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  4. ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮(むげんだいめいきゅう)
≫ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮(むげんだいめいきゅう)
■発売元 ポケモン
■販売元 任天堂
■開発元 スパイク・チュンソフト
■ジャンル ダンジョンRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4571円(税抜)
■公式サイト ≫ポケモン公式サイト / ≫任天堂公式サイト
▼Information
■プレイ人数 1人(通信プレイ時:2〜4人)
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■消費ブロック数 8192ブロック以上(※ダウンロード版)
■その他 すれちがい通信対応、いつの間に通信対応、ローカルプレイ対応、インターネット対応
■総説明書ページ数 68ページ(※電子説明書)≫Web版はこちら(※PDF注意)
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、60〜80時間以上(完全攻略目的)
主人公はある日、自分がポケモンの姿になってしまう不思議な夢を見る。
気が付くと、そこはポケモンだけが暮らす世界だった。
ポケモンになることで、ポケモンと会話できるようになった主人公は、パートナーとなった仲間と共にこの世界に現れた「不思議のダンジョン」の謎を追い求める冒険へと旅立つことになる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆多種多様な「不思議のダンジョン」を攻略していく、シリーズ伝統のストーリー性の強さが滲み出た本編構成
◆シリーズお馴染みにして、不思議のダンジョン初心者に優しい継続型レベルシステム
◆より気軽で自由な探索を可能にした空腹度システムの廃止(不思議のダンジョン初心者にも優しい)
◆仲間ポケモン限定パーティでのダンジョン探索を可能とした新システム「なかまモード」(過去作と異なり、メインストーリーが絡まなくなったので「依頼」の攻略、アイテム稼ぎも容易に)
◆最大四人で強大な敵ポケモンに挑むハンティング的な遊びが楽しめる、「なかまモード」から派生した新しいローカルマルチプレイ(ただ仕様の関係上、ダンジョン探索は楽しめない)
◆プレイヤー好みの拠点を制作できる運営ゲーム的な面白さに富んだ新要素「ポケモンパラダイス」
◆罠の防止、アイテム類の明瞭化などの豊富な恩恵が得られる戦略的な新要素「チームスキル」
◆使い込む度に威力、攻撃回数などが上昇していく仕組みに改められた「わざ」
◆十字キーとボタンの組み合わせで素早く繰り出せるよう改善が図られた「わざ」の操作
◆数値が表示される仕様に改められたダメージ表示(これにより、戦闘テンポが向上)
◆優し過ぎず、難し過ぎずの程よい塩梅に調整された難易度(しかし…?)
◆過去作から水増しし過ぎない程度にまとまったメインストーリーのボリューム
◆シリーズ伝統にして、盤石の完成度を誇るストーリー(今回は終盤にシリーズ初の展開が)
◆全編3DCGに刷新されたグラフィック(ポケモン一体一体のモデリングの質も高い)
◆グラフィック完全一新によって更に派手さの増した演出(特にわざのエフェクト全般)
◆シリーズお馴染みの壮大且つ、切ない雰囲気に富んだ楽曲が満載の音楽
◆パッケージ一本化(単体での完全攻略が狙える作りになった)
◆ホラーめいていた強制退去イベント発生直前演出の緩和(普通の警告表示になった)

--- Bad Point ---
◆「不思議のダンジョン」を名乗るに相応しくない、マップの自動生成パターンの少なさ(細分化された部屋と長い通路を特徴とした地形が頻発。大部屋みたいな特徴的なパターンが全く出てこない)
◆生成パターンの少なさによって、より際立ったダンジョン探索の単調さ(起伏が無い)
◆プレイヤーキャラクターに焦点を大きく合わせた作りになり、画面外の敵や味方、アイテムが確認し難くなった画面構成
◆使用する「わざ」が完全ランダムなのに加え、何故か敵に狙われ易い場所に移動して事故を招くなど、ますます「馬鹿」になった味方AI(特にやられればゲームオーバーになるパートナーの動きは…)
◆先述の視認性、AIの悪化で理不尽さが加わった難易度(クリア不可能なほど酷くはないが…)
◆結果的に威力の高いわざを強化し、それを主力にすることが最適解になってしまう「わざ」の強化システム(これによって、使用する「わざ」が極端過ぎるほど偏っていく)
◆わざを組み合わせるカスタマイズシステム「れんけつ」の廃止
◆何故か一つしか受注できなくなり、テンポ良く攻略できなくなった「依頼」
◆何故か「すれちがい通信」限定になり、あり得ないほど使い難くなった救助システム(地方に住むプレイヤーに配慮してた前作の機能全部が削られるという、あまりにも度し難い改悪)
◆発生頻度が高く、行動制限もシビアであるなど、ストレス要因として機能してる天候変化
◆僅か144体と、過去作にも増して少ない登場ポケモン達(3DCG採用の反動かもしれない)
◆ストーリーがほぼ無くなってしまったクリア後の世界(追加要素も少なめ)
◆単なる技術デモでしかない「マグナゲート」(育てたポケモンでダンジョンを探索できない、本編に持ち込めるアイテムは初歩的なものばかりと、遊ぶ価値に乏しい出来)
◆不思議のダンジョン経験者には賛否の分かれる空腹度廃止
◆阿漕過ぎるダウンロードコンテンツ(お金を巻き上げる事しか考えてない魂胆が見え見えなコンテンツばかり)
▼Review ≪Last Update : 2/18/2018≫
新要素を大量追加した「決定版」ここに参上!

