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  4. コトバトル 天外の守人
≫コトバトル 天外の守人
■発売元 アルファドリーム
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイカラー版:4500円(税別)
バーチャルコンソール版:617円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイカラー版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人(通信プレイ時:2人)
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー専用(※カラー以前のゲームボーイでは遊べません、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 9〜12時間(エンディング目的)、37〜45時間(完全攻略目的)
遠い昔。
一人、目を覚ました『気』のコトダマが国を壊すほどの力で暴れ回っていた。
後に『天』のコトダマと4つのコトダマ達が力を合わせ、『気』のコトダマを眠らせた。そして、4つのコトダマ達は世界各地に飛び去り、今も『天』のコトダマ達は人間の巫女と共にこの国を守っていた。

『テンガイの国』、コトノハの村。
一人の少年が、お供である『人』のコトダマ、カナエと一緒に『コトダマ使い』の修行に励んでいた。
その少年は巫女の弟。
そして、今日は姉である巫女を守る『モリビト』になる為の試験の日でもあった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆漢字が書かれたカードからモンスターを召喚して戦い、時には使用したカードを用いて『熟語』を作り出し、形勢逆転を狙う、他に類を見ない独創的なアイディアが炸裂した戦闘システム
◆仕組みの面白さのみならず、四字熟語等の勉強にもなる利点も持ち合わせた履歴システム
◆コトダマ使い、道中のモンスター、大型のボスなど、それぞれ異なる戦術が求められる作り込みが成された戦闘シチュエーション(特にコトダマ使いとの戦いが熱い)
◆全部で370種類という数の多さとデザイン面の奇抜さが異彩を放つコトダマのカード
◆基本、戦術重視だが、レベルを上げて力で押し切る余地も残した、秀逸なゲームバランス
◆説明書要らずの懇切丁寧な作りが光るチュートリアル(かなり事細かに説明してくれる)
◆エンディングまでは短めながら、カード集めと言った収集要素にクリア後に現れる新たなコトダマ使いとの戦いなどで、徹底的に楽しませてくれる充実したボリューム
◆適度に謎解き要素も盛り込むなど、飽きの来ない工夫が凝らされたフィールドマップ構成
◆レスポンスの良さとアイコン化された見易いインターフェースが光る、秀逸な操作性
◆まさに職人技と言わんばかりの質の高いドット絵で描かれた、美麗なグラフィック
◆陽気なフィールドと緊迫感溢れる戦闘のギャップの激しさが印象的な音楽
◆中華風の世界観に個性的過ぎる台詞回しなど、色んな意味で癖のある世界観&ストーリー設定

--- Bad Point ---
◆退屈になりがちな雑魚敵戦(基本、敵を倒すだけなので、コトダマ使い戦ほどの緊迫感は無い)
◆年齢を選ぶ側面を持った熟語作成によるコンボ魔法(低年齢層には少々、応える部分ではある)
◆「必ず麻痺になる」という性能からして過激極まりないコンボ魔法『ほうしん(天地人)』
◆上記の過激なコンボ魔法の存在とレベルを上げ過ぎると一方的な展開に陥り易いなど、やや詰めの甘い部分が散見されるゲームバランス
◆モンスター召喚時、常に一瞬ながらカードのグラフィックが挿入されるなど、やや煩わしく感じる面も見受けられる戦闘テンポ(待ちが発生し易い点もまた然り)
◆丁寧なのは良いが、やや強要し過ぎな感も否めないチュートリアル
◆やや描写不足が目立つストーリー(特に敵役の描写が物足りない)
▼Review ≪Last Update : 12/28/2014≫
男も女も締めに「♪」

なにかが違う…。


かつてスクウェア(現:スクウェア・エニックス)で『時空の覇者 Sa・Ga3』、『スーパーマリオRPG』等の製作に携わったスタッフが設立したゲーム開発会社『アルファドリーム』のデビュー作にて、完全新作のロールプレイングゲーム。

