Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo 3DS>
  4. 初音ミク and Future Stars - Project Mirai -
≫初音ミク and Future Stars - Project Mirai -
■発売元 セガ
■ジャンル 3Dリズムアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 6090円(税込)
※ぷちぷくパック:7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■その他 すれちがい通信対応、専用ARカード同梱
■総説明書ページ数 11ページ(※電子説明書)
■推定クリア時間 3〜4時間(エンディング目的)、50〜80時間(完全攻略目的)
『初音ミク』を始めとする、ボーカロイドキャラクター達による新たな3Dリズムアクション登場。
グッドスマイルカンパニー社の人気フィギュア『ねんどろいど』のデザインで描かれたミク達による、ポップでキュートなPVとリズムアクションが楽しめます。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆サークル上に配置されたボタンをタイミング良く押していく、DIVAシリーズとは異なる王道の方向性と分かり易さを突き詰めたリズムゲームのゲームデザイン
◆見る者の心を撃ち抜く可愛らしさを見せまくる、ねんどろいどデザインのキャラクター達
◆可愛らしいデザインと絶妙にマッチした楽曲ラインナップ(DIVAシリーズからの出張曲も幾つか)
◆キャラクター変更で声、歌詞までもが変化する大胆な試みが光る、ボーカルチェンジシステム
◆凝ったカット割り、ねんどろいどキャラクター達の可愛らしいダンスでプレイヤーを魅了するPV
◆元の映像を無理矢理3D化させた、セガの変態的技術力と異様なこだわりが炸裂したアニメPV
◆ボタン、タッチパネルだけでなく、マイクにまで対応した凝った作りのメニューインターフェース
◆多彩な機能と動きの豊富さが異彩を放つ、おまけ要素『ARライブ』
◆楽曲総数は少なめながら、三種類の難易度とSP全獲得、パーフェクトチャレンジと言ったやり込み要素の数々で存分に楽しませてくれる総計ボリューム(隠し要素も充実)
◆各種楽曲のイメージと絶妙にマッチした、可愛らしいデザインでまとめられたコスチューム群
◆スケジュール管理、アラームなどの機能のほか、パートナーとしたキャラクターがそれらのガイドを行ってくれるというコミュニケーションゲーム的な側面を持ち合わせた『マイルーム』
◆マイルームにおけるガイドキャラクター達の個性的なリアクションの数々
◆同じくマイルームにおける、多彩なイベント群(日によってマイルームの様子が変化する)
◆非常に質の高いキャラクターのモデリング(エフェクト周りの完成度も高い)

--- Bad Point ---
◆不快感を必要以上に煽る、リズム判定を誤った際に鳴り響く効果音(非常に不愉快な音が鳴る)
◆全体的に見た目よりもズレ気味な調整が成されたリズム判定
◆音で判定を下すという状況把握と視認性に欠けた仕様(コンボ表示があっても良かった)
◆一部の譜面における初見殺しの存在(特にいきなり次のリズムサークルでリズムを取らせる曲)
◆やり込み要素は充実しているが、全体的に乏しい感も否めない収録楽曲
◆コスチューム購入後、ほとんど存在意義を無くしてしまう通貨『ミラポ』
◆機能は充実しているが、部屋の細かいデザインまではいじれないマイルーム
◆ARライブ限定のとある隠し要素(どうせなら普通のリズムゲームにも対応させて欲しかった)
▼Review ≪Last Update : 12/29/2013≫
その可愛さ、ド級なり。

イジればイジるほどに面白い。


2007年にクリプトン・フューチャー・メディアより音声合成・デスクトップミュージックソフトウェアとして発売され、一大的なムーブメントを起こした『初音ミク』を題材にした3Dリズムアクションゲーム。既にプレイステーションポータブル等で展開されている『Project DIVA』シリーズとは異なる路線を目指した、新シリーズでもある。

