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≫スーパーマリオランド


■発売元:任天堂 / ■ジャンル:アクション / ■CERO:A(全年齢対象)/ ■定価:2,600円(税別)

◆公式サイト / ストアページ
≫スーパーマリオランド(ゲームボーイ版:任天堂公式サイト)
≫スーパーマリオランド(『ゲームボーイ Nintendo Switch Online』)

©1989 Nintendo
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:無し / ■推定クリア時間:30分~1時間
あるところに「ピラフト王国」「ミューダ王国」「イーストン王国」「チャイ王国」の4国からなる「サラサ・ランド」と呼ばれる平和な世界があった。そんなサラサ・ランドに正体不明の宇宙怪人「タタンガ」が襲来。各王国の住民たちに宇宙催眠をかけ、自らの思うがままに彼らをあやつり、サラサ・ランド全土を乗っ取ってしまう。
さらにタタンガは、サラサ・ランドの姫君「デイジー」を奪い、自分の后にしようとしていた。

このことを知ったマリオは、デイジー姫を救出するため、サラサ・ランドへと向かう。
果たしてマリオは、タタンガの野望を見事打ち砕き、デイジー姫を助けられるのか?
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆初代『スーパーマリオブラザーズ』を基礎としつつ、アクションやコース構成などで独自性を出したゲームデザイン
◆「スーパーマリオ」シリーズとしても異例にして、独特なインパクトを放つ「シューティングコース」の存在
◆シューティングコースにおける初心者プレイヤーへの配慮(オート連射機能の搭載、ボムなどの要素カットなど)
◆実在する国家、土地をモチーフにした各ワールドの世界観と、そこから醸し出される独特の異国感
◆異国感を醸し出したロケーションと、個性豊かな敵キャラと仕掛けで起伏を表現しきった全4ワールド12コース
◆ワールドごとに固有の存在が出てくるなど、バリエーションの豊富さが異彩を放つ敵キャラクターたち
◆初代『スーパーマリオブラザーズ』っぽい救済措置も設けた、どこか懐かして独特な雰囲気を醸し出したボス戦
◆使い勝手にはクセはあれど、バウンドする性質とコイン回収の能力が印象的な新アクション「スーパーボール」
◆ゲームボーイの性能を踏まえた独自アレンジ兼工夫の数々(1UPアイテムをハートに置き換えるなど)
◆やさしすぎず、難しすぎずの塩梅にまとめられた難易度(残機アップの機会を始め、救済措置も多い)
◆耳に焼き付くほどのインパクトを持ち合わせた音楽(特に地上コースの曲が素晴らしい9
◆見た目とは裏腹に迫力がきちんと表現された演出回り(特に爆発、破壊系の演出には妙なインパクトがある)
◆色んな意味でツッコミどころ満載な「スーパースター」で無敵になった時の楽曲(なんと「天国と地獄」が流れる)

--- Bad Point ---
◆コースごとの密度と個性付けは万全ながら、規模的には物足りなさが否めないボリューム
◆ジャンプの挙動、落下時の速度の差異など、調整面で疑問を抱かせる一部アクションの挙動
◆単発発射な分、どうしてもクセの強さと使いにくさが付きまとう「スーパーボール」
◆ほぼ決まってブロックから飛び出すように出現するため、獲得するのが地味に難しい「スーパーキノコ」(「1UPハート」も同様。「スーパースター」とほぼ同じような仕組みになっている)
◆達成感に乏しい各ワールドクリア(コース3)時の演出(ストーリー設定的に仕方がない側面もあるが……)
▼Game Overview
今度のマリオはシューティング!(一部のみ)

今度の敵は宇宙怪人!



