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≫マリオのピクロス
■発売元 任天堂
■開発元 ジュピター、エイプ
■ジャンル ピクチャークロスワード
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:4095円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ+中断1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 12ページ
■推定クリア時間 15〜25時間
マス目の中から一枚の絵を導き出す、あの『お絵かきロジック』が『ピクロス』と名を改めてゲーム化。
全部で200以上の問題が貴方を待つ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆上と左の数値を頼りにマス目を削る、唯一無二の独創性に富んだゲームルール
◆ボリューム満点・やり応え満点の全256問ものピクロス問題
◆適切なキーアサインと驚異的な取っ付き易さが光る、秀逸な操作性
◆紙媒体で決して味わえぬ緊張感とゲーム独自の強みを兼ね備えた制限時間システム
◆失敗への恐怖というゲーム媒体ならではの恐怖感に秀でた、削りミスのペナルティ
◆初心者が抵抗無く入って行けるよう、絶妙に設計された全体構成(『やさしいピクロス』⇒『ピクロス』の流れ。中級者なら『やさしいピクロス』を飛ばせるのも地味に便利)
◆紙媒体と変わらぬ難しさとゲームならではの利便性に秀でた『タイムトライアルモード』
◆実際のゲームプレイと並行した分かり易い説明が見事な『ルール解説モード』
◆中断セーブ、オートセーブなど携帯ゲーム機の特性を活かした親切機能の数々
◆パズルらしからぬ、コンマ1秒を狭める熱さに富んだやり込み要素・タイムアタック
◆少し聴くだけでも耳に残る、強烈なインパクトに富んだ名曲揃いの音楽
◆マス目を削る楽しさと気持ちよさを引き立てる、爽快な効果音

--- Bad Point ---
◆チマチマとしていて地味に見難い、問題選択画面
◆スーパーゲームボーイでプレイすると何故か悪化するキーレスポンス(何故だか遅くなる。但し、マス削りに関してはGBプレイ時と変わらない)
◆完全ランダム仕様である為、任意に選べぬ不自由さが際立つ『タイムトライアルモード』の問題選択システム
◆メッセージが文字化けするバグの存在(『ピクロス』のキノココースクリア後に起き易い)
◆『タイムトライアルモード』のネームエントリー時の操作の重さ(更に少し見難い)
◆地味に心臓に悪い削りミスの演出(効果音が嫌らしい。人によってはきつい)
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
♪ピクロス、ピクロス、頭がピクロス

歯応え抜群の思考型パズル、ここに参上。


1988年に誕生、パズル誌に掲載されブームを巻き起こした『お絵かきロジック』をコンピュータゲーム化させた作品。開発はジュピター、プロデュース全般をエイプが担当した。

