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≫ゲームボーイギャラリー3
■発売元 任天堂
■開発元 トーセ
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ+中断1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー対応、スーパーゲームボーイ対応、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 5〜8時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
ゲームボーイギャラリーシリーズの最新作がカラー対応になって登場。今回は懐かしのゲーム&ウォッチの名作5作、『エッグ』、『グリーンハウス』、『タートルブリッジ』、『マリオブラザーズ』、『ドンキーコングJR』をリバイバル。オリジナル忠実な『むかし』モードと現代風アレンジを加えた『いま』モードは本作でもお約束のように実装。
ちょっぴり通好みなラインナップのシリーズ3作目だ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一つの事に集中するだけで遊べる、単純明快さと奥深さが秀逸な各種ゲームの基本ルール
◆隠しゲームの数が前作の5倍となり、ボリューム感が倍増した収録ゲーム群
◆十字キーのみ、或いはABボタンだけで遊べてしまうシンプルで爽快な操作性
◆これまでとは打って変わり、旧作とは異なる大胆なアレンジが光る『いまモード』
◆前作以上に特典が豪華になったほか、やり込めばやり込むほどセレクト画面が派手になっていく遊びも仕込まれた『ギャラリーモード』
◆単純ながら極めると結構手強く、意外な奥深さを露呈させる絶妙なゲームバランス(『マリオブラザーズ』と『タートルブリッジ』、『ドンキーコングJR』は除外)
◆ゲームルールの解説全般が強化され、完成形同然のレベルにまで進歩したサポート機能群
◆隠しゲーム増強により、更に遊び応えが増したスター集めを始めとするやり込み要素
◆ゲームボーイカラー対応でより鮮やかで美しく、見栄えが良くなったグラフィック
◆全体的に落ち着いた作風の曲が増え、微かに癒しも感じられるようになった良質の音楽

--- Bad Point ---
◆シリーズ伝統の手軽さに著しく反したゲームラインナップ(特に『マリオブラザーズ』と『タートルブリッジ』の二つ)
◆『いま』と『むかし』共にテンポが悪い上、操作性も独特なので気軽に遊べる作りとは言い難い『マリオブラザーズ』(慣れればそこそこ遊べる)
◆嫌がらせに等しい難易度調整と無駄なボリュームアップが図られたいま版『タートルブリッジ』
◆ボーナス得点の低さなど、調整不足な面が目立ついま版『ドンキーコングJR』
◆前作よりも更に見栄えと作りが悪くなったゲームセレクト画面
◆地味になったミス演出(特にいま版『ドンキーコングJR』が酷い)
◆数は多いがいずれも『いまモード』未収録でイマイチ、パンチに欠ける隠しゲーム
◆前々作とのリンク機能における、厳し過ぎる通信解除条件(前作との通信解除条件は例外)
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
数十年の時を経て、亀はアホウドリへと進化した。

ダーウィンの進化論が乱れる。


伝説の携帯ゲーム機『ゲーム&ウオッチ』で好評を博したゲーム数本をゲームボーイ向けにリメイクして収録した、『ゲームボーイギャラリー』シリーズの第三弾。開発はこれまでのシリーズと同様に任天堂開発一部とトーセが担当。

