≫PROJECT X ZONE(プロジェクトクロスゾーン)
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■発売元 |
バンダイナムコゲームス (現:バンダイナムコエンターテインメント) |
■開発元 |
モノリスソフト |
■ジャンル |
シミュレーションRPG |
■CERO |
B(12歳以上対象) |
■定価 |
5980円(税別) |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
15個+中断セーブ1つ |
■3D表示 |
あり |
■総説明書ページ数 |
47ページ(※電子説明書)、操作説明シート同梱 |
■推定クリア時間 |
45〜65時間(エンディング目的)、200〜300時間(完全攻略目的) |
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西暦20XX年、古来より歴史の裏舞台で暗躍してきた一族「黄龍寺(こうりゅうじ)家」が代々守ってきた秘宝「経界石(きょうかいせき)」が何者かに奪われた。一族の令嬢である黄龍寺美依(こうりゅうじ みい)は、自分の家庭教師でもある私立探偵・天斎小吾郎(てんざい こごろう)の手を借り、秘宝の捜索に乗り出す。石を奪ったのは誰なのか?その目的は?そこに様々な人、組織、そして異形の者達の思惑が絡み、事件はやがて大きなうねりとなっていく。
かくして過去、未来、更には次元を越えた異世界をも巻き込んだ長い旅が始まる。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆バンダイナムコゲームス、カプコン、セガの著名なゲームキャラクターが一同に介し、様々な物語と戦いを繰り広げる「クロスオーバー」の魅力を余すことなく突き詰めたストーリー設定と世界観
◆看板作品からマイナーモノ、更には任天堂ハード未登場の作品まで取り揃えた登場キャラクター達(その中でも『ゴッドイーター』と『エンドオブエタニティ』の二作が優れた存在感を放つ)
◆各作品のお約束からマニアしか知らないものまで網羅した、圧巻の台詞ネタ
◆実力派から大御所まで取り揃えた配役、作品のファンならニヤリとしてしまう掛け合いを取り入れたサービス精神が光るボイス演出及び関連ネタ(特にワルキューレが色んな意味で強烈)
◆行動速度の高い順序から行動していく同時方式の採用、選ばれたユニットを実際に動かして待機位置を決定するなど、独特の試みが多く成されたゲームデザイン
◆格闘アクション風の構成とその見た目とは裏腹の手軽さが光る戦闘システム
◆基本、スライドパッド+Aボタンの簡単な組み合わせでまとめられた攻撃コマンド
◆非常によく動き、キャラクターにちなんだネタまで網羅する作り込みが炸裂したドット絵によるグラフィック
◆「必殺技」を繰り出した際の爽快感を際立たせる、迫力十分のカットイン演出
◆好意的に見るなら、過剰に難しくし過ぎない程よい塩梅に抑え込まれた難易度設定
--- Bad Point ---
◆構成面の工夫に乏しい、遊び応えに欠けるマップデザイン(しかもデフォルトの敵配置量がやたらと多い、勝利条件が「敵全滅」と「到達」に偏り気味などと言った単調さを際立たせる難点が膨大にある)
◆マップ攻略時のモチベーションを著しく減退させる、過剰な増援部隊(振り出しに戻るレベルの敵が大挙して現れる)
◆増援部隊の対処で無駄に時間を取られるという水増し措置が多く取られているのもあって、逆に難点と化している本編ボリュームの多さ(こんなに入れなくていいだろ、と愚痴りたくなるほど)
◆敵一体を倒すのに1〜2分費やす都合により、お世辞にも快適には程遠い戦闘テンポ(むしろ、この長さの所為で1マップの攻略にかかる時間が引き伸ばされている)
◆本作の問題点の総決算とも言える最終マップ(とにかく長くて単調)
◆その問題も相まって、逆に必要ない特典と化している周回プレイ要素
