≫ファミコンウォーズDS 失われた光
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■発売元 |
任天堂 |
■開発元 |
インテリジェントシステムズ |
■ジャンル |
戦略シミュレーション |
■CERO |
A(全年齢対象) |
■定価 |
800ポイント(※クラブニンテンドー専売タイトル) |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1〜4人 |
■消費ブロック数 |
426 |
■セーブデータ数 |
3つ |
■その他 |
ニンテンドーWi-Fiコネクション対応(※2014年5月20日にサービス終了) |
■推定クリア時間 |
15時間〜25時間(エンディング目的)、200〜300時間(完全攻略目的) |
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突如、宇宙より飛来した巨大隕石群が地球上に衝突。
激しい天変地異により、人類の9割が死滅する。
更に崩壊の衝撃で巻き上がった粉塵が大気圏を覆い、世界は光をも失ってしまった。
かくして訪れた、終末の世界。
そんな中、辛うじて生き延びた人々が居た…。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆シリーズ伝統の見た目の分かり易さと取っ付き易さを最優先としたゲームシステム周り
◆能力全般の抑制、発動条件の制限追加等により、適度に戦闘を盛り上げる要素に刷新されたショーグンシステム
◆強力なユニットを維持するという新たな戦術を練る面白さが秀逸な新型レベルアップシステム
◆チュートリアルとやり込みの二つの要素を兼ね備え、よりやり応えが増したストーリーモード
◆再プレイ可能になったストーリー専用マップとその仕組みを実現させたマップセレクトシステム
◆撤退戦、説得工作を図りながらの防衛戦など、ストーリー性の強化でより多彩になったストーリー専用マップ
◆今までのファミコンウォーズのお約束を覆す、陰鬱で殺伐とした世界観とストーリー
◆ユニット移動の手順が簡略化され、快適さが劇的に向上したシリーズ屈指の操作性
◆試行錯誤と駆け引きの面白さにこだわった、原点回帰を果たしたゲームバランス
◆戦闘シーンのスキップから移動高速化まで、痒い所に手の届き過ぎたインターフェース
◆前作より減少したが、それでもマップ総数は100以上と桁違いな物量の総計ボリューム
◆タッチペン操作を考慮し、全体的に大きめのサイズになったマップとユニットのグラフィック(更に縮小機能を使えば小さいサイズにもできる!)
◆暗めの世界観にマッチした、重苦しくも印象深い音楽(サウンドテストも完備)
◆ルール解説から攻略ヒントまで、相変わらず異様なほど充実した救済処置の数々
◆戦況に応じて曲が変わるなど、ますます派手になった演出周り
--- Bad Point ---
◆『ストーリーモード』におけるトライアルマップの開放順序(何故か一番難しいマップから開放されていく)
◆威力の緩和は図られたが、まだ統一感があるというには程遠いショーグンの能力バランス
◆ゲームモード、総計ボリュームの減少(これでも十分な量ではあるが…)
◆攻略ヒント専用イベントにおける寒いコントと過剰な悪ノリ(好みが分かれる)
◆良くも悪くもウォーズらしいほのぼの感に欠けた世界観とストーリー
◆ストーリー後半における駆け足な展開と素っ気無い結末
◆2013年度のプラチナ会員しか遊べない形になってしまったWi-Fiモード(残念ながら、一般会員はWi-Fiコネクションのサービスが終了している為、プレイ不可)
◆DSi本体へのダウンロード不可(ニンテンドー3DSにしかダウンロードできない)
◆クラブニンテンドー専売形式(しかも必要ポイント数が800とかなり高め)
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▼Review ≪Last Update : 6/1/2014≫
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ドエラい復活劇だ…。
これならかーちゃん達もそう簡単には気付かないぞ!
2007年10月、報道陣向けに開催された任天堂カンファレンスで発表され、海外で翌年に発売されるも、国内では度重なる延期を繰り返した末、お蔵入りとなった戦略シミュレーションゲーム、『ファミコンウォーズDS』の続編。2014年、海外版の発売から6年近くのブランクを経て、クラブニンテンドーの特典、3DS専用のDSiウェアタイトルとして復活を遂げた。
任天堂らしからぬどす黒さ全開の作風で送る、新生ファミコンウォーズだ。
ゲーム内容はターン交代制を起用した戦略シミュレーションゲーム。歩兵、戦車などの兵器を生産し、都市や工場などの施設を占領。同時に敵軍を迎撃し、拠点の制圧、敵軍の全滅と言った目的の達成を目指していくというものである。
基本的なシステム周りは前作『ファミコンウォーズDS』のものを踏襲。上下二