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≫ゴルフ
■発売元 任天堂
■ジャンル スポーツ(ゴルフ)
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:2625円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイ専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 1〜2時間
電車の中でも、旅先でも何処でも楽しめるゲームボーイにぴったりなスポーツゲーム。
それがこの『ゴルフ』である。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ハイスコアチャレンジなど、ストレートに自分自身の限界に挑戦する楽しみを演出した、ストロークオンリーの基本内容
◆現在位置把握のし易さ、プレイヤーとホールとの一体感を見事に演出した、液晶サイズの制約を逆手に取ったホールとプレイヤーを同時表示させた画面構成
◆ファミコン版ゴルフの伝統を引き継いだ、直感的且つ快適なショット操作
◆初心者向け、上級者向けのコンセプトに則った、極端な設計が成された全36ホール
◆アイコンなどで簡略化した恩恵で状況確認がし易い、画面の環境情報表示
◆好きな時に始められて好きな時に止められるのが嬉しい、中断セーブ機能
◆空いた時間にサクッとプレイできる手軽さと短さが際立つ総計ボリューム
◆うるさ過ぎず、かと言って静か過ぎもせずのバランスの良さが際立った音楽
◆王道の駆け引きの面白さに富んだ、通信ケーブルによる対戦プレイ(マッチプレイ)

--- Bad Point ---
◆ストロークオンリー故に単調さも否めない基本ゲーム内容
◆当時を考えればそこそこだが、現在に当てはめると少ない感も否めないホール数
◆素っ気無いエンディング(これは初期のゲーム故に仕方が無い…)
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
念の為、ゴルファーはマリオではありません。

でも、ソックリです。


ファミコン初期に発売され、「ボタンを3回押してショットする」という後のゴルフゲームのスタンダードとなるシステムを確立し、合計100万本強もの売り上げを記録した歴史的名作『ゴルフ』のゲームボーイ向けアレンジ作品。

液晶サイズの恩恵でもたらされた、抜群の遊び易さ。
かのファミコン版を超えた、ゴルフゲーム決定版だ。

ゲーム内容は、もうタイトルがそのまま語っているので多くは語らない(汗)。至って普通のゴルフゲームである。
ゲームシステムはかつて、ファミコンで発売された任天堂の『ゴルフ』を踏襲しており、3回のボタン押しで行われるショット操作などは今作においても採用されている。ただ、画面構成は異なり、ファミコンの『ゴルフ』ではゴルフコースとゴルファーごとに個別の表示をしていたのに対し、今作ではゴルフコースのマップ上にゴルファーのキャラを表示する、複合方式を取っている。もの凄く極端に例えれば、見下ろし視点のロールプレイングゲーム風味と言ったところか。個別でなく、二つが融合した状態で展開するので、本当にそのコースでゴルフをしているという手応えが感じ取れるものとなっている。
収録されているゲームモードは1人用(ストローク)、2人用(マッチプレイ)のみ。1人用にはCPUとのマッチプレイと言った対戦型のモードは用意されてなく、ただ黙々とゴルフホールを巡っていくだけの地味な内容となっている。当然ながら、『パターゴルフ』みたいなミニゲームとかも無いので、その辺に期待しても無意味である。そこまで贅沢なゲームではない。そこは如何にもゲームボーイ初期のゲームといった感じだ。
ただ、ゴルフホール総数はワリと充実していて(※初期のゲームとしては)、全部で36。ゲーム開始前に二つのコースが選択でき、基本的に各18ホールという構成となっている。
二つのコースはそれぞれ初心者向け、上級者向けと分けられた難易度選択システムの体裁を取っており、前者『JAPANコース』は比較的穏やかなコースが中心なのに対し、後者『U.S.Aコース』は風が強かったり、地形が入り組んだテクニカルなコースが中心と言った具合に棲み分けが成されている。無難にゴルフを遊びたい、手強いゴルフを遊びたいプレイヤー双方に幅広く対応しているという点では、なかなかニクいシステムだ。なお、最終的に各コースで18ホール巡るとエンディングになる。片方をクリアすれば、残ったコースが始まると言ったような事もなく、普通に全部巡ってしまえば、その時点で終了。かなりあっけらかんとした作りとなっている。ただその分、全部やるのも片方だけやって終えるのもプレイヤーの好きなので、自由度は高めだ。それに、18ホールを巡るにしても、短時間で終えられるほどボリュームがコンパクトなので、暇つぶしに最適なのも大きな強み。そして、単にホールを巡るだけにしても、ハイスコアを狙う為にプレイするにしても自由で、どっちかをやらねばならぬ制約も皆無で、堅苦しい気持ちにならず、気軽に楽しめるのも魅力的である。その辺も含めて、全てがファミコンの『ゴルフ』に準拠した作り。コース数の数だけはファミコンの『ゴルフ』に勝るが、お手軽に楽しめる敷居の低さや自由度の高さと言ったところは、まさにその系譜に連なる。
そして、ゲームボーイという携帯ハードの恩恵で、何処でも気軽に楽しめるという魅力が付加されているのは、今作最大の売りと言えるだろう。洗練されたシステムを継承しつつ、ゲームボーイならではの強みと暗に続編としての進化を施す贅沢さ。公には語られてないが、今作はファミコンの『ゴルフ』の続編として言ってもおかしくない内容となっている。スペック的にはファミコンよりやや劣るゲームボーイにして、それを超える完成度を見せてしまっているのである。

