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≫Fun!Fun!Minigolf TOUCH!(ファン!ファン!ミニゴルフ タッチ!)
■発売元 サイバーフロント
■開発元 Shin'en Multimedia
■ジャンル スポーツ(ゴルフ)
■CERO A(全年齢対象)
■定価 476円(税別)<※2018年現在、配信終了>
▼Information
■プレイ人数 1人
■3D表示 あり
■消費ブロック数 404ブロック
■セーブデータ数 3つ
■推定クリア時間 3〜4時間(全カップ攻略目的)、15〜20時間(完全攻略目的)
シンプル操作で楽しめるパターゴルフゲームがここに登場。 アメリカ、アジア、ヨーロッパの地に用意された奇抜なコースに挑め! そして、賞金を集めて更なる高みを目指すのだ!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一つのゴルフパッドでボールを打ち、カップに入れるパターゴルフ特有の取っつき易さに秀でたゲームルール
◆スライドパッドとAボタンを主として使う、単純明快の極みな操作性(ショット操作もAボタンを押して構えた後、タイミングに合わせて再びAボタンを押すと打つ伝統的なスタイルを踏襲)
◆シングルプレイ特化型のゲームモードラインナップ(対戦系モードは皆無)
◆賞金を稼いで「ショップ」でアイテムを購入してプレイヤーキャラクターを強化し、次なるトーナメントへの挑戦権を得ていくという、現実味のある設定が凝らされた本編構成
◆アイテムによるステータス強化、稼ぎプレイの発生など、随所で散見されるRPG要素
◆パターゴルフの常識を覆す、珍妙奇天烈な仕掛け満載の81に渡るゴルフコース
◆ループ台、すべり台、ガードレールと、もはやゴルフ無関係も甚だしい、コースごとの常識外れな仕掛けの数々(それぞれの仕掛けを突破するに当たってもパターゴルフの常識を逸脱した戦術が試される)
◆各種仕掛けによって描かれた、カップごとのアクションゲーム的な起伏ある展開
◆スピーディなゲーム展開を演出する打数制限によるコースリタイア、厳しいOB判定、そしてカップごとに用意された9つだけのゴルフコースと言った制約の数々
◆個々の制約によって実現した一プレイの短さ(最長でも1時間以内で決着する作り)
◆完全制覇までは短めながら、独特の本編構成も相まって密度は濃い目のボリューム
◆ビジュアル的に平凡だが、立体視ON時にズドンと飛び出す仕掛けが凝らされたグラフィック
◆空気になり過ぎず、下手に主張し過ぎずの適度な塩梅の楽曲が揃った音楽
◆操作の気持ちよさと臨場感を引き立てる、質感十分の効果音
◆音声ガイドが日本語吹き替え仕様であるなど、地味ながらも妙に凝ってるローカライズ
◆突っ込み所満載のアジア地方のコース(特に背景があり得ないことになっている…)

--- Bad Point ---
◆一部、フリーズバグの存在(たまにチケット購入後の飛行機デモで動作が止まったりする)
◆ゲームテンポの向上に一役買っているが、難易度の理不尽さも演出している各種制約(特にOB判定の極端さは高難易度のカップほどストレス要因として存在感を発揮する)
◆種類は豊富ながら、似たり寄ったりな地形が多めで水増し感が滲み出ているゴルフコース
◆何故かタッチ操作以外を受け付けない作りのチュートリアル(本編はボタン操作単体で遊べる)
◆ボーダーラインを厳しく設定し過ぎているきらいのある各カップの「金メダル」
◆コース構成で起伏を付けているが、基本はストロークに徹する展開の地味さ
◆人によっては癪に障る喋り方をする音声ガイド(妙に気の抜けた「お〜びぃ」は悪い意味で強烈)
◆ほぼおまけながら、デザイン的に不気味さが否めない「Mii」のアバター(八頭身な所が…)
▼Review ≪Last Update : 4/29/2018≫
