≫極限脱出ADV 善人シボウデス
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■発売元 |
チュンソフト |
■ジャンル |
極限脱出ADV |
■CERO |
C(15歳以上対象) ※暴力、犯罪描写、問題言語表現あり |
■定価 |
6090円(税込) |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
1つ |
■3D表示 |
あり |
■総説明書ページ数 |
22ページ |
■推定クリア時間 |
25〜30時間(エンディング目的:バッドエンド込み)、60〜80時間(真エンディング目的)、100〜130時間(完全攻略目的) |
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ごく普通の平凡な大学生、シグマ。
ある日、彼が目覚めると、そこはエレベータの中だった。
そして、その傍らには自分の事を知る少女の姿があった。
何故、彼女は自分の名前を知っているのか。激しく詰め寄るシグマだったが、その追及は、突如モニターに現れた1羽のウサギによって断ち切られた。
そして、ウサギは言い放った。
「そのエレベータ、まもなく墜落するんだウサ。」
かくして、謎の施設の中で信頼と騙し合いの脱出ゲームが始まる。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆前作譲りの脱出ゲームとアドベンチャーの異なる二つを自然に絡め合わせた、独自色溢れるゲームデザイン
◆ボリューム増強と難易度アップで、より解き応えのあるものになった脱出パート
◆前作並の個性の強さは薄れたが、相変わらずの意表を付いた伏線回収で魅せる、見所満載のストーリー
◆高めに設定されたが、前作同様に優し過ぎず難し過ぎずの適度な手応えでまとめられた、脱出パートのゲームバランス(更に難易度選択機能も追加されている)
◆ルートごとに異なる脱出ゲームが登場するなど、より彩り豊かになったレベルデザイン
◆クリア済み脱出ゲームを省略できる、パスワードによる脱出キー入手法の実装(世界観に溶け込んだ作りも見事)
◆再プレイ時とルート検証の煩わしさを大幅改善させた新機能『フローチャート』
◆謎多きストーリーと舞台の不気味さを引き立てる、ミステリアスで緊迫感溢れる音楽
◆ボタンによる切り替えと高速化により、改善されたスキップ機能(しかし…?)
◆ルート総数が前作の約6倍に膨れ上がり、大幅にボリュームアップした本編(1周だけでも20時間を超過する)
◆ハード特有のものは無くなったが、カット割や音楽の使い方など、随所にて独自のセンスが炸裂した演出周り
◆前作に負けず劣らずの強烈過ぎる個性を持った登場人物達(嫌でも印象に残る面子ばかり)
◆登場人物の存在感を引き立てる、実力派声優陣による熱のこもった演技
--- Bad Point ---
◆あまりにも酷過ぎる真エンドの結末(詳細は伏せるが、不完全燃焼過ぎる)
◆内容の密度は増したが、返ってくどさと冗長さが目立つようになったストーリー展開(特に会話周りが酷く冗長で、もの凄くテンポが悪くなっている)
◆随所で語られる前作『極限脱出 9時間9人9の扉』のネタバレ(前作未プレイの方は要注意!)