ゲームならではの親切設計と膨大なボリュームが光る、思考型パズルゲームの傑作だ。

ゲーム内容は、いわゆる『テトリス』のような落ちモノ系とは異なる、問題攻略に特化した思考型のパズルゲーム。マス目状のフィールドの縦、横に書かれた数字をヒントにマス目を塗り潰し、隠されたイラストを完成させていくというものである。
これだけでは想像し難いと思われるので、より具体的な流れを「5×5」サイズのフィールドを例に解説する。まず問題が始まると「5×5」のマス目状のフィールドが表示される。当然ながら、開始時点では白紙。この白紙上にポツンと表示されたカーソルを十字キーで操作し、マス目をAボタンで塗っていくのがプレイヤーのすべき事となる。但し、イタズラにマス目を塗って良い訳ではあらず。塗り潰すマス目は、フィールドの縦、横に書かれた数字通りにしていかねばならない。例えば、この「5×5」マスで縦、横共に「5」と書かれていた場合は、5マス全てを塗り潰せるということを意味する。逆に「2 2」と書かれていた場合は2マス塗り、1マスを抜かして2マス塗ると言った具合に空白を残す必要が生じる。こう言った縦、横に書かれた数字を矛盾しないよう塗り潰していけば、最終的に隠されたイラストが浮かび上がり、問題クリアとなる。少し駆け足気味だが、以上が今作の大まかな流れだ。少々、ややこしそうな雰囲気があるが、やる事自体は至って単純。手軽に遊べるゲームとなっている。但し、プレイの必須条件として、簡単な足し算や引き算ができる必要あり。残念ながら幼稚園などの小さな子供がプレイするには少々、厳しい。まさに「大人のパズルゲーム」と言ったところだろうか。微かにアダルトな雰囲気漂う作りとなっている。だからと言って、別にイラストに卑猥なのがある訳じゃないけども(汗)。
そんな今作で収録されてる問題は全部で三種類。初心者向けの問題が中心の『やさしいピクロス』、中級者向けの問題が中心の『ピクロス』、そして上級者向けの『タイムトライアル』が用意されている。各問題は「コース」と呼ばれる問題の集合体で構成。コース内の問題を全て解くと、次のコースへと進める仕組みとなっている。但し、これは『ピクロス』だけ。『やさしいピクロス』の問題は1コースのみの控え目の構成になっている。また『タイムトライアル』は『ピクロス』の全コースの問題を全部攻略すると出現。最初からは選べない。
更に、この問題に限り、基本システムも別物だ。今作では制限時間制、及びマス目を間違えて塗った際に制限時間が減らされるペナルティシステムが基本システムとして実装されている。紙媒体のピクチャークロスワードと違い、塗る場所を間違えるとそれを丁寧に教えてくれるのである。そして制限時間制と間違える事で時間が減っていくことにより、紙媒体とは異なるスリリングなゲーム性も付加されている。まさにゲームならでは、というべきか。その強みを活かしたゲームデザインが成されているのである。
しかし、『タイムトライアル』だけは間違いは教えてくれない上、制限時間も無い。己の頭だけを頼りに問題を解かねばならないのだ。要は紙媒体と一緒という事。本物のピクロスという訳だ。当然ながら、その難易度はゲーム的な工夫を加えた他の問題以上に飛び抜けたバランス。上級者なら唸ること必至の問題が盛り沢山だ。そんな具合に問題のラインナップはゲーム的なものから、本格的なものまでフル実装。非常に贅沢な遊びが堪能できる内容に仕上げられている。問題の総数も全部で150問以上とボリューム満点。フィールドサイズも先に例で紹介した「5×5」のほか、「10×10」から「15×15」まで用意されており、やり応えは十分だ。また、初心者向けの『やさしいピクロス』では、丁寧なチュートリアルも実装されてる徹底振り。問題ラインナップも小さいサイズを中心にするなどのこだわりが炸裂している。問題の種類の多彩さだけでなく、今作はこう言ったプレイヤーへの配慮に関しても、フルにサポートしている。
ルールの独特さもさる事ながら、多彩な問題と圧倒的なボリューム、そして全くのゲーム初心者から上級者までサポートと、まさに至れり尽くせり。ピクロスことピクチャークロスワードとはどんなゲームか?そして、ゲームならではのピクロスとは?そう言った独自の魅力が満載。入門編としても、応用編としてもこの上ない、贅沢な仕上がりになっている。

そんなピクロス独自の魅力が凝縮された内容も結構な強みだが、それ以上に今作で注目すべきは、ゲームならではの工夫が成されたシステムである。
紙媒体を介して行うピクロスは、時間とかそう言った制約も無しにじっくりとマイペースに解くのが魅力のパズルゲームとして高い人気を博したものである。しかし、紙媒体で行うピクロスは幾多の問題を持っていた。
一つは間違いに気付くまでが長い事。これは魅力の一つでもあるが、塗ったマスが誤りかどうかを全く教えてくれないが故、それに気付くのは解き始めてから相当な時間が経った後になり易いという、気の失せる弊害が生じ易かった。二つはその間違いの修正に無駄な時間を割いてしまう事。紙媒体でのピクロスは基本的に鉛筆、シャープペンシルを用いて行う為、間違いの修正には消しゴムを用いる。だが、消しゴムで行う修正は、正確なマス目まで間違って消してしまうという致命的な欠点を持つ。それ故に誤って消したマスの修正を行うリスクが生じ、直にでも問題を解くのを再開したいという気持ちに水を刺される事態に陥り易かった。また消しゴムの場合、1マス1マスを細かく消すのも不可能。種類にもよるが、基本的に広範囲の削除が基本なので、その点でも要らぬ神経を必要とする欠点があった。ある意味、紙媒体ならではとも言うべきか。パズルゲームとして大きな魅力を持ちながらも、使用するツールがその楽しさを邪魔している側面があった。快適性の面において、決定的に欠落していたのである。そんなピクロスをデジタル媒体のゲームに翻訳した事で何がもたらされたか?紙媒体で問題とされていた欠点の大半が修正されたのだ。
アナログからデジタルへと移行した事で、塗り間違えたマスの修正はボタン一押しで行えるように。そして、1マス単位での確実な修正も可能になり、要らぬ神経と時間を浪費させず、問題を解く事に集中できるようになった。まさにゲームだからこそ出来た表現の数々が、ピクロスというパズルゲームを面倒臭いものから、遊び易いものへと進化させたのだ。同時にゲームならではの表現の数々は、ピクロスに新しい遊びも提示した。それが制限時間制と塗り潰しミスによるペナルティ。このゲームならではの要素を導入した事によって、それまでゆっくり解くのが売りでもあったピクロスにスピード感という新たな売りが付加。素早く、且つ的確にマス目を塗り、絵を完成させるというスリリングなゲーム性が生まれたのだ。如何にミスを最小限に抑え込み、素早くイラストを完成させられるか。この独自の緊張感は、ミスによって制限時間が減らされる、ゲームだからこそのペナルティを設けた事で誕生した賜物と言っても過言ではない。
紙媒体でも、問題を解くまでの時間を競い合うタイムアタックの楽しみはあったが、そこにペナルティというゲーム的な仕掛けを次ぎ込んだ事で、今作ではそれとは趣の異なる緊張感が実現された。間違いが許されない、そして迂闊にマス目を塗ると危ない。そのさながら、アクションゲームに近いスリリングな手応えは、ピクロスというパズルゲームに新しい方向性を与えたと言っても良いだろう。
純粋に紙媒体のピクロスをそのままゲームに翻訳した、芸の無い内容で終わらせなかったのも大きな評価点。単純にマス目を消す、修正すると言った操作をデジタル処理でやり易くするだけに留まらず、ゲームならではの特徴を活かしたゲームデザインを図る。そして、初めての人でも遊べるように塗ったマスが間違ってた際、教えるようにする。こう言ったゲーム独自の強みを活かす一方で、誰もが遊べるものに仕上げようとするこだわりの数々は、まさに任天堂のお家芸だ。しかも、元の魅力を殺さず、敷居の低さを演出させているのだから驚かされる。如何に開発スタッフが真剣に「ピクロスをデジタルのゲームにするに当たり、大切にしなければならぬのは何か?」と考え抜いたのかをうかがい知れる。「5×5」などの小さいフィールドの問題が用意されている辺りも、そんなこだわりが発揮された証拠とも言えるだろう。
紙媒体の弱点を洗い出した上でゲームだからこその修正を行い、且つ新しい遊びを提示。元々、アナログの媒体で主流だったゲームをデジタル化させる際、大抵「遊び易い」という事が前面に出され易い。しかし、今作のようにデジタルならではの遊び易さだけでなく、ゲームならではの面白さまでもが前面に押し出されたタイトルというのも、結構珍しいと言える。
まさに、ゲームならではの工夫を丁寧に行った一本。単純に紙媒体のパズルゲームをデジタル化させただけでは済まぬ、魅力溢れる内容に仕上がっているのだ。任天堂ならではのこだわりの逸品、と言ったところである。

