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≫リズム怪盗R 皇帝ナポレオンの遺産
■発売元 セガ
■開発元 セガ、ジーン
■ジャンル リズムアクションアドベンチャー
■CERO B(12歳以上対象) ※犯罪描写、問題言語表現あり
■定価 6090円(税込)<廉価版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 3つ
■3D表示 あり
■その他 ローカル&ダウンロードプレイ対応、すれちがい通信対応
■総説明書ページ数 27ページ
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、25〜40時間(完全攻略目的)
フランス・パリのアンヴァリッドで埋葬されている『ナポレオンの棺』が何者かに盗まれる事件が発生。パリ市警は手を尽くしてこの行方を追ったのだが、結局、棺は見つからなかった。

それから3年。パリでは『怪盗R(アール)』と呼ばれる謎の怪盗が様々な美術品を盗んでは、数日後には元に戻すという奇妙な事件を繰り返していた。
怪盗の正体はパリに住む少年ラルフ。彼は失踪した父親・ダリウスの手がかりを掴む為、そのダリウスが遺した金貨に描かれた紋章の謎を探る目的で盗みを繰り返していた。
そして遂にある晩、ラルフは金貨と同じ紋章が描かれた美術品をルーヴル美術館にて発見。これをターゲットに定めた彼は、早速美術館へと足を運ぶ。
それがパリ全土を巻き込んだ騒動の始まりである事を知らずに…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アドベンチャーゲームとリズムゲームを組み合わせた、ありそうで無かったゲームデザイン
◆ストーリー展開と絡ませた奇抜な構図、斬新なゲーム性が異彩を放つリズムゲーム群
◆各種リズムゲームにて炸裂する、セガらしいヘンテコさ溢れる作風と演出
◆目的地表示機能、控え目な謎解きの難易度など、リズムゲームのテンポを尊重した親切な配慮の数々
◆ボタン、タッチパネル、更にはジャイロセンサーまで、豊富なバリエーションが用意されたリズムゲームの操作
◆単純に動かすだけでも気持ち良い反応と演出の良さが光る、リズムゲームの操作レスポンス
◆ストーリーだけなら短めで簡単、リズムゲームの完全攻略を目指すと途端に長く、密度が濃くなる二面性が印象的な総計ボリューム(やり込み要素も充実)
◆『サンバDEアミーゴ』を模したリズムゲームなど、随所に仕込まれた往年のセガファンに対するサービスネタの数々
◆アニメ調のCGモデル、カラフルな色使いが印象的なグラフィック
◆リズムに乗る楽しさと気持ちよさを突き詰めた、名曲揃いの音楽(ボーカル曲も幾つか収録)
◆リズムゲームの楽しさとおかしさを引き立てる、声優・立木文彦氏による掛け声ボイス
◆立体視非対応だが、勢いのあるカット割と演出が光る、完成度の高いアニメムービー
◆癖がなく、万人受けし易いものに仕上げられたキャラクターデザイン

--- Bad Point ---
◆マリア役・剛力彩芽の酷過ぎる演技(擁護不能なほどに下手。他の声優がベテランなのもあり、浮きっぷりも凄い)
◆棒読み演技により、完全に死に体と化している一部リズムゲーム(バイオリンのゲームなど。面白いのにボイスの問題で再プレイ意欲が湧き難い)
◆ボイスOFF機能非搭載(ムービーは駄目でもリズムゲームには用意しておいて欲しかった)
◆悪い意味で突っ込み所が多過ぎるストーリー
◆ストーリー終盤のリズムゲームにおける判定調整の雑さ
◆ジャイロセンサーを使ってプレイするリズムゲームの遊び難さと相性の悪さ
◆やや固い感じが否めない、メニューインターフェースのレスポンス
◆ガイドが便利過ぎて、やらされている感も強めなアドベンチャーパート
◆ゲーム開始早々に行われる唐突なネームエントリー(すれちがい通信で使用するプレイヤーの名前を登録するのだが、それに関する説明が一切ないので凄く不親切)
▼Review ≪Last Update : 3/24/2013≫
「やったー!」(※棒読み)

キャスティング担当者、表に出ろ。


セガのニンテンドー3DS向けタイトルとしては初めてとなる、完全新作のリズムアクションアドベンチャーゲーム。企画・プロデュース、音楽等はセガ、ゲーム部分の開発はPSPの『けいおん! 放課後ライブ!!』等を手掛けた事で知られる大阪の開発会社、ジーンが担当した。

