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≫トレード&バトル カードヒーロー
■発売元 任天堂
■開発協力 インテリジェントシステムズ
■ジャンル カードバトル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:3990円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):600円(税込)
■公式サイト ≫ゲームボーイ版 / ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー対応、スーパーゲームボーイ対応、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応、ポケットプリンタ対応、時計チップ搭載、おまけトレーディングカード付属
■総説明書ページ数 39ページ(説明書)、20ページ(カードバトルの手引き)
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、40〜100時間(完全攻略目的)
主人公『門(かど)マサル』がカードバトルで悪者と戦うクールなアニメ『カードヒーロー』。
始まったばかりのこのアニメにひろしは今、大ハマリ中。

そんな最中、NANTENDO(ナンテンドウ)よりこのアニメを題材にしたトレーディングカードゲームが発売された。その名もズバリ『カードヒーロー』。アニメの人気もあり、売上も絶好調で売り切れ続出。ひろしも早速、このカードゲームを買いに『マルヒゲヤ』へと幼馴染のクミと一緒に出かけた。
かくしてスタートセットを購入し、カードヒーローを始める事になったひろし。
アニメのマサルのように、彼はカッコよくカードバトルができるようになるのだろうか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シンプルに戦略を練る本質的な遊びとその奥深さを徹底追及した完成度の高いゲームルール
◆プレイヤーの想像を超えた人間的な戦術で攻めてくる、非常に高度な相手CPUの思考ルーチン
◆モンスターを倒すと言った行為をすると還元が行われる、独特の仕様とそれによる戦略面の奥深さと先の分からぬ展開の演出が異彩を放つストーンシステム
◆全編チュートリアルとされた思い切った構成が異彩を放つ、ゲーム本編&ストーリー設計
◆段階的に要素を解禁し、プレイヤーを少しずつ理解させていく秀逸なチュートリアル構成
◆ただのチュートリアルで終わらせず、主人公の成長や友情、ライバルとの死闘と言った王道のテーマもしっかりと描いた見応えのあるストーリー
◆全110種類と数は少なめながら、一癖も二癖もある能力を持ったものばかりなカード群
◆エンディングまでは短めながら、極めるとなると半永久的に遊べる圧倒的な総計ボリューム
◆質素ではあるが、相手にダメージを与えた際の珍妙な擬音など、楽しい作りのエフェクト演出
◆一部反則なカードもあるが、戦略を練るゲーム性を損なわぬ調整が徹底されたゲームバランス
◆一癖も二癖もあり過ぎる濃過ぎる登場キャラクター達(特にクリア後に現れる面子が濃過ぎ)
◆カードバトルを大いに盛り上げる、臨場感満点&印象深い作りの音楽

--- Bad Point ---
◆高度な動きを実現する代償として、異様に長く設定された相手CPUの思考時間
◆思考時間の長さ故に必要以上に長くなってしまう1回の戦闘所要時間(最低でも1時間強はかかる。中断セーブがあるのがせめてもの救い)
◆思考ルーチンなどに処理を割いた為か、レスポンスが非常に鈍くて重い操作性(戦闘時間の長さも含め、快適性に関しては劣悪と言わざるを得ない)
◆ストーン強奪なる、反則同然の特技を持ったモンスターカード『ヤミー』
◆どうしても先攻が有利に事が運びがちな戦闘バランス
◆あまりにも癖が強過ぎる登場人物全般のキャラクターデザイン
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
息子よ、カードヒーローとは何だ。