しかし、実際の中身は…(以下、後述)


チュンソフト(現:スパイク・チュンソフト)の看板タイトル『不思議なダンジョン』シリーズとポケットモンスターシリーズのコラボレーション作品にして、良心的なゲームシステムと感動的なストーリーで高評価を獲得した『ポケモン不思議のダンジョン』の最新作。開発は過去作同様に本家シリーズを手掛けるスパイク・チュンソフトが担当。(※2012年4月1日に合併)

決定版というのもおこがましい、ガッカリ過ぎる続編だ。

基本的な内容は過去作と変わらない。一度でも倒されると所持品を全て失った状態でスタート地点に戻される「不思議のダンジョン」を進み、階層への到達や目標の達成をこなしながらストーリーを進めていくというものだ。
システム周りも倒れてもレベルがリセットされない「レベル継続制」、パートナーと二人一組になってダンジョン攻略に臨むスタイル、そしてポケットモンスターシリーズの特色でもある回数制限を反映させた「わざ」、気候変化、通信機能を活かした救助システムなど、過去作でお馴染みのものを踏襲。基本的には前作同様、初代の時点で完成されていたシステムをそのまま踏襲した続編になっている。ただ、今回は数多くの新要素の追加と一部システムの変更が施されている。
第一にゲームルール及び、ゲームバランスの更なる緩和。先の通り今作は、本家『不思議なダンジョン』シリーズとは異なり、一度倒されてもレベルが1にリセットされず引き継がれる「レベル継続制」を採用したロールプレイングゲーム寄りのバランスを特色としている。これによって、困難なダンジョンもレベルを上げる事で突破できる可能性を残すなど、シリーズ初心者にも抵抗なく遊べる敷居の低いプレイ環境が表現されていた。今回はこの部分に更にメスを入れ、唯一、本家シリーズのシビアさを残した箇所でもあった「空腹度」を廃止。ダンジョン内で動く度に空腹度の数値が下がっていき、0%になってしまうと体力が自動的に減っていくという、このシリーズの特色とも言える要素を完全に取り除いてしまった。その為、今回は自由にダンジョン内を歩き回れるようになった。また、関連して空腹度を回復するアイテム(道具)である「リンゴ」も廃止。そもそも、空腹度の概念がない時点で当然とも言うべき措置が取られている。シリーズの醍醐味たるものを無くしたという事で、レベル継続制を許容してたコアなシリーズファンもこれはやり過ぎだという印象を抱くかもしれないが、これによって今作は前作以上にシリーズ初心者に取っ付き易い作りへ進歩した。更にシステム自体は完全に廃止された訳では無い。ストーリークリア後に出現するダンジョンに空腹度のルールが追加されるものが用意されている。いわば、クリア後のダンジョン限定のレベルリセット制同様の位置づけになったのだ。なので、従来の不思議のダンジョンもちゃんと遊べる設計。特色自体は完全に取っ払われてはいない。そんな具合にエンディングまではより緩やかに、クリア後は問答無用で手強くという、前作よりも更に尖らせたゲームデザインを徹底。初心者にはより遊び易く、上級者には深く遊び込めるという、大幅な緩和措置が施された作りにまとめられている。
また、第二に新要素で「なかまモード」の実装。主人公達の冒険を中断し、仲間にしたポケモンでプレイするモードが実装された。前作でも仲間だけの編成にして遊ぶのはできたが、今作ではメインストーリーが関わらなくなったのが大きな特色。これにより、ストーリー上の都合で拠点に戻ってこれない時でも依頼をこなしたり、アイテムを稼いだりと言った事ができるようになっている。ストーリー上の縛りで思うような探索ができない事に煩わしさを感じていたプレイヤーには待望とも言える機能だ。また、このモードで遊んでいる時にメニュー画面を開き、「ローカル通信」を選べば最大四人までのマルチプレイを楽しめる。ダンジョン攻略はできず、強力なポケモンとの戦いにだけ挑めるという仕様的には某ハンティングアクションゲームを髣髴とさせる縛りのある作りではあるが、シリーズでも珍しい四人協力型の戦闘は新鮮味抜群。少しおまけっぽい感もあるが、侮り難い新要素として完成されている。