荒削りで容認し難い部分もあるが、斬新な試みとセンスが光る、面白可笑しい意欲作だ。

ゲーム内容はリズムゲームとアドベンチャーゲームを織り交ぜた、その名もリズムアクションアドベンチャーゲーム。主人公の怪盗R(アール)ことラルフとなり、ストーリーに沿いながら様々なリズムゲームに挑んでいくというものである。
本編はアドベンチャー、リズムゲームの二つのパートで構成されており、それらを交互にこなし、章単位で分けられたストーリーを進めていくのが基本的なスタイルとなっている。
前者、アドベンチャーパートは会話イベントと情報収集、謎解きを主とした内容。舞台となるフランス・パリ市街のマップ上を移動しながら、情報を集めたり、時には謎を解いたりしながらストーリーを進めていく作りとなっている。まんまアドベンチャーゲームを遊ぶパートと言った感じだ。ただ、一般のアドベンチャーゲームとは異なり、選択肢による分岐の要素は無い。基本的には一本道で、次に目指すべき場所とルートはマップ上の「!」マークと赤いレールで示される親切設計となので、特に詰まる事もなく、サクサク進めていける作りになっている。アドベンチャーという事で、入り組んだ内容なのかと懸念する方も居るかもしれないが、全くそんな事は無し。かと言っておまけレベルの内容ではなく、謎解きではリズムをテーマにしたパズルがあったり、特定の音を『レコーダー』で録音し、それを使って道を切り開くと言った今作独自の試みもしっかりと凝らされている。ストーリー進行はスムーズ、だけどそれなりの手応えありと、全体的にバランスの取れた作り。そして、リズムゲームの中のアドベンチャーパートという特徴が色濃く現れた内容に仕上げられている。
そして、後者のリズムゲームパートは、その名の通りにリズムゲームに挑戦するパート。主にストーリー上、大きなイベントが発生した際に挟まれるようになっている。ルールは単純明快で、指定されたタイミングに合わせてリズムを取りつつ、最後まで完走する事。必要以上にミスを重ね、『テンションゲージ』と呼ばれる画面上部に表示されたゲージがゼロになってしまうとゲームオーバー。リズムゲームとしては王道中の王道とも言える作りになっている。
だが、今作が面白いのは、そのリズムゲームの大半がストーリー展開と絡め合わせたものになっている事。例えば、本編では美術館に潜入する展開があるのだが、その際にプレイするリズムゲームというのが、館内を巡回する警備員に気付かれないよう、リズムを取って物陰に隠れながら進んでいくというもの。いわゆるステルスアクションをリズムゲームでこなす事になるのである。更に主人公は怪盗という事で、パリ市警が敵として登場するのだが、その追っ手から逃れる展開に至っては横スクロール型アクションゲームを模したリズムゲームで描かれるようになっている。まさに「何でそれがリズムゲームになる!?」と突っ込まざるを得ないラインナップ。そんな奇抜なリズムゲームの数々が、このパートでは大量に登場するのだ。勿論、中にはダンス、演奏と言った如何にもなリズムゲームもあるのだが、全体で言うと2〜3割程度。残りは先に紹介した二つに近いもの、例で挙げるとハンググライダーに乗っての逃亡、接客試験、挙句の果てにはリフティング勝負と言ったものばかりになっている。その総数も、本編に関係ないものも含めて50以上。基本的な作りだけでなく、ボリューム周りでもとんでもない事になっているなど、至れり尽くせりにも程があるパートになっている。
また、各種リズムゲームは操作の差別化も大きな見所。ゲームによってボタンだったり、タッチペンだったり、凄いものではジャイロセンサーだったりと、どれも異なる操作の楽しさを堪能できる作りになっている。更にクリアしたリズムゲームはメインメニューにある『リズムリスト』に登録され、後から自由にプレイ可能になる親切な機能も完備。勿論、この手のゲームではお約束の評価システムも実装されており、最高評価Aランクを目指すやり込みプレイも楽しめる作りになっている。その他、アドベンチャーの方で『メダル』なるアイテムを一定量集めると自らの限界にチャレンジする『エンドレスゲーム』なる、特殊なリズムゲームを入手できる機会が訪れるなど、他のリズムゲームとは一線を画す要素が多く存在。
リズムゲームはリズムゲームだけど、ストーリーを進め、その状況に沿ったゲームを攻略していく過程には、ありそうで無かった感動とヘンテコな面白さがタップリ。肝心のリズムゲームも基本は真面目なのに構図的に違和感バリバリなど、セガらしい独特のお笑いセンスが炸裂している。どちらかと言うと、淡々且つ、黙々とやり込むプレイスタイルが定番となっているリズムゲームだが、そこに一石を投ずる期待の新星が遂に現れてしまった?そんな未だかつてないスタイルとゲーム性と試みの数々が異彩を放つ作品に仕上げられている。