この進化の方向性はいただけない。
複雑さを求め過ぎ、売りの手軽さが失われてしまった残念なシリーズ第三弾だ。

ゲーム内容は過去の『ゲームボーイギャラリー』シリーズに準じた、オムニバス形式のアクションゲーム。『ゲーム&ウォッチ』のゲームに挑戦し、ハイスコアを目指すというものだ。基本システムもプレイヤーがゲームオーバーになるまで延々と続くエンドレス仕様、特定のスコアを達成する事で手に入る『スター』を集めていく事をメインとしたやり込み重視のゲームデザインなど、これまでのシリーズを踏襲している。前作にて、より豪華な方向へと変貌を遂げた『ギャラリーモード』もそのまま。全体的にはシリーズの完成形とも言うべき出来だった、前作を強化させた作りとなっている。
そう完成形を踏襲した作りである故にか、今作にて新たに追加された要素や変更点は少ない。強いて言うなら『ギャラリーモード』に追加された新項目『おまけ』 程度だ。これはゲーム&ウォッチの一部のゲームにまつわる秘密のエピソードを聞く事ができる項目で、本編で一定量のスターを集める事によってオープンする。一体、何のゲームのエピソードが語られるのか、その詳細は伏せるが、これまでのシリーズをプレイしてきた方ならば驚くこと間違いなしの内容である事だけは言っておこう。また、このエピソードが語られるゲームはスターを一定量集める事で、実際にプレイできるようにもなる。メインゲームとは別扱いだが、そんな豪華な試みも用意されているのも見逃せないところだ。 それ以外の『ギャラリーモード』内の項目の基本仕様に特に大きな変更は無い。ただ、今回は『プレゼント』で得られる特典が前作以上に豪華なものに。前作でも特典の一つとして用意されていた、隠しゲームの量が大幅に増えたのである。その数、何と5つ。但し容量の都合からか、前作の隠しゲームのように5つのゲームに現代風アレンジを加えた『いまモード』は用意されてない。アレンジを期待する人にとっては残念なところだが、もらえるゲームの量が増えたのもあってか、全体的なゲームとしてのやり込み甲斐はシリーズ最高レベルと言っても良い。前作の物量でも満足できなかったプレイヤーにとっては、もう悲鳴を挙げること必至と言っても良いだろう。
そんな数が大幅に増えた収録ゲームの内、メインを張るタイトルは全部で5つ。前作同様、隠しも含めて全てが新しいゲームに差し替えられている。オリジナルを忠実に再現した『むかしモード』、マリオキャラクター達によるアレンジを加えた『いまモード』は今回も健在だ。各ゲームの詳細は下記の通り。

■エッグ
4箇所から転がってくる卵を受け止めるゲーム。卵を受け止め損ねるとミスだが、画面右上、左上にある窓からニワトリが顔を出している状態で受け止め損ねた時に限り、半分ミスとなる。2度目の半分ミスを犯すと1ミス扱い。つまり、ニワトリが出てる際のミスを繰り返せば、長く粘り続けられる仕様となっている。
『いま』ではヨッシーを操作し、4箇所から転がってくる『クッキー』を受け止める、本来の題名に反した内容に。基本ルールは『むかし』と一緒だが、受け止められる範囲が拡大し、難易度が更に下げられている。またクッキーの焼き加減によるボーナス得点と言った要素も追加されている。

■グリーンハウス
上下に分けられたフィールドの左右に設置された、計4箇所の花を攻撃する害虫を殺虫剤スプレーで倒していくゲーム。
花が害虫にやられるとミスになる。
『いま』も基本ルールは一緒だが、弾切れの概念が設けられている。
また、上段と下段ごとに敵の性質が異なるという癖のある要素も。

■タートルブリッジ
亀の橋を渡り、向こう岸にいる人に物を配達する事を繰り返すゲーム。海に落下するとミス。
『いま』はスーパーファミコンの『ヨッシーアイランド』に登場した敵キャラ、アホウドリの上を渡って行くゲームとなっている。基本ルールは一緒だが、コインボーナス、中央に設置された浮遊島などの新要素が加えられている。また、フィールドが『むかし』よりも広くなっている。

■マリオブラザーズ
コンベアを流れる荷物を落とさないよう、トラックまで運ぶゲーム。荷物を受け止め損ねるとミス。
『いま』ではクッパがコンベアの流れを変えるというお邪魔要素が追加されている。

■ドンキーコングJR
前作に収録されていた『ドンキーコング』の続編。ドンキーコングJRを操作し、ゴール位置にいるドンキーの檻に4回到達して彼を助けるアクションゲーム。
『いま』も同様だが、前作の『ドンキーコング』と同様、救出する度にステージが変化する要素が追加されている。