独創的な戦闘システムが光る、ゲームボーイカラー末期の力作だ。

ゲーム内容はイベントクリア方式で進行するロールプレイングゲーム。コトダマ使いの主人公となり、強敵との戦いやダンジョンの探索と言った冒険を繰り広げていくというものである。RPGとしての基本的な作りは極めてオーソドックス。街、ダンジョンなどで展開されるストーリー上のイベントに沿う形で進めていく、王道のものとなっている。その一方で、システム全般は独創的の一言で締め括られる出来。具体的には戦闘システムだが、これが『言葉遊び』をコンセプトとした、他に類を見ない斬新なものになっている。
簡単に解説すると、今作の戦闘はカードバトル方式。『コトダマ』と呼ばれるカードでモンスターを召喚したり、魔法やアイテムを使ったりして敵と戦っていくものとなっている。戦闘は『タイムコスト』と呼ばれるゲージを先に消費しきった者から順に行動する、いわゆる『コスト制』で展開。ファイナルファンタジーシリーズの『アクティブタイムバトルシステム』に近い仕組みと言えば、RPGに詳しい方ならピンと来るかもしれない。
戦闘に召喚できるモンスターは最大三体まで。上段、中段、下段の三箇所に配置する事ができ、その後列にプレイヤーことコトダマ使いが配置される。基本的にはこの陣形をキープしながら敵と戦っていく。陣形が崩壊、前列のモンスターが一体でも倒されてしまうと、そこに空きスペースが生じ、後列のコトダマ使いに敵の攻撃が通るようになってしまう。無論、その空きスペースからコトダマ使いが猛攻に晒され、体力がゼロになってしまうと問答無用でゲームオーバーだ。なので、戦闘では如何に空きスペースを発生させず陣形を管理できるかが勝利のカギとなってくる。更に戦闘も道中で遭遇する雑魚モンスターとの戦い、主人公と同じコトダマ使いとの戦い、そしてボスとの戦いと三つの異なるものを用意。それぞれで違った戦術が求められてくるなど、バリエーションの面でプレイヤーを飽きさせない工夫が凝らされている。
戦闘にて使用するカードこと『コトダマ』は最大20枚まで装備可能。装備するコトダマはメニュー画面で編集するようになっている。また、その名の通りにこのコトダマには言葉、漢字が記されていて、基本的にはその漢字に基づいた効果が現れるようになっている。例えば『火』のコトダマを使うと、火属性のモンスターが出現すると言った感じだ。このような法則に基づき、各コトダマの効果や特徴が設定されている。漢字の意味に基づいて効果が発揮されるのはさながら、連想ゲームそのもの。新しいけど何処か懐かしい、ユニークな仕様のカードに完成されている。
しかし、このコトダマで最も注目すべきは『履歴』なるシステムの存在だ。先ほど、戦闘ではコトダマのカードを選んでモンスターなどを召喚していくとあったが、実はこの選んだコトダマは『履歴』と記された枠に最大4枚まで記録されるようになっている。この『履歴』に記されるコトダマは左から順に新たに使ったものが埋まっていくのだが、この履歴に記された漢字が意味のある熟語として成立すると、強力なコンボ技の発動が可能となり、相手に強力な一撃をお見舞いすると言った、形勢逆転の一手を打てるようになるのだ。例に挙げると以下の通り。

◆例1:火⇒力の順でコトダマを選択
履歴に『火力』の熟語が完成。火炎弾を発射する事ができる。

◆例2:雪⇒月⇒花の順でコトダマを選択
履歴に『雪月花』の熟語が完成。コトダマ使いの体力を全快させる。

◆例3:電⇒光⇒石⇒火の順でコトダマを選択
履歴に『電光石火』が完成。装備しているコトダマのシャッフルを行う。

挙げた例は全て魔法だが、この他にも専用のモンスター、アイテムも存在する。無論、どれも強力なものばかり。綺麗に言葉を作り上げたなりの対価が支払われるようになっている。こう言った機能の存在もあり、今作の戦闘にはただモンスターを召喚し、魔法を使って戦っていくだけでは終わらぬ奥深さがある。陣形を崩さず戦うだけでなく、言葉を作る頭脳労働もしながら敵と戦う。まさに言葉遊びをコンセプトとしたゲームならではのシステムと言った具合で、斬新としか他に言い様のないものに完成されている。
また、熟語の効果がいずれも優秀なものばかりというのもあり、衝動的に熟語の完成を狙いたくなってしまうのも大きな特徴。それでいて、下手に熟語完成を狙うとバランスの悪い陣形が誕生し、戦闘が一層厳しいものになるデメリットも生じるなど、その辺の細かな調整具合にも職人技が炸裂している。これまで前例の無いゲームシステム故にその手応えの新しさは相当なものだが、ただ新しいだけで終わらせずに作り込まれた出来具合もかなりの見所。ある意味、今作を象徴するシステムと言ってもいいだろう。
少し駆け足になってしまったが、これが今作の戦闘システムの大体のあらましだ。漢字から連想されるものが具現化するコトダマ、そのコトダマが熟語として完成する事で強力なコンボ技が発動する履歴、そして陣形をキープする事が求められる独特の戦略性。何もかもが斬新、他に類を見ない、独創的としか言い様のないものに完成されており、未だかつてないゲーム体験をプレイヤーに提供してくれる。まさに言葉で戦う新感覚RPGと言っても過言ではない出来。新しい面白さに満ち溢れたゲームに完成されている。

