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  4. ドンキーコング
≫ドンキーコング
■発売元 任天堂
■開発元 パックスソフト・ニカ
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込) / バーチャルコンソール版(3DS):300円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 5〜6時間
今を去ること数十年前。口ひげをたくわえた鼻の大きな男が、とある街の工事現場で働いていた。男の名はマリオ。当時、マリオは『ドンキーコング』という名のペットを飼っていた。マリオとコングは大の仲良し。いつも一緒だった。

しかし、マリオに新しい友達『ポリーン』ができると、コングは置いてきぼりを食らうようになった。勿論、コングにしてみれば、楽しいはずがない。
焼きもちを焼いたコングは、遂にポリーンをさらって工事現場に逃げ込んでしまった。追いかけて来るマリオに、コングは樽やドラム缶を投げ付けて邪魔をした。だが、マリオはそれらの妨害にも負けず、無事にポリーンを奪還。最後にはコングも自分のイタズラを反省してマリオと仲直りしたはずだったのだが…。

コングのイタズラ心は、全然治まってなどいなかった。またまたポリーンをさらったコングは、今度は街から森へ、船に乗って海を渡り、ジャングルや砂漠を抜けて生まれ故郷へ向かう。
今ここに、マリオとコングの長い追いかけっこが始まった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆オリジナルのドンキーコングと完全新作のパズルアクションをミックスさせた、懐かしくて新しいゲーム内容
◆逆立ちジャンプにバック宙返りと、アクロバティックで多彩なマリオのアクション
◆虚弱体質故の緊張感(落下の恐怖など)と動かす楽しさに秀でた操作性
◆全9ステージ100面以上もの圧倒的且つ、やり応え抜群の総計ボリューム
◆大都会にジャングル、飛行機など、マリオらしからぬ雰囲気に富んだ各ステージの現実感溢れるロケーション
◆任意の位置に足場やハシゴが設置できる、その仕組みが斬新な『エディットギミック』
◆コンマ1秒を極める、レースゲーム並の面白さに富んだタイムアタックのやり込み(クリアタイムも記録されるので、二周目以降のプレイも熱い)
◆ビックリするほど豊富で、見ているだけでも楽しいマリオのやられ様
◆敵と鍵の配置、仕掛けのパターンなど、細部まで入念な設計が施されたステージ構成
◆優し過ぎず難し過ぎず、且つ上達する快感も堪能できる絶妙なゲームバランス
◆マリオらしからぬ硬派で熱い楽曲が満載の音楽
◆攻略ヒントまで仕込まれた、救済処置の一面も併せ持ったデモシーン
◆4ステージクリアごとに合計クリア時間に乗じて残り人数が増える、アクション初心者には嬉しい救済処置(全体的に残り人数を増やす機会が豊富なのも良い)
◆ステージマップがフルカラーになったり、一部の曲がPCM音源になるなど、驚きの仕掛けが盛り込まれた『スーパーゲームボーイ』プレイ時の特典(特にエンディングは必見)
◆旧作ファンなら燃えに燃える、ドンキーコングJr.との戦い(宿命の対決が展開!)

--- Bad Point ---
◆4コースを攻略する度に残り人数が過剰に増える為、やや緊張感に欠ける本編の展開
◆残り人数が増える救済処置の所為で、有り難味が皆無な『ボーナスゲーム』(残り人数が増える特典が救済処置によって、無意味なものになってしまってる)
◆一時停止(ポーズ)できないラスボス戦(長期戦になるだけに地味にしんどい)
◆セーブデータ消失バグの存在(滅多に起こるものではないが)
◆一部ステージにおける映像乱れバグの存在(主にラスボス戦前のデモで起こる。ただ、プレイへの支障は一切無い)
▼Review ≪Last Update : 10/3/2010≫
その男、ただの配管工。

これは、マリオがヒーローでなかった頃の物語である。


アーケードの名作にしてマリオのデビュー作、『ドンキーコング』の生誕10周年を記念して作られた(しかし、開発の遅れで結果的に生誕13周年記念作品になってしまった)、ゲームボーイ向けのリニューアル作品。スーパーファミコンの周辺機器『スーパーゲームボーイ』の対応タイトル第一弾として、『テトリスフラッシュ』と共に同時発売されたゲームでもある。開発は『新・鬼ヶ島』や『タイムツイスト』などに携わったパックスソフト・ニカ。