◆技や装備の強化、レベル上げなどの要素や遊びに乏しいユニット育成
◆異世界への転送と悪役との追いかけっこに終始する、盛り上がりに欠けるストーリー
◆目立った活躍が描かれない都合で存在感が長すぎる主人公ペア(終盤にしか見せ場が無い…)
◆一部、原作設定との不釣り合いが生じているキャラクターの存在(特に『戦場のヴァルキュリア3』の面々は言動、ライバルポジションのキャラクターまで、原作と異なる所が多々見受けられる)
◆一部、原作未経験者に不快感を与えるキャラクターの存在(特に音楽の所為で、ゲーム全体の雰囲気を急激に一変させるインパクトを持つ『ゆめりあ』のねねこがその筆頭)
◆一部、登場タイミングが異様に遅いキャラクターの存在(特に『ロックマンX』の面々)
◆音源が安っぽく、イマイチ盛り上がりと原作再現の気力に欠けた音楽
◆15個も用意する必然性が皆無なセーブデータ(多いに越したことはないが…)
◆悪く言えば、シナリオライターの趣味に走り過ぎてる感もあるボイス&台詞ネタ
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▼Review
≪Last Update : 10/22/2017≫
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その活躍の場の少なさこそが最大の謎なのだ。
主人公とは一体。
カプコン、セガ(現:セガゲームス)、バンダイナムコゲームスのゲームキャラクター達が共演するクロスオーバー作品にしてシミュレーションRPG。過去、旧ナムコと旧バンダイ、カプコンのキャラクター達のクロスオーバー作品として発売された『NAMCO×CAPCOM(ナムコクロスカプコン)』、スーパーロボット大戦シリーズのスピンオフとして発売された『無限のフロンティア』と世界観を共有した、事実上の関連作でもある。開発も同シリーズの制作に携わったモノリスソフトが担当。
素晴らしい原作再現とクロスオーバー、それに泥を塗る粗悪な出来のゲーム本編が尾を引く残念な佳作だ。
内容はシナリオキャンペーン方式で進行するシミュレーションRPG。3Dの斜め見下ろし視点で描かれたマップ上でユニット(駒)を動かし、敵ユニットとの戦闘を繰り広げながら勝利条件の達成を目指す、ジャンルの王道に準拠したものだ。
ただ、詳細なシステム周りはやや特殊。シミュレーションRPGと言えば、プレイヤー側、敵側の順序で交互に任意に選んだユニットを動かし、行動を決定していく「ターン制」のシステムが一般的だが、本作はそのシステムを取り入れながらも、「行動速度」が早いユニットから順番に動いていく方式を採用。その為、プレイヤー側が任意でユニットを選び、動かすことはできない。また、ユニットを選んで動かす際に用いる「カーソル」も無い。ユニット自体をスライドパッドで動かし、移動する先を決定するロールプレイングライクなものになっている。更にユニット一体一体の仕組みも特殊で、二人一組の「ペア」で構成されていて、敵との戦闘では二人が同時に攻撃を展開していく。これとは別に単体の「ソロユニット」なるユニットも存在し、先のペアのユニット(ペアユニット)と組ませる事で、三人一組による連続攻撃及び、ソロユニットの持ち技「ソロアタック」を繰り出せるようにもなる。基本的に「ソロユニット」はどんな「ペアユニット」とも組む事が可能。更に組み合わせ次第では、より高い効果を発揮するケースもあったりと、それを踏まえた編成を考える要素も仕込まれている。まさに複数人を一つのユニットとして扱う仕組みをフル活用した設計。独特の戦略性、プレイ感を表現したものになっている。