例によって、今作最大の魅力は戦闘システム全てだ。言葉遊びをカードバトルへと昇華させたゲームデザインはまさに斬新としか言い様のない独自性があり、プレイヤーに唯一無二にして新しい戦いの妙味を提供してくれる。
特に素晴らしいのが先ほども強調して紹介した『履歴』だ。選んだコトダマが熟語として完成すると強力なコンボ技(必殺技)が繰り出せる。この基本的なアイディアだけでも抜群に面白い。言葉遊びというコンセプトを効果的に活かしているだけでなく、綺麗に熟語を作り上げる楽しさと完成した時の嬉しさというパズルゲームで連鎖を組むかのような爽快感に満ちているのが大変素晴らしい。完成した熟語から得られる魔法、モンスター、アイテムの効果のほとんどが優秀なものばかりであるのも、このシステムの面白さと魅力を引き立てている。優れた効果が得られるからこそ、狙うだけの価値が十分にあるので、それがプレイヤーの「綺麗に熟語を作りたい!」という欲望を湧き立てる。その結果、熟語の完成を狙って本来、選ぶと不利になりかねないコトダマをうっかり選んでしまったり、効率的な熟語完成を狙えるデッキの完成を目指してその編集に頭を悩まし、気がつけば1時間以上もの時が過ぎてしまっていた、なんて事もしばしば。漢字から熟語を作るというだけでもお堅いイメージがあるが、それをこうも面白く、思わず夢中にさせてしまう遊びへと昇華させてしまったのは素直に凄い。本当、よくこんなのを考えたなと製作スタッフのセンスと手腕の高さには驚かされる次第だ。
熟語の成立は戦闘を有利にさせるだけでなく、新しいモンスターやアイテムを誕生させるなど、戦闘以外の遊びが仕込まれているのにも、今作を戦闘一辺倒のゲームにはさせたくなかったとするこだわりが炸裂していて見事だ。そして、それらのモンスターやアイテムを全て発見するやり込み要素も仕込まれていたりと、ちゃんとやるだけの意味を設けているのもさすがの一言に尽きる。これらの要素の存在も、今作のゲーム性とシステムをより魅力的なものに引き立てている。
また、ゲームバランスの優秀さも特筆に値する。カードバトル方式の戦闘という事で、その第一印象から戦略をきちんと組み立てないと勝利するのは厳しい難易度なのかとイメージしてしまうかもしれないが、断じてそんなことはない。戦略の組み立てはそれなりに求められるが、基本的にデッキ構築や戦略を練るのが苦手なプレイヤーでも気楽に楽しめるゲームバランスに調整されている。それらが苦手な方の為の対処策が盛り込まれているのだ。
その対処策もシンプル。主人公のレベルを上げればいいだけだ。カードバトル方式と言ったが、基本はRPGという事でレベルの概念があり、これをそれなりに上げれば、大抵の戦いは力押しで勝利できてしまうのだ。無論、何も考えずに力押しという訳ではなく、それなりの戦略は求められるが、こう言ったシンプルな対処策があるので、カードゲーム初心者から苦手な人も気軽に本編を満喫できる。対処策にしてはシンプル過ぎる感も否めないが、逆にこれを上げ過ぎずにプレイすれば歯応えのあるプレイを楽しむ事も可能。カードゲームの雰囲気だけを楽しみたいから、しっかりとしたカードゲーム、手強いカードゲームを楽しみたいプレイヤーまであらゆる欲求に答えたその懐の広い調整芸はまさに職人技の一言。優しくするのも難しくするのも遊び方次第としたその絶妙なバランスは、任天堂のゲームを髣髴とさせる凄味がある。これほど優秀なバランスを持ったRPGも珍しいと言っても良いだろう。
バランス以外にも、初心者プレイヤーに対する配慮は万全で、ストーリーを読み進める形で手取り足取りルールを教えてくれる丁寧なチュートリアルも見事な出来。説明が冗長過ぎるところもあるが、作りは非常によく、色んな人にこの遊びを体験して欲しいという意気込みが伝わって来るものに仕上げられている。それでいて、ルールを具体的に理解せずとも、普通のRPGの感覚で遊べてしまうバランスになっているのだから驚かされるばかりだ。本当に隙が無い。
言葉遊びをカードバトルへと昇華させたセンスの高さとその面白さもさる事ながら、狭量でない絶妙なゲームバランスにチュートリアルなど、細かい部分も神経を配って作り込まれているのには素直に驚かされる。斬新なシステムを売りとするゲームは、よく新しさを優先し過ぎて細かい調整を怠ってしまうケースがザラではある。しかし、今作はそんな細かな所に至るまでしっかりと作り込まれており、奇跡のような高い完成度でまとめられている。そのまとめ方の上手さは任天堂のゲームかと思わせてしまうほどだ。それほどまでに今作のゲームとしての新しさと面白さ、調整の上手さは頭一つ抜けたものがある。完全新作としては完璧に等しい出来なのだ。

