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≫ゲームボーイギャラリー
■発売元 任天堂
■開発元 トーセ
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3000円(税別) / バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ+中断1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 16ページ
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、20〜22時間(完全攻略目的)
1980年代に一斉を風靡した『ゲーム&ウオッチ』の名作4本『マンホール』、『ファイア』、『オクトパス』、『オイルパニック』が一本となってゲームボーイに登場。
ただ懐かしいだけではなく、オリジナルを忠実に移植した『むかし』モードの他に現代用にアレンジされた『いま』モードも搭載。ゲーム&ウオッチ世代もそうでない人でも存分に楽しめる内容となっています。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一つの事に集中するだけで遊べる上、熱中してしまう単純明快ながらも非常に奥が深い各ゲームの基本ルール
◆十字キーのみ、或いはABボタンだけで遊べてしまう取っ付き易さ抜群の操作性
◆グラフィックからサウンド、アニメーションに至るまで、ゲーム&ウオッチのデジタル感を見事に再現した『むかしモード』
◆原点の魅力を尊重し、遊び易くした秀逸なアレンジの数々が光る『いまモード』
◆自らの限界に挑戦する色褪せぬ楽しさと中毒性に秀でたスコアアタック
◆ハイスコアに応じて手に入るスター集めとそれによる『ギャラリーモード』の項目開放など、充実したやり込み要素
◆ゲーム&ウオッチの歴史が学べるほか、当時の世代には懐かしいゲームが閲覧できる『ギャラリーモード』
◆簡単だけど極めるとなると一筋縄では行かない、絶妙且つ奥深いゲームバランス
◆攻略アドバイス、中断セーブ機能など、痒い所に手の届いたサポート機能の数々
◆よく動くドット絵と『むかしモード』におけるデジタル感が印象的なグラフィック
◆良質で耳の残る楽曲が満載の音楽(特にエンディングが素敵)
◆地味ながらも仰々しくて失敗する事の愚かさを思い知らされるミス演出
◆『むかし』、『いま』ごとに個別のものを用意するこだわりが炸裂したスーパーゲームボーイ用のピクチャーフレーム

--- Bad Point ---
◆やや煩わしく、常時確認できる形で無いのがもどかしいスター確認画面(各ゲームの左右に記録される為、いちいち十字キーを動かさないと確認できない)
◆落下判定がややシビアで辛口な難易度がタマにキズな、いまモード版『ファイア』
◆全てのゲーム(モード含む)で1000点以上を獲得しないと見れないエンディング(ちょっと条件が厳し過ぎる)
◆乏しい隠し要素(ギャラリーモードのゲーム紹介程度しかない)
▼Review ≪Last Update : 8/7/2011≫
偉大なる先輩、後輩の所へ颯爽と降臨。

知る人ぞ知るCMネタ。


1980年代に一世を風靡した伝説的な携帯ゲーム機『ゲーム&ウオッチ』のゲーム数本をゲームボーイ向けにリメイクした作品。開発は当時、『ゲーム&ウオッチ』の開発に携わった横井軍平氏率いる任天堂開発一部とトーセが担当。

シンプルながらも奥が深い、色褪せぬ魅力に富んだお手軽な傑作だ。

ゲーム内容はオムニバス方式のアクションゲーム。全部で4つの『ゲーム&ウオッチ』のゲームに挑戦し、ハイスコアを目指していくというものである。
基本的に収録されている4つのゲームは全て、プレイヤーがゲームオーバーになるまで延々と続くエンドレス仕様。一定の得点を獲得すれば終了と言った区切りは設けられてない。何処まで得点を伸ばせるか、自分自身の限界に挑み続ける昔ながらの作りとなっている。とは言え、一応の目標も存在。全てのゲーム及び全ての難易度で『スター』を5つ集めるというのが設けられている。『スター』とは、各ゲームで一定の得点に到達する度に付く証で、最大5つまで溜まる仕組みとなっている。これを収録されてる4つのゲーム全てで5つ集めるというのが、今作でプレイヤーが目指す最終的な目標となる。極端に言ってしまえば、やり込みが全て。如何にも『ゲーム&ウオッチ』が主役のゲームらしい設定になっている。単純ながらも何時間も没頭してプレイしてしまう、そんな元の魅力を余す事無く反映させた、こだわりのゲームデザイン。下手なアレンジを加えずに元のゲーム性を推す、理に適ったものに仕上げられている。
そして、収録されている4つのゲームは『マンホール』、『ファイア』、『オクトパス』、『オイルパニック』というラインナップとなっている。 各ゲームの概要は下記の通り。

