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≫カエルの為に鐘は鳴る
■発売元 任天堂
■開発協力 インテリジェントシステムズ
■ジャンル アドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:3990円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 10〜12時間
昔々、ある所に『カスタード王国』と『サブレ王国』という、仲の良い2つの王国があった。
2つの国にはそれぞれ、同じ年頃の王子がいた。カスタード王国のリチャード王子は、お洒落でクールな王子様。サブレ王国の王子は単細胞で熱血漢、情にもろいお金持ちのお坊ちゃま。2人は良きライバルであったが、剣術の試合において、サブレ王子はどうしてもリチャード王子に勝つ事ができずにいた。

そんなある日、2人の元に大変なニュースが飛び込む。絶世の美女と噂の高い、ティラミス姫が治める『ミルフィーユ王国』が、大魔王デラーリン率いる『ゲロニアン軍団』に占領されてしまったというのだ。
この一大事にリチャード王子はティラミス姫をデラーリンの魔の手から救い出す為、足早にミルフィーユ王国へと旅立つ。そしてリチャードに遅れを取られたサブレ王国の王子もまた、ミルフィーユ王国へと旅立つのだった。果たして、二人の王子はデラーリンからティラミス姫とミルフィーユ王国を取り戻すことができるのか…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ストーリー重視のRPGとも言える、簡略化された設計が光るゲームシステム
◆細かな操作一切なしのフルオートで展開されるバトルシステム
◆跳躍能力上昇、狭い通路を通れるようになるなど、形態によって多種多様なアクションが楽しめる変身システム
◆フィールドは見下ろし方式、ダンジョンは横スクロールアクション方式とユニークな差別化が図られたマップ構成
◆進路の確保ネタに特化した、控え目且つ程好い難易度の謎解き
◆笑いあり、涙あり、そしてパロディだらけの見所満載のストーリー
◆あらすじ機能(日記帳)、ほぼ好きなタイミングで実施できる自由度の高いセーブシステム、ショートカット機能など細部まで行き届いた配慮が光るサポート機能全般
◆単に読むだけでも楽しく、時間が潰せてしまう『日記帳』(テキストが凄く良い)
◆ギリギリの優しさと難しさを徹底的に突き詰めた、絶妙なゲームバランス
◆複雑なアクション全般を簡略化し、動かす楽しさに特化した秀逸な操作性
◆地味ながらも凝った描き込みが成されたグラフィック(主にバストアップデモ)
◆まさに冒険活劇とも言える雰囲気に秀でた、名曲揃いの音楽
◆状況に応じて大文字が表示されるなど、地味ながら凝ったイベント演出

--- Bad Point ---
◆やや冗長な感が否めない『不思議な果実』を食べて人間携帯へと戻る際のエフェクト演出(カットできるとなお良かった)
◆控え目な総計ボリューム(やり込み要素とかはほぼ無いに等しい)
▼Review ≪Last Update : 8/10/2010≫
「そなたもリッチになってはみぬか!」