数あるマリオのゲームの中でも、屈指の完成度と面白さを誇る名作だ。

最初に断っておくが、今作はアーケードやファミコンで発売された『ドンキーコング』とは別物。ステージクリア型のパズルアクションゲームで、コース内に配置されたカギを持ち運び、ゴール扉を解放して各コースを攻略。ガールフレンドのポリーンを誘拐したドンキーコングを追いかけていく内容となっている。
初代『ドンキーコング』は、ドンキーコングが投げてくるタルを避けながら、ガールフレンドの元を目指すのが目的のアクションゲームだった。しかし、今作はその種のコースがメインを張る内容ではない。一応、そう言った初代『ドンキーコング』っぽいコースも用意されてるが、それがメインを張るのは最初のステージ0と最後のステージ9だけ。ステージ1から8までは中ボスコースという扱いで、メインはパズルアクションのコースが占める構成となっている。当然、そのパズルアクションのコースにはドンキーコングは登場しないし、攻撃も何も無い。コース自体は一画面に収まる程度のサイズだが、アクションゲームのように仕掛けを突破したり、敵を倒していったりするのがメイン。もはや、ドンキーコングの名を語った新作も同然。初代とは別のゲーム性を持ったアクションゲームになっている。
更にゲーム進行の仕組みも特殊。基本は初代ドンキーコングと同様に一本道。しかし、最初のステージ0に限り、初代ドンキーコングのリメイクで、ドンキーコングからの攻撃を避けながらゴールを目指すコースの全4面構成の設計となっている。そして、クリア後のステージ1からその構成が一変。パズルアクション3コース、ドンキーコース(初代と同じルールのコース)の計4コースを順に攻略していく特殊な一本道構成となる。この4コースを全て攻略すると、更なるパズルアクション3コース、ドンキーコースの計4コースがオープン。これを繰り返し、最終的にステージラストの『ドンキーバトル』のコース…いわゆるボス戦を攻略すると、晴れてステージクリア。次のステージへと進み、またパズルアクション3面、ドンキーコース1面の4コース攻略を繰り返していく。4面一本道という初代ドンキーコングの体裁を踏襲しつつ、幾つもの4面一本道を攻略し、ステージ終盤のバトルコースを目指していくという、如何にもドンキーコングらしさのある、捻りを加えた構成となっているのだ。また、ドンキーを追いかけるストーリー設定を考慮し、一度クリアした4面の再プレイは不可能。これまた初代ドンキーコングらしい味付けが成された仕様とされている。何度もプレイできないので自由度は低いが、先の通り、元々初代ドンキーコングは一本道のステージクリア型アクションゲーム。なので、この構成は元の特徴を完全に踏襲している。まさに、ドンキーならでは且つ、ドンキーだからこその新しさを出した構成と言って良いだろう。特殊だけど、ドンキーらしい作りになっている。
また、幾つもの4面一本道を攻略していくその構成故に各ステージごとに用意されたコースの量も膨大。どれほど膨大なのかは終盤、16ものコースが用意されたステージが登場する事から大体察せるだろう。更に、コース総数も全部で100以上とボリューム満点。初代の約25倍ものボリュームなので、やり応えはかなりのものだ。そのボリュームアップの点に焦点を絞れば、今作はドンキーコング究極の進化系と言っても過言ではないだろう。
全体構成ばかりでない。プレイヤーキャラたるマリオのアクションも、初代以上にパワーアップ。ジャンプ、ハンマー攻撃と言った基本は勿論のこと、新たに逆立ち&逆立ちジャンプ、バック宙ジャンプ、ロープアクションと言った、本家マリオシリーズでも見た事の無い(※当時では)アクロバティックなアクションができるようになっている。更にファミコンの『スーパーマリオUSA』からの逆輸入でタルやカギを持ち上げるアクション、水中を泳ぐアクションまで可能となっており、行動範囲の幅もより広大に。高過ぎる所から落下するとミスになる仕様は初代を踏襲しているが、性能は初代以上。それはもう、爽快な暴れっぷりを見せてくれる。正直、その暴れっぷりは本家のマリオを食い潰すほど。今作の中で最も光るファクターと言っても良いだろう。他にも、パズルアクションステージにおける、持ち運びの緊張感を醸し出すカギの放置消滅システム、ハシゴや足場などを任意の位置に作成できるエディットギミックなど、独創的なアイディアは満載。
ドンキーコングを名乗っているが、内容はほぼ別物。しかし、決して初代独自の魅力を損ねる改悪は行われてなく、初代の良さを残した改良や新たな試みが成されているのが大きな売り。まさに、新世型ドンキーコングというに相応しい、非常に意欲的且つ、完成度の高いゲームに仕上げられているのである。原作を跡形も無く壊して作られた新作ではない。原作を壊して、そのパーツを元に新たに構築し直した、原作クラッシャーな新作なのだ。