■マンホール
全部で4箇所の穴の開いたマンホールの上を通過しようとする人達を落とさぬよう、タイミングに合わせて蓋をしていくゲーム。蓋をするタイミングを間違え、穴に人が落ちてしまうと1ミスとなる。

■ファイア
ビルから落下してくる人を担架で受け止め、救急車まで運んでいくゲーム。
人を受け止め損ねると1ミス。

■オクトパス
巨大なタコの下に置かれた宝箱から宝を回収し、船へ戻る事を繰り返すゲーム。
タコが情実、収縮させている触手に一回でも触れると1ミス。

■オイルパニック
漏れ出したオイルをバケツで受け止め、階下の人にタイミング良く渡すゲーム。
オイルを受け止め損ねるか、或いは階下の人に渡すタイミングを間違えると1ミス。

いずれもシンプルでありながら、結構侮れぬゲーム性を持った内容となっている。そして、『ゲーム&ウオッチ』の中では特に人気を博したゲームばかりなので、当時、やり込んだプレイヤーにとっては懐かしい気分に浸れるだろう。
勿論、各ゲームはオリジナルを忠実に再現。効果音主体のシンプルな音楽、黒と白を基調に描かれたキャラクター達、コマ単位の簡素なアニメーションなど、全てが当時のまま。得点を重ねる度、ゲーム全体のスピードが上がり、難易度が高くなっていくシステムも健在なので、当時と変わらぬシンプルながらもスリル満点のゲームプレイが堪能できる。
更にユニークな試みとして、今作では先のようにオリジナルを忠実に再現した『むかしモード』に加え、現代風アレンジを加えた『いまモード』なるものも収録。マリオシリーズのキャラクター達を用い、『ゲーム&ウオッチ』のゲームを今なりに作る…というコンセプトを基に作られたモードだ。オリジナルを忠実に再現する事をコンセプトとした『むかしモード』とは異なり、こちらはゲームルールや難易度、グラフィック、音楽と言ったあらゆる部分に独自の味付けが加えられている。
その『いまモード』特有の味付けの詳細は下記の通り。

■マンホール
プレイヤーキャラクターはヨッシー。
通行人が穴を通るタイミングに合わせて蓋をするのではなく、4箇所の穴に蓋を設置するというルールに変更。蓋は通行人が通過すると落下。但し、ヨッシーで下(または上部)から押さえた蓋は落下しないという特徴がある。
また通行人もキノピオは普通の速度、ドンキーコングJr.は遅めの速度、マリオはダッシュで突貫(?)してくると言った特徴があり、それぞれに応じた対処が求められてくる。

■ファイア
プレイヤーキャラクターはマリオとルイージ。
基本ルールは『むかしモード』と変わらないが、落下してくるキャラによって担架で受け止めた際に跳ね返る高さが異なる、独自のシステムを追加。跳ね返る高さが固定されてた『むかしモード』とは異なり、難易度が上がっている。

■オクトパス
プレイヤーキャラクターはマリオ。見物人にピーチ姫。
基本ルールは『むかしモード』と一緒だが、宝物を気の済むまで回収可能になった。沢山集め過ぎると移動スピードが遅くなるが、その状態で船まで戻ると高得点が得られる。また、Bボタンで宝物を投げられ、これをタコの触手にぶつけると、その触手を一定時間、行動不能にさせる事ができる。

■オイルパニック
プレイヤーキャラクターはマリオ。階下の受け止め役にヨッシー。
更に見物人としてクッパが登場する。
基本ルールは『むかしモード』と変わらない。しかし、バケツが二つとなり、キャッチできるオイルの容量が増している。また、AボタンとBボタンで左右のバケツを切り替える事が可能。

