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■発売元:フライハイワークス / ■開発元:Hörberg Productions / ■ジャンル:ガンマンアクション /
■CERO:B(12歳以上対象)※暴力表現あり / ■定価:200円(税込)

◆公式サイト / ストアページリンク(ダウンロード版) ※他機種版含む
≫ガンマンストーリー(フライハイワークス公式サイト)
≫ガンマンストーリー | ニンテンドー3DS(任天堂公式サイト:商品&購入ページ)
≫ガンマンストーリーHDコレクション | WiiU(任天堂公式サイト:商品&購入ページ)
≫Nintendo Switch|ダウンロード購入|ガンマンストーリーHDコレクション(マイニンテンドーストア:商品&購入ページ)
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:3つ / ■消費容量:249ブロック以上 /
■3D表示:あり / ■推定クリア時間:1~2時間(エンディング目的)、6~8時間(完全攻略目的)
愛しのアイツを救うべく、
銃を片手に、男が突き進む!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆跳んで撃って、避けながらゴール到達を目指す、ジャンルの王道を厳守した基本システム
◆バリエーション豊かな仕掛け、絶妙なタイミングで現れたり、攻撃を仕掛けてくる敵の襲撃で楽しませてくれる全20に及ぶステージ(短すぎず、長すぎずのホドホドの構成も魅力的)
◆いい意味で西部劇という元々の設定を無視した荒唐無稽の極みな世界観(特に終盤は凄いことになる)
◆全編に渡って匂い立つロックマンらしさ(なんと同シリーズのパロディまで……)
◆数は少なめながら、荒唐無稽の極みを体現したボスキャラクター達(中でも二体目のボスは必見)
◆異なるキャラクターによる二周目、ノーダメージ&ノーミスクリア、そしてタイムアタックなど、豊富に取り揃えられたやり込み要素の数々(一周に費やす時間が短いことによる挑戦しやすさも秀逸)
◆ジャンプだけで全ステージ攻略に挑む、ぶっ飛んだ魅力に富んだキャラクターの一人「ダック」
◆アクションゲーム初心者から上級者をカバーした全三種類の難易度(それぞれのバランスも適切)
◆残機制無し、ゲームオーバーの概念無しの良心的なミス周りの仕様(だが回数は記録される)
◆動きの滑らかさとは裏腹に制御が効きやすく、思うがままに動かせる気持ちよさに秀でた操作性
◆セピアカラーで統一された、独特のグラフィック(立体視にも対応)
◆西部劇らしい牧歌的な楽曲……のみならず、バリバリのゲーム系楽曲まで用意された耳に残る音楽
◆淡々としつつも、どこか奇妙なノリが炸裂した演出(特に終盤においてその真価を発揮)
◆お手頃の極みな価格設定(たったの200円!)

--- Bad Point ---
◆完全ランダム仕様のアイテムによる武器取得(望み通りの武器が入らず、地味にストレス)
◆全体的にバランスの極端さが際立つ各種武器の性能(3WAYと貫通以外は使い勝手が悪い)
◆一部ステージに登場する「ジャンプ台」でのハイジャンプ判定のおかしさ(微妙に遅らせる形でジャンプボタンを押さないと判定されない。慣れれば自然にできるようになるが…)
◆悪く言えば、アッサリ気味なボリューム(やり込みなしなら1時間足らずで終わる)
◆全体的に差別化に欠ける各種難易度(体力が長いか、短いか程度と味気ない)
▼Review ≪Last Update : 8/25/2019≫
「俺こそが、荒野を股に駆ける蒼きヒーローだ!」

いや、アナタそもそも蒼くないし。人間だし。



スウェーデン在住の個人ゲーム開発者、Bertil Horberg氏が代表を務める独立系スタジオ「Hörberg Productions」制作のアクションゲーム。元々はiOS、Androidのスマートデバイス向けアプリ、PC用ゲームソフトとして作られた作品で、本作はそのニンテンドー3DS移植版である。日本語版の販売並びにローカライズはフライハイワークスが担当。