仲間に関連した新要素では「ポケモンパラダイス」なるエリアも登場。いわばプレイヤーとパートナーだけの街で、ダンジョン探索で手に入る材料を入手する事で、様々な施設をエリア内に建造できるのだ。最初から全ての施設が建造可能という訳では無く、「おしごと掲示板」に掲載された依頼を攻略する事で獲得できる「パラダイスポイント」を集めていく必要があるのだが、建てられる施設は「わざ」の強化を行う「道場」に特定の能力アップアイテムを作り出す畑と、冒険に大きな影響を及ぼすものばかり。少し手間はかかるが、発展させるだけの意義があるエリアになっている。
「わざ」の強化と紹介したように、今作では「わざ」が成長。基本的に使い込む事によって威力、命中率、PPが上昇する。また、「わざ」は操作周りも改良され、十字キーとボタンの組み合わせで、いちいちメニュー画面を開く必要もなく個々の技を繰り出せるようになった。これにより、戦闘のテンポも大幅に向上。加えて、今作ではダメージを与えた際にメッセージが表示される仕組みも廃止され、数値が表示される簡略型にもなってもたつく事も無くなっている。その快適性たるや、旧作を遊ぶ際に微かにストレスを感じるようになってしまうほど。そんな細かい所にも今作では改良が施されている。
そして、第三の新要素として「チームスキル」。装着することで罠を踏み難くなったり、ダンジョンに落ちている道具の数が分かるようになる恩恵を得られるようになった。これに伴い、前作までに登場していた「グミ」は廃止されている。更にチーム絡みでは「みんなでアタック」なる必殺技も追加。周りの敵ポケモンにダメージを与えたり、大回復を行ったりなど強力なわざを繰り出せるようになった。しかし、使用に当たっては「心のはどう」というエネルギーが必要なほか、一回しか使えない仕組みなので、ここぞというタイミングで使う事が求められる。如何にも必殺技らしい制約と言ったところだ。
まだ他にも新要素と改良点は多数。ニンテンドー3DSのカメラ機能で丸いものを撮影すると特別なダンジョンへと潜れるようになる「はっけん! マグナゲート」なるモードの実装、グラフィックのフル3D化、連れて行かなかった仲間ポケモンに経験値が入るシステムの搭載、1バージョンのみのパッケージに変更、追加ダウンロードコンテンツの実装などなど。マイナーチェンジな印象が否めなかった前作から見ると、見違えるぐらいに続編としての進化が現れている。
それでも、基本的なゲーム内容は初代から変わらず。だが、今回は多くの新要素追加とシステムの刷新が実施されているので、新鮮味は抜群。前作のゲームとしての変わり映えの無さに寂しさを覚えたプレイヤーには、まさに待望の大幅進化を遂げた続編と言えるだろう。そうも明確な違いが現れた内容。進化の際立つ続編に仕上げられている。

しかし、肝心のゲームの出来は前作に劣るどころか、シリーズでもワースト1に入るほどに残念なものになってしまっている。はっきり言って今作は魅力以上に欠点の方が多い。否、多過ぎる。
特に不思議のダンジョンシリーズの命とも言えるシステム、マップの自動生成システムが一切機能していないのは致命的の一言だ。このシリーズと言えば、ダンジョンに潜る度に地形や敵配置が変化するというシステムが最大の特色でもあり、「1000回遊べるRPG」の象徴とも言えるスリリングなゲーム展開と奥深いゲーム性を演出していたものである。そのシステムは前作、前々作においても継承され、本家に負けず劣らずの魅力を炸裂させていたのだが、どういう訳か今作ではそのシステムがおかしな劣化を遂げた。何と、細分化された部屋と長い通路が特徴の一パターンしか出て来なくなってしまったのだ。通路だけしかない、部屋が大きいと言った特色のある地形が全くと言って良いほど出てこない。決まって出てくるのは長い通路の存在するパターンだけ。変わっているのは敵とトラップの配置程度という、恐ろしく素っ気ないものになってしまっているのである。正直、今作は自動生成システム自体を実装していないのではないのか、と疑ってしまうぐらい。シリーズ経験者ならば強烈な違和感を覚えること必至だ。