そして、これらのユニット同士が敵と戦闘を繰り広げるシステム全般も特徴的。一言で言うと、格闘アクション方式。様々な技を敵に当ててコンボを繋げていく、アクション要素の強い作りになっている。「格闘アクション」の通りに攻撃もコマンドを入力する形で実施していくのだが、コマンド自体は簡単で、スライドパッド(十字キー)とAボタンの組み合わせだけで繰り出せる。なので、同ジャンルに苦手意識のあるプレイヤーでも安心して触れる設計。攻撃を仕掛けた際に動くのもプレイヤー側で、敵側はそれを受け続けることに徹するので、相手の動きを読み取りながら実施していく必要もない、ドカドカ叩き込んでいけるものになっている。しかし、攻撃には回数制限があるので、叩き込める技はごく一部。敵も攻撃を行うと上下左右に激しくバウンドするので、コンボを繋げる際はその動きを見ながら技を当てていく必要も生じる。故にバランス的には意外と一手一手、考えることが要求される調整。格闘アクションならではの読み取り、シミュレーションRPGの先の行動を考えることの双方が絡み合ったシステムにまとまっている。
また、戦闘には他にも多彩な要素を搭載。一つに「XP(クロスポイント)」。戦闘中に通常技を繰り出してコンボを繋げていくと、「XPゲージ」が溜まっていき、これが100%に到達すると強力な「必殺技」を放つ事ができる。XPは通常は100%までしか溜められないが、ある行為を行うと150%まで溜められるようになる。その行為というのが二つ目の「サポートアタック」と「クロスヒット」。前者は敵に攻撃を仕掛ける際、マップ上で隣接した場所に味方ユニットが居る事で、バトル中にその隣接したユニットを呼び出せるようになるシステム。これを仕掛けた際、メインユニットの技とサポートユニットの技が同時に敵に当たると「クロスヒット」になり、通常は攻撃でバウンドする敵がその位置に固定され、より連続で攻撃を当ててクロスポイントを稼げるようになる。そのサポートアタック時、メインユニット側のソロユニットも参戦すれば、五人ものキャラクターが同時に暴れ回る大変な光景に。そんな重ねれば重ねるほどに強力になる一面もあり、単純に敵を攻撃するだけでは終わらない奥深さも併せ持っている。更に攻撃して落下してきた敵をあるタイミングで攻撃する事で発動する「クリティカルチャンス」と「クリティカルヒット」、攻撃力の上昇や回復など、ユニットごとに設定された固有の「スキル」、敵ターン時に攻撃を受けた際に発動し、XPを消費する事で防御や反撃等の行動が行える「応戦行動システム」など、戦闘用に搭載されたシステムは多数。基本的な作りも特殊ならば、その中身も独自要素のオンパレードと、まさに入れるだけ入れたと言わんばかりの作りで、只でさえ個性の強い戦闘システムの魅力を際立てている。それでありながら、触るだけならば簡単というギャップ。まさに本作が一般的なシミュレーションRPGと一線を画す内容であるかを大きく象徴するものにまとめられている。そして、先述の通りにターン制、ユニットと言ったシステム周りも特殊。一般的なシミュレーションRPGの感覚で遊べば、雑魚敵との戦闘を乗り切るだけでも手を焼くこと確実な個性の強い設計だ。ある意味、ジャンルの未経験者も経験者も慣れが要求される内容となっている。
更に本作にはシステムと並ぶ、もう一つの大きな特徴がある。それがプレイヤーキャラクター達で、バンダイナムコゲームズ、カプコン、セガの三社を代表する計39作品のキャラクターが一斉に登場し、双方入り乱れながらのストーリーが繰り広げられていく。参戦作品の数が非常に多い為、一つ一つの紹介は割愛するが、バンダイナムコゲームズなら鉄拳、テイルズ、ゼノサーガ、カプコンならストリートファイター、バイオハザード、ロックマンX、セガならバーチャファイター、サクラ大戦、シャイニングフォースと錚々たる顔ぶれとなっている。しかも著名な作品ばかりでなく、サイバーボッツ、ゾンビリベンジ、ファイティングバイパーズ、ゆめりあと言ったマニアックな作品も。また、戦場のヴァルキュリア3、ゴッドイーター、エンドオブエタニティと言った任天堂ハード初登場となる作品のキャラクターも数人登場する。そんな著名なキャラクターが一同に介す光景たるや、まさにカオス。前代未聞のコラボレーションというに相応しいハチャメチャさと圧倒的なスケール感で魅せるものになっている。なお、物語の主人公は本作オリジナルのキャラクターが務める。その仲間兼サポート役として本作と世界観を共有する『NAMCO×CAPCOM(ナムコ×カプコン)』、『無限のフロンティア』の主人公二人も出演。同作を知る人ならば、その組み合わせにはニヤリとしてしまうかもしれない。