可愛いは正義を地で行く演出、玩具的な要素の数々で魅せる力作だ。

ゲーム内容は3Dリズムアクションゲーム。『初音ミク』の楽曲とミュージック・ビデオ(PV)をバックに、場面に応じて現れる『リズムサークル』に表示されたリズムマーカーに記されたボタンをタイミング良く押しながら、完奏を目指すというものだ。ゲームコンセプト及び、リズムアクションとしての作りは、同じく初音ミクを題材としたリズムアクションゲームにして姉妹作『Project DIVA(プロジェクト・ディーヴァ)』シリーズとほぼ一緒。PVをバックにしながらリズムを取っていく独自のゲーム性、プレイ感覚は今作でも健在となっている。
だが、ゲームデザインは全くの別物。『Project DIVA』シリーズは画面内の四方八方より飛んでくるアイコンに記されたボタンをタイミング良く押していく、非常に個性的なゲームデザインを特徴としていたが、今作は先述の通り、『リズムサークル』と呼ばれるサークル(円)状のフィールドに表示されたリズムマーカーをタイミングに合わせて押していく、リズムアクションとしてはオーソドックスなゲームデザインになっている。極端に言えば、時計の針の動きに合わせ、リズムを取っていく感じ。サークルは赤い針とリズムマーカーの二つで構成されていて、常に赤い針が時計回りに回転しながら動く仕組みになっている。この針がマーカーの中心をピッタリ指すと、マーカーが拡大されて表示。その瞬間に合わせ、ボタンを押すとリズムを取る事ができるのだ。その為、如何に針がマーカーの中心を指したタイミングに合わせ、リズムを取っていけるかどうかが求められてくる。DIVAシリーズの個性的なシステムと比べてしまうと、いささか独自性に欠けるが、王道的な作り故に取っ付き易さは結構なもの。シンプルであるが故の魅力を何より重視した、ライトな仕上がりになっている。
細かい部分においても、ミス無くリズムを取っていく度に上昇し、一定レベルにまで達すると高得点を獲得できる『SPマーカー』が出現し、譜面に変化が現れる『チャンスサークル』など、独自の要素を実装。ゲーム性に影響を与えるほどはないものの、楽曲の進行度を示す『プログレスバー』もあり、あとどれくらいの時間が経過すると曲が終了するかの目安を把握し易くする為の配慮も成されていたりなど、DIVAシリーズに逆輸入されても不思議ではない機能も幾つか。更にユニークな要素として『ボーカルチェンジ』なるものもあり、特定の楽曲において、メインキャラクターをミク以外に変更すると歌詞の内容が別物に変わるという、驚きの仕掛けが凝らされている。また、『クローゼット』にてミク達のコスチュームの購入、着せ替えもできるようになっており、それを使ってPVの雰囲気を一変させると言ったDIVAシリーズでお馴染みの要素も実装。そのコスチュームを集める為に専用ポイント『ミラポ』を集めるなど、やり込み的な遊びにも対応しており、一回遊んだだけでは終わらない高いリプレイ性も今作は備えている。
しかし、それら以上の今作最大の特色はミク達のデザインである。公式サイトなどを見ればお分かりの通りだが、今作のミク達はグッドスマイルカンパニーより販売されている人気フィギュア『ねんどろいど』を踏襲した二頭身デザインを採用している。それ故、ゲーム全体の雰囲気もクールというよりはポップな感じで、低年齢層でも親しみ易いものに仕上げられている。無論、それだけではなく、単純にねんどろいどデザインのキャラクター達が生き生きと動く様もインパクト強し。そのアニメーションが醸し出す圧倒的な破壊力の前には、大人ですら打ちのめされるかもしれない。
更にPVだけでなく、リズムゲームのおまけ的な位置付けで用意された『マイルーム』では、そんなねんどろいどデザインのミク達を色々と弄り倒す(?)事も可能。しかもこのマイルームは時計機能ともリンクしており、特定の日において部屋に変化が訪れるという地味にインパクトのある要素も搭載されている。加えて、ニンテンドー3DSのAR機能を使った『ARライブ』なるモードでは、ソフトに同梱されている専用のARカードを使ってミク達を日常風景に召喚する事まで可能。そのままライブを見たり、写真を撮ったりと言った事までできてしまう。あくまでもおまけな為、ゲーム的な要素は乏しいが、ねんどろいどミクを色んな風景に呼び出せ、尚且つライブまで見れてしまうというのはなかなかに強烈。そんな3DSのハード性能を活かす方向でも、デザインの可愛らしさが強調されているのも見逃せないところである。
他にも収録楽曲の内、一部のPVは動画サイトに投稿されたものを3D映像に改めたものになっているなど、無駄に凝った試みや要素は満載。先達とも言えるDIVAシリーズよりもリズムアクションとしてのゲーム性、システムは王道の路線を突き詰めた感じ。だが、気の利いたオプションと新機能の数々、ねんどろいどデザインのミク達に豊富なお遊び要素の存在もあり、リズムアクションと一言で言うのも難しい内容に仕上げられている。まさに玩具的リズムアクションと言ったところ。DIVAシリーズとは全く別の路線、特色を突き詰めた新作に完成されている。

