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  4. カービィのブロックボール
≫カービィのブロックボール
■発売元 任天堂
■開発元 HAL研究所、トーセ
■ジャンル ボールアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4095円(税込) / バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 19ページ
■推定クリア時間 4〜5時間(バッドエンド)、7〜10時間(真エンド・完全攻略目的)
カービィが舞台をブロック崩しに移して大暴れ。
パッドを操作しながらボール(カービィ)を打ち返し、行く手を阻む敵とブロックをやっつけろ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ブロック崩しにアクションゲームの要素を絡めた、個性的なゲームシステム
◆アクションゲームらしい触る楽しさと直感的な手触りに秀でた操作性
◆ミスを一時的に防止する強力なショット、コピー能力による特殊技など、数は少ないがブロック崩しらしからぬ仰々しさに富んだカービィのアクション
◆ブロック崩しなのにアクションゲームっぽい、唯一無二の独創性に富んだラウンド構成
◆玉当て遊びの楽しさと独特の戦略性、爽快感を兼ね備えたボス戦
◆極端に優し過ぎず、難し過ぎずの適切な具合にまとめられた絶妙なゲームバランス
◆全11ステージ、ラウンド総数50以上とやり応え抜群、満足度抜群の総計ボリューム
◆細かな制約とボーナス特典など、稼ぐ熱さと限界を極める楽しさ満点のスコアアタック
◆ブロック崩しのゲーム性と特徴を上手く反映させた、全3種類のミニゲーム
◆カービィらしい、耳に残る名曲が盛り沢山の音楽(特にボス戦の曲が秀逸)
◆地味ながら、カービィらしい仰々しさに富んだ演出(敵を倒した際のリアクションなど)
◆カービィシリーズのお約束を破る展開の数々(何と最初のボスが…)

--- Bad Point ---
◆10ステージで『ボーダーライン』を達成しないとプレイできない嫌らしい制約が設けられた最終ステージ(普通にプレイすると10面でバットエンドになる)
◆最終ステージ条件の所為で陰湿な束縛感を引き立てている『ボーダーライン』
◆ハイスコアを狙う際に使用必至となるコピー能力(これでブロックを破壊すると得点が倍になる仕様になっているので、ノーマルカービィではどうしても高得点を叩き出す事ができない)
◆スコアを稼ぎ易いメリットの所為で過剰に優遇されてるコピー能力『スパーク』
◆カービィらしからぬ隠し要素の少なさと適当さ(あの特典はあんまり過ぎる)
◆少しやかましいスコアボード登録時の決定効果音
◆舞台設定が魅力的なのに何故か皆無のストーリー(少しあって良かった気が)
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
気が済むまで壊せ!