特に秀逸なのは、最初に紹介した画面構成の分かり易さだろう。ゲームボーイの液晶サイズを考慮し、ゴルフホールにプレイヤーキャラクターが表示される方式に改められている訳だが、これがプレイヤーとゴルフコースとの一体感、並びに状況把握の分かり易さをより高めるものとして機能しているのが素晴らしい。ゴルファーがマップ上にそのまま表示されるから、自分が今、本当にこのホールを回っているという確かな手応えが得られるし、更にどんなところに自分が位置しているのかと、その状況が一発で理解できるのは本当に有り難い。ゴルファーとマップが個別に表示されるスタイルだと、二つが独立している故にイマイチ実感が湧き難いし、尚且つ小さな点がプレイヤーの位置として表示される故に多少ながら、分かり難さと見難さがある。そんなスタイルの補強を今作はやり遂げてしまっている。
正直な所、今の時代で考えれば、この仕組み自体、大したものじゃない。むしろ当たり前と言っても良いようなものだが、当時にしてこの分かり易さを演出してしまったのが衝撃的である。しかも、ゲームボーイという画面サイズ的に小さいハードでそれをやってしまったのが、何とも皮肉。結局、人は大きい媒体で物を作ると、大事な事を忘れてしまうんだと、この画面構成の分かり易さを体感すると考えさせられてしまうだろう。ある意味、制約が生んだ盲点と言ったところである。
単に一体感と状況把握のし易さでなく、画面内に表示される風向きと言った各種情報の分かり易さも、その事に対する痛烈な皮肉となっている。打数はキャラクターアイコンの脇に表示、風向きは大きな矢印アイコンで簡単に把握できるようにするなど、とにかく「直感」で理解できるようにする工夫が徹底されている。ゴルフボールが置かれた芝生の状況にしても、大きなアイコンで表示し、その状況を鮮明に描くなど、単に見ただけでどんなところにボールがあるか、理解できる作り。更に現在の打数、そしてホールのパー数と言った情報も、ホールの全体マップ画面の表示とし、プレイ中に気になったら確認する程度の扱いにしているという思慮深さ。それらの情報を画面全域に表示させ、主に初心者のプレイヤーが混乱させない為の対策として、見事に機能しているのだ。どちらかと言うと、ゴルフゲームはなるべく画面内の情報が多ければ多いほど、戦略性が増して緻密なプレイがやり易くなるものだ。周りの状況を読んで、ボールを打って一喜一憂する、それがゴルフの魅力でもある。
しかし、裏を返せばその表示の多さは初心者にしてみれば敷居が高く、個々の情報を把握するだけで時間を費やしてしまいがち。情報が多い故に威圧感みたいなものもあり、最悪、脳内パニックに陥る可能性すらあるのも事実だ。 その可能性を封じ込めることまで、画面サイズの小さい今作はやり遂げてしまっている。情報が少なくすることで、混乱を最小限に押さえ込む、情報表示の多いゲームに対する反論とも言える行いまでしているのだ。これもまた、先の状況把握のし易さなどに対する痛烈な皮肉。情報表示を沢山すればするほど、分かり難くなる欠点を忘れてるぞ、と言ってるかのようなその様は耳が痛い。沢山出せば出すほど、確かに奥深さは増す。しかし、そんなに沢山表示すれば、プレイヤーが苦労するのもまた事実。その裏の事実を忘れて無いかと、今作の画面構成は語っているかのような感じがある。実際、最小限の情報に絞り込んだ恩恵により、今作に威圧感は無く、アイコン表示なので個々の状況もほぼ一目で理解できる。 そんなほぼ直感的に理解できる分かり易さを持つ、今作の画面構成。単純に液晶のサイズを考慮し、あえて簡素にした…実際のところは、それだけなのかもしれない。
しかし、その工夫のおかげで、ゴルフゲーム屈指の情報と状況の分かり易さを生み出したのは、まさに偉大な功績だと言っても良いだろう。そして、画面が小さいからこそ、シンプルにすることの大事さがより際立つというのもまた、感慨深いものがある。コースとゴルファーが独立し、そしてビッシリと情報が表示された画面構成がゴルフゲームにとってベストなのか?その辺の事は、今作をプレイすれば、それがベストじゃないと身を持って痛感させられるだろう。そんな画面サイズの大きいゲーム、そしてファミコンの『ゴルフ』以上の事をしてしまっているのが今作。小さいくせして大物級なのである。正直、今作はゴルフゲーム最高傑作と言っても過言じゃない。