簡単ではあるが、このように『むかしモード』のオリジナル版とは大きく異なる内容に仕上げられている。更にこれは『いまモード』全てのゲームに共通だが、アニメーションは『むかしモード』のコマ単位ではなく、昨今のゲームと同様の方式。当然だが、プレイ感覚も『むかしモード』とは全く異なるものとなっている。
しかし、いずれもタイミングよくアクションを行うのが主体の基本的なゲーム性に一切の変わりは無し。ルールの追加、変更と言ったアレンジも加えられているが、基を根底から破壊するほど過剰なものにはなっておらず。きちんと原作を尊重し、その魅力を何ら失わせない方向でアレンジが成されている。全くの別物と見せかけて、全然基と変わってない、それどころかより魅力溢れるものに仕上げられている様には、オリジナル経験者も舌を巻くこと必至だ。無論、『いまモード』本来の対象となる、ゲーム&ウオッチ未経験の世代に対してもナイスなアレンジ具合。単純とは言え、凝った見た目や練られたゲーム性は、全く古さを感じさせない、それ以上に新鮮な体験を提供してくれるだろう。
『ゲーム&ウオッチ』の単純なゲーム性を尊重した、やり込み重視のゲームデザイン、オリジナルの完全再現というに相応しい『むかしモード』、見た目の変更で新たな魅力が加味された『いまモード』と、全てにおいてこだわりが全開。昔を懐かしみたい方からゲームの歴史を知りたいプレイヤーまで、広くフォローした作り込み具合はまさに圧巻の一言だ。
ただの移植作と侮ること無かれ。今作は古参から新規まで、新しくも懐かしい体験とゲームの歴史を知れる史料としての価値も持った、永久保存版とも言える一本なのである。まさにゲームの原点が今作には詰まっているのだ。

そして今作最大の魅力は、そんなゲームの原点とも言える単純な奥深さに満ちた4つのゲーム全てに集約される。先のゲーム紹介の通りだが、いずれも基本ルールが単純。ただ一つのアクションに特化するだけで普通に遊べてしまう、敷居の低い内容に仕上げられている。特別なテクニックも、複雑なボタン操作とかも一切求められることも一切無し。ただ、横に移動したりと言った行動を繰り返すだけで、全てのゲームが成立してしまう。現代の感覚で言えば、簡素の一言。そして、単純な行為の繰り返しという事で、今作のゲームとしての単調さ、底の浅さを連想してしまうだろう。確かに現代の感覚で見るならば、移動の行為を繰り返すだけのゲームの何が楽しいのかと、魅力のないものとして映るかもしれない。
しかし、一つの事に集中するだけで遊べること。これはゲームとしてはとんでもない強みである。『マンホール』であれば「通行人が穴に落ちないよう、蓋をしていく」、『ファイア』なら「担架で人をキャッチし、救急車まで運んでいく」。これらの一文を読むだけでどんなゲームか、そしてどんなルールであるかを理解できてしまうのは、普通に恐ろしい事だ。頭をフル回転させる必要も無く、ゲーム本編に入っていけてしまうのだから。それこそまさに、全然ゲームに詳しくない人ですら、だ。昨今の見た目が派手で、様々な要素を豊富に取り揃えたゲームでも、この「すぐに理解できる」という強みを前にしては太刀打ちできないだろう。どんなに沢山の遊びが味わえても、それらが単純で理解し易いものでなければ尚更。多くの人に遊んでもらうことは極めて難しい話である。だからこそ、間口が広さというのは欠かしてはいけない事なのだ、と。今作に収録されたゲームは、そんな当たり前で、誰もが遊べるゲームの条件というものを変に着飾らず主張しているのだ。単純である事はゲームにとって、決して欠かしてはならぬ事なのだと問いかけている。
今作が出たのは1997年。当時はムービーを駆使した演出重視のゲーム、複雑なシステムを売りとしたゲームが人気を博し、それが主流となっていた。そんな頃にポッと現れた今作。そう言った派手なゲームが流行る時期に古さを売りにした今作が発売された事自体、ある意味、時代から逆行する真似だったかもしれない。しかし、今作が訴えかけたテーマは重いものだ。それは今後数十年先も、常に考えなければならない事とも言える。真に多くの人に受け入れられるゲームとは何か、複雑なゲームに未来はあるのか、と。その主張は2011年現在の今もなお、枯れ果ててない。それどころか、これからも枯れる事はないだろう。そんな枯れる事を知らぬゲームの原点、単純さ。その大切さを今作に収録された4つのゲームをプレイすると、痛感させられるだろう。そして、同じ事の繰り返しでも、工夫次第で単調さは無くなるという事も。
実際、今作に収録されたゲームでプレイヤーがやる事は単純極まりない。基本的に移動だけだ。しかし、そこも今作はスピードアップ、ボーナスタイムと言ったイベントを仕込む事により、作業感を完全に廃している。まさに仕掛けに凝らずして、魅力溢れるゲーム成り立たずとはこの事。単純なゲームでも、そういう事に凝る事で奥深いものへと化けるのだと、そんな当たり前で大事なことも、各ゲームをプレイすると痛感させられること、間違いなしだ。時が経っても面白さが失われないゲームは、何を大事にしているのか。そして、どうしてその面白さは不変であり続けるのか。今作にはその答えが沢山詰まっていると言っても、過言ではないだろう。史料価値のある一本というのも伊達じゃない。