こちらの庭園がアジアのゴルフコースとなります。

ぼ、墓地じゃないのか、これ…。



ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDSなどでハード性能の限界に挑戦した意欲的なシューティングゲームを多く開発してきたドイツのゲーム開発会社「Shin'en Multimedia(シンエン)」制作のゴルフゲーム。Wiiウェア用に販売された『』のニンテンドー3DS版でもある。日本語ローカライズ並びに販売は『ナノアサルト』に引き続き、サイバーフロントが担当。

常識を覆すコースの数々、スピーディな展開を特色とした秀作パターゴルフゲームだ。

前述の通り、ゲーム内容はパター専門のゴルフゲーム。アメリカ、アジア、ヨーロッパの三地域に用意されたゴルフコースの攻略に挑戦し、コースの制覇並びに上位入賞を目指すというものだ。
ゴルフゲームにしては珍しく、ゲームモードはシングルプレイに特化していて、対戦系のモードは一切無し。対人だけでなく、コンピュータとの対戦(マッチプレイ)すらない徹底ぶりで、ストロークに軸足を置いている。本編に当たるモードは「カップ」。繰り返しになるが、三地域ごとに用意されたゴルフコース攻略に挑むモードだ。他に「トリックショット」なるものがあるが、こちらはサブゲーム的な立ち位置。パッドでゴルフボールを打ち、コース上に散らばったコインを回収して高得点を目指すモードとなっている。更にもう一つ、「ショップ」なるものも存在するが、これは後述にて詳しく。
基本的には「カップ」を主軸に本編を回していく形となる。システム周りもゴルフのショット操作はAボタンを押して構えた後、タイミングに合わせて再びAボタンを押す伝統的なスタイルを踏襲、ルールもゴルフボールをカップに入れる(チップインさせる)というパターゴルフの基本に忠実な作りに徹している。ただ、幾つか奇抜なシステムが備わっている。まず一つに「賞金」。本作では各ゴルフコースでチップインを決める、全9コースの攻略を終えた際に”文字通りの”賞金が手に入るようになっている。得られた賞金は件の「ショップ」にて、より勢いのあるショットが打てるゴルフクラブと言った特殊装備を購入する際に用いる形となり、それによってプレイヤーのゴルファーとしての基礎ステータス向上を図ることができる。いわゆるロールプレイングゲーム(RPG)的な強化要素が組み込まれているのだ。更にショップに並ぶ商品は特殊装備だけに限らず。オプションに更なる設定機能を追加させるアンロックキー、次なる「カップ」に挑むに当たって必要な「チケット」と言ったものも販売されている。この後者、「チケット」こそが本編進行と関連する奇抜なシステム。実は本作、三地域ごとに用意されたカップを制覇するには「チケット」の購入が必須。クリアすれば自動的に次のカップが解禁されると言ったゴルフゲーム、或いはこの手のカップごとの制覇を目指すレースゲームでお馴染みのシステムが組み込まれておらず、自給自足をプレイヤーに強いるというあまりにも革新的且つ、世知辛さの滲み出た仕組みになっているのだ。なので、賞金を稼ぐことを心掛けなければ全コース制覇など夢のまた夢。しかも追い打ちをかけるように「チケット」は高額。ベストな成果を出せないのなら、チマチマと他の簡単なコースを巡ったり、実は集めたコインが賞金として換算される仕組みの「トリックショット」に何度か挑んで稼ぎプレイに徹し、「塵も積もれば山となる」の精神で地道に取り組むしか他に手は無し。選ばれし者だけがその挑戦権を直に獲得でき、そうでないものには努力を強いる。努力できない、或いは高みを目指せないのなら挑む資格なし。なんとも現実味溢れる仕掛けというべきだろうか、そうも生々しいプレイを要求される構成になっているのだ。ある意味、これもRPG的な要素と言えなくもない。ゴルフゲームなのに同ジャンルのような根気が求められるだけでも、いかに本作が奇抜なのかが容易に想像できるだろう。実際のプロゴルファー達もこんな苦労をしているのだろうかと、微かに察せるゴルフゲームなんて本作ぐらいだ。多少、誇張表現であることは否定しないが。