例によって、今作の魅力はこの奇抜なゲームデザインである。ストーリーに合わせてリズムゲームを遊ぶという、ありそうで無かったその内容は、様々なリズムゲームをやり込んだプレイヤーにも未だかつてない体験と感動(というか、笑い?)を提供するものに完成されている。
中でもリズムゲームの作りの斬新さ、バリエーションの豊富さは圧巻。どう考えてもリズムゲームとは無縁と思しきジャンルの数々を面白可笑しい方向に翻訳し、実はどれもこれも相性抜群だったんですよ、と気付かせてくれる内容に仕立て上げてしまっているのは職人技の一言に尽きる。特に先に挙げたステルスアクションのリズムゲームは構成、演出、操作性共に優れたセンスが炸裂している。ステルスアクションと言えば、敵に見つからないように移動する『かくれんぼ』の緊張感が醍醐味だが、それを決めポーズを取って身体を隠すという面白可笑しく、且つ醍醐味を損なわない方向に昇華させ、音楽もポーズを取る瞬間に無音にして雰囲気を作り出すなど、とても綺麗な形にリズムゲームとしてのステルスアクションを作り上げている。隠れる際に常に違ったポーズを選択していく基本操作及びルールにしても、ステルスアクションの状況判断の重要性を色濃く描いており、自然な形でゲーム性に溶け込ませているのが凄い。そのシステムを最大限に活かすべく、難易度設定も適度に意地悪な場面を出すなど、プレイヤーに真っ向から勝負を挑んでくる作り込みが成されているのも見事だ。新しさを出す一方で手応えも忘れない。そんな丁寧な作りからは、新しくて面白いゲームにしようとした開発スタッフの情熱がひしひしと伝わって来る。ストーリー性をテーマにし、見た目でも手応えでも斬新さと楽しさを出そうとするこだわりは、如何にも先鋭的な物作りに長けたセガらしいと言ったところだ。
また、セガらしいところと言ったらヘンテコな作風だが、それも今作では随所において炸裂。特にリフティング勝負、接客試験、そしてお尻かじり(!?)のリズムゲームでは、「さすがセガ!ヘンテコなゲームを躊躇なく作ってのける!そこに痺れる!憧れるゥ!」と言いたくなること間違いなしだ。それだけでなく、リズムゲームの中には『サンバDEアミーゴ』、『スペースチャンネル5』と言ったかつての名作(怪作?)を模したものまで収録するなど、ファンをニヤリとさせるネタもチラホラ。そんな分かる人に分かる魅力が込められているのも、今作の大きな見所である。
他にも、リズムゲームの命とも言える音楽の出来も上々で、リズムに乗る楽しさというツボを抑えた作り込みが成されているのが素晴らしい。曲単体の出来も申し分なく、どの曲も各ゲームの雰囲気と絶妙にマッチしたものに完成されている。更にダンスのゲームではボーカル付きの曲が流れるのだが、この歌を担当しているのが「日本一歌の上手いサラリーマン」として知られるセガの光吉猛修氏であると言うのも密かな見所。そのノリノリで、パワフルな歌声はセガファンのみならず、ゲーム音楽好きも要チェックだ。
双方の良さを違和感なく合わせたゲームデザイン、無茶なネタをリズムゲームにしてしまうセンスの高さ、そしてヘンテコさなど、何もかも隙無く抑えたその作りは、ある意味、セガのゲームにおける作風と本気の集大成とも言うべき出来栄え。その完成度から浮き出る、ありそうでなかったタイプのゲームを作ろうとした熱の入れ様は圧巻の一言。本気の完全新作を作るという情熱の末に誕生したゲームと言うには、何らおかしくない一品と言っても良いだろう。
しかし、それが空回りしてしまった部分も結構ある。特にストーリー後半で登場するリズムゲームのバランス調整が不十分なのはあまりにも惜しい。判定が分かり難かったり、リズムに合わせているのに合ってないと判断されるなど、やや理不尽さすら覚える。また、ジャイロセンサーメインのリズムゲームはそれらを上回るほどに判定が不自然で、楽しさ以上にストレスが上回る。発想自体は良いのだが、もう少し難易度を緩くするなり出来なかったのだろうか。その辺の工夫のなさは凄く勿体無い限りだ。ただ、そのゲームがエンディングを目指すに当たり、やる必要が無い扱いにされているのはせめてもの救いである。その他、アドベンチャーパートのやらされている感、街中を歩いているのに怪盗だと気付かれない描写を始め、突っ込み所があまりに多いストーリーも残念なところである。