そんなゲームならではのこだわりは操作性にも反映されている。基本的に十字キーとAボタンだけで遊べる、シンプルな設計。複雑な操作を必要とされないので、本当に初心者から上級者まで抵抗なく触れる操作系として完成されている。ゲームバランスも絶妙。特に序盤は全部のマス目を塗り潰せる、完成形のイメージが湧き易い問題を中心とする一方、後半に行けば行くほどそのイメージが湧き難い問題が中心になるなど、メリハリの付け方が上手い。『やさしいピクロス』ではサイズの小さい問題を出すなど、その極端さがハッキリしているのもさすがの一言だ。
そして、ボリュームも先に述べたが問題数が150問以上あるのでやり応えは抜群。問題を解いた後のタイムアタックも非常に熱く、コンマ1秒を争うやり込み甲斐満点のゲームプレイが楽しめるのも魅力的だ。
問題に隠されたイラストのバリエーションも豊か。マリオという事でキノコが出てきたり、ゲームボーイが出て来たりなど、任天堂好きならニヤリとしてしまうネタが盛り沢山。それらのイラストを元の雰囲気をきちんと残して再現したドット絵の完成度もかなりのもの。職人技が炸裂した仕上がりとなっている。音楽も数は少ないが、思わず口ずさんでしまう名曲が盛り沢山。特に『ピクロス』のキノココースの愉快なメインテーマは記憶に残ること間違いなしだ。また、効果音も良質。塗るマスを間違えた際の陰湿な音は、プレイヤーの精神面に嫌な傷を与えまくるだろう。

その他、ピクロス初心者への救済処置として設けられた、ルールを事細かに教えてくれるチュートリアル、自動セーブ機能などの細かな配慮も万全。『タイムトライアル』モード以外に設けられた、縦横の列を自動的に塗り潰してくれるヒント機能も問題を解く際の手がかりとして大いにその存在感を発揮する。
問題選択画面のデザイン、及びインターフェースがチマチマし過ぎている事やスーパーゲームボーイでプレイした際、何故かキーレスポンスが悪くなるなどの欠点も散見されるが、紙媒体のピクロスをゲームとして見事に昇華させたその完成度と作り込みの深さはかなりのもの。ゲームならではの強みを活かす一方で、元のゲームに新しい魅力まで付加させるこだわりが炸裂したこの『マリオのピクロス』。簡単な足し算、引き算ができない小さな子供には安易にオススメできないが、それ以上の年代層の方ならば要プレイの思考型パズルゲームの傑作だ。紙媒体のピクロスに慣れ親しんだ方にもオススメ。但し、あまりに遊び易い作りであるが故に紙に戻れなくなる恐れあり。その点にはご注意を。。
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