セピアカラーで彩られたグラフィックと伝統的なゲームシステム、バランスの取れた難易度で楽しませてくれる、良作ロックマン……もとい、ガンマンアクションゲームだ。

ちょっと待て。何故、ロックマンの名が出てきた。そもそも、主人公青くないじゃないか。ロボットですらないぞ。人間だ。荒野のガンマンだ。共通点はマンだけだぞと、ツッコミどころが噴出したかもしれないが。それは後々触れるとして。
内容はステージクリア型の横スクロールアクションゲーム。主人公のロックマンじゃなくてガンマンの「クライブ」を操作して、敵に誘拐されたヒロイン「ミセス・ジョンソン」を救出するため、山あり谷ありのステージ攻略に挑むというものである。
本編の流れは単純明快。様々な仕掛けを潜り抜け、行く手を阻む敵を撃ち倒しながら、ゴール到達を目指す。アクションゲームの伝統に則った構成だ。体力(ライフゲージ)が空になったり、穴を始めとするトラップに引っかかったりすればミス。ただ、残機とゲームオーバーの概念はなく、いくらでもリトライ可能な緩い設定になっている。また、ステージはどこもかしこもゴールを目指すという訳ではなく、5番目に当たるステージではボス戦が繰り広げられるようになっている。勝利条件はダメージを与えながら相手の体力(ライフゲージ)を空にするだけ。これまたアクションゲームの伝統に則ったものだ。このようなルールと構成の元、プレイヤーは主人公クライブになって、ヒロイン救出を目指していく形となる。
見ての通りの驚くほど普通の横スクロールアクションゲームだ。しかも、これと言って突飛なシステムや要素もなし。プレイヤーキャラクターのステータスを強化するアップグレード、隠されたアイテムを探し出す探索など、昨今のアクションゲームにおけるトレンド的なものは何ら採用せず、純粋にステージクリア型の枠組みで一貫したゲームデザインとなっている。ついでにキャラクターのアクションに関しても移動、ジャンプ、ショット(射撃)だけと、驚くほど簡素。一応、敵を倒すと稀に現れるアイテムを取得することで「3WAY」、「貫通」、「ホーミング(誘導弾)」、「ロケット弾」にショットが変化し、ダメージを受けると解除されてしまうシステムはあるものの、他に特徴的なアクション、テクニックはない。「キャラクターを動かし、山あり谷ありのステージに挑む」という、アクションゲームの王道を体験させることに特化した設計だ。
ただ、射撃(それも弾数制限なし)で敵と戦う関係から、手触りとしては先に名を挙げた『ロックマン』に近い。同じように射撃で戦うアクションゲームと言えば、『魂斗羅』や『メタルスラッグ』などの作品に象徴される「ラン&ガン」というスタイルがあるが、本作はそれら二作と異なり単発仕様であり(※メタルスラッグは初期装備が単発仕様だが)、マシンガンのような射撃は不可。敵もポイントごとに配置されていて、無限に湧き出てくるシチュエーションは皆無のため、ロックマンが最も近いと明言できる仕上がりになっている。とは言え、さすがにボスを倒せば特殊武器が手に入る、それを適切な相手に用いれば大ダメージを与えられるような相性の概念は存在しないが。ついでに言えば、攻略するステージを自由に選べるセレクトシステムも実装されていない。あくまでも、基本アクションと敵配置の手法がそれっぽいと言った程度である。
……と言いながら、本作の魅力は全編から匂い立つロックマンらしさだったりする。
基本アクションがそれっぽく作られているだけに留まらない。
あちこちに「制作者はロックマンを作ろうとしたのか!?」と思ってしまうネタが注ぎ込まれているのだ。