他に5つの隠しゲームが用意されているが、例によってネタバレので伏せる。このように今回も単純ながらも奥深い魅力を持ったゲームが用意されている。ただ、全体的に複雑且つ、テンポの遅いゲームが増えた感は否めない。特に『マリオブラザーズ』と『タートルブリッジ』は『いま』のアレンジが少し複雑で、手軽に遊べない点が地味に辛い。また、難易度が高めに設定されているのも、好みが分かれるところだ。
アレンジ自体の方向性は悪くなく、これまでのシリーズと同様、オリジナルの魅力を損なわずに現代風に直している。またシンプル故に熱くなれる中毒性も健在で、中でも『エッグ』と『グリーンハウス』はその象徴と言える。
ただ、それでも今回は通好みな方向に傾いている印象が強め。基本的には前作の完成されたシステム、構成を継承し、そつなく仕上げている。ボリュームも増え、遊び応えはシリーズ最高レベルと言っても良い。しかし、ゲームのチョイスが悪く、過去のシリーズの売りでもあった手軽さが今回は弱い。それ以前に全体的に重い内容に変貌を遂げてしまってる感じだ。単純ながらも奥深い魅力は健在なのに、取っ付き難い。取っ付き易さこそが最大の売りだったシリーズにとっては正直、疑問符の出る有様だ。着実に進化しているのに違和感強め。そんな続編に仕上がってしまっているのである。

故に今作は魅力以上にその取っ付き難さのインパクトが強い。特に繰り返しになってしまうが、今回はチョイスを明らかに間違えた感が否めない。『タートルブリッジ』と『マリオブラザーズ』はその筆頭だ。いずれもテンポが悪い、ルールが地味に入り組んでる、難易度が高いの三拍子。『いまモード』のアレンジでもその部分は健在で、悪い意味で忠実且つ、進化させた作りになっているのがもどかしい限りである。
中でも『タートルブリッジ』は『いまモード』のアレンジの方向性からして、既におかしい。フィールドを長くする、難易度を上げるなど、どう考えても嫌がらせ。まだ難易度を上げるのは理解できなくもない。しかし、フィールドをオリジナルよりも広くする必要はあったのか?オリジナルである『むかし』のように一画面内に収めずに。正直、プレイヤーのモチベーションを保つ点では、『むかし』の方が圧倒的に優れている。一画面内、目的地が常に見える状態で、尚且つ広さも極めて適切だからだ。元々、難しいゲームではあるが、そう言った適切なバランスで構築されていたが故に安定した遊び易さを誇っていたのだ。それを何故、崩す方向でアレンジしてしまったのか。遊び易さにこだわる『いま』で、こんな真逆の路線を突き進んだのには本当に謎としか言い様が無い。後者『マリオブラザーズ』もただでさえテンポの悪いゲームなのに何故、『いま』でベルトコンベアの流れを逆行させるという、よりテンポを悪化させる要素の 追加など行ったのか。これもまた謎だ。それにこんな二つの厄介なゲームを何故、一緒に収録してしまったのか。ネタ切れだから、というのはきっとないはずだ。現にゲーム&ウォッチには今シリーズに収録された事の無い、シンプル且つ奥深いゲームがまだ沢山残されているからだ。複雑なものもまた然り。なので、他にシンプルなゲームを用意するという手はきっとあっただろうと思う。
元からそういう狙いだった、というのなら仕方がないが、それでもこの二つを一緒にしてしまったのは致命的な過ちだったと言える。何も複雑なゲームを入れるなという訳ではない。入れるにしても、数を抑えて欲しいのである。特に今作のような単純に遊べる事を売りとしているゲームなら余計に。増やす事により、手軽に遊べるという魅力が損なわれてしまいかねないからだ。そこを守らず、今作は一緒にしてはならぬもの二つを導入してしまった。これは本当、愚かな判断だったと言えるだろう。結果として、手軽に遊べる特徴が失われ、やり込むのにも気力がいるという、あるまじき作りへと変貌を遂げてしまったのだから。やり込みをメインとしたゲームで、この作りは致命的としか言い様が無いだろう。気軽に遊べるのが大事なのに、集中してやらないと遊び耐えないとか、玄人向けにも限度がある。
全部のゲームが遊び難い訳ではない。『エッグ』や『グリーンハウス』のように、手軽で奥深い魅力に秀でたゲームもあるし、『タートルブリッジ』もパターンに慣れれば結構、はまれるゲームになっている。しかし、コツを掴む事が重要で、シンプルに何も考えず遊べないというのは痛い。『マリオブラザーズ』とかは序盤からしてテンポが遅いのでモチベーションが下がるし、『ドンキーコングJR』に至っては難易度の妙な高さが尾を引く。せめて、テンポを早くするなり、難易度を下げるなりの工夫をしていれば、僅かに遊び易い内容になっていたかもしれないのに、オリジナルを尊重するという事が、返ってアダになってしまっているのはもどかしい限りだ。
前作があまりにシンプル過ぎたので、より濃い方向へ。それが今作の真の狙いだったのかもしれないが、完全に裏目に出てしまっている。マニア向けとしてはこれで評価できるが、遊び易さと若い世代への配慮を何よりも重視してきた過去のシリーズを考えると、今回のやり口は間違っていると言わざるを得ない。濃い方向を目指すのも悪い事じゃないが、もう少し加減を考えられなかったのか。色々と悔やまれる。