◆一度、オートモードに切り替える必要がある、煩わしい設計が残念なスキップ機能
◆欠落したオプション周り(特にボイスのON、OFFができないのは致命的)
◆脱出パートにおける視点切り替えの煩わしさなど、全体的に前作以上に劣化した操作性
◆スキップ不能のスタッフロール(全ルートのクリアを目指す際、かなりのストレス要因になる)
◆無駄に丁寧に描く所為で、全体的なテンポの悪化に繋がっている移動デモ(正直、要らない)
◆元の西川キヌ氏のイラストの雰囲気から大幅にかけ離れた、キャラクターの3Dグラフィック(質もイマイチ)
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▼Review
≪Last Update : 7/7/2013≫
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中の者は協力するかもしれないし、裏切るかもしれない。
実際の結果や如何に。
脱出ゲームとアドベンチャーを絡め合わせたゲームデザイン、DSだからこそのストーリーと演出で国内外で話題を呼んだ『極限脱出 9時間9人9の扉』、事実上の続編。チュンソフトがパブリッシャーとして、最後にリリースした作品でもある。
DSらしさは薄れたが、全体の密度は異様に濃くなった新生・極限脱出だ。
基本的なゲーム内容は前作に当たる『極限脱出 9時間9人9の扉』と変わらない。脱出ゲームとアドベンチャーゲームを絡め合わせた『脱出アドベンチャーゲーム』で、プレイヤーは謎の施設に監禁された主人公のシグマとなり、他の8人の仲間達と共に脱出を目指すというものだ。
施設からの脱出に当り、特殊なゲームを攻略する流れも前作と一緒。今回は『ノナリーゲーム・アンビデックスエディション』なるゲームで、「9」の数字が書かれた扉を誰が最初に開放できるか否かを争うというものになっている。「9」の扉を開けるにはシグマを始めとする登場人物達の腕に着けられた『バングル』のディスプレイに表示された数字『バングルポイント(略称:BP)』を9にすれば良いだけ。前作の『数字根』のルールに比べたら、大分シンプルなものになっている。
但し、そのBPを上げるには『アンビデックスゲーム』、またの名を『協力と裏切りのゲーム』を攻略しなければならない。今作では登場人物全てがBPの色に応じて2〜4人一組のコンビを組み、施設内を行動していくのだが、その行動の一区切りとして件のゲームが行われる。ゲーム自体は単純で、コンビのメンバーと協力するか、裏切りするかを選ぶだけなのだが、その選択は二手に分かれて行う上、項目を選ぶ端末は防音処理が施された部屋にある為、歩調を合わせて選ぶ事は不可能。完全にその時の本人の考え方で結果が左右される事になる。そして、そこで選んだ選択肢が協力なのか、裏切りなのかの結果が部屋の外で発表され、その組み合わせによってバングルに換算されるBPが変化する。
具体的には以下の通り。
■左側がプレイヤーの選択、右側が相手側の選択
≫協力×協力=2ポイント
≫協力×裏切り=−2ポイント
≫裏切り×協力=3ポイント
≫裏切り×裏切り=0ポイント(±0)
そして、この発表と同時に新たな組み合わせが発表され、再度、施設内の探索がスタート。以降、アンビデックスゲームが開催されてBPの上下が行われる…と言った事を繰り繰り返す形で本編が進んでいく仕組みになっている。
なお、BPが0以下になった対象者には死がもたらされる。更に9の扉は一度しか開かず、一人が開けてしまうと残された人達はその場に取り残されてしまう事になる。如何にこのゲームを上手く切り抜け、全員が無事に脱出を果たせるか。それが今回の主な目的となる。
例によって、これらの事柄全てはストーリー上で行われる。だが、協力か裏切りかはプレイヤー自身が選ぶ仕組み。この他にも今作には数多くの選択肢が随所で登場し、より複雑な分岐によるストーリー展開が楽しめるようになっている。辿り着くエンディングも実に28種類強。前作の約3倍で、非常に濃密な内容へと進化を遂げている。
システム周り及び本編の流れも基本、前作と一緒だが、脱出パートはその作りは大きく改められ、上画面と下画面が共通したものになった。要はメイン画面が一つに減った感じだ。更にあらゆるオブジェクトをスライドパッド及びボタンで細かくチェックできるようになるなど、前作のタッチペン限定操作から大幅に刷新。テキスト表示にしても、今回は上画面のみに出るようになり、下画面はバックログの確認、セーブなどのメニュー一覧を敷き詰めたインターフェースとして改められ、特徴的な演出は無くなっている。その為、前作のようなDSらしい作りはほぼ皆無。Vita向けにも出す狙いもあり、個性の薄れたものになってしまっている。