◇任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」本体と同日に発売されたタイトルのひとつで、「スーパーマリオ」シリーズの新作。開発は任天堂の宮本茂氏を始めとする本家「スーパーマリオ」シリーズのチームではなく、ゲームボーイ生みの親である横井軍平氏がリーダーを務める開発第一部のチームが手がけている。内容は横スクロールのステージクリア型アクションゲームで、マリオを操作して、さまざまな仕掛けと敵が待ち受けるコースを攻略しながら、宇宙怪人タタンガの撃退およびデイジー姫の救出を目指すというもの。ファミリーコンピュータディスクシステム向けに発売された『スーパーマリオブラザーズ2』と同じひとりプレイ(シングルプレイ)専用で、交代しながら遊ぶ協力型2人プレイは用意されていない。また、その関係でマリオの弟「ルイージ」も登場しない(ついでに舞台設定の違いから、ピーチ姫とキノピオ、クッパも未登場)。

◇ゲームデザインは『スーパーマリオブラザーズ』『スーパーマリオブラザーズ2』に近く、複数のコースで成り立つワールドを順に攻略していく形となる。ワールドごとのコース数は3つで、最後のコース3は前述した過去作と同じくボス戦が用意されている。また『スーパーマリオブラザーズ3』で初採用されたワールドマップ、アイテムウィンドウ(&ストックシステム)もない。全体的には初期の『スーパーマリオブラザーズ』への原点回帰を図ったような作りである。
なお、いちどクリアしたコースは後から再プレイできない。さらに特定のワールドをスキップできる「ワープゾーン」もないため、クリアに当たっては全ステージを通しで攻略する必要がある。

◇マリオのアクションに関しては、ファミコンの「スーパーマリオ」シリーズをほぼ踏襲。基本の移動とジャンプのほか、Bボタン押しっぱなしのダッシュが可能になっている。ただし、ゲームボーイの液晶の性質(※高速スクロール時に残像が生じ、視認性が落ちる点)を踏まえてか、甲羅を蹴るアクションは廃止されている。 アイテムを獲得することで、特殊能力が使用可能になる変身要素については本作にも健在。ただし、豊富な種類が用意されていた『スーパーマリオブラザーズ3』とは異なり、1種類のみとなっている。肝心の変身も、アイテムがシリーズおなじみの「フラワー」であることから「ファイヤーマリオ」が連想されるが、実際は「スーパーボールマリオ」。地面や壁に当たると反射(バウンド)する「スーパーボール」を放つものになっている。これだけなら「ファイヤーマリオ」のファイヤーボールがスーパーボールになっただけに見えるが、放てるボールは1発だけで連発できない、コインに命中すると回収してくれるといった独自仕様があって、使い勝手は大きく異なる。敵に当てる際も、ボールが斜め下に放たれる仕組みもあって、角度の微調整が求められるなど、ちょっとしたテクニックが試される。

◇本編はマリオを操作して、山あり谷ありのコースを乗り越えていくのが基本になるが、一部のコースは「スーパーマリオ」シリーズ全体で見ても史上初と言えるシューティングステージになっている。このステージではマリオが搭乗する潜水艦(マリンポップ号)、もしくは飛行機(スカイポップ号)を操縦して迫りくる敵を打ち倒しながら、強制スクロールするコースを進むというものになっている。操作もアクションコースとは異なり、ABボタンでショットを放つというものになっている。ちなみにBボタンは単発発射、Aボタンは(押しっぱなしで)オート連射となる。ダメージ周りに関してはアクションコース同様、マリオのパワーアップ状態(スーパーか、ミニ状態か)で判定されるものになっている。なお、シューティングゲームの定番要素に当たる「ボム」は存在しない。

◇ほかに細かな独自要素として、各コース(シューティングコース、ボス戦コースを除く)のゴールには上下2つの扉があり、下の扉に入るとそのまま次のコースへと移行、上の扉に入ると「あみだくじ」のボーナスゲームに挑めるというのがある。それ以外で、アイテムに関しては「スーパーキノコ」「スーパースター」「スーパーボールフラワー」と「スーパーマリオ」シリーズの定番に則っているが、残機を増やす1UPアイテムは「1UPキノコ」ではなく「1UPハート」というハート型のアイテムに差し替えられている。これはゲームボーイがモノクロ液晶であり、色の違いを表現できないことからの措置と思われる。
▼Review ≪Latest Update :4/13/2025 | First Publication Date:12/27/2009≫
ボリューム的に短編ながらも、本家シリーズにはない独自の魅力と遊びが詰まった良作。
特にアクションのみならず、シューティングのコースまで用意された本編は、「スーパーマリオ」シリーズの中でも5本の指に入るといってもいいほどバラエティに富んだものになっている。シューティングコースの総数は2つと少ないのだが、潜水艦や飛行機の乗ったマリオが強制スクロールするコース上で戦闘を繰り広げる様は、見た目だけでもインパクト十分。まさにこの作品でしか味わえない&拝見できないマリオの雄姿を堪能できるものに仕上げられている。

