Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Game Boy>
  4. ロックマンワールド2
≫ロックマンワールド2
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:3675円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫VC版(3DS) / ≫カプコンオンラインゲームズ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー方式)
■総説明書ページ数 ニンテンドウパワー版所持の為、不明
■推定クリア時間 1時間半〜3時間
前回の戦いでズタボロに敗北を喫したDr.ワイリーは、ある秘策を思いついた。それは時空研究所で開発中にあるタイムマシンを盗み出し、過去に遡ってロックマンを倒すというものだった。

策を実行する為、ワイリーは時空研究所に潜入。開発段階にあったタイムマシンを盗み出すのだが、タイムマシンは欠陥品である事が発覚。秘策は開始目前にして潰れかける。止む無く、彼はタイムマシンの改造に着手するのだが、結果的に過去に遡れず、未来にしか行けないタイムマシンが出来上がってしまう。
だが、逆に彼は未来のロックマンを連れ去って改造し、現代のロックマンと戦わせる策を思いつく。そしてタイムマシンを通じて未来の自分とコンタクトを取り、未来のロックマンこと、お手伝いロボットに戻ったロックを現代へと連れ出す事に成功。彼に改造を施し、現代のロックマンにぶつける為の作戦を練り始める。

同じ頃、タイムマシンが盗まれた時空研究所を調査していたライト博士は、ラッシュのスーパー嗅覚により、マシンを盗み出した犯人がワイリーである事を突き止める。
再び彼が何か企んでいる事を察したライト博士は、ロックマンにワイリーの捜索を命じる。
かくして、再び始まるロックマンとワイリーとの戦い。果たして、その結末は。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作に引き続き、携帯ゲーム機の制限、特性を活かしたゲームデザイン&前半後半と切り分けた個性的な本編構成
◆後半の4体のボスに専用ステージが用意され、いつものロックマンらしくなったレベルデザイン&総計ボリューム
◆前半と後半で趣を変えた方式を取り入れた、ユニークなステージセレクトシステム
◆スライディング、サポートキャラクター『ラッシュ』追加等に伴い、大幅に行動の幅が広がったロックマンのアクション
◆シリーズ初心者にはこの上ない、温くてゴリ押しが通し易い異質な難易度設定
◆前作からそのまま継承された、覚え易くてメモもし易いコンティニュー用パスワード
◆覚え易いボタン配置とゲームボーイの残像問題を考慮した調整が光る、良好な操作性
◆全曲完全オリジナルという、異様なまでに気合いが入った音楽(だが…?)
◆独特の音楽が醸し出す、ロックマンシリーズとしては極めて異質な哀愁漂う世界観と空気感

--- Bad Point ---
◆ステージが増えたと思わせて、前作以上に密度が薄くなった総計ボリューム
◆悪い意味でロックマンらしさ皆無、手応え皆無の難易度設定
◆全曲オリジナルという魅力こそあるが、肝心の質が酷過ぎる音楽(キンキンする)
◆逆に言えば、原作の雰囲気を完全に無視したオリジナルの楽曲
◆一部、改悪されたアクションの存在(特に滑り出すと止まらないスライディング)
◆基本こそ前作を踏襲しながらも、一部の改悪されたアクションの所為で妙な違和感が残された操作性(ダメージを受けても従来みたく、ノックバックしないのにも違和感が)
◆威力の改悪が行われた特殊武器(中でもメタルブレードは反則級の強さに…)
◆存在意義不明な上、大して強くもないオリジナルボス『クイント』
◆同じく存在意義不明な上、使い勝手もすこぶる悪い新特殊武器『サクガーン』
◆頭身を間違えていたり、描き込みも甘いなど、あり得ないほどの技術レベルの低さが炸裂したグラフィック
◆迫力に乏しい上、作り込みの甘さも散見される演出周り(特にボス撃破時の演出)
◆シリーズファンなら突っ込まざるを得ない、エンディングでのロックマンの行動
▼Review ≪Last Update : 9/1/2013≫
命運、決まる時。