そもそもゲームの画面構成、特にライフゲージのデザイン、表示位置からして完全にロックマン。左上にバーで表示されるのだ。しかも、ボスのライフゲージに至っては画面右上にバーで表示。思いっきり派生作の『ロックマンX』方式である。当のロックマンも『ロックマン7 宿命の対決!』以降のシリーズ(※9と10は除外する)からそのような表示になったが、ここはシリーズでその表示が始まった歴史に基づくとして。こんな有様なので、シリーズのいずれかをプレイしたことのある人なら、嫌でもあの青いヒーローがシュパッと頭の中に参上してしまう。
もちろん、これは序の口も序の口。先に紹介済みの基本アクションと敵配置ですら序の口も序の口である。ゲームが進むと、さらにロックマンを意識せざるを得ない場面に出くわす。次の区画へと繋がるハシゴ、一定タイミングで出現と消滅を繰り返す足場ブロックという、「ちょっと待てや」な仕掛けが出てくるのだ。足場ブロックに至っては、出現するポイントがあらかじめ示されているという差別化こそされてはいるものの、パターンは完全にロックマンを意識しており、これまたシリーズ経験者なら強烈なデジャヴに襲われること間違いなしなものになっている。さらにそこから進むと、地面に設置され、クライブが接近すると本体が伸びて五方向に弾を発射してくる砲台、足場と天井を一定のタイミングで上下に行き来するロボットという、これまたどこかで見覚えのある敵キャラクターが!挙句の果てには終盤、重力反転エリアなる隠す気持ちこれっぽちもなしなトラップまで登場。あろうことか、音楽までロックマンで流れそうな作風となり、プレイヤーに対してガンマンではなく、ロックマンを遊んでいる気持ちにさせてくるのだ。
この他にもさらなる隠す気一切無しの仕掛けが登場するのだが、それについては実際にその目でご覧いただきたいということで伏せる。こんな具合に露骨すぎるほどロックマン由来な仕掛け、敵が登場するようになっていて、全編に渡って匂い立つレベルの”らしさ”を醸し出しているのだ。「ここまでソックリに作って、そんなにロックマン好きなのか、作りたかったのか」と言ってしまう程度に。実際に本作が配信された2013年(※元のスマートデバイス版を考慮すれば2012年頃)は、かの『ロックマンDASH3(仮)』の開発中止が報じられた後の時期なので、本当にそれを意識して注ぎ込んだ疑いがある。実に恐るべき愛の深さと自重の無さである。しかも、西部劇という元々の世界観を意識せず、素材ほぼそのままの感じで入れ込んでいるのだから、確信犯だと言わざるを得ない。
というより、本作は基本的に西部劇という元の世界観を守り通すことを何らしていない。全編に渡って荒唐無稽に次ぐ荒唐無稽の嵐なのだ。最初こそ西部劇らしく、木造の家屋や酒場が建て並ぶ町、鉱山(洞窟)と言ったいかにもな場所が舞台となる展開が繰り広げられる。だが、中盤に入る辺りから元の世界観から外れた敵、ボスが出てきて、段階的に調子が(いい意味で)悪化。それが終わって、終盤への道が切り開くと、驚愕の”物体”が現れる。そこからは言わずもがな。もう西部劇なんぞ知ったこっちゃねえと言わんばかりのステージが続くことになるのだ。それがどんなステージかは、先に紹介した「重力反転エリア」からお察しいただきたい。
そのような構成なので、ロックマンを遊んだことがない人であっても「そんなのアリ!?」となること確実。第一印象から来る先入観を根こそぎ覆す、やりたい放題、整合性なんて知ったこっちゃありませんの展開が描かれるのだ。またの言い方で、古き良き時代のアクションゲームの再現。主にアーケード、ファミコンなどの1980年代から1990年代前半に生まれたアクションゲームには、荒唐無稽な場面を乗り越える内容のものが目立った。先に挙げた『魂斗羅』、『メタルスラッグ』の二作はその象徴で、いずれもシリーズが発展するにつれて、その面がエスカレートし、元の世界観や設定を無視した無茶苦茶さでプレイヤーに強烈な体験を提供した。本作はそんな作品達がやっていたこともしっかりバッチリなぞって、全ステージが作られているのだ。なので、ロックマンに代表される元ネタを知らずとも、思いもしない展開の数々に翻弄される興奮を堪能できる。とは言え、元は西部劇。さすがに恐竜が現れて、戦闘になるみたいな展開はないし、ミサイルを掴んだ状態で敵と戦うなんて展開も……いや、これ以上は言わんでおこう。
とにもかくにも、匂い立つロックマンらしさも魅力だが、古き良き時代のアクションゲームの醍醐味を抑えたステージ構成、雰囲気作りもそれに肩を並べるほどのものがあり、単に元となる作品への愛をぶちまけただけのゲームに終わっていない。敵やトラップの配置、長さなどの基本部分の作り込みも丁寧で、徹底して理不尽さを抑え込んでいる。何より、常に予測もできない展開が序盤から終盤に渡って繰り広げられていくのもあって、終始、退屈せずにやり通せる。
システム周りに象徴される通り、アクションゲームとしての際立った個性はない。しかし、ジャンルの醍醐味は徹底して厳守。その作りには改めて本作の丁寧さ、触り心地のよさと面白さをまとめて感じること請け合いだ。