但し、ビルを壊すのは止めましょう。


『カービィのピンボール(GB)』、『カービィボウル(SFC)』に次ぐ、カービィ・ボールアクションシリーズ第三弾。開発はHAL研究所とトーセが担当。

ブロック崩しとアクションゲームを絡め合わせた、優れた完成度を誇る意欲作だ。

ゲーム内容は画面下部に位置する左右だけに移動するパッドを操作し、振ってくるボールを跳ね返しながら、画面上部に敷き詰められたブロックを一つずつ破壊していくブロック崩しゲーム。アーケードの『アルカノイド』、ゲームボーイの『アレイウェイ』と言った著名な作品と基本はほぼ一緒のブロック崩しである。ただ、あくまでも共通しているのは、ブロック崩しとしての作りだけ。詳細なシステム周りは、他に類を見ない試みが成された、非常に独創的なものとなっている。
その一つがアクション要素。パッドでボールを跳ね返す際、タイミング良くボタンを押す事で強力なショットを打てたり、コピー能力(※後述)による強力な攻撃を繰り出せたりなど、普通のブロック崩しではあり得ないテクニックが今作ではできてしまう。何でそんなアクションができるのか、その理由は単純でボールがカービィ本人だから。”生物”だからこそ、普通のボールでは到底無理なアクションができてしまうのだ。そして、これらのアクションによって、躍動感満点の派手なゲーム展開が画面いっぱいに繰り広げられる。それはまさに、淡々とした展開が特徴の従来型ブロック崩しの常識を覆す光景。ゲーム性から演出まで、全てをこれまでとは別物にする試みとして、かなり効果的に機能している。
単純にゲーム性を派手にするだけで終わらず。ステージ構成と戦略性に奥行きを与える為にも、このアクション要素は活かされている。ステージに関して言えば、ブロック以外に敵キャラクターが登場したり、先の強力なショットでないと破壊できないブロックを導入するなど、ただアクションを入れてそれで終わりにせず、そのアクションがあるからこその工夫、設計が丁寧に成されている。また従来型のブロック崩しとは異なる、パッドの下部が穴でなくトゲ地帯となっている密閉された構成もユニークだ。しかも、このトゲは普通のボール状態で触れると速攻でミスになるが、強力なショットこと『パワーアクション』時のカービィ状態で触った時はミスにならないで済むという救済処置にもなっている。打ちそびれたら問答無用でアウトというブロック崩しのシビアさを緩和させつつも、一定の緊張感を保った絶妙な工夫だ。このトゲとパワーアクションの仕様を逆手に取った、安全な進行も取れるなど、戦略面の選択の余地を広げているのも見逃せないところだ。同じ事は特定の敵を倒すと会得する、カービィお馴染みの特殊攻撃技『コピー能力』にも言え、上手に使いこなせば普通にブロックを壊すよりも手早くステージを攻略できるなど、選択の余地を与えている。
コツコツと進むのも良し、豪快に進むのも良し。従来型では前者にパターンが一定されがちだが、今作ではその二つの手のどちらもが使えるので、同じステージでも違った展開が楽しめる。淡々としない派手な展開も売りだが、こう言った奥深さと設計の上手さもまた、この要素の特筆すべき魅力である。
そしてアクションに次いで他に類を見ない試みとして象徴的なのが、二つ目のゲーム展開の構成だ。本編は基本的に1ステージが5つラウンドで構成されており、全てのラウンドを攻略する事でステージクリアとなるのだが、このラウンドの内容がまたユニーク。従来型のブロック崩しステージあり、ミニゲームありとかなりバラエティ豊かな構成となっている。しかも、各ステージの最後は何とボス戦。ボールでブロックを破壊するのでなく、ボスを撃破するという、まんまアクションゲームなラウンドになっているのだ。戦闘内容も普通に攻撃を回避しながらダメージを与えていく正真正銘のボス戦という本気っぷり。生半可な気持ちで戦うと痛い目に遭う内容となっている。仮にもブロック崩しなのに、アクションゲームのボス戦をしなければならぬとか、まさに変化球。今作の他に類を見ない象徴として、かなりインパクトのあるファクターであるのは言うまでも無いだろう。まさにボールアクションな作りなのである。
純粋にボス戦以外のステージも気合いが入っており、敵及びブロックの配置、ギミックのバリエーションなど、全編に渡って作り込まれている。ボス自体も一体一体、動きが個性的で戦う面白さもバッチリ。
基本ルールはブロック崩し、だけどアクション要素が盛り沢山で特有の淡々としたところが皆無。ステージの構成にしても、バリエーションが豊かであるなど、全てがブロック崩しの常識から逸脱しまくりの仕上がり。これを独創的という以外に何と言う?それほどまでに今作はブロック崩しとして、良い意味で踏み外しまくりのゲームデザインが施された内容に仕上がっている。ボールアクションゲームと称すのが妥当と言うほどに、だ。