「知らん」とは言わせん。


任天堂開発一部と『ファイアーエムブレム』や『パネルでポン』で知られるインテリジェントシステムズの共同開発によって誕生した、完全新作のカードバトルゲーム。

ゲームボーイ屈指の麻薬的中毒性を誇る、傑作カードゲームだ。

ゲーム内容はトレーディングカードバトルゲーム。プレイヤーは主人公のひろし(※ゲーム開始時に変更可能)となり、ストーリーに沿いながら様々な対戦相手とカードバトルを繰り広げていくというものである。本編は話単位で区切られたストーリーを進めていく、シナリオクリア方式で展開。ロールプレイングゲームのようなフィールドマップも用意されており、それを実際に移動したりしながら本編が進行する仕組みとされている。但し、マップ上を歩き回る機会は少なく、基本的に本編の8割はカードバトル。如何にもカードゲームらしい構成となっている。
そして、カードバトルのルールに関してはシンプルでありながらも、独特で奥深い作りとなっている。簡単に解説すると、全部で110種類あるモンスター、マジック(魔法)と言った異なる特徴を持ったカードの中から20〜30枚のカードを選び『デッキ』を作成。前後2×2の4マスで構成された戦闘フィールド上にデッキにセットしたモンスターを召喚したり、補助魔法を行ったりしながら、対戦相手との勝負を展開していくというもの。バトルは交互ターン制(プレイヤー⇒相手の順番で行動していく方式)で展開。勝負は3回戦方式で、最終的に2戦取ったものが勝利となる。また勝負の始めと3戦目には『ジャンケン』が行われ、これで先攻か後攻かを決定。どちらかが先かを決定した上で戦闘に入る仕組みとなっている。
勝利及び敗北条件はプレイヤーの分身である『マスター(カード)』の体力がゼロになる事。基本的に各プレイヤーはこのマスターへの攻撃を行う為、様々な戦略を展開していく事になる。マスターへの攻撃を行う方法は単純で、召喚したモンスターに攻撃させるか、或いは補助魔法のカード(マジックカード)で攻撃する事。但し、例によって条件があり、最大で3以上のダメージを与えられる攻撃でないと無効となる。その為にもプレイヤーは相手のモンスターを倒し、こちらのモンスターのレベルアップを行うなどの戦略を展開していく。更にモンスターは前衛の2マスで能力を発揮する者、後衛の2マスで能力を発揮する者と言った具合に得意とするマスも設けられていて、これらを如何にバランス良くフィールド上に配置するかも求められてくる。加えてモンスターの召喚、及び魔法の使用には毎ターン始めに3個補充される『ストーン』と呼ばれる資源も必要となる為、そのやりくりも重要となる。このように最終目的はシンプルなのだが、その前には多くの試行錯誤が求められてくる作り。分かり易いけど手強い、絶妙なバランスで構築されたルールに仕上げられている。
ここまで解説した以外にも、モンスターを動かさずに待機させると『きあいだめ』という攻撃・防御力が上昇する状態になったり、『スーパーカード』なる規格外の攻撃力を持ったモンスターに進化できるカードが登場するなど、様々な要素が用意されており、バトルの戦略性に更なる奥行きを与える。また、対戦形式にも20枚のカードで構築したデッキで戦う基本中の基本である『ジュニア』のほか、30枚までカードが入れられる上に補助魔法がカード無しで使えるようになるマスターカードが使えるようになる『シニア』、その延長線となる『プロ』が用意されており、色々な形の対戦が楽しめる。ルールが一種類だけでは物足りないと感じる方も納得の構成となっており、高い満足感と手応えが堪能できるだろう。
しかし、ここまでの概略を見て「難しそう」と抱いた方は確実に居ると思われる。カードゲームという遊び自体に抵抗を持っている方も、「自分には遊び難そう」と感じたかもしれない。実際に今作のゲームルールは説明書を細かく読まないと解説できないぐらいに入り組んだ仕上がりとなっている。しかし、今作は驚くべき事に説明書を全く読まずとも、その仕組みが理解できる設計になっている。というのも、本編のストーリーがルール解説のチュートリアルを兼ねており、物語を楽しみながらルールを覚えていける構成になっているのだ。更にルールの解説、要素の開放も少しずつ、ゆっくりと行われていくので、頭の整理が追いつかなくて混乱する事もほとんどなし。カードゲームは基本的にルールが入り組んでいるのもあり、敷居が高い遊びというイメージは結構根強い。それが例えテレビゲームであったとしても、抵抗を覚える方が居るのは当然の話と言えるだろう。しかし、今作にはそんな抵抗を覚える方も気が付けば、すっかり入り込んでしまう位に解説周りが丁寧で、それでいて一つの物語になっているので楽しく学んでいける。ある意味、これだけでも今作が如何に革新的なカードゲームであるかを象徴していると言っても良いかもしれないだろう。
実際のルールも基本は世界中で爆発的なヒットを記録したカードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング』をベースとしながら、複雑さを極力省く試みが豊富で、遊び易さは上々。それでいて初心者サポートも優秀と、まさにあらゆる意味で隙無しとはこの事だ。カードゲームに触ってみたいけど、難しそうで手が伸びない、というプレイヤーにしてみれば、まさに理想形とも言える設計。カードゲーム入門編として申し分ないゲームに仕上げられているのだ。