そんなゴルフ周りにも奇抜の一言に尽きるシステムが複数。中でも象徴的なのがOB判定。なんと本作ではゴールカップ付近に囲われた白いラインの枠外にボールが止まってしまうと、問答無用でOB判定にされる。仮にゴールカップに近い所にボールが到達したとしても、白いラインから外れてしまっているとOB扱いになり、ティーインググラウンド(スタート地点)からやり直しになってしまうのである。逆に白いライン内であればOB判定とはならず、そこからショットを打つことができる。だが、そこで打ったショットが白いラインから外に行ってしまえば問答無用でOB。一打目のようにティーインググラウンドからのやり直しにはならず、カップ付近からショットを打つことはできるが、打数は1つカウントされてしまうのでどの道、(評価面での)ダメージは受ける。なので、なるべく白いライン内にボールが収まるよう、力加減を意識してショットを打っていくのが基本戦術。普通のパターゴルフなら気楽に打っていけばいいだけだが、本作はこう言った制約が敷かれている所為で、必然的にゴールカップを狙ったショットがどのコースでも求められてくる。その為、どのコースであっても緊張感満点。おまけに打数制限も全コースに設定。一定数に達してしまえば強制的にコースリタイアとなり、最悪の極みとしか言い様がないスコアが記録されてしまうので、なおのことその場凌ぎなやり方だと地獄を見る。それら制約ががんじがらめのように敷かれているだけあって、結構な理不尽さがあるが、おかげでコースごとテンポは抜群によく、アクションゲームさながらのスピード感を体験しながら巡って行けるようになっている。
また、コースも全部が全部、パターゴルフの様式に基づいてないという戦慄の特徴が。序盤こそオーソドックスなパターゴルフのコース…なのだが、途中から段差、起伏と言ったものが登場。更に進むとループ台、すべり台、ガードレールと言ったあり得ないものが登場。そして、実際にボールを一回転させたりと言ったテクニックが求められたりも。まさに「おいこら、ちょっと待て」と突っ込みたくなる展開。どこぞのバラエティ番組に出てきても不思議では無い、むしろ『とんねるずのスポーツ王は俺だ!』の番組スタッフが食いついて、転用にまで至らせる可能性すら考えられてしまう無茶苦茶な作りになっているのである。そんなコースを攻略しながら優勝を目指すのだ。奇抜と評するのもお察しとしか言い様がない。
他にも「アバター機能」が用意されていて、それにちなんだコスチューム変更と言った着せ替えを楽しむ事も出来る。アバターの中には「Mii」を頭部へと転用できるものもあり、反映させれば約八投身のMiiを作り出すことができる。そのなんとも言い難い気色悪さも他のゴルフゲーム……どころか、3DS全てのゲームでお目にかかれないものがある(?)。
パターゴルフだけあって、取っつき易さは上々。クラブ選択と言った戦略的な要素も取っ払われているので、ゴルフゲームが苦手なプレイヤーにも手軽に遊べる作りになっている……が、お金を稼がないと進めていけない本編の構成やら、ループ台まで登場するおかし過ぎるコース、極端なOB判定、そしてシングルプレイ特化型のゲームデザインと、シンプルなゴルフゲームなのに奇抜な個性を持った作りになっている。そういう意味でも、ヘンテコの一言に尽きる作品。色んな意味で、日本人には到底できないであろう発想とセンスが随所にてしたパターゴルフゲームとなっている。

そんな本作の魅力はパターゴルフの常識を覆すゴルフコースの数々だ。そもそも、360度にボールが回転するループ台が登場する、すべり台を逆走する形でゴルフボールを飛ばすことが求められてくる時点で常識なんてもの、本作には存在していないに等しい。あらゆるコースが突っ込みの塊と言わんばかりに強烈な印象を残すものになっている。そして、間違いなく他のパターゴルフでは味わえない、唯一無二にして荒唐無稽な攻略が楽しめる内容にまとめられている。