ただ、操作性はシリーズの伝統に則った、シンプルなもので統一されているのがせめてもの救い。AボタンとBボタンを使うゲームも増えているものの、直感で思うがままに動かせるのが気持ち良い。ゲームバランスも『エッグ』、『グリーンハウス』は概ねよくまとまっている。しかし総合的には綺麗にまとまってる方ではないのは否定できない。
ボリュームも収録ゲームの量、やり込み要素も含めてシリーズ最高クラスではある。しかし先の通り、濃い目でパワーの要るゲームが増えた為にダレ易いのは致命的。正直、今回は余程のコアプレイヤーでなければ、コンプリートなど、見果てぬ夢で終わってしまうだろう。
対し、グラフィックと音楽はいつものように良好な出来栄えだ。グラフィックはカラー対応になった事で、より鮮やかなものへ進化を遂げたのが印象的。音楽も全体的に落ち着いた曲が増えたのが面白い。特に『グリーンハウス』の『いまモード』、タイトル画面、ギャラリーモードのメイン画面はその象徴と言える。無論、激し目の曲もちゃんと収録。曲のバランスに関しては恐らく、シリーズの中でも随一と言えるかもしれない。

ただ、演出は全体的に前作よりも弱い。『いまモード』のミス演出にしても、全体的に素っ気なさ過ぎる。ただ、街に発展していくという面白い試みの成されたギャラリーモードは結構、凝った仕上がりとなっている。その他、コアプレイヤー向けの高難易度、豊富なヒントメッセージなどのフォローは前作をベースとしているだけに万全。中断セーブ機能など、ハイスコアを極める際の手助けとなる機能も健在で、痒い所にまで手が行き届いていて見事だ。
だが正直、今作が安易にお薦めできるゲームでない事実に変わりは無い。濃いもの中心で選んでしまったゲームのラインナップとテンポの悪い一部ゲームの展開、そしてコンプリートの面倒臭さと、これまでのシリーズの中でも群を抜いて遊び難い内容になっている。
プレイし始めれば時間を忘れてはまってしまう中毒性だけはしっかりしているが、それでも結構なパワーが要る作り。これまで通り、ゲーム&ウォッチのゲームが好きな人や当時のプレイヤーなら楽しめるかもしれないが、若い世代やシンプルなゲームを求めるプレイヤーにはやや厳しい出来。少なくとも暇潰しには適さない。それでも構わないのならお試しあれ。但し、こちらは一切の責任を持ちませんのでそのつもりでお願いします。
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