部、回避不能な攻撃を仕掛けてくるボスの存在(特にラスボス最終形態が酷い)
◆統一性の無いギミックと一部ボスの問題で乱れてしまっているゲームバランス
◆ランチャー・オクトパルドとバーニン・ナウマンダーステージの音楽差し替えミス(何故か逆)
◆二回戦以降も省略できず、地味にイライラさせられる一部ボスの会話デモ(願わくば、省略される仕様にするか、スタートボタンでスキップできる作りにして欲しかった)
◆非掲載な上、本編でも説明が一切無いゼロの必殺技コマンド
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
バグではない。仕様だ。

では何故、海外版では修正されているんですか?


シリーズ初の携帯ゲーム機向け作品でありながら、本編構成やゲームテンポを乱す救済措置の存在で、無理矢理感のある出来となってしまった『ロックマンX サイバーミッション』の続編。

システムを洗練させ、致命的なバグを引っさげて帰って来た大問題作だ。

ゲーム内容は前作『ロックマンX サイバーミッション』と正伝ロックマンXシリーズに準拠した、横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。主人公のエックスを操作し、自由に選択可能なステージに挑戦し、最後に待ち受けるボスを倒して特殊武器を取得したりしながら最終ステージを目指すというものだ。
システム周りは正伝シリーズを踏襲し、一部要素は前作のサイバーミッションから継承。『オートセーブ』、二部構成のシナリオなどは今回も実装されている。しかし、前者は処理速度の遅さによるゲームテンポの低下、後者はシナリオ全体の違和感助長と言った問題点が多い作りで、お世辞にも評価に値する代物ではなかった。そう批判を喰らったにも構わず、今作もそれらの要素を実装してしまっている。この時点で既に悪いイメージが付きまとうのは言うまでも無い。だが、さすがに続編だけに今回はどのシステムも大幅な改良が施されている。
まず前者だが、最大の難点だった処理速度が劇的に改善。ゲームボーイカラー専用となり、高速演算処理が可能になった強みを反映させ、僅か0.5〜1秒の圧倒的な速度でセーブが行われるようになった。これにより、ゲームテンポも正伝と遜色無いレベルとなり、いつものロックマンXらしいスピーディなアクションを堪能できるようになった。更に今回はカラー専用、すなわちモノクロの旧式ゲームボーイでのプレイが不可能となった事で、残像問題も解決。残像の無い良好な状態でプレイするのが基本になったので、快適性も大きく向上した。途切れ途切れになる展開、白黒でプレイした際の酷い残像で嫌らしいストレスを感じさせた前作の面影は何処へやら。これぞ、ロックマンXと断言できるほどのクオリティに進化を遂げている。正直、こんなに進歩するなら最初からカラー専用で作るべきだったんじゃ、と突っ込みたくなる所もあるが、前作のストレスフルな作りに憤りを覚えてたプレイヤーにとって、今作のこの改善は感涙モノ。やっとここにゲームボーイのロックマンXが誕生した感じだ。
そして後者、二部構成のシナリオも、二つの難易度を攻略するという意味不明で不自然な一本道構成を廃止。『ロックマンX4』以降のシリーズで定番の『ダブルヒーローシステム』による『エックスミッション』、『ゼロミッション』と言ったシナリオ分けを行った、自然且つ説得力のある構成に見直された。『ゼロミッション』と紹介した通り、今回は相棒のゼロもプレイヤーキャラクターとして参加。『ロックマンX4』以降のシリーズと同様に、ゼットセイバーによる斬撃によるアクションが楽しめるようになった。また、この二つのシナリオは最初から選択可能。最初はエックス編しか遊べないと言った縛りもなく、プレイヤーの好きなシナリオから始められるようにもなった。そして更に、シナリオ自体も大きく改善され、どれも真の黒幕との戦闘には入らず完結する仕組みになった。黒幕との戦いまで行きたければ、二つのシナリオをクリアして『エクストリーム』なる決着編を出し、全てをクリアしなければいけなくなったのである。再度、最初からやり直す必要が生じるので、若干の違和感はあるが、奇妙な難易度分けが行われてた前作よりかは流れとしては自然。それにエクストリームは前作にもあったが、今回はストーリーもちゃんと描かれる為、淡々と戦闘を繰り広げる味気なさもなくなっている。ある意味、理想的で最後の最後まで遊び倒すモチベーションが湧く構成になったと言えるだろう。まだ若干、課題は残されてはいるとは言え、あの不自然さを撤廃する働きかけが行われているのは有り難いところ。ここもまたオートセーブと同様、一つの完成形に達したとも言うべき仕上がりになっている。
他に今作も過去の『ロックマンX〜3』のボスが登場するなど、リメイクの色彩が強い作りであるが、前作以上に新作要素が強化され、今作だけでしか登場しないボスが増えたほか、ボスから得られる特殊武器も、一部は新しいものに改められている。更にシステム周りにも敵が落とす『DNAソウル』なるアイテムを集める事でアイテムやパーツを作成するシステム、キャラクターを切り替える『スクランブルチェンジ』と言った新システムが追加されている徹底振り。新作要素は前作でも幾つか盛り込まれていたが、何処となくオリジナルを大事にしようとする遠慮がちなところがあった。だが、今回は新作色をもっと出そうと吹っ切れたのか、所々で独自性が炸裂している。ある意味、『ロックマンワールド』を目指そうとした結果だろうか。その為、今回は前作以上にオリジナル経験者も新鮮な気持ちで楽しめる作りに進歩を遂げている。
カラー専用による処理の高速化にシナリオ構成の見直し、そして新作要素の強化と全体的には続編としては申し分の無い仕上がり。色々とこなれてなく、アクションゲームとしても問題の多かった前作をしっかりと遊べるゲームにしたい、という思いが随所に表れており、本領発揮と言った感じとなっている。先の繰り返しになるが、ようやくゲームボーイのロックマンXがここに誕生。ファン待望の作品に仕上げられている。