そのようなコースばかりが出てくるのもあって、本編全体(全三地域のカップ)の起伏も相当に激しい。まさに山あり谷あり。何せ、ループ台でボールを一回転させる、滑り台を逆走するなど、一般的なパターゴルフの戦術がまるで通用しないコースばかり出てくるのだ。嫌でも刺激的な気持ちにさせられる。そして攻略に当たっても、どれだけ勢いをつけてショットするか、その先に辿り着いた時にどれほど大きな反発が発生するかなど、無茶苦茶な地形を潜り抜けるなりの物理学的計算(予測)を立てることが求められてくる。勿論、ちゃんとパターゴルフの常識に基づいた普通のコースも用意されていて、至って真っ当な戦術(?)が試されもするので、常にそのようなカップが立ちはばかる訳ではない。というか、そのようなコースばかり続いたら、攻略のクセモノぶりも相まって精神面をゴリゴリ削られかねない。難易度的にも過剰な跳ね上がりに繋がりかねないだけに、さすがにある程度の自粛は図られている格好だ。とは言え、一般的なコースと無茶苦茶なコースが入り混じる展開はプレイヤーを困惑させること必至。山あり谷ありの表現がこの上なく似合う作り込みが成されている。このような常識と非常識が入り混じるとも言うべき攻略が繰り広げられるのもまた唯一無二。如何に制作スタッフが普通のパターゴルフにまとめたくなかった、非現実的な表現を容易に盛り込めるゲームならではの強みを最大限に発揮したかったという、(いい意味での)性格の悪さとこだわりが滲み出た仕上がりになっている。
起伏の激しい構成がアクションゲーム的な味わいを醸し出しているのも面白いところ。常識と非常識が入り混じる展開はまさに象徴で、矢継ぎ早にコースを進めていくと微かにアクションゲームをプレイしているかのような錯覚が得られるようにもなっている。白いライン外にボールが止まってしまえば問答無用でOB判定、設定打数を超過してしまえば強制的にコースリタイアになって次のコースに進む制約もアクションゲーム的な手応えを演出。そしてこれらがゴルフを題材にしたゲームとしては極めて珍しい、スピード感を描いているのも興味深い特色だ。これはパターゴルフだけでなく、普通のゴルフに対しても言えるが、基本的にこのスポーツは長丁場の戦いになる。一度に18のコースを巡るのもさることながら、打数制限というものがルール上に存在しないので、立ち回りによっては延々と一つのコースに閉じ込められることもある。実際に1912年のアメリカで開かれたゴルフ大会で、166打でチップインしたという公式記録が存在しているほどである。その事からも短期決着が困難を極めるスポーツなのは容易に想像ができるだろう。打数制限がない事はパターゴルフにおいても同じで、カップにボールが入らない限りはコースでのプレイは延々と続く。例えそれが意図的に狙ったことでないにせよ、だ。その辺は普通のゴルフと変わりはない。だが、率直に言って同じコースに長いこと閉じ込められ続けるのは、先のコースを見たいという欲求を晴らせないのもあって相当なストレスが溜まる。あまりに長く続けば、そこで先のコースに進む事を断念する気持ちにもなってしまうだろう。そう言った欲求を晴らせないストレスを溜めさせないようにしたい、もっとスピード感のある展開を描きたい。実際にそのような意図があったのかは制作者のみぞ知るだが、本作はその独特な制限のない部分にあえて制限を加え、スピーディにコース攻略が進むように設計。結果、先のコースを見たい欲求が晴らせぬストレスも溜まらなければ、短時間での決着が全面的に保証されたゴルフ(パターゴルフ)というものを実現させてしまっているのだ。それもあって、本当に本作のコースごとの展開は早い。仮にじっくりやったとしても1時間以内には確実に終わる。カップごとのコースが9つだけに留められているのも効いていて、まさに短時間で遊べるゴルフゲームというものを実現させてしまっているのである。