一瞬の内だけど。


任天堂開発一部と『ファイアーエムブレム』シリーズなどで知られるインテリジェントシステムズが共同で制作した、完全オリジナルのアドベンチャーゲーム。

遊び易いシステムと珠玉のストーリーが光る、ゲームボーイ屈指の名作だ。

ゲーム内容は主人公のサブレ王子(※名称変更可能)を操り、舞台となるミルフィーユ王国の各地で起こるイベントを攻略し、悪の大王デラーリンにさらわれたティラミス姫救出を目指すというもの。アドベンチャーを名乗っているが、画面構成は同じ任天堂の『ゼルダの伝説』を髣髴させる2D見下ろし視点のロールプレインゲームスタイル。更にダンジョンでは、一転して横スクロールのアクションゲームスタイルとなり、ジャンプを始めとするアクションが可能になるなど、全体的に見てアドベンチャーというよりは、アクションアドベンチャーのカラーが強い作りとなっている。
但し、同じアクションアドベンチャーの『ゼルダの伝説』と違ってアクション性は低め。敵との戦闘もあるが、敵と接触すれば後はフルオートで行ってくれるので、基本的にはパラメータ勝負となる。敵との間合いなど、アクション独特の戦術などは全く考えず、気楽に本編を進めていけるので、アクションが苦手な方も安心して楽しめる設計となっている。
アクションスタイルになるダンジョンにしても、ジャンプなどのアクション独特のテクニックは求められてくるが、基本は謎解き。『魔界村』とか『ロックマン』ほど高度なテクニックが求められる事は滅多にないので、苦手な方も普通に遊べる作りである。それ以前に、同じ任天堂のマリオシリーズよりも今作のアクションは簡単。あの『スーパーマリオブラザーズ』の1面をクリアできない人でも、最後まで問題なく進めていけるほどの低難易度なので、特に警戒する必要はゼロだ。と言っても、最後の最後までずっと温い訳でなく、難所も幾つか用意。スラスラ進めるとは言え、その手のお約束はきちんと抑えている。如何にも任天堂らしい抜け目の無さである。
また、今作はアクションだけでなく、ダンジョンの謎解きもゼルダほどの手強さはない。本当に単純なネタしか登場しないので、そう言った頭を使うのが苦手な方にも安心して楽しめる作りとなっている。あくまでも、今作はアドベンチャーという事で、メインディッシュはストーリー上のイベント。そこを重点的に楽しんでもらう為のゲームデザインと言った感じだ。
しかし先の通り、ゲーム性をきちんと演出しようとする気配りは万全。どちらか片方に偏り過ぎない細かな気配りが徹底されており、悪戯に簡単なゲームにしてないのが大きなポイントだ。まさに、任天堂らしい絶妙なさじ加減の光るゲームデザインと言ったところだ。アドベンチャーゲームとしてのストーリーの魅力、ゲームらしさの双方をバランス良く引き立てた内容に仕上げられている。ある意味、真の意味でのアドベンチャー「ゲーム」と言っても、おかしくは無いだろう。
独自のシステムも今作には満載。中でも肝となるシステム「変身」の面白さは格別。タイトルの「カエル〜」が現すかの如く、今作ではあるイベント後、主人公は水に入ることでカエルに変身できるようになり、その影響で人間状態以上のジャンプができるようになるなど、様々な特殊能力が備わるのだ。本編ではこの変身を使いこなすシチュエーション、イベントなども充実。時に人間になって戦い、時にカエルになって飛び回る。その奇抜なアクション性には、遊んだ者全てが虜にされるだろう。また、ストーリーが進むとカエルだけでなく、ヘビにも変身できるようになる。ヘビもヘビで、敵に噛み付き攻撃を行うとブロックにさせられたり、狭い通路を通れるようになったりなど、個性的なアクションが充実している。それらの常人離れしたアクションの数々が醸し出す、ゲーム展開は実に奇抜。絶妙なゲームデザインもさることながら、そんな漫画チックな「変身”ギャグ”アドベンチャー」な一面もまた、今作の見逃せない見所と言えるだろう。

しかし、今作で最も注目すべき見所は優し過ぎず、難し過ぎずの絶妙なゲームバランスである。ゲームデザインの面からもそれは滲み出ているが、アクションのパートにせよ、ロールプレイングの戦闘・謎解きのパートにせよ、ギリギリの優しさと難しさを突き詰めたバランス調整が成されているのには、素直に驚かされる。
前者は基本、ジャンプぐらいしか求められないが、マップの設計から仕掛けに至るまで、限界までジャンプする面白さ、そして難しさを演出している。落ちれば大ダメージを喰らう溶岩の上を飛び交うリフトを一つ一つ、慎重に飛び越えていくなど、単純明快だが不変のスリルを突き詰めたそれらのシチュエーションには、手に汗握るアクションゲーム独特の手応えが確かに生きている。それでいて、単にジャンプしていくだけで十分に突破可能な優しいバランス。最低限の手応えを残した上で、アクションゲームが苦手な人にも配慮したそのバランスは、まさに職人技と言っても良いだろう。
後者、謎解きにしてもまた然り。下手にパズルなどのややこしいものを導入せず、純粋に行く先の進路を確保することだけに絞ったネタの数々には、 不変の解く快感が生きている。そして、変身システムを活かす数々の突破口など、今作ならではの面白さをも演出する徹底振り。必要最低限のネタに限った上で謎を解く面白さを残し、そしてシステムを活かすネタを散りばめるその作り込みもまた、職人技というに相応しい所業。さすがは絶妙なバランスで多くのユーザーを虜にしたゼルダシリーズ、そしてメトロイドシリーズを手掛けてきた任天堂だけにあると言ったところだ。万人が楽しめるようにするゲームデザインとバランス調整の上手さには本当、溜息が出るばかりである。
また、バランスばかりではない。アドベンチャーの心臓部とも言える箇所、ストーリーの完成度も今作は非常に高い。悪の大王にさらわれた姫を救出する、まさに王道のファンタジーとも言える内容なのだが、キャラクター周りがこれまた一癖も二癖のある奴らばかりで、王道ながらも、どこかぶっ飛んだ…もとい、頭のネジが外れたかのようなセンスが炸裂している。そもそも、主人公の王子からして無駄に個性的。「世の中、全て金!金こそが正義!」と堂々と叫ぶ、典型的な金持ちキャラ。ファイアーエムブレムシリーズのマルス王子も真っ青なぶっ飛びっぷりである。また、周囲を固めるキャラにしても、ライバルのキザ王子、怪しい魔女、ワサビに異常な執着心を燃やす天才科学者と、変な奴らばかり。
更に作中では任天堂らしからぬ、パロディも満載。サ●ンオー●スターズ、キ●ン一●絞り、東●コミッ●ショーなど、どう考えても子供をターゲットにしてないそれらのネタの数々には、「どうした任天堂!?」と突っ込みたくなってしまうだろう。ちなみに、そんな今作のシナリオを書いたのは、『ファミコン探偵倶楽部』シリーズや『メトロイド』で知られる坂本賀勇氏。まさに、納得の暴走ぶりと言ったところである。
しかし、ネタ満載とは言え、ストーリー自体はなかなか意外性満点且つ感動的。王道のファンタジーながら、予想の斜め上を行く展開が盛り沢山で、最後までプレイヤーを引き付けて離さない。そして最後には、主人公の王子とライバルのキザ王子改め、リチャード王子との絆が美しく描かれ、感動的なエンディングを迎える。ベタではあるが、ライバルとの友情や衝突を描いたその展開には、子供だけでなく大人も魅了されてしまうこと必至。凄く良い物を見せてもらった!…と、最後には唸ってしまうだろう。更にストーリーが良いだけに、最後までダレることなく、テンポ良く楽しめるのも大きな魅力。ストーリーが良ければ、ゲームも大いに映える…プレイすればその凄味を大いに痛感させられるだろう。
ゲームとしてのバランスも優れていれば、肝であるストーリーも優れた出来。そして、両方が優れているからこそ、最後まで楽しく遊ぶことができる。それほどまでに、個々のパートの完成度と作り込みが桁違い。ライトからコアまでと、徹底してシステムやストーリーでツボを付いている。正直、大袈裟かもしれないが…今作は数ある任天堂のゲームの中でもトップクラスの個性と完成度を誇る一品と言っても良いだろう。ゲームもストーリーも楽しい。まさに「完璧」である。