シューティングコースに関しては、操作もオート連射をサポートしているほか、ボムを始めとする戦術的な要素がないのもあって動かしやすい。シューティングゲーム特有のハードルの高さを引き立てる部分、敵弾の密度もそんなに激しくなく、不意打ち要素も皆無なため、あまりシューティングゲームのプレイ経験がないという人にも易しい。ごく一部、敵弾をちゃんと見切って対処する場面があるものの、攻撃自体がパターン化されているため、法則を見切れば確実に対処可能だ。全体的にシューティングゲームに慣れていない人への配慮が入念にされているので、存在そのものに抵抗感を抱いた人も騙されたと思って触れてみていただきたい。さすがマリオを冠したゲームだと納得してしまうほど、遊びやすくて楽しい作りに安心感を覚えるはずだ。同時にシューティングゲームというジャンルをさらに遊んでみたい気持ちになるかもしれない。そんな時は本作とシステムや操作性が似た『ソーラーストライカー』がイチオシです……というのは余談だ。

メインたるアクションコースも、それまでのキノコ王国とは違う世界が舞台であるからこその“異国感”がにじみ出ているのが面白い。名前からして明らかだが、それぞれの国は実在する国家や土地をモデルにしている。
そのうち、最初のワールドとなる「ピラフト王国」に関しては、本作の前年度に発売された『スーパーマリオブラザーズ3』に「砂漠の国」なるものがあったことから、そこまで異国感は感じられないかもしれない。だが、ワールド2の「ミューダ王国」以降は異国感が一気に現れ始め、本家「スーパーマリオ」シリーズとは異なる味も感じられるようになる。中でも最終ワールド「チャイ王国」は、そのロケーションもさることながら、あの「キョンシー」をモチーフにした敵キャラクターが登場したり、音楽も非常に“それ”っぽかったりと、インパクト絶大な要素が盛りだくさんなので必見。あまりにインパクトが強いのもあって、人によっては本作に対してこのワールドのイメージが焼き付いてしまうかもしれない。そんな具合に本家の「スーパーマリオ」シリーズではまず体験できない、むしろ後にも先にもないんじゃないのかと思ってしまうほど独特なものになっている。ここを楽しむだけでも、十分すぎるほど満足できてしまうぐらいなので、少しでも興味を持ったのなら足を踏み入れてみることをオススメする。一番の見所たるチャイ王国は終盤なので、ちょいと時間を要する点には留意いただきたいが。

雰囲気や世界観周りの話になってしまったが、純粋にアクションゲームのコースとしての作りも堅実。ゲームボーイの性能を踏まえてか、敵の出現総数が少なかったりもするが、キャラクターの総数はやたらと多く、しっかりとした個性が付けられている。しかも、それによって一風変わった攻略を試す展開を作り出すなど、変化を演出する要素として活かしているという特筆すべき見所がある。加えて、ワールドごとに固有の敵キャラクターがほぼ決まって登場するのが地味ながらも凄い。前述の「チャイ王国」のキョンシーをモチーフにした敵「ピョンピー」もそうだが、対象のワールドでしかお目にかかれない敵が必ずおり、それが独自の展開を作り出してくれるのだ。とりわけユニークなのがワールド3に登場する「ガンチャン」なる岩の敵。どんな展開を作り出すのかは見てのお楽しみだが、よくも悪くも本家「スーパーマリオ」シリーズらしからぬスリルを味わえるはずだ。