一応、自由に動き回れる外エリアが登場するなど、ダンジョンに個性を付ける工夫は欠かしてないのだが、不思議のダンジョンを探索している手応えがほとんど無い。始めこそ面白いが、次第に化けの皮が剥がれてダレてくる。しかも、これは序盤だけの話かと思いきや、何と終盤までこの調子という始末。周りの風景は変わっても、地形は似たり寄ったりの連続なので、面白味も何も無いのだ。はっきり言って、制作スタッフはちゃんとプログラムを組んだのかとその仕事ぶりに強い疑念を抱くほどの出来。実は自動生成システムと見せかけた、敵とトラップ配置自動生成システムなのではないのかと、詐欺だと思われても仕方がないほどに酷い有様になってしまっているのだ。シリーズ全体のキモとも言える部分を劣化させるとか、本当に度し難い。そして、こんなワンパターンな構成の所為でレベルデザインの巧みさなどあったものでもない。もし、これが「空腹度」の廃止同様、初心者を配慮しての措置だとしたらとんでもない愚行だ。ランダムで変わる地形は必要以上に難しくするだけだから、なんて発想の末にシステムを改悪したというのなら、冗談抜きに初心者への冒涜に等しい。実際にそうした意図は謎だが、簡単にパターンを覚えられるようにしている所にそんなものを感じさせられる。まだ空腹度を廃するのはシビアさの緩和として理解できるが、ランダムに変わる地形まで取っ払うのはさすがに違っていないだろうか。そもそも、こんな単調で起伏も無いレベルデザインの何処にゲームとしての面白さと手応えがあるのか。冗談抜きに、取っ払う事が初心者救済なのだと考えてるのだとしたら、ただひたすらに呆れるしかないばかりだ。
更にこれだけでなく、前作から劣化を遂げた箇所も多過ぎる。クエストこと「依頼」は1つしか受注できなくなり、同じダンジョン内での依頼を複数攻略する事ができなくなる、グラフィックの3D化に併せて周囲の視野が狭まる、それによって視界外から理不尽な不意打ちを受ける場面が増加、救助システムがすれちがい通信だけに対応しててインターネットに未対応と、どうしてそんな風にしてしまったんだと突っ込まざるを得ない部分のオンパレード。
特に救助システムに関しては最も疑問を抱く箇所で、前作以上に遊びに制限をかけるとか、どうしてそういう考えに至ったのだろうか。前作では「すれちがい通信」が楽しめないプレイヤーに向け、インターネット接続モードの実装、無線LANを使えないプレイヤーに当てたパスワードシステムなど、完璧に等しい作りになっていたというのに、それを「すれちがい通信」だけにするのは理解に苦しむ。3DSの「すれちがい通信」を活用してもらう為、という意図があるにしても、このやり口は横暴の極みであり、それが楽しめないプレイヤーに対する悪質な苛めも同然だ。何故、急にこうも差別的な仕様に改めてしまうのか。進化では無く、劣化に舵を取った制作スタッフにはドン引きするばかりだ。おまけに前作の難点でもあった仲間のAIはますます馬鹿になり、想定外な行動を取って自爆する頻度が増加。それにより、想定していないゲームオーバーに見舞われる頻度も増え、ゲームバランスの理不尽さまで増してしまっている始末だ。問題視されていた箇所でもあったのに、そこを一切直さないどころか、余計に酷くしてしまうとか本当に凄過ぎて言葉も無い。
極め付けに今作では、登場ポケモンの総数まで減少。最新作の『ブラック・ホワイト』までのポケモンが登場するという触れ込みでありながら、その数はたったの144匹。初代ポケットモンスターにすら劣る量になってしまっている。ただ、今作では全てのポケモンがフル3Dで描かれているので、容量的な限界があったのだと思われる。そういう可能性が考えられるだけでも、他の劣化点に比べたらまだマシと言えるかもしれない。それでも減少は好ましくないが。
この他にも「わざ」の強化システムによる偏りの冗長化、「晴れ」の天候以外での自動回復機能廃止、二つの「わざ」を組み合わせる「れんけつ」の廃止など、理解に苦しむ改悪は多い。新たに用意された「マグナゲート」も実は存在意義皆無で、本編でも拾えるアイテムが稼げる程度とかなり素っ気ない。ほとんどAR技術のデモ同然なものになってしまっている。挙句、追加ダウンロードコンテンツも配信されているコンテンツがお金稼ぎ特化型、経験値稼ぎ特化型など、どれもこれも悪質。正直、プレイヤーから金を巻き上げる事しか考えてない魂胆が見え見えの酷さだ。