正直な所、いずれの制約も返ってゲームプレイに窮屈さを出しているのは否定できない。ゲームバランス的にも大味な印象が否めず、常に枠線内に入るようにショットしていかなければならず、下手に外し続けると必要以上にスコアが下がってしまうので、あまりにも極端な作りと言われても仕方がないだろう。難易度のふり幅も大きく、ショットの角度を間違えれば問答無用でOB確定になってしまう所もあったりするのも荒っぽいの一言だ。しかし、そのような弊害(難易度周りは明らかに制作スタッフの調整不足だが)によって、ゴルフを題材としたゲームとしては珍しいテンポの良さが描かれた。スピーディ且つ、全てのコースを気軽に辿って行ける内容が実現された。携帯ゲーム機のいつでもどこでも遊べる強みと非常に親和性の高い内容が完成された。この結果を見せられると、比較的強い制約を課した判断は極めて適切で、それによって唯一無二のプレイ感を構築させたのには素直に感服する次第だ。制約は正直、遊びの面を縛るマイナス要因でもあるが、本作に限ってはプラスに働いた。それが元々、制約周りが薄いゴルフという題材だったというのも興味深く、スピード感という稀有なものを備える結果へと繋げているところにもゴルフと言うものが如何に掘り下げ甲斐、改良し甲斐のある題材であるのかというのを思い知らされる限りだ。
やや脱線気味な語りになりはしたが、それだけ本作には他のゴルフゲームには無い疾走感がある。そして、唯一無二にこだわる制作スタッフの強い意志が現れた仕上がりになっているのだ。コースの個性の強さだけでなく、ゲームプレイにまで独自性をしっかり出す辺り、如何に本作を楽しく、変わったゴルフゲームにしようとしたのかを察する次第である。
とは言え、ゲームバランスの大味っぷり、難易度の極端さは幾らテンポの良さに繋げているとは言え、欠点である事実は覆い隠せない。また、コースにしても特徴的なギミックがあるとは言え、そのバリエーションは意外に乏しく、似たり寄ったりな構成のものが多い。コース総数は全部で80以上もあるのだが、その実のほとんどは使い回し気味なコースである。この辺は容量の都合もあったのかもしれないが、なるべく個性を感じられるコースを収録するように心掛けて欲しかった。唯一無二のプレイ感を出せても、唯一無二なコースを充分に用意できなかったのは率直に言ってズッコケの一言だ。

欠点絡みではやり込み要素周りもまた然り。各カップには最高スコアを獲得することで「金メダル」を獲得することができるのだが、このボーダーラインと言うものがなかなかにエグく、ほぼ全てのコースでホールインワンを目指すのが要求されるような設定になってしまっている。しかも、ループ台やすべり台と言った特殊な仕掛けが凝らされたコースでも、だ。最高スコアを獲得することで貰えるものであるのだから、これぐらい厳しくするのは理に適っていると言えば理に適っているが、件の特徴的な仕掛けが凝らされたコースというのは、その奇抜さもあってホールインワンを取れるかどうかは運も絡みがち。そのような特色も考慮して、できることならばボーダーラインはもう少し低くするなりして緩和して頂きたかったところだ。これだと難易度的にも理不尽さが否めない。メダルを目指さなかった場合にも言えるが、どうにも本作は独自性を出すのに注力し過ぎてバランス調整に時間をかけられなかったのでは、との邪推をしてしまう。一応、単純にクリアを目指した場合に理不尽さが無いのがせめてもの救いだが。