例によって、今作最大の売りはカードゲーム特有の敷居の高さを緩和させるべく盛り込まれた、工夫の数々に集約される。何よりも今作の数ある緩和策で特に秀逸なのは、単純明快さを貫き通したゲームデザインだ。具体的にはプレイヤーの体力、モンスター召喚などに用いるストーンの数と言った数値設定全般だが、これが全て少ない値で統一されている。プレイヤーの体力であれば最小は5、最大でも10までだったり、召喚であれば最小で1、最大で5までと言った具合に、だ。基本的にカードバトル中では、三桁を超過するインフレな数値は画面上に一切出ない。多くても10までと、小さな値しか出ないよう、徹底した設定と統一が図られているのである。唯一、カードを入れる『デッキ』の総数は最大30枚までという設定だが、これもゲーム中に40枚や50枚まで入れられるようになると言った拡張が行われる事は無い。基本的に30枚が最大で、こちらも必要以上のインフレ化を抑える処置が施されている。
この恩恵もあり、今作ではバトル中の計算及び戦略の組み立てが非常にやり易い。特に計算は数値が少ない故に「10-1、5-2」と言った単純な計算で攻撃・防御時の実効数値を叩き出せる為、小さな子供でも難なく行える設計となっている。攻撃の際、相手に与えるダメージ総数を出す計算式も「攻撃力-防御力」と単純。更に攻撃力と防御力も最大で8までなので、ややこしい計算が求められる事も一切無い。デッキの枚数制限もギリギリ覚えられる範囲の数なので、調整の敷居も低め。そして極めつけ、今作にはカードゲームではお約束的な要素『属性』が無い。なので、「このカードはこの属性に強い・弱い」などの相性を覚える必要も無く、単純にカードごとの性能とその計算だけで駆け引きが楽しめる作りとなっている。単純に数値の計算さえできれば、普通に遊べてしまう。正直、世にある多くのカードゲームと比べたら、質素な作りかもしれない。しかし、それでも単純な計算さえできれば、普通に遊べてしまうこの分かり易さは特筆すべきものがある。乱暴に言えば、カードゲームとは数値の争い。要はそこを取っ付き易くする事で、カードゲームの敷居は下がる。それに実際着目し、このゲームルールを構築したのかは謎だが、本質の面白さに特化し、誰もが戦略を練る面白さと駆け引きのスリルが堪能できる環境を構築したのは大きな評価に値する。要素の複雑化を行わず、本質を磨き、魅力的に見せようとしたこの手法は職人技の一言。これこそスマートで綺麗なゲームデザインと言っても良いだろう。
また、ルール全体を構築する数々要素も、単純明快さを極め尽くした作りに高い戦略性を与えるものとして完成されている。中でも『ストーン』周りのシステムは秀逸で、モンスターが倒されたり、マスターがダメージを喰らうとストーンが還元され、手持ちのストーン数が増えて逆転の可能性が上がるという仕様は、バトル全体の予測できない緊張感を大いに引き立てている。倒し過ぎたり、ダメージを与え過ぎると逆転されかねないから、どうやって被害を抑え込んでいくか。こんなユニークな戦略が常に求められてくるのも、今作の大きな見所である。
更に今作は基本的にコンピュータが操作する相手との戦いを中心に本編が進むのだが、これがまた非常に手強い。というのも、各々が持つ思考ルーチンの汎用性が非常に広く、こちらの裏を描くような人間臭い戦法で攻めてくるのだ。その為、手応えも抜群!それどころか、ゲームボーイでここまで高度な思考ルーチンが作れるのかと、単純に動きを見るだけでもインパクトのあるものになっている。高度故に思考時間が長いマイナス点があるのだが、それを含めてもこの異様な賢さは一見の価値あり。これも今作における大きな見所だ。
全体的にカードゲームとしては要素が少なめで簡素な設計である。しかし、その簡素故の取っ付き易さと豊富なフォローもあり、取っ付き易さは抜群。それでいて、独自のルールによる奥深い駆け引きに高度な思考ルーチンと、遊び応えも十分過ぎる出来となっている。入門編としても申し分なく、純粋なカードゲームとしても優れた作り。色々な意味で万能過ぎるカードゲームであるというのは、もはや言うまでもないだろう。全てにおいて遊び易く、中毒性も桁違い。これぞ究極と言うに相応しいカードゲームに仕上げられているのだ。