そんな今作最大の魅力は、特徴の一つであるねんどろいどデザインのミク達の破壊力抜群の可愛らしさ。先ほども僅かに触れたが、これがまた本当に半端でない。ねんどろいどって、動くとこんな強烈なマスコットになるのかと心底思い知らされるほど、凄いものになっている。
特にマイルーム、PVも含めてアニメーションの気合いの入れっぷりは凄い。表情をコロコロ変え、時には思わぬ姿勢を取ってプレイヤー自身を驚かせたりなど、あまりに自然で少し人間臭い所も見え隠れする動作の数々には、これはフィギュアではなく、ねんどろいどという名の生き物ではないのかと突っ込みを入れたくなってしまうほど。セガの(いい意味で)変態的な技術が惜しみも無く注ぎ込まれた仕上がりになっている。
そして、それらの技術の集大成とも言える収録曲のPVの出来も圧巻。全曲がねんどろいどのミク達が動くPVという訳ではなく、一部のみという配分なのだが、それでも演出、カット割と言った部分の出来が突き抜けている。元からある楽曲を引き立てるだけでなく、今作特有の可愛らしい雰囲気をより高める二つのコンセプトが貫き通された仕上がりには、製作スタッフ陣の元の楽曲への深い理解、可愛らしさへの徹底したこだわりを垣間見る事ができる。中でも、ちょこまかとした動きとポージングが印象的な『逆さまレインボー』、3Dモデルと2Dの映像を絡め合わせた演出、楽曲自体に織り込まれた悲劇的なストーリーで魅せる『悪ノ娘』と『悪ノ召使』の三曲は、そんなこだわりが最大限に活かされたものと言っても良い出来栄え。今作をプレイするのなら、これら三曲は何が何でも見ておくべきである。
更に動画サイトに投稿された楽曲用の動画を3D映像に仕立て上げたPVの出来具合も圧巻。特に『PIANO*GIRL』のPVにおいて発生する”処理落ち”は実に衝撃的だ。「処理落ちの何が衝撃的なの?」と思うかもしれないが、よく考えて欲しい。何故、元ある動画を再生しているだけなのに処理落ちが起きるのか、と?実は今作、オリジナルの動画を立体視に対応させたリアルタイムムービーとして流しているのだ。要は他のねんどろいどのミク達が踊るPVと同じ原理で作られているのである。その為、大量のエフェクトが表示されると、処理落ちが生じるようになっている。単に動画を再生している時に発生する筈のない現象が生じるのだ。普通に考えればこの処理落ち自体、マイナス要因として扱われても致し方が無いものがあるが、既にある動画をそのまま起用せず、一から作り直し、別の動画として流す方向に舵を取ったのは驚嘆に値する。何故、そんな手間のかかる事をしちゃったのか、おかしいんじゃないのかと、セガに対しては突っ込みを入れたくなるばかりである(褒めてます)。それ位、3D映像に改められた動画のインパクトも抜群。意外と技術的な面でも今作、沢山勝負しているのだ。その隙の無い完成度、狂気の技術力にはマニアならば思わず、セガは何をしているのかと衝動的に呟いてしまうだろう。また、楽曲チョイスもDIVAシリーズからの逆輸入曲(『ファインダー』)もあったりと、ファンサービス的な配慮が徹底されているのも素晴らしい。システム周りでも、『プログレスバー』に『ボーカルチェンジ』など、意欲的且つ、DIVAシリーズにも逆輸入してみる価値がある要素が充実しているのが印象深い。
だが、判定周りの調整はお世辞にも万全とは言い難い。むしろ、不十分。ここぞという時に押してもベストな判定が出ず、極力「ズラす」意識で押していかないとベストな判定にならないのは不快の極みだ。一応、『速度調整』のオプションを弄れば、ある程度改善されるが、ここはもう少し大らかにするなり、遊び易さと気持ちよさにこだわったものにして欲しかったところだ。折角、PVの出来等が水準以上であるというのに、こういう所で落としてしまっているのは勿体無さ過ぎる。
更に今作はベストな判定、イマイチな判定ごとに違う効果音が流れるのだが、このイマイチな判定の際に鳴り響く効果音が非常に不快。如何にもな「出しちゃダメな音」と言った感じで、純粋に聞くだけで気分が悪くなる。加えて音の種類で判定される為、視覚的な成功情報を確認できないのも厳しいと言わざるを得ない。この辺は差別化を狙う目的もあったのかもしれないが、だとしてももう少し不快になり難い音をチョイスできなかったのだろうか。さすがにこの辺は正直、思い込みが過ぎるとしか言い様が無い感じだ。効果音自体も複数の種類があるとは言え、いずれも一貫して不快なものというのは頂けない。せめてベストな判定でなくても気持ち良いと思える音、音が聞こえずとも確認できる情報というのは最低限、用意しておいて頂きたかったところだ。
他に楽曲総数にしても20種類と少なめ。普通にエンディングを迎えるだけなら、あっという間に終わってしまう。一応、三種の難易度ごとの挑戦など、やり込み要素自体は揃っているのだが、せめてあと3〜4曲ぐらいは入れても良かったのではないのだろうか。容量的な問題があったにせよ、この少なさはさすがに物足りないと言わざるを得ない。
それでも、タイミングに慣れれば難なくベスト判定を狙っていける調整が図られているだけでも救いではある。それに、今作はどんな欠点もねんどろいどミク達の可愛らしさによって帳消しされる。インパクトが凄まじいだけに、いちいち細かい欠点を気にするのも野暮と思ってしまうものがるのだ。それはそれでどうなのかと思う所があるのも事実だが、気にせずに遊べとも言わんばかりの強烈なインパクトには、某漫画の「可愛いは正義」という精神が込められている。可愛いの前に誰もがひれ伏す…は言い過ぎかもしれないが、そんな凄味が今作にはタップリ。(いい意味で)変な力が入ったゲームになっているのだ。正直、リズムアクションなのにそこに期待してはならないのは本末転倒が過ぎるが、そこを気にさせないインパクト溢れる内容に仕立て上げた手腕は素直に凄いの一言。そんな無茶な話があるかと、思うかもしれないが、先ずは騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。きっと、先の言葉の意味を思い知らされるだろう…。