だが、連れ去ってきたのは本当に未来のロックマンだったのか。


ハードと容量面の制約を巧みに活かし、携帯機でも正伝シリーズと引けを取らないゲーム性を再現させ、高い評価を得たロックマンシリーズ外伝『ロックマンワールド』の続編。

どうしてこうなった!?
前作とは比べ物にならない劣化を遂げた、腑に落ちなさ過ぎる続編だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。主人公のロックマンを操作し、自由に選択できる4つのステージに挑戦。その最深部で待ち構えるボスを倒して特殊武器を獲得し、残りのステージを攻略しながら最終ステージを目指すというものだ。
基本システムは前作、『ロックマンワールド』を踏襲。ファミコン版のロックマン二作より厳選した4体のボスとオリジナルボス『ロックマンキラー』、ファミコン版から一新したステージ構成、そして前半と中間、後半に分けた特徴的な本編の構成などは今作でも引き続き採用されている。なお、今作のボスは『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』とその続編『ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?』から厳選された4体で構成されている。前半ではロックマン2のボス4体と対決、それを全て倒し終えると、次はロックマン3のボス4体との対決へと移行する仕組みだ。前作『ロックマンワールド』では、前半の4体に個別のステージが用意されていたが、後半の4体には個別のステージが無く、中間ステージにて4体全てと戦うという、大胆でユニークな構成としていた。今作も容量は前作と同じなのだが、大胆さを緩和する目的で、4体に個別のステージを用意。それを難なく実現させる為にステージ1つのスケールを短めにし、全体ボリュームの強化を図った。これにより、今作では前半4ステージ、中間1ステージ、そして更に後半4ステージという構成に改められ、ファミコン版のロックマンらしさが現れたものに進歩を遂げている。さすがに中間ステージで4体のボスと連戦する構成には厳しいところがあったのも事実なので、この正伝シリーズに準じた構成に改めたのは良い判断だったと言えるだろう。
また、全体の展開にも一捻りが加えられている。ゲーム序盤の4体はいつも通り、ステージセレクト画面で選択するのに対し、後半4体はアクションステージ上でロックマンを操作して選択するという、これまでのロックマンシリーズに無い新しい形式が起用されているのである。この選択形式は中間ステージこと、ワイリー基地内の転送カプセルが置かれた部屋という設定を最大限に活かしたものとなっていて、ストーリーをシステムと絡み合わせたユニークなものに仕上げられている。更に面白いのが、ステージセレクトとは違い、この選択形式では何処にどのボスが居るのか分からない事。カプセルにはどのボスがその先に待ち受けているかが描かれてないので、さながらトランプのババ抜きのようなスリルあるステージ選択ができるのだ。初めは先が読めるけど、後半は先が読めない。そんな対照的な遊びが凝らされたこの特徴的なステージセレクトシステムは、地味ながらも魅力満載。何故、後半4体にセレクト画面用のグラフィックを作らなかったのか。それは明らかに容量の制約を受けてのものだろうが、そのおかげでこのような面白いセレクトシステムが作り出せたのだと考えれば、まさに制約あってこその賜物と言える。前作でも容量の制約を逆に利用する工夫が炸裂していたが、今作でもそれは健在。しかも、それがシリーズ初の緊張感を醸し出しているのだから、非常に面白いところだ。容量の少なさなどものともしない、徹底したこだわり。今作もそれが炸裂した仕上がりとなっている。
更に細かい所で、今回はロックマンのアクション周りも強化。ロックマン3を基準としたものに改め、スライディングやサポートキャラクター、ラッシュによる特殊なアクションなど、前作以上に動きが多彩になっている。その動きを駆使し、ロックマン2のボスと戦う逆転展開(?)が楽しめるのも、シリーズファンには大きな見所と言える。
その他、1つのステージは短くなったが、量が増えた事で背景バリエーションが強化、救済アイテムの『E缶』が追加されたなどの改善点がある。例によって、ステージ構成はファミコン版とは別物、オリジナルのボスとの戦いもあるなど、新作としての作り込みも万全だ。
若干、スケールダウンした感も否めないが、続編としては申し分の無い進化。それでいて、ファミコン版ロックマンにはない新たな表現技法も取り入れるなど、意欲的な試みも施されていたりと、新要素もバッチリ。続編としてのお約束をちゃんと守った、正当進化系というに相応しい内容に仕上げられている。…でも!だが!しかぁ〜し!?