更に操作性も完璧。基本的に本編で使うのは十字キーとAボタンだけ、しかも複雑な操作を一切求められないので、気軽にキャラクターを操作することができる。
また、アクションパートでは「足場の端を掴んで登る」という独特のアクションがあるのだが、これも足場に少し触れるようにすれば自動的に掴んでくれるお手軽設計なので、複雑さ一切皆無。シンプルにキャラを動かす面白さを追求した、任天堂ならではのこだわりが炸裂した仕上がりとなっている。ただ、ゼルダとは違い、斜め移動ができない辺りはプレイヤーによって賛否が分かれるかもしれない。
サポート周りも隙無し。ほぼいつでも可能なセーブ、ストーリーを再確認する際に便利な日記帳(あらすじ機能)と、まさに痒い所に手の届く出来栄え。特にあらすじ機能たる日記帳は素晴らしく、単に読むだけでも面白い完成度の高さ。坂本氏独特のテキストセンスが炸裂している。また、チュートリアルは搭載されてないのだが、ストーリーの進行が暗黙のチュートリアルとして作られており、単にそれを追っていくだけで、自然とシステムが理解できる設計になってるのも見事。説明口調で済ませないその絶妙な設計は、まさに職人技だ。
グラフィック、音楽もなかなかの出来。特に音楽は楽曲は少なめながらも、名曲揃い。フィールドマップ曲は必聴の価値アリだ。演出周りも地味に凝った出来で、登場人物ごとに台詞の効果音を変えたりなどの任天堂っぽいこだわりが炸裂。更にゲームボーイのゲームにしては珍しい、大文字フォントの表示、一枚絵によるデモシーンと言った描写もなかなかのインパクト。特に前者大文字の表示は、イベントでの使い所が大変絶妙なのでつい、クスッと笑ってしまうだろう。

総計ボリュームは全体的に短め。アドベンチャーという事も考慮してか、やり込み要素も乏しく、基本的には一本道となっている。だが、ストーリーの面白さもあってか、不思議と物足りなさは感じることはない。最後まで進めてエンディングを迎えれば、良質な劇場アニメを見終わったかのような、確かな満腹感を得られるだろう。
何気に欠点とかもこれと言って皆無。強いて言うならば、カエルやヘビに変身した後に人間に戻る際の演出がやや長い程度で、それ以外に目立つ欠点は無いに等しい。まさに、全てにおいて隙の無い仕上がり。アクションとアドベンチャーが絶妙な塩梅で融合したシステムにバランス、そして魅力的なストーリーと何処も彼処も見所満載の今作。
断言しよう。これはゲームボーイを持ってるユーザーなら、必ず遊ぶべき名作である。隙の無い完成度の高さと魅力的なストーリーは、時代が経っても色褪せぬ魅力がある。機会があったら是非、お試しを。オススメです。
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