その他、判定調整に関しては難があるが、全体のバランスに関しては概ね良好。楽曲の解禁過程と難易度の上げ方が自然であり、徐々に肩慣らししていける良好なまとめ具合になっている。リズムアクションが苦手という方に向け、難易度選択機能が用意されているのもなかなか良心的。それらの難易度を極めるやり込みも、地味ではあるが、時間を忘れてのめり込んでしまう面白さが満ち溢れているのが秀逸だ。
操作性、インターフェースのレスポンスも良好。特にインターフェースは楽曲選択の画面で立体視をONにすると、絶妙な具合に飛び出るのが面白い。ただ、サークルのマーカーデザインは少し難あり。具体的にはボタン表示なのだが、色分けがPSPなどのPSハードを基準としたものになってる点は違和感を禁じえない。任天堂ハード向けなら、スーパーファミコンなどの色を踏襲した方がベストだと思うのに何故、こうしたのか。どうにも不思議でならない部分だ。慣れれば気にならなくなるのがせめてもの救いだが。
ボリュームも楽曲の少なさもあり、エンディングを目指すだけならあっという間。だが、その後の隠し要素コンプリート、各難易度の制覇など、やり込み要素は充実。それらを極めるだけでも、意外と長く遊べる作りになっているのはせめてもの救いと言ったところ。特にパーフェクトクリアは結構な難易度なので、上級者でも悲鳴を挙げたくなるかもしれない。
グラフィックの質も非常に高い。また、立体視の具合も悪くなく、特にねんどろいどキャラクター達が活躍する曲では、その凄味を存分に思い知らされること請け合いだ。

リズムアクションとしては別途用意された『ミクルーム』、『ARライブ』の凝りっぷりもなかなか。特に前者は季節ごとに用意されたイベントの存在もあり、定期的にソフトを起動させたくなる衝動に駆られる一面を持っているのが印象深い。ロード周りなど、快適性の面も申し分なく、テンポ良く楽曲に挑戦していけるというのも嬉しいところだ。
主役のリズムアクションの出来がイマイチ、収録楽曲が少ないを始め、全体的に欠点が多々目立つ内容になってしまっているが、それらの欠点を意識させなくするねんどろいどミク達の圧倒的な可愛らしさ、凝ったPV、3DSの機能を活かした要素の数々など、光るところも多数存在する。新シリーズ一作目であるが故の不慣れな感も目立つが、可愛らしさとその奥に秘められたこだわりの数々で驚かされる今作。
まさに可愛いは正義を貫き通した力作だ。リズムアクション好きには正直、判定周りに難があるのでお勧めし難いが、気合いの入りまくったPVと細かい玩具的要素の数々は一度でも実機で確認しておくべき価値あり。特に低年齢層、女性ユーザーにこそ遊んでみて頂きたいタイトルだ。ミクの世界入門編としても上質なので是非。このゲームをきっかけに、”みっくみく”になってみては如何でしょう?粗いけど、なかなかに強烈ですよ。
≫トップに戻る≪