…のだが、残念ながら今作、これほどの進化を遂げながらゲームとしての出来は前作以上に酷くなっている。というのも、突貫工事で作ったとしか思えないほど、作りが雑。そしてその突貫工事を象徴する致命的なバグもあり、それが作品自体の魅力を根底から台無しにしてしまっているのだ。 特にバグは酷過ぎるの一言。中でも『ライフアップ』のバグが傑出した酷さ。エックス、或いはゼロの体力の最大値を上げる、シリーズではお馴染みの強化アイテムだが、 これが何と、道中で一度ミスする(体力ゼロになる、穴に落ちる)とその効果がリセットされてしまうのである。しかも、リセットされながらアイテムを回収した記録は残される。つまり、再度取り直そうと思ってもそのライフアップは絶対に取れない。体力の最大値を上げる修正を行う事ができない。結果的に不利な状態でゲームをプレイせざるを得なくなってしまうのである。一応、解決策として、ボスを倒してステージをクリアした後、再び同じステージに入り、アイテムを回収すると同時にステージから脱出(メニュー画面のエスケープユニットを起動)すれば、効果はずっと持続されるようになる。だが、こんな面倒臭い事を強いられるのに面白さなんてあるはずがなく。純粋にアクションを楽しみたいプレイヤーにしてみれば、苦痛この上ない最低なバグになってしまっている。こんなお粗末レベルのバグ、普通に直されて然るべきもの。それに、テストプレイをしてたのならば直にデバッカーが気付くものでもある。なのに今作は一切直さず、こうして残されてしまっており、ゲームプレイに甚大な問題を及ぼしてしまっている。オブラートに包まず言わせてもらうが、これは手抜きにも程がある。お粗末レベルのバグを残したままにするとか、どういう神経があったらそんな判断を下せるのか?普通なら直す判断を下すものだろう。そうも普通の判断を下さず、製品化として市場に流通させたのは非常に許し難い。ファン心理で言わせてもらうと、何でそんな馬鹿げた神経の持ち主がロックマンという伝統あるシリーズに携わっているんだと怒鳴りたくなる。こんなバグが存在する為、本編を快適にプレイできたりするはずがなく。特にフルパワー状態、それも無駄な手数を踏まずに攻略したいプレイヤーにしてみれば苦行も甚だしい。解決策があるだけ救いとも言えるが、お粗末過ぎるバグを残し、製品化の判断を下したスタッフに対してはふざけるなの一言である。納期が厳しかったとか、そこに止む無き理由があっても一切同情はしない。この程度のバグは直して然るべきものだ。それを放置した罪は非常に重い。
バグのみならず、単なる突貫工事による調整不足も手で目を覆いたくなるほどの酷さだ。特に『激流トラップ』はその代表格で、電撃が流れている激流は即死というルールがありながら、後のステージに電撃も何も流れてないのに即死扱いになるイレギュラーな激流が登場するなど、全体の統一が図れていない。こんな事をしている為に不慮の事故にもなり易く、引っ掛かった際には相当な苛立ちを覚えるのは言うまでもなく。そういう具合にルールを設けながら、それを逸脱したものを導入するとか、陰険過ぎる。ルールを設けたのなら、そのルールを守るのが基本中の基本であろう。そうも例外を出し、プレイヤーをはめるとか、申し訳ないがロックマンはおろかアクションゲームを分かっていなさ過ぎだ。
正直、バグや突貫工事さえなければ、今作はゲームボーイのロックマンXとしてのみならず、一本のアクションゲームとしても非常に完成度の高いものになっていた。実際、ゲームテンポは非常に良好だし、爽快感も申し分ない。更にシリーズファンにしても、リメイクと見せかけて見た事の無いボスなどが登場すると言った新しい要素が満載で、大変魅力的な内容になっている。DNAソウルによるパーツ開発にスクランブルチェンジも、後のシリーズに影響を与える可能性が満ち溢れており、一概に非難できないところがある。
しかし、そういう魅力を潰すデバッグの手抜きと突貫工事があまりに多く、とても評価に価しないゲームになってしまっているのは残念としか言い様が無い。何故、こんなに酷い状態で世に出す真似をしたのか。幾ら納期がなかったと言うにしても、この愛の無い出来栄えには本当、残念だし憤りを覚えるばかりである。それほどまでに基本部分は良いのに中身は台無し。シリーズの歴史に泥を塗るレベルの問題作になっているのだ。