だが、それ以上に致命的なのがボイス演出だ。具体的にはヒロイン、マリアの声を担当している女優、剛力彩芽の素人臭全開の演技が擁護できないレベルの酷さ。悲鳴ですら棒読みという壊滅的過ぎる演技で、今作の全てを台無しにしてしまっているのである。
しかも、最悪な事にこのキャラクターはストーリー上、出番が多い上、一部のリズムゲームに至っては主人公を務めるので、聴く機会が非常に多い。言うまでも無く、そのリズムゲームは演技で台無しにされている箇所も多々ある始末。ゲームの考案者涙目どころか血涙と言っても良いほどになっている。更なる追い討ちとして、キャラクターのイメージにも全然合ってない。ミスキャストもミスキャストで、この起用を考えた人間の神経を疑うほどである。
何故、彼女のような素人起用を考えたのか?冗談抜きにキャスティングを考えた人間は頭がおかしい。普通の声優を合わせた方が明らかに映えたであろうに、何故素人を選んだ?売上を伸ばす為?仮にそうだとしたら、ユーザーを舐め過ぎだ。一体、何処にヘタクソな演技を聞きたくて買うユーザーが居るというのだ。逆にこちらが教えて欲しいのだが。
こんな馬鹿げたキャスティングにより、ゲーム全体のイメージがズタズタにされてしまっているとか、酷いの一言では済まされない。折角の意欲的なゲームをキャスティングミスで価値を落とすとか、前代未聞。このキャスティングを企画した人間はゲーム制作は言うまでもなく、アニメなどにも絡まないで頂きたいと思うばかりである。餅は餅屋という諺を知れ。
なお、主人公のラルフを始めとする他のキャラクター達はプロの声優が演じており、その中でも特に立木文彦氏は悪役のナポレオン役のほか、リズムゲームにおいてベスト、或いはバッドなパフォーマンスを決めた際の掛け声も担当しているのだが、これがまた非常に味わい深いものになっている。更にこれらの声優陣のフルボイスが聞けるアニメムービーも質は非常に高い。キャラクターデザインも癖がなく、万人受けし易いものになっているのも特筆すべき所だ。

その他、操作性も判定周りに一部、腑に落ちない箇所があったりするが概ね良好。総計ボリュームもエンディングまでなら大体5〜6時間程度だが、リズムゲームのAランクチャレンジと言ったやり込みが充実しているので、極めるだけでも結構、長く遊べる内容になっている。グラフィックの質も全体的に高く、鮮やかな色使いは圧巻の一言。立体視の具合も悪くなく、非常に良質な仕上がりになっている。
それだけにボイス演出における致命的なミスキャスト、後半の判定調整の荒さと言った数少ない欠点が付けた傷があまりにも深く、素直に面白いゲームだと言い切れない出来になってしまっているのが残念でならない。だが、新鮮さは突出したものがあり、これまでにないタイプのリズムゲームとしては申し分のない作品に完成されている。致命的な欠点はあるが、ストーリー性に焦点を当てたリズムゲームという新機軸を打ち立てている今作。全体的には良作且つ、意欲作と言える一品。これまでに無いタイプのリズムゲームを遊びたい方は是非、お試し頂きたい新感覚リズムゲームだ。だが、しつこいがヒロインの演技は本当に酷い。オプションで消す事もできないので、やる際は覚悟を決めよう。本当、それさえ無ければ話は違っていたのに、非常にもどかしい。何故、こんな事になってしまったのか…。
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