「わざマシン」が使い捨て仕様で無くなる、待機ポケモンに経験値が入るようになるなど、ちゃんと進化を遂げている箇所も多い。だが、実態は劣化の方がそれを上回る有様になってしまっており、正統進化系とは口が裂けても言えない惨状である。不思議のダンジョン単体としても、自動生成システムが死に体と化しているなどと散々。普通、続編作品なら前作以上に面白く、気持ちよく遊べるものにするのが普通なのにどうして今作はその逆を行ったのか。そんな疑問が遊ぶ度に噴出するほどに作りが粗い。「どうして?」という疑問が湧くばかりの有様なのである。こんな出来でありながら、発売前に制作スタッフはシリーズ決定版だと豪語していた。何処にそうと言い切れる売りがあるのか、教えて欲しいものである。

全体的なボリュームもメインストーリーは前作とそれほど変わらぬ物量とは言え、クリア後に関しては明らかに量が減ってしまっており、前作経験者には物足りなさを覚えるものになってしまっている。更にそのダンジョンにおいては、レアなアイテムが手に入ると言った特典までもがほとんど取り除かれ、プレイする価値まで落としてしまっている始末である。完全にやり込み要素としての役割に切り替えたとも言えるが、前作までの事を考えると、もう少しプレイヤーが遊びたくなる特典を用意しても良かったのではないだろうか。正直、そこまで割り切ってしまうやり方には違和感を覚える。
また、クリア後には追加のストーリーが語られていたりしたが、それに関しても今作では僅かなエピソードが語られる程度に減少してしまっている。これもまた、前作経験者ならば物足りなさを感じてしまうだろう。
ただ、肝心のストーリーはこれまでのシリーズの良さを引き継いだ素晴らしい出来だ。相変わらず、今回も大人のプレイヤーでも涙腺を刺激させられること請け合いの感動的なシーンが多数。展開的にもこれまでのシリーズとは一味違うものになっていて、特に最終局面は演出からボス自身も含めて思い切ったものになっている。正直、苦痛を感じる出来になってしまっている今作のダンジョン全般だが、ストーリーがそれをフォローしてくれているのがせめてもの救い。ここまで酷かったら本当にどうしようもない作品になっていたのだが、それが守られているのは素直に評価したいところだ。
グラフィックもポケモンの登場総数を少なくした功罪的な一面はあれど、質自体は高い。背景周りの描写も素晴らしいほか、エフェクト周りも3Dにした事でより派手になっている。前作までのドット絵による手作り感こそ失われたが、最新のビジュアルによる新たな魅力が炸裂。特に可愛らしいフォルムのポケモン達の描写は圧巻の一言に尽きる。
音楽も素晴らしい。相変わらずダンジョンにせよ、ボス戦にせよ、ポケモン作品とは思えないほど壮大で切ない雰囲気に富んだ楽曲が流れる。また、前作最大の見所とも言えたラスボスとの戦闘曲は今回も強烈なものになっている。上位ハードによって音源、音質周りも劇的に強化されているなど、ここもまたストーリー同様に素直に評価できるポイントだ。

演出周りも3D化の恩恵が現れた仕上がり。特に技のエフェクト、ストーリーでのイベントデモではそう言ったビジュアル面の刷新によって表現されたものが満載。新しいポケダンを作ろうという意気込みに富んだ仕上がりになっている。他にもホラー染みてて、人によってはトラウマになりかねなかった強制対処イベント発生前の演出が自然で程好く危機感を煽るものになったり、進化がダンジョン内で発生するようになったと言ったところも前作から良くなった所として評価できる。
難点の指摘にフォーカスしてしまったが、決して駄作では無い。ゲームとしては普通に遊べる出来だ。だが、良作かというとそうでもなく、前作からの難点があまりにも目立ち過ぎているだけでなく、不思議のダンジョンの根幹とも言えるシステムまで惨憺な事になっているなど、作り込みの甘さと製作スタッフの斜め上の発想が炸裂した仕上がりになってしまっている。挙句に売りにしているマグナゲートも空気だったりと、初の3DS向けだからというフォローもし難い。
単刀直入に言って、お薦めできない一品である。前作経験者はなおのこと。不思議のダンジョン単体としても褒められない出来なので、本家経験者でポケダンシリーズは未経験という方も安易に手を伸ばさない事を強く推奨する。これに行くのだったら、初代か前作のいずれかを選ぶ方がきっと幸せになれるだろう…。
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