何故にまた、そんな木曜洋画劇場でCv.大塚芳忠みたいな締めをしたのかというと今作、細かい要素は進化していながら、ゲーム全体の技術レベルが前作以上に低下してしまっているのである。前作と出す順番を間違えたんじゃないのか?…と、本気で突っ込みたくなるほどに。
特にその象徴的部分と言えるのが、グラフィックと音楽である。いずれもゲーム性の部分と直結しない箇所である為、別にそこが悪かろうが、ゲーム部分の出来が良ければ気にするまでも無い。しかしながら、今作はそこの悪さが擁護の余地を超えてしまっている。一言でまとめてしまうと、ショボイ。とんでもなくショボイ。これを作ったスタッフはゲームボーイのゲームを作るのが初めてだったのか!?、と疑ってしまうほどの出来なのだ。
グラフィックに関しては、作風は前作と同じで、ロックマンとワイリー以外は新規に作られたものになっているのだが、これがまた雑。地形を必要以上に小さく描いてしまってたり、特定のボスに至っては頭身を間違えていたりなど、突っ込みどころだらけ。普通、そういうのは直して当然だろ、と思うべきところが一切直されず、そのまま起用されてしまっているのだ。中でも頭身の違うボスは凄まじく、ロックマンが巨人だと錯覚しかねない珍妙な構図となってしまっている。地形にしても、主にボス部屋が異様に狭かったり、攻撃が回避し難くくなっていたりと、ステージ設計面で問題を起こしていたりもする。そんな雑な作りであるものだから、当然のようにプレイ中には違和感が大爆発。「何でこんな作りになってるの?」とプレイヤーに対して数々の謎を投げ飛ばしてくるのである。また、前作をプレイした人ならば、「あのクオリティは何処へ行った?」と言いたくなること請け合い。丁寧な仕事ぶりを全く感じられない、信じられない出来なのだ。
そして、音楽の方はもっと酷い。キンキンするような高音が鳴り響く、一歩間違えればノイズも同然なとんでもないものになってしまっている。何処と無く、適当に作ったかのような雰囲気もあり、中でもステージセレクト画面で流れる曲は少し聴いただけでも気分を害されかねないほどのものになってしまっている。一部、前作のような作風の曲もあるのだが、それもサビの部分で高音が炸裂する始末。ヘッドホンを装着してのプレイが全くお薦めできないのは、言うまでもないだろう。前作をプレイした方なら、きちんとアレンジしてた前作のあの丁寧な仕事ぶりは一体何処へ!?…と叫びたくなること請け合い。文字通り、耳を疑ってしまう凄まじいクオリティとなってしまっているのである。更に効果音の方も質は低下しており、爆発音は小さく、アイテム獲得時の音もロックマンらしからぬものになっていたりと散々。本当、何で続編なのにここまで質が低くなっているのと言わずには居られない出来。信じ難い仕上がりになっているのだ。所詮、ゲーム性とは関連しない箇所だし…と気にしないフリをするのも困難なくらいに、である。幾ら何でも、これは酷過ぎとしか言い様が無い。前作より質の低い続編とか、何のジョークだろうか。
それら以外の部分にも欠点、改悪は多い。ステージ構成では、短くなった反動により、攻略のやり甲斐と充実感が低下。難易度もロックマン自身のノックバック、ダメージを喰らった際に後ろに一歩下がる仕様が無くなり、ゴリ押しが容易に通る調整になってしまっていたりと、シリーズ伝統の歯応えが失われてしまっている。ボス戦もその仕様の所為で難易度が急激に低下し、戦う面白さも薄くなっている。そして極めつけ、オリジナルボスである『ロックマンキラー』(正確にはキラーではない新ボス)も、存在意義不明、オリジナルの特殊武器も使いどころ皆無と、新規要素の作り込みも甘過ぎる。
前作の難易度があまりに高かった為、低くしたのはアクションゲームが得意でない人にしてみれば、嬉しい改善点だと言えるだろう。しかし、逆にアクションゲームが好きな人やロックマンシリーズファンにしてみれば、満足度が劇的に下がった事も意味する。それでステージが攻略し甲斐のある、充実した内容に出来ていれば救いがあったものの、そちらも短くなって味薄め、ゴリ押し可能な仕様もあってやり甲斐も薄いという始末。本当、ロックマンの新作としても、単体のアクションゲームとしても高い完成度を誇っていた前作に泥を塗る酷い出来だ。前作とは違い、製作スタッフがロックマンやアクションゲームを全く分かっていない事が露骨なまでに現れている。何故、こんなクオリティのまま、世に出してしまったのか。また、何故にこんな作品を続編と名乗らせたのか。疑問だらけである。
後半のボスの姿が見えないステージセレクトなど、光る部分も多く、難易度も理不尽な所はないので、全く遊べないゲームになってないのは救い。だが、続編としての進化に欠ける作りは一切擁護できない。後にシリーズプロデューサーの稲船敬二氏の話より、今作を作ったのが前作とは別の外注会社であった事が明らかとされたが、この出来を見せ付けられると、如何にその会社が技術力に劣る所であったかを痛感させられる。丁寧に作り込めば良作に成り得たところもあるのに、何故、こうなったのか。本当、これほど前作の方が圧倒的に良い出来だと断言できる続編作品も滅多にないだろう。遊べない訳ではないが、続編を名乗る作品としてはあまりにもお粗末。信じ難いものになってしまっているのだ。