そして、そのドンキーコングをベースとし、新作同然の内容へと転生させた高度なゲームデザインが今作最大の売り。マリオのアクション、ステージの構成と、全て初代らしからぬものへと変わってるのに対し、ゲーム性はきちんと初代ドンキーコングを踏襲。新作なのに旧作と変わらない、恐ろしく高度な作り込みが成されているのである。
更に、新要素の大半が新たなゲーム性へときちんと昇華されてるのも見事だ。特に、鍵を扉へ運ぶのが目的のパズルアクションコースは、全体の設計から敵・仕掛けの配置共に鍵を持ち運ぶ面白さとスリル、過程を考える戦略性の高さなど、新しいゲーム性が見事に表現されていて完成度が高い。パズルやアクションのバランスも、任天堂らしい優し過ぎず・難し過ぎずの絶妙な調整が図られていて、大変心地良い手応えを堪能できる。
鍵を扉まで持ち運ぶ際、「逆立ちなどのアクションが制限される」という制限も見事で、それがパズル的な面白さとアクションのスリルの両面を引き立てているのは、まさに職人の成せる業だ。ドンキーコングが登場しない故、ドンキーである必然性が感じ難い一面もあるが、そんなの些細なもの。それにこれはこれで、ドンキーをジリジリ追い詰めていくという新たな面白さもあり、こういうストーリーだからこそできた演出が凝らされている。そう言った設定も上手く反映させている事から、この構成がドンキーの必然性がないというのは正直、筋違いと言っても良いだろう。
また、今作独自の『エディットギミック』による仕掛けも実に魅力的。好きな所にハシゴをかけたり、足場を造ったりするその感覚は他のパズルアクションには無い、新たな遊びを提案している。一定時間すると足場が消える制約もゲーム性に上手く昇華されており、仕掛けたと同時に急いで走らなければならぬという、独自の緊張感が味わえるのも面白いところだ。この足場の作成がステージ上のあらゆる所で可能なのも結構衝撃的。スタッフのプログラム技術の高さと入念な調整には、マニアなら唸らされること請け合いだ。
そして、マリオのあまりに多彩なアクションの数々。逆立ちにバック宙、ロープアクションとそのできる事の多さには、本家マリオシリーズをプレイしてきたユーザーもビックリすること間違いなしのインパクトを持っている。色々なアクションができるからこそのやり込みプレイもでき、特にコースの最短攻略を目指すタイムアタックの熱さは格別。セーブデータには各コースのクリアタイムも記録されるほか、クリアしたタイムが早ければ早いほど、最初の4面クリア後の精算画面で沢山残機アップできる特典もあるので、否が応にもやり込みへの欲が刺激させられる。自らの限界を極める楽しさに関しては今作、本家マリオシリーズを凌駕するものがあると言っても過言では無いだろう。勿論、アクション自体も純粋に楽しいだけでなく、アクションごとに多彩なリアクションをしてくれるマリオの芸達者ぶりも見逃せない。
また、やられ様もマリオシリーズ最高とも言えるボリューム。あまりに多彩なので、やられるだけでも楽しい不思議な魅力が醸し出されてるのも面白いところだ。さすがにやられ過ぎるとゲームオーバーになるんで、見入り過ぎは禁物だが。
とにかく、至れり尽くせり。別物同然な内容なので、初代とは違うものになっているものの、ここまで基となるゲーム性に変化のない、別物な新作も非常に珍しい。これぞまさに任天堂マジック。作り込みが半端じゃないのである。

勿論、新要素ばかりでなく初代ドンキーへのこだわりも随所で炸裂。最初のステージ0の演出、ドンキーコースにおけるオマージュなど、シリーズファンならば感動する事間違いなしのネタが沢山詰め込まれている。更に初代ドンキーコングだけでなく、マリオが悪役を務めたあの『ドンキーコングJR』のオマージュもあるほか、そのステージにマリオが挑戦する熱い展開があるのも必見だ。当然、ドンキーコングJRも今作では父親のドンキーと共に敵として登場!立場逆転の対決は、オールドユーザーなら燃え燃えだ。
その他、操作性も良好。ただマリオを動かすだけでも楽しい、任天堂らしい職人芸が炸裂している。各ステージのロケーションも多彩で、良い意味でマリオらしくない雰囲気に富んでるのが面白い。特に大都会、飛行機、ピラミッドと言ったステージの奇抜な雰囲気は必見だ。
グラフィック、音楽、演出周りもなかなかの出来栄え。特に音楽は非常に素晴らしく、これまたマリオらしくない、硬派で熱い楽曲が充実している。飛行機ステージ全般、岩山ステージ全般、そしてラスボス前座のドンキー戦はいずれも必聴の価値あり。あまりのカッコ良さに、人によってはマリオのゲームであることを忘れてしまうかもしれない。更に『スーパーゲームボーイ』を使ってスーパーファミコンでプレイする事により、一部の曲や効果音がPCM音源に変わるという、驚きの仕掛けが盛り込まれているのも見逃せないところだ。

パズルアクションゲームとしての完成度は非常に高く、基本的なシステムから操作性、ゲームバランスも含めてある意味、マリオ系のゲームの中ではトップクラス。ボリュームも100面以上と盛り沢山、初代ドンキーコングをプレイしたユーザーなら涙モノの演出も満載と、とにかく隙の無い作り込みが光る。
データが消えるバグがあったり、一部に映像が乱れるバグがあるのは残念だが、肝心のゲーム自体の面白さが傑出しているので、いずれもプレイしていてさほど気にならない。
原作を壊しながらも、その良さを殺さずに再構築した高度なゲームデザイン、優れた操作性にゲームバランス、そしてやり応え満点のボリュームと、まさにマリオ系のアクションゲームでは最高傑作と評してもおかしくない今作。
アクションゲーム好きからマリオシリーズファンは勿論のこと、ゲームボーイを持ってるユーザーなら遊ぶ価値大いにアリの名作だ。これはマジで面白い。筆者的にも、マリオシリーズ(&ドンキーシリーズ)不動のナンバー1として2010年現在も君臨する逸品。この面白さ、体験せずしてマリオは語れない。超オススメです。
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