こんな作りなので、ゲームバランスも当然のように酷い。シリーズの中では屈指の問題作とされる『ロックマンX6』にギリギリ近い壊れっぷりだ。さすがに『ロックマンX6』ほど遊ぶのが辛いレベルではないが、それでも全体的に絶妙の一言を付けられたレベルではない。操作性に関しても前作のままで、ダッシュ移動の出し難さは今作でも健在である。しかも今回はそのダッシュを使う場面が増え、嫌らしさも増しているのだからどうしようもない。
ボリューム周りは構成の見直しもあって、違和感はなくなった。また、選んだキャラクターごとに違うシナリオが楽しめるようになった事で、遊び込む魅力も僅かに向上。この部分に関しては全体的に進化を遂げた仕上がりになっている。
グラフィックもカラー専用になった事でドット絵の質が向上。特にストーリーデモにおいて、その進化の様を堪能する事ができる。音楽は前作と同様、過去のシリーズのアレンジ中心で新曲は皆無。ただ、アレンジ具合は良好で、何気にオリジナル版よりもカッコ良さと不気味さが増した通常ボス戦のイントロとその戦闘曲は地味に要チェックである。
また演出周りも今回は巨大ボスが複数登場するようになった影響を受け、全体的にパワーアップ。携帯機ならではの地味さはあれど、なかなか頑張った仕上がりになっている。

ストーリーも構成見直しで、それなりに自然な内容になった。しかし、テキストの酷さはそのまま。相変わらずの子供が書いたかのような酷い台詞の数々には、シリーズ経験者のみならず、低年齢層でも吐き気を覚えるだろう。ただ、さりげなく『ロックマンX4』に登場したアイリスが特別出演しているのは、ナイスなファンサービスと言える。
全体的に続編としては素直なパワーアップが行われた内容になっている。特にゲームテンポの向上とシナリオ構成の見直しは、前作に違和感を覚えていたプレイヤーにとっては嬉しい進化と言えるだろう。だが、前作以上に突貫工事の目立つ作りと致命的なバグの存在で、これほど魅力的でゲームボーイシリーズの完成形となった内容は全て台無しにされている。普通に考えて直して然るべきバグを放置し、ロックマンの新作なら普通に売れると判断したかと疑われてもおかしくない状態で史上にリリースした今作のスタッフの罪は非常に重い。
素材は悪く無いだけに、丁寧に作れば間違いなくゲームボーイカラー末期の傑作になっていた。しかし、それを愚かな判断によって台無しにし、末期の問題作という汚名を着せられてしまった今作。前作以上にお薦めできない一本だ。シリーズファンも無理にプレイする必要は無い。これをやる位なら、ゲームボーイアドバンスのロックマンゼロシリーズが遥かにマシ。そちらで爽快で手応えのあるアクションを楽しもう。
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