しかし、一方で操作性は苦言を呈さざるを得ない出来。レスポンスが全体的に重く、コマンド選択等の手応えがあまり気持ちよくない。地味な欠点だが、このような挙動の為、選択ミスなどの事故が起き易くなっているのは褒められない。処理の影響などもあるのかもしれないが、できればもう少しテンポ良く動かせる作りにして欲しかった。
また、ゲームバランスも全体的に良好ではあるが、どうにも先攻プレイヤーが有利になりがちな調整になっているのは褒められない。また、『ヤミー』というバランスブレイカー的な強力過ぎるカードが存在するなど、カードバランスにも少し調整不足な点が見受けられる。それでもよくまとまっている方ではあるのだが、願わくばこういう要素はもっと入念に検証、調整を施して欲しかったところである。
全体のボリュームに関しては程好い量。エンディングまでは大体7〜8時間程度なので、手軽に遊べる。また、クリア後にはカードバトル主体の展開となるのだが、これがまた非常にボリュームがあり、やり甲斐のある内容になっている。他にもカード集めなどのやり込み要素も充実。手軽ではあるが、非常に長く遊べる作りになっている。
グラフィック、音楽に関しては全体的に地味の一言に尽きる。ただ、ゲームの出来が素晴らしいのもあり、全く気にならないレベルである。また、音楽はテーマ曲を始め、印象深い曲が揃っているので聴き応えは申し分無しだ。

演出全般も地味だが、相手マスターにダメージを与えた際、ヘンテコな擬音が表示されるエフェクトはインパクト抜群。チュートリアルを兼ねたストーリーも素晴らしい出来で、洒落と毒の効いた台詞回しで楽しませてくれる。登場キャラクターも駄洒落ばかり言う係長、呪いの女、頭脳派の猿(!?)、出●哲朗、大阪のオバちゃんなど、全体的にツッコミ所満載の面子ばかり。彼らが織り成す珍妙なバトルは、思わずくぎ付けになってしまうかもしれない。個人差によるが。
操作性、バランス全般、そしてゲームテンポ周りには課題が多いが、カードゲームとしての完成度の高さは折り紙付き。本質的な面白さに特化したゲームデザイン、奥深い駆け引きとそれによる麻薬的な中毒性、そして何処かおかしい登場キャラクター達など、数多くの魅力を取り揃えた見所満載のカードゲームに仕上がっている。カードゲームに対して抵抗を持つ方ほど、その虜にされ易い魅力がたっぷり詰まった今作。
ゲームボーイをお持ちなら、是非プレイして頂きたい珠玉の傑作だ。この面白さ、やってみなくちゃ分からない。大人も子供もおじいさんも、この奥深いカードヒーローの世界を体験してみよう!かなりお薦めの逸品です。
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