ただ、脱出パートではタッチペンを使った謎解きがあるなど、かつての名残は幾つかある。更にクリア条件も出口の扉を開錠する鍵が隠された金庫のパスワードを探し出すと、少し改められたほか、そのパスワードは一度、見つけた後は永久に手元に保存される仕組みである為、周回プレイ時に同じ部屋に訪れた際にパスワードを入力すれば、脱出パートを即座に終える事も可能。そんな前作の強制再プレイの苦痛を緩和する策も取り入れられ、遊び易さも全体的に向上している。確かに二画面を活かしたネタこそ減って寂しくはなったが、脱出ゲームとしての面白さと濃さはそのまま。劣化は何一つ無く、無難に進化した作りになっている。
更に周回プレイを助ける新機能として『フローチャート』が新たに追加。下画面のメニューから選択する事で、現在進行中のルートと分岐点の位置を確認できるようになった。更に指定した分岐点までジャンプする事もできるようになり、周回プレイの際にオープニングから分岐点までストーリーを読み進めていくという面倒な手数を踏む必要もなくなり、周回プレイの敷居が大幅に下がっている。そして、この機能を活かした特殊な仕掛けとして『シナリオロック』なるものも追加。いわゆる『428 〜封鎖された渋谷で〜』にて登場した『KEEP OUT』で、ある特定の条件を達成しないとその先のストーリーが見れないという制限が設けられた。この解除条件を探す為に他のルートを調べたり、再度元のルートに戻ったりと言った事を求められる場面もそこそこ。アドベンチャーゲームとしての色合いも強くなり、先のエンディング総数も含め、より複雑に入り組んだストーリー展開が楽しめるようにもなっている。前作のアドベンチャーパートが選択肢程度で、希薄に感じてた方も納得の仕上がりだ。
この他、ストーリーの描写に関してもテキスト表示の固定化により、前作のDSらしさとその仕組みだからこそ出来た演出はほぼ消滅。だが、ふとした選択が思わぬ悲劇を招いてしまうなど、予想だにしない展開は健在。相変わらず、脱出ゲームという枠組みを超えた強烈過ぎるほどに味の濃い物語が楽しめる作りとなっている。
DS特有の描写や操作性周りが無くなり、やや平凡な作りになった感もあるが、脱出ゲームの省略化を狙ったクリア条件改訂、フローチャートによる周回プレイの敷居低下などを始め、中身そのものは前作の続編と言うには申し分の無い仕上がりになっている。平凡になったと見せかけて、実態はいつも通りどころかそれ以上。らしさを捨てた分、それ以外の強化を図るコンセプトが十二分に発揮された、濃過ぎる『極限脱出』になっている。
そんな今作の魅力もまた、前作同様にストーリーである。二画面構成を活かした演出が廃止され、DSだからこその独自性は薄れたが、相変わらずプレイヤーの予想をいい意味で裏切りまくる、衝撃性抜群の内容に仕上げられている。
例によって、今回の脚本も前作同様、『Ever17 -the out of infinity-』等で知られる打越鋼太郎氏が担当。ハードネタが使えなくなった分、別の所に焦点を当てた、前作とは異なる路線の脱出劇を描いている。当然ながら、その詳細な見所に関してはネタバレとなる為、口が裂けても紹介する事はできない。唯一言えるのは、焦点を当てた箇所というのがハード特性ではない、という事だ。正直、『Ever17』を始め、過去に打越氏が脚本を手掛けたゲームのいずれかを体験した方なら、既視感を覚えるものでもあるのだが、それでも破壊力は十分。特に伏線の張り方とその回収に至る過程が凄い。事実上の真エンディングに至る真相ルートでは、大いに圧倒されるだろう。また、今回はテキストの量も前作以上に倍増し、打越氏お得意の量子論、心理学をネタとした会話もより濃密且つ、読み応えのあるものへと進化を遂げている。しかしその一方、一つの会話とイベントの所要時間が増えてしまい、ストーリー全体のテンポは低下。ソフトの容量増加によって、前作ではできなかった事を沢山詰め込んだ結果なのかもしれないが、幾ら何でもあるルートの25〜30分以上もかかるイベントはやり過ぎだ。前作が非常に読み易い量であり、且つそれ故にテンポも良かっただけに、可能なら同じ程度のボリュームに抑える努力をして頂きたかったところだ。