触り心地に関しては操作性の素晴らしさも外せない。動きは滑らかなのだが、細かい制御が効きやすい調整が図られているのもあって、見た目とは裏腹に気持ちよく動かせる。基本操作もジャンプ、ショットの二種類しかないので、アクションゲーム苦手、初めての人にも取っつきやすい。何かと滑らかに動くキャラクターとなると、”モッサリ”とした手応えを想起しやすいが、本作は全く持ってそれがない。実際に動かしてみれば、その意外な快適さに驚かされるだろう。
難易度も選択機能を設け、初心者から上級者まで幅広くサポート。全体のバランスも非常によく、初見は戸惑うが、何度か経験を重ねれば驚くほどスラスラ突破できるようになる、トライ&エラーの醍醐味を押さえた調整で全難易度がまとめられている。やり込み要素の一つで、全ステージの「ノーダメージクリア」が用意されているところからも、バランスに対する絶対の自信を覗かせており、いかに入念な調整を凝らしたのかのこだわりを実感させられる次第だ。
やり込み要素を含めたボリュームもなかなか。普通にクリアするだけなら1時間にも満たない短編だが、起伏に富んだステージと無茶苦茶な展開の数々で確かな満足感が得られる。さらにクリア後にはキャラクターセレクトが解禁され、ヒロインの「ミセス・ジョンソン」を操作して、本編ステージ攻略に挑めるようになる。さらにもう一つ、「ダック」なるアヒルのキャラクターも解禁される。このダックは何と攻撃手段を一切持たず、できるのはジャンプだけというあまりにもピーキーな特徴を持っている。そんなキャラクターで色んな敵やらトラップやらが出てくるステージ攻略に挑めとか、正気の沙汰ではないと思ってしまうが……これが思いのほか、面白くて高いやり応えを得られるものになっている。さらにゲームバランスの精密さも堪能できるのだ。アクションゲームが好き、腕に自信のあるプレイヤーならばぜひ、クリア後には彼で二周目に挑んでみていただきたい。きっと新たな世界が見えるようになるはずだ。
キャラクターセレクト以外にも、先のノーダメージクリアのほか、タイムアタックもある。また、ゲームオーバーの概念はないものの、ミスの回数は記録される。これの「0(ノーミス)」を目指してプレイするのもなかなかに熱い。一周にかかる時間が短めなことから、チャレンジもしやすいので、これも腕に自信があれば挑んでみていただきたいところだ。

グラフィックもセピアカラーで統一された絵作りが異彩を放つ。絵が特徴的であるが故に懸念される視認性に関しても、敵は敵で見分けが付くよう色付けされているので、全くストレスを感じさせない。背景もシンプルながら、ステージごとの特徴を踏まえた印象的なデザインでまとめられている。もちろん、3DSということで立体視にも対応。それによって現れる奥行きも不思議なものになっているので、要チェックである。
音楽も西部劇の世界観を踏まえた、牧歌的で印象深い楽曲が揃っている……のだが、本編のステージが荒唐無稽の極みというのもあって、8ビット調の楽曲もあったりする至れり尽くせりなラインナップ。特に終盤は色々とゲーム違うだろと言いたくなる曲になっていて、思わず笑みがこぼれてしまうだろう。
繰り返しになるが、アクションゲームとしての独自性は薄い。ボリュームも短めだ。また、それとは別に特定のステージに登場するジャンプ台でハイジャンプする際の判定が結構いびつ、敵が落とすアイテムでどのパワーアップを獲得できるかは完全にランダムなのはちょっと嫌らしい。後者はちゃんと専用アイテムを作って差別化して欲しかった限りだ。
ただ、目立つ難点と言えばその程度。全体的には完成度の高い王道のアクションゲームに完成されている。しかも、お値段たったの200円という圧倒的なお手頃価格。それでありながら、中身も十分、やり込み甲斐抜群という仕上がりだ。アクションゲーム好きはもちろんのこと、手軽なゲームをお求めのプレイヤーにもお薦めできる良作。ニンテンドー3DSをお持ちであればぜひ、プレイしてみて欲しい。なお、後発でWiiU、Nintendo Switch向けに続編『ガンマンストーリー2』とセットになったHDリマスター版『ガンマンストーリー HDコレクション』も発売されている。こちらは近接攻撃で戦う新たなプレイヤーキャラクターの追加で、より遊び応えのある内容へとパワーアップを遂げている。テレビでも遊べるので、できれば大きな画面で……とあれば、そちらをどうぞ。お値段は多少上がるが、それでも税込み500円のワンコインだ。
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