こんな具合にシミュレーションRPGとしては奇抜で、ストーリー周りにしてもバンナム、カプコン、セガの作品のキャラクター達が一同に集まって戦いを繰り広げる内容と、まさに至れり付くせりのやりたい放題。そして、ほとんど奇跡と言っても不思議ではない光景の数々が画面いっぱいに繰り広げられる、衝撃作というに相応しい作品になっている。
そんな本作の魅力は、ストーリーにおける素晴らしいクロスオーバー描写と原作再現だ。本編では参戦している作品にちなんだマップ、敵キャラクター、イベントが用意されているのだが、このどれもが元の原作を非常に細かい所まで研究した作りになっていて、作品を知るファンならば垂涎必至なものになっている。
圧巻なのはゲームのみならず、漫画などのメディアミックスまで全方位にカバーしている事だ。筆者は参戦作品の中ではロックマンXシリーズが特に好きなので、例に挙げて紹介するが、これが何と原作のゲームだけでなく、今は亡き講談社の『コミックボンボン』で連載されていた岩本佳浩氏のコミカライズまで網羅しているのである。そのネタの使いどころも絶妙の一言で、特に二人を突け狙う宿敵として登場する「VAVA」の台詞の数々には、コミカライズを知る人ならば鳥肌モノの感動を覚えること必至。勿論、原作のゲームのネタもしっかり網羅しており、中でも『ロックマンX4』で登場した「アイリス」にまつわるエピソードは、同作を知るプレイヤーならばこれまた鳥肌必至。声優も原作に準拠していて、ゼロは置鮎龍太郎、アイリスも原作同様に水谷優子が配役されており、その分かり過ぎた描写には「よくぞやってくれた!」という賞賛の言葉を投げたくなること間違いなしだ。なお、エックスは『ロックマンX コマンドミッション』以降の櫻井孝宏が配役されている(また、VAVAも同作の下崎紘史が配役されている)。しかしながら、PSPの『イレギュラーハンターX』から7年ぶりにエックスを演じるという点には、ファンなら感無量な気持ちになってしまうこと請け合い。他にも素晴らしい所は沢山あるのだが、これらだけでも十分に今作の入れ込み具合の凄さというものが分かるはず。とにかく、ファンを楽しませよう、驚かせよう、そして元の魅力を損ねないようにしようとするこだわりが半端無い。制作スタッフが如何に原作をやり込み、熱心に研究したかが伺える仕上がりになっているのだ。
これは他の作品も同様。そして、それぞれの魅力的な部分の描写にこだわり尽しているのもあって、原作を知らずとも自然と興味が湧いてしまうものになっている。中でも『ゴッドイーター』と『エンドオブエタニティ』の二作はそれが顕著。特に後者は無性に原作をやりたくなる衝動に駆られるはずだ。また、先の通りに本作はボイスも豊富且つ、全てのキャラクターに原作準拠の声優が起用されている。兼ね役も数人おり、その声優には別のキャラクターと掛け合わせるネタも用意するお遊びも。特に横山智佐演じる『サクラ大戦』の真宮寺さくらと『ロックマンDASH』のコブンはその筆頭。詳しい方ならば見た瞬間「やりやがった…!」とニンマリとしてしまうだろう。
そして、こんなファン垂涎のネタが仕込まれたストーリーの出来も…出来は……褒められないものになってしまっている。残念ながら、ここで絶賛タイムは終了だ。以降は難点中心の批評となる。というのも、展開が似たりよったり。所々で原作ゲームにちなんだイベントは発生するが、肝心のシナリオは異世界の転送と悪役との追いかけっこに終始する為、正直、驚きも面白味もない内容になってしまっている。そして、これらの作品達のキャラクターを束ねる主人公が完全に空気で、全く活躍の場が無い。最終マップでやっと存在感を示す程度。ネタは完璧だが、肝心の本筋が粗だらけなのである。