更に登場人物達は今回も前作に負けず劣らぬ存在感を見せてくれるのだが、前作からの出演者二人の存在がちょいときつい。というのも、この二人のエピソードでは前作のネタバレが平然と出てくるのだ。その為、前作未経験者だと付いて行けない所がある。しかも、結構根深い所までやるので尚更だ。このレビューでは冒頭を始め、何度か出したが、今作は『極限脱出 9時間9人9の扉』の続編である。全く無関係の新作ではない。公式では謳ってないが、続編である。なので、今作をプレイするに当たっては必ず前作をプレイしておくように、と声を大にして言いたい。それだけでも今作に対する印象、衝撃度は大きく変わってくる。幸いにして、前作は廉価版がリリースされている上、3DSでもプレイする事ができる。前作からの出演者二人のネタバレで酷い目に遭わない為にも是非、未経験の方はそちらから始めて欲しい。正直、この前作ネタ自体は別にやって悪いものでは無いのだが、公式で続編だと謳ってない上でやってる為に少し性質が悪い。ここにしても、やるなら浅くするなど配慮しても良かったのではないのだろうか。折角、全体のストーリーが良いのに、一部大きく差を開けてしまう描写を取り入れてしまってるのが少し残念な限りだ。
他に詳細は伏せるが、真エンドの結末が酷過ぎると言った残念な所も幾つかあるが、完成度と密度は及第点以上のクオリティ。前作経験者は勿論のこと、未経験者でも圧倒されること請け合いの内容に仕上げられている。
そのストーリーに合わせて繰り広げられる脱出ゲームも、よりやり応えのあるものへ進化しているのも見逃せない。前作では違うルートでも同じ脱出ゲームに遭遇する展開があったが、今作ではルートごとに個別のゲームを用意する構成へと改めるなど、レベルデザイン周りでの改良も図られ、ルートごとに違った味が堪能できるというのも魅力的だ。難易度も前作より高めだが、優し過ぎず難し過ぎずの職人芸の調整。初心者対策用に難易度の変更機能も別途用意されているほか、高難易度でプレイした際にはそれ相応の特典も付くなど、やり込み周りでも大幅な進化を遂げているのもコアなプレイヤーには必見だ。そんなこのパートにも操作性が宜しくない、残念な欠点があるのがもどかしいのだが。
元々、前作も前作で、面白い所は抜群に面白いけど、駄目な所は駄目という極端な所はあった。それが今作でも健在というのは正直、続編としてはどうなのだろうか。
そんな気になる箇所はあるが、面白さは水準以上。今作も唯一無二の体験をプレイヤーに提供する、強烈なゲームに完成されている。個性は薄れていても衝撃性は健在。その点では正統進化と言える仕上がりだ。
また、全体のボリュームに関してもエンディングの総数から察する事ができるように、かなり増えている。グッド、バッドエンドを迎えるだけでも20時間を余裕で超過するというだけでも、今作の規模の大きさが嫌でも分かるだろう。やり込み周りも先の通り、高難易度攻略などの寄り道要素が追加されているので、進行速度によっては100時間を超過する可能性すらあるほど。アドベンチャーゲームとしては破格の規模となっている。
更にバックログ、既読スキップと言った周回プレイを助ける機能も充実。ただ、スキップは前作同様に使い勝手が良くなく、Yボタンを二回押さないと切り替えられないというのが煩わしい。それでも速度自体は前作より早くなったのだが、どうせなら切り替えは一発でできるようにして欲しかったところだ。折角、速度は改善されたのに、これでは無意味だ。
グラフィックも今作では登場人物、背景から全てが3Dモデルに改められたのだが、お世辞にも良い出来とは言い難い上、デザインを手掛けた西村キヌ氏の個性が無くなってしまっているのが気になる。ただ、癖の強さが消えた所為でやや人を選び難いデザインになったのは、ある意味では改善点と言えるかもしれない。
音楽に関しては前作同様、ミステリアスで緊張感溢れるものが盛り沢山。前作の曲もアレンジされて収録されているなど、ちょっとしたサービスが凝らされているのも必見だ。勿論、今回も音楽は『リッジレーサー』シリーズなどで知られる細江慎治氏。故に完成度は折り紙付きだ。
演出もムービーが挟まれたり、会話がフルボイスになるなど大幅にパワーアップ。声優陣も豪華且つ、実力派が揃っており、特にディオ役の細谷佳正氏、クォーク役の釘宮理恵氏の熱演は必見。また、進行役であるゼロIII世の役を『ちびまる子ちゃん』のまる子役で有名なTARAKO氏が担当しているというのも必見。まる子とは異なる、人を小馬鹿した台詞回しの数々には色んな意味で圧倒されるかもしれない。
続編でありながら、システム上の不備が完全に解決し切れてないのがもどかしい限りだが、それでも力作と言うには十分過ぎる内容になっている。惜しい所も多々あるが、その密度など、桁違い過ぎる濃さを誇る今作。
前作前提のストーリーの為、未経験の方には前作を一旦進めるが、それ以外の経験者の方であるなら要プレイの一品である。DSならではの要素こそ薄れてしまったが、衝撃的なストーリーを始めとする魅力は失われてないどころか、とんでもない方向に進化している。一体、脱出の果てに何が待つのか。その驚くべき真相をその眼で目撃しよう!
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