各ゲームのルール周りのみならず、操作性の取っ付き易さも今作は突出している。何と、使うのは十字キーだけ。その為、説明書を読む必要はほとんど無し。単にゲームを始めるだけで直に理解できる、驚異的なものに仕上げられている。
『いまモード』に限り、Aボタン、Bボタンを使うゲームもあるが、同時押しなどの複雑な操作は求められたりしないので、取っ付き易さに変わり無し。現代アレンジでも、昔の魅力はきちんと残すこだわり全開の操作性として完成されている。
各種ゲームのバランスも適切。腕の上達に従い、徐々に高得点が狙えるようになっていくなど、理に適った調整が図られている。また、スター獲得のノルマとなるスコアにしても簡単でありながら、なかなか思い通りにいかせてくれぬ絶妙な設定になっているのが見事だ。
また、やり込み重視の内容ながら全体のボリュームもなかなか。特に『ゲーム&ウオッチ』のゲーム紹介が閲覧できる『ギャラリーモード』の項目開放は、数が結構あるだけに熱い。閲覧可能なゲームもメジャーなものからマイナーなものまで、幅広く揃っているのがニクい限りだ。
グラフィック、音楽の完成度も上々。音楽は『いまモード』に限定されるが、なかなか良質で耳に残る曲が揃っている。特に『ファイア』、『オクトパス』の二曲は結構、癖になる仕上がりだ。また、全てのゲームで1000点以上獲得する事で拝めるエンディングで流れる曲も秀逸。地味に感動的な曲になっているので、是非とも要チェックだ。

演出周りもなかなか凝った仕上がり。特に『いまモード』でミスを犯した際の仰々しいキャラクターのリアクション、エフェクトは必見の価値アリだ。その他、最初からハイスピード状態で始まる高難易度モードを用意するなど、コアなプレイヤーに向けた配慮も万全。スコアアタックの限界を突き詰めるなど、長く遊べる要素も揃っているので遊び応えは申し分ない。慣れないプレイヤーに向け、ゲームオーバー後にヒントメッセージを表示したり、何時間もプレイし続けたいプレイヤーに向け、ポーズ中に電源を切る事でその状態が保存される『中断セーブ機能』を設けたりと、配慮も抜かりが無い。
強いて言うならば、『いまモード』の『ファイア』がやや辛口な難易度であること、ゲームセレクト画面での集めたスターの確認手順が煩わしいのが残念ではある。とは言え、旧ゲーム&ウオッチ世代から現世代までカバーした絶妙なアレンジ具合、シンプルで奥深いゲーム性と、総合的な完成度はかなりのもの。昔のゲームとは言え、今プレイしても全く色褪せぬ中毒性と熱さも特筆すべきものがある。まさに”ゲームの原点”と単純であるが故の強みが詰まった今作。
ゲーム&ウオッチ世代のみならず、現世代…ゲームボーイを持ってる人ならば要プレイの傑作だ。今なお色褪せぬ、ゲームの原点を体験してみよう。お薦め。
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