このストーリーと併せて展開されるシミュレーションRPG本編の出来も最悪の極みだ。とにかく冗長。そして作業の繰り返しで、マップに起伏も無いどころか、ユニットを育てる楽しみも絶無という酷過ぎる仕上がりになってしまっている。特にその酷さを際立たせているのがマップごとの敵の物量と増援。本作では敵の全滅がクリア条件のマップが大半を占めるのだが、この敵の量があり得ないほど多い。中盤を例に出すが、50体以上も出てくるのである。しかも、耐久力が地味に多い為、一体倒すにも1〜3分は要する。言うまでも無く、猛烈にダレる。挙句、その敵達を一定数仕留めると増援が出てくるのだが、この数が何と40〜50体!ほぼ振り出しに戻るも同然な事になって、また一体一体を地道に倒していく形になるのだ。そして、こんなマップが終盤まで繰り返されていく。まさに苦行としか言い様の無い構成になってしまっているのだ。こうも安直で作り込んだ形跡もないレベルデザインが成されているのもあって、どのマップもプレイしていて楽しいというに遠く、長期戦に陥るのが常なのもあって胃もたれを起こし、モチベーションが殺がれる。そうして苦労の末に次のマップに来たら、前のマップ以上に苦痛な展開が繰り広げられる地獄絵図。もう難易度とか関係なく、多くのプレイヤーが最後まで遊ぶ気を無くしてしまう最低最悪の仕上がりになってしまっているのだ。
制作スタッフはこんなマップの何が面白いと思ったのか。構成の過程からして手抜きも甚だしいし、プレイヤーを侮辱にしているに等しい。こんな水増しをしているが故に、凝った作りの戦闘システムもゲームプレイを冗長化させる元凶にしかなってなく、敵の高い耐久力とも相まって作業と化してくる。ユニットの育成にしても、敵の数が数だけに流れに応じて育ってしまうので、プレイヤーそれぞれが愛を注ぎ込む余地に乏しい。シミュレーションRPGというジャンルは、悪く言えばゲーム性自体が作業である。だからこそ、マップの構成、難易度には一層神経を尖らせて調整しないと退屈な内容に陥りかねない。実際に世間で名作、傑作と評価されているタイトルの大半は、その作り込みを徹底し、遊んでいて作業感も無く、面白いと思える起伏ある内容にまとめている。例え難易度を低くしても、育成周りを充実させる事によって面白さを際立たせた例も少なからず存在する。だというのに本作はそのような事もせず、徹底的に作業感を高める調整を行っている。なので、やればやるほどに退屈になっていく。正直、制作スタッフはシミュレーションRPGを作る気があったのか、本気で問い質したくなるぐらいに惨憺たる有様になのだ。むしろ、これだけのキャラクターを揃えた世界観なら、同じことの繰り返しに終始しても単調にはならないという謎の根拠を元に作ったのではないのかと疑ってしまうほどだ。真偽のほどは製作スタッフのみぞ知るが、実際の出来からして、そんな気持ちで作ったのはほぼ間違いないのだろう。
本当、誇張無しにプレイヤーのみならず、シミュレーションRPGというジャンルを甘く考え過ぎだ。クロスオーバーが題材のゲームだからこそ、そこに力を入れるのは分かる。そして、そこの出来が素晴らしい事については一切否定しない。だが、それ以上に重視すべき所があったのではないのか。幾らストーリーとその演出が優れていても、肝心のゲームがダメでは映えるものも映えないではないか。結果的に本作はそれらに力を入れ過ぎてしまい、肝心のゲーム側は基本的な枠組みを付け加えた程度で終えたに等しい惨状になってしまっている。まさに、キャラクターだけしか取り柄の無いゲーム。シミュレーションRPGとしての魅力と面白さなど、存在しないに等しい内容なのだ。クロスオーバーが売りなのだから、それに力を入れること自体間違ってはいない。だが、それに注力をすれば、ゲーム側が多少適当であっても面白いものになるなんて夢のような話はあるのか?あえて声を大にして言っておきたい。そんな甘い考えでゲームを作るんじゃない!