ボリュームに関しても全てのカップ攻略まで必要とされる時間はそれほど長くない。先のメダル獲得のやり込みを絡めればそれなりに時間を費やすことになるが、物量に関しては正直、期待しない方が賢明だ。とは言え、カップごとのコースが特徴的なのもあって、それなりに密度はある。賞金を稼ぎながら新たなカップを解禁してはチャレンジしていく基本的な流れにもRPG的な侮り難さが滲み出ていて、淡々と順番をこなしていくことに徹さない面白さが滲み出ていてユニークだ。この辺は独自性を出すことがプラスに働いた格好。アッサリ気味とは言え、手応えに関しては及第点のレベルだ。
他に操作もスライドパッドとAボタンしか用いないので取っつき易く、メニュー周りのレスポンスも良好。チュートリアルに限り、タッチ操作を強要させられる難点もあるが、タイトルで「タッチ」を名乗りながらその操作を強制されることなく、ボタン操作で通すことができるようになっているのには好感が抱ける。
グラフィックも見た目こそ平凡ではあるが、立体視を入れた際の飛び出し具合が圧巻。「ズドン」と来る程度に強烈な描写になっている。おまけにごく一部ながら、立体視を入れた状態で60フレームで描写される場面があるなど、技術面の高さが発揮されたところも。開発のシンエンは『ナノアサルト』においても、立体視とフレームレートに関しては只ならぬ作り込みが現れていたが、本作でもその手腕は健在であり、さすがはハード性能の限界に挑戦することに定評のあるメーカーであることを実感させられるところだ。また、背景周りも動きのあるものになっていて見応えがある。ただ、アジアカップの背景に限ってKANCHIGAI JAPANが過ぎる仕上がりになっている苦笑い必至な所も。何が勘違いが過ぎるのかって、コース上に墓石が置かれているというだけでもよく分かるはずだ…。

音楽も空気になり過ぎず、下手に主張し過ぎずの曲が多め。しかしながら、ゲームプレイを邪魔せず、かと言って空気になり過ぎずのバランスでまとめられているのは見事。曲調に任天堂のゲームっぽい雰囲気も滲み出ていて、人によってはちょっとした安心感を覚えるかもしれない。効果音もショットを決めた際の「ポンッ」という音がとても心地良い。ゴルフゲームは効果音の気持ちよさあってこそだが、その醍醐味はバッチリ押さえている。また、他のカーソルや決定音と言ったシステム系の効果音も操作しているだけでも気持ちよいものに仕上がっていて、本作がそんな細かい部分にもこだわって作られていることを実感させられる。演出周りも派手過ぎず地味過ぎず。何気に音声ガイドが日本語吹き替え仕様と、ローカライズを手掛けたサイバーフロントの妙な本気も炸裂している。ただ、日本語吹き替え仕様とは言え、その声は人によっては好みが分かれる。特に「おーびぃ」という気の抜けたボイスには怒りを覚えたりするかもしれない。
ゲームバランス及びシステム周りに大味な所があったりはするが、携帯機向けのパターゴルフゲームとしては悪くない出来で、他のゴルフゲームでは味わえない魅力を持った作品に完成されている。シングルプレイ特化故にマルチプレイは楽しめない上、スコアアタックはあってもオンラインランキング機能はないなど、色々制限されている所も目立つが、空いた時間にちょこっと遊べる手軽さと充実したボリュームもあって、意外と楽しめる本作。
手軽なゴルフゲームを求めているプレイヤーにお薦めの良作だ。しかし、惜しむべき事に本作は販売兼ローカライズ担当のサイバーフロントの解散に伴い、2018年現在は配信が終了して購入できなくなってしまっている。但し、開発元のシンエンは今なお健在であるほか、2018年現在はアークシステムワークスがシンエン製タイトルのローカライズ及び国内での販売業務を担当している。もし、どうしても本作がプレイしたいというのなら、アークシステムワークスに再配信の要望を出してみるのも一興かもしれない。他に類を見ない個性を持ったゴルフゲームだけに、遊べないままというのは勿体ない。本作のユニークさに惹かれた人間の一人として、ここで再配信希望の旨を伝えておく。
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