また、操作性にインターフェース周りも良好。特にレスポンス周りが素晴らしく、動かしていて全くストレスを感じさせない。インターフェースもほぼ全てのコマンドがアイコン化されていて、すっきりまとまっているほか、そのアイコンのデザインも直感的に機能周りが分かるものに仕上げられているのがお見事。取っ付き易さに対するこだわりがよく現れた仕上がりになっている。インターフェース周りではデッキ編集全般の出来も秀逸であり、カードことコトダマの見た目が見た目だけに、取っ付き易さと分かり易さは格別。こんな所においても、今作のシステムの優秀ぶりが炸裂している。
ボリュームもエンディングまでは大体10〜11時間ほどと手頃だが、コトダマ集めにクリア後のシナリオ、新たなコトダマ使いとの戦いと言ったおまけ、やり込み要素が充実している為、結構長く遊び込める。特にクリア後には強敵との戦いが開放されるので、本編に物足りなさを覚えたプレイヤーも納得の手応えを得られること間違いなしだ。
そしてグラフィックだが、これも非常に素晴らしい。ゲームボーイカラー専用である事を最大限に活かした、高品質のドット絵が画面いっぱいに炸裂する。少ない色数ながら、驚くほど緻密に描かれたビジュアルは一見の価値大いにありだ。
また、音楽も良い曲が揃っており、特にノリの良い戦闘曲全般は独創的なシステムが生み出す戦いを大いに盛り上げてくれる。さりげなくサウンドテストも完備されており、オプションで聴き放題というのも地味ながら嬉しい所だ。作曲担当が『幻想水滸伝』、『moon』、『UFO -a day in the life-』等の著名作を手掛けたセロニアス・モンキースの谷口博史氏であるというのも、ゲーム音楽好きには要チェックポイントと言えるかもしれない。

演出周りも派手。大きな一枚絵など、美麗なグラフィックの魅力を余す事無く見せつけるこだわりの数々が随所で炸裂する。ストーリーも漢字がテーマのゲームならではの中華風の世界観が味わい深い。肝心の中身も、少し描写周りで控え目なところもあるが、盛り上がりのツボをしっかりと抑えた内容に仕上げられている。ただ、男も女も構わず、語尾にハートマークが表示される独特過ぎる台詞回しには人によっては違和感を覚えるかもしれない。
他にもキャラクターデザインの可愛らしさ、ストレスなく探索できる為の細かな配慮と地形設計が光るマップデザインなど、優れた部分は多数存在する。戦闘システムの独創性の高さもさる事ながら、ゲームバランスから救済処置、操作性にグラフィックに至るまで完全新作ながらも飛び抜けた完成度を誇る今作。モンスターとの戦いの退屈さ、コスト制である事が尾を引く遅めの戦闘テンポ、敵全体を麻痺させる反則的なコンボ技の存在、そしてバランスの加減の誤りなど、至らない所も散見されはするが、それを補って余りある魅力が今作にはある。
未だかつてない新しい遊びが楽しめるこのゲーム。ゲームボーイカラーをお持ちの方は勿論、任天堂のゲームやRPGが好きなプレイヤーならば是非とも遊んで頂きたい、隠れた力作だ。この戦闘システム、RPG好きなら何が何でも体験すべし!文句無しにお薦め!
なお、2014年現在、今作はニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでも配信されている。
ゲームボーイではなく、現行機の方で遊びたいという方は是非、こちらでどうぞ!
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