こうもシミュレーションRPGとして破綻していて、レベルデザインも雑だけに、本編のボリュームが膨大である事も逆に欠点になってしまっている。その総数実に41以上。そして、ほとんどのマップは大量の敵と増援を相手にする水増し構成の作業マップ。評価できたもので無いのは御察しの通りである。やり込み要素も能力を引き継いでの周回要素が用意されているが、これまた最後まで遊んだプレイヤーなら躊躇なく「ノーサンキュー」と言いたくなる代物。もはや傷に塩を塗り込むに等しい存在になってしまっている。苦笑いするしかない。
また、評価点として紹介した原作再現にも疑問符の浮かぶ箇所がある。特に『戦場のヴァルキュリア3』において顕著で、登場するキャラクター達と全く接点が無い(むしろ原作で少し戦った程度)のキャラクターがライバル役として現れる、その悪役が別のキャラクターの戦車と共に登場するなど、原作を知るファンなら疑問符が浮かぶものになってしまっている。他に作中の描き方が強烈過ぎるあまり、人によっては嫌悪感を抱きかねないキャラクターも。『ゆめりあ』のねねこは特にそれで、彼女のテーマ曲も併せて苦手な人には相当応えるかもしれない。
一方、操作性に関しては、コマンド技のシンプルさにキーレスポンスなど、概ね問題は無い。ゲームバランスも裏を返せば過度に難易度が高い訳では無いので、まったり遊べるのは強みと言える。ただ、それを含めても最終マップは常軌を逸しており、本作の欠点の総決算とも言える内容になってしまっているのは擁護できないが。
グラフィックも非常に気合が入った仕上がり。登場キャラクター達は全てドット絵で描かれているのだが、これが素晴らしくよく動く上、そこでも原作にちなんだネタを仕込むと言ったこだわりの作り込みが炸裂している。必殺技時に挿入されるカットインも迫力満点。3DSの二画面を最大限に活用した表現方法には、デザイナーの本気を痛感させられるはずだ。
ただ、音楽は安っぽさが際立つ。3DSの内蔵音源だけで製作しているのか、どうにも音源的に軽いものに感じてしまう。これもあって、作品ごとに用意された楽曲の再現具合もイマイチ。人によっては怒りすら覚えるかもしれない。
演出周りも先の戦闘シーンでの必殺技発動時のカットインのみならず、イベントシーンではここぞというタイミングでフルボイスに切り替わるなど、空気を読む絶妙な手法が炸裂している。ボイス演出も賑やかの一言で、出演している声優は総勢70名近くと、その物量も圧巻としか言い様の無いものになっている。また、今作オリジナルの悪役キャラクターの声優に林原めぐみ、古川登志夫、たてかべ和也と言った大御所中の大御所を起用しているのも結構な見所。その豪華さは、さすがスーパーロボット大戦シリーズを手掛けた実績を持つバンダイナムコだけにあると言ったところである。
そう大きく評価できる所もあるのだが、肝心のゲーム部分が壊滅的なのに加え、ストーリーもイマイチと言ったなどの欠点が散見されるのもあり、どう口が裂けても良作とは言えないゲームになってしまっている。シミュレーションRPG単体の出来も非常に悪く、ゲーム性の粗悪さも相まって絶対にお薦めしてはいけないレベルにまでなってしまっている本作。
こんな事を言うのも酷だが、3DSを持っているユーザーなら無理して買う必要のない無い佳作である。恐ろしい苦行に長時間付き合わされる事になるので、安易な気持ちで手を出すのは危険。だが、遊ぶ事によってそれまで知らなかったゲームに興味を持つきっかけを得られる利点もある。そのような出会いを求めてプレイするのなら、買ってみても良いかもしれない。しかし、くどいが苦行を味わう事への覚悟を決めた上で行こう。さすれば負けない愛で乗り切れる…かも。
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