劣化した部分は先に紹介した箇所だけに限らない。操作性も基本的に前作基準なのだが、挙動が微かに重くなってたりなど、違和感を感じる箇所がある。ノックバックが無くなった点では向上したとも言えるのだが、前作と比べると言葉には表現し難い”コレジャナイ感”を感じさせられるものになっている。
また、特殊武器でも、ボスの一人である『メタルマン』から得られる『メタルブレード』が原作のファミコン版以上に威力、使い勝手が向上してとんでもない強さになってたりと、バランス調整の面で改悪が散見される。先に紹介したオリジナルボスから得られる武器『サクガーン』も使う局面に恵まれず、何の為に用意されたのか存在意義不明な扱いになっている辺りにも、作り込みの甘さと適当な仕事ぶりを痛感させられる。
ボリュームも数の面では前作より増えたが、一つ一つのステージが短くなった事で、エンディングまでにかかる時間までもが縮小。数では多いはずなのに充実感が得られない、珍妙な構成になっている。ただ、ステージの作りには目立って悪いものは無い。不自然なデザインになってはいるが、陰湿なトラップはないので、無難に遊べる仕上がりになっている。
また、キンキンと鳴り響くノイズ寸前の音楽にも一つ、良い所がある。それは全曲が今作オリジナルのものであるという事。ファミコン版のアレンジ曲が一切無く、全曲が今作独自のものになっているのである。更に音は酷いが、よく聴いてみると曲自体の出来も悪くない。特に正伝のロックマンには無い、哀愁漂う切ない旋律はインパクト抜群だ。この作風が顕著に現れた曲もあり、中でもニードルマンステージの曲は要チェックである。

演出周りも随所に挟まれるデモシーンなど、基本的に前作基準の作風を維持してはいる。ただ、爆発のエフェクトが素っ気無いものになってたり、大型ボスは頭身のミスで変な事になっていたりと、クオリティは低い。ストーリーでもシリーズの世界観をぶち壊す展開が描かれたりなど、スタッフのロックマンに対する理解の無さを痛感させられる。
純粋に続編として見てみれば、ボリュームアップした本編、スライディング追加によるアクション性の強化など、確実な進化を遂げてはいる。シャッフル形式の後半のステージセレクトなど、容量の制約を逆手に取るアイディアも仕込んだりと、前作の作風を踏襲し、且つ新しい遊びを体験させるという姿勢もしっかりしている。
だが、全体のクオリティは前作に遠く及ばない低さ。単体のアクションゲームとしても、ロックマンシリーズの新作としてもその完成度は褒められたものではなく、悪い意味で印象的な作品になってしまっている。前作以上に劣化したという信じ難い特徴を持つ今作。
言うまでもないが、アクションゲーム好き、ロックマンシリーズファンには全くお薦めできない問題作である。とにかくショボい。ただ、難易度が低いので、ロックマンシリーズ入門編としては最適な一本と言えるかもしれない。
≫トップに戻る≪