敵キャラクターに関しては、ほかにワールドの最後に登場するボスも固有のキャラクターが居て、それぞれ個性のある攻撃を仕掛けてくるという見所がある。ちなみにボスはスーパーボールか、シューティングステージならショットで対処する形で、踏み付けは一切効かない。だが、それで詰む必要はなく、ボスの背後にあるスイッチを押せれば一撃必殺を決められるようになっている。これは『スーパーマリオブラザーズ』『スーパーマリオブラザーズ2』にあったもので、『スーパーマリオブラザーズ3』では無くなったもの。それが同じようで、ちょっと違う(※ボスがワールドごとに固有ゆえ、対処法が異なる)形で採用されているのも面白い。

基本の作り自体は『スーパーマリオブラザーズ』『スーパーマリオブラザーズ2』に似ていて、そのゲームボーイ版的な感じもある。しかし、ワールドごとのロケーションだったり、雰囲気作りなどは別物。加えて敵のバリエーションが豊富に加え、シューティングステージまで用意することで、まさに本作でしか得られない冒険の面白さと手ごたえを作り出している。ある意味、本家とは違うチームが作ったからこそできたとも言える。
それゆえ、本家を好む人には賛否の分かれる側面もあったりするのだが、相応にインパクトはバツグンなので、どんなものが待っているのか気になるなら挑んでみてほしいところだ。色んな意味で本作だけのマリオというものを実感するだろう。多分。
ただ、これほどインパクトに秀でた見どころを持ちながら、肝心のボリュームが小さいのは惜しまれるところ。全4ワールド12コースしかない。初代『スーパーマリオブラザーズ』の全8ワールド32コースの半分以下である。
一応、1周クリアすると難易度の上昇した2周目が遊べるようにはなっているものの、もっと色んなロケーションを見たい思いが強いと、強烈な物足りなさを感じてしまうのは避けられないだろう。これほど小さくなってしまったのには、容量の都合もあったと思われる。ただ、逆にこの規模でちょうどいい側面もあるので、あと1ワールド欲しかったと言い切れないところがあるのが難しい。何にせよ、本家「スーパーマリオ」シリーズほどの規模には期待しない方がいいのは確か。短時間で遊べる『スーパーマリオブラザーズ』風のアクションと思って触れれば、あまり気にならないかもしれない。

それ以外だと操作性も人によっては違和感を抱かせる箇所がある。具体的にはジャンプで、ややフワッとした感じになっている。また、ジャンプ後と、足場を歩いて落下した時の速度に大きな違いがあるのも戸惑いやすい部分。特に足場からの落下はかなり早く、場所によってはミスへと直接つながってしまうところがあるのには注意が必要だ。

ほかに細かいところでは、ワールドクリアのたびに挿入されるデモシーンが若干冗長で、スキップできないといった点もある。少々、達成感に乏しい演出になっているのも好みが分かれるところだ。ただ、それ以外の演出は悪くない。特に爆発および破壊の演出は妙に凝っていて、色んな意味でマリオらしからぬ迫力になっている。効果音、音楽の出来も盤石。中でも音楽は耳に焼き付くレベルの名曲揃いで、サウンドテスト機能がないのがもったいないと感じてしまうほど。ちなみに作曲担当は『バルーンファイト』『メトロイド』『MOTHER』などのタイトルを手がけた田中宏和氏である。出来の良さにもいろいろ納得である。

ゲームボーイ初期の作品らしい小粒な感じはあれど、異国感のにじみ出たロケーションやアクションとシューティングが交差する本編、個性豊かな敵キャラクターたちが作り出す起伏ある展開など、総合的にはキチッとまとまった良作に仕上げられている。特に本編全体から漂う異国感は本作でしか味わえない唯一無二の独自性がある。
「スーパーマリオ」シリーズのファンは言うまでもなく、横スクロールアクション好きなら要プレイの1本である。シューティングゲームの入門編としても最適だったりするので、同ジャンルへのデビューを考えている人もご検討あれ。
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