画面構成だけでなく、その他の操作性とバランスと言った辺りも水準以上の出来栄えだ。相変わらず、3回のボタン押しでサラッとボールを打てるその気持ち良さは、癖になる魅力に秀でている。全36ホールの個性の分け方も、JAPANコースはOBエリアなどが少なめ、U.S.AコースならOBや池が沢山あったりなど、初心者向けと上級者向けというそれぞれの特徴を明確に示した作り込みが成されているのが絶妙だ。
良くも悪くも、シンプルに楽しめる手軽なボリュームもまた秀逸。先の繰り返しになってしまうが、基本的にどのコースも短時間で18ホール周れる作りなので、暇潰し用のゲームとしては申し分が無い。ハイスコア狙いなどのやり込みもそこそこで、それなりの極め甲斐がある辺りも、昔ながらのゲームの魅力に溢れていて面白いところである。
グラフィック、音楽もゴルフゲームということで、基本的に大人しめ。ただ、音楽はプレイヤーを退屈させないよう、マップ確認中などには曲を流し、ショット時には曲を消すと言った感じに、状況に合せた工夫が徹底されているのがユニーク。全編無音じゃない故に眠気が誘われることなく、楽しくプレイできるという点でも、この演出はナイスである。
どちらかと言うと、無音でプレイできた方が集中し易いものだが、それはそれで寂しいので、このように合間に曲が挟むとモチベーションも落ち難い。この辺りは、ファミコン版『ゴルフ』の欠点を見事に補強している感じだ。

その他、通信ケーブルを繋いでプレイする対戦プレイも、安定した駆け引きの面白さがあって面白い。
さすがに一昔前のゴルフゲームなだけに、内容はかなりアッサリとしてしまっているが、据え置き機のゴルフゲームに対するアンチテーゼとも言える画面構成、抜群の操作性など、その完成度は昨今のものに勝るとも劣らない。
どちらかと言うと暇潰し向けのゲームだが、細かな面において考えさせられる工夫や見所も多い今作。初心者にも上級者にも自信を持ってお薦めできる、ゲームボーイ初期の名作だ。とことんシンプルにこだわった画面構成と優れた操作性は特筆モノ。据え置き機のゴルフゲームを重点的にプレイしているプレイヤーは是非、今作を体験してみて欲しい。
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