そして、このブロック崩しというよりは、ボールアクションゲームと称すのが妥当と思うほどの独創的なゲームデザインが今作最大の売りの一つ。先も少し触れたが、従来型のブロック崩しというのは、とにかくゲーム性の面では淡々としていて、地味さが漂っていた。一応、ブロックの配置、パワーアップアイテムで展開に変化を出せるものの、それでもやる事は終始、画面上部のブロックを破壊するだけ。淡々とした雰囲気を払拭するインパクトを発揮するには少し厳しい感じだった。とは言え、それがブロック崩し最大の魅力にして強みであり、方向性としては正しかった訳だが。
でも、その淡々さを払拭さえすれば、より魅力的なゲームとして化けたのも事実。しかも、ただ演出を派手にするだけでなく、やれる事を増やすなどの工夫を施す事で、より奥深いゲームへと進化できるだけの素質は十分にあった訳だ。それを目指して今作ではアクション要素の導入、そしてステージバリエーションの増強などを行った。結果として、ブロック崩しとしては思えぬほどの派手なゲーム性を備え、独自の淡々さを失った魅力溢れるゲームへと進化。ブロック崩しの新たな方向性を確立させた。ある意味、誰かがやりそうでやらなかった事を成し遂げてしまった訳だ。淡々さの無い、新しいブロック崩しの創造を。そういう意味では、今作はまさに革新的なタイトルとして評価されるだけの資格はあると言える。
しかも今作の場合、ただ革新的なだけでなく、純粋にゲームとしてもきちんと作り込まれてるのも結構な強みである。アクション要素とか、いたずらに足しただけで終わりにせず、ステージの仕掛けや戦略面にその要素があるからこそ実現できたネタを盛り込み、独自の手応えを演出する辺りはさすが。新しいゲームを創造しようとする、妥協なき姿勢が炸裂している。新しいゲーム性を演出する一方で、ラウンドを密閉構成にしてボールの受け止め失敗の不安を緩和、『パワーアクション』による速攻ミス防止などの従来型ブロック崩しの意外な盲点を修正する試みが成されているのも見事。斬新さを求めつつも、誰もが安心して楽しめるゲームにする事も欠かさぬ姿勢もさすがの一言に尽きる。
そして、新しさを追及する一方で、従来型の魅力もきちんと残す徹底ぶり。ブロックを壊す爽快感や高得点を稼ぐ楽しさなどがしっかりしているのも、大きな魅力である。
特に後者、スコアアタックの奥深さは結構なもので、各ラウンドごとに用意されたミニゲーム攻略時のボーナス、コピー能力を使ってブロックを壊した際の得点の変化など、やり込み派も唸る試みが沢山仕込まれている。更に各ステージのハイスコアは個別のランキングで記録されるので、己の限界に挑戦し続ける楽しさもある。従来型とは戦術的に性質が劇的に異なるとは言え、あらゆるテクニックを駆使して限界を目指していく楽しさは、時間を忘れてハマるほどの面白さに長けている。また、基本的にステージ一つ一つが短めなので、空いた時間に気軽に楽しめる辺りも結構な強みである。戦略も豊富で、手軽に遊べてやり込めるなど、まさに隙なしの出来。新しさを求めるのも大事だが、従来型の変わらぬ魅力はちゃんと残さなくてはいけない。それ以前に失ったら本末転倒も良い所。そう言った残すところはちゃんと残すバランス感覚の良さも、今作を語る上では外せない強みと言える。
しかし、この要素を『ボーダーライン』という形でゲーム攻略に絡めてしまったのは失敗だったと言わざるを得ない。今作では各ステージに『ボーダーライン』なるスコアが設定されていて、これを達成するとステージに旗が立つ仕組みとなっている。この旗というのが、実は最終ステージの解放のカギ。そもそも今作、用意されている全てのステージで旗を立てねば、最終ステージを遊ぶ事ができないのだ。つまり、完全クリアするなら全ステージでハイスコアを達成しなければならない。スコアアタックを半ば強制的にやらなくてはならないのである。これはちょっと試みとして失敗だった感は否めない。そもそも、やり込み要素をプレイヤーに強要させるというのはやり方として感心できない。プレイヤーの腕も千差万別なのだから、腕の良い人だけが最後のステージに進めるというのはさすがに酷としか言い様が無い。幸い、ボーダーラインの設定値は無難な所に定められているので、少し頑張ればどうにかなるバランスだが、これは純粋にただのやり込み要素にして欲しかったところ。非常に残念である。折角、スコアアタック自体はよく出来ているのに、勿体無いとしか言い様が無い。強引な誘導はゲームの魅力を削りかねないので、自粛して頂きたかったものだ。
そんな欠点もあれど、ゲーム自体の優秀さに変わりは無い。ありそうでなかった事を実現したゲームデザインにスコアアタックの面白さと、いずれも群を抜いた出来を誇っている。地味なゲーム性が特徴であり、欠点でもあったブロック崩しを更に魅力溢れるものにする為に執り行われた今作の試みの数々は、大きな評価に値すると言っても過言ではないだろう。新しさを追求しつつ、従来型の良さを残す姿勢も然り。その辺の作りの上手さはさすが任天堂と言ったところだ。

その他、操作性やゲームバランスも上質。特にバランスは如何にもカービィのゲームらしい、初心者に優しいけども、極めると結構な歯応えがあるという極端さが上手く演出されている。欠点のボーダーラインにしても、先に少し触れたが設定は適切で、少し頑張れば軽々と達成できるようになっているのはせめてもの救いである。
ボリュームも結構なもので、ステージ総数は10以上で、ラウンドは60ほどとやり甲斐がある。ボーダーラインの達成からスコアアタックなど、やり込み周りがしっかりしているのも良い感じだ。しかし、ボリュームはそこそこな反面、クリア後の特典が弱いのは少し残念。ネタバレになる為、詳しい事は控えるが、サウンドテストなど、ワリと贅沢な印象のあったカービィにしては乏し過ぎる。せめてあと2つぐらいは用意できなかったものか、悔やまれる限りだ。惜しい、あまりに惜しい。
グラフィックは平均的。音楽はさすが数々の名曲を世に送り出してきたカービィシリーズだけにある出来栄え。曲ごとのインパクトは本編シリーズに劣りはするものの、ボス戦や最終ステージの曲は要チェックだ。
演出周りも音楽の使い方も含め、きちんと場面を盛り上げようとする姿勢がしっかりしているのはさすが。カービィらしい仰々しいエフェクトも健在と、お約束もバッチリだ。

地味なところではあるが、ゲーム展開にもちょっとした捻りが加わっていて、最初に登場するボスがお馴染みの「あいつ」ではなかったりなど、シリーズとしては初めてとも言える試みが施されてるのも面白い。
スコアアタックを強要させるボーダーラインと最終ステージの解放条件、効果音のやかましさ、おまけ要素の物足りなさがタマにキズではあるが、総合的にかなり水準の高いゲームであるのは鉄板。ブロック崩しの淡々とした所を補うかのごとく導入されたアクション要素とそれを最大限に活かすゲームデザイン、やり応えのあるボリュームとスコアアタックなど、新しさと熱さが交互に入れ混ざった今作。
カービィシリーズファンは言うまでもなく、ゲームボーイを持っている方なら是非、プレイしてみて欲しい意欲作にして傑作だ。アクション要素も結構本格的なので、アクションゲーム好きにもかなりオススメ。地味さが基本だったブロック崩しのゲーム性を壊すかのごとく導入された数々の試みはいずれもプレイする価値、大いにあり。
ド派手なブロック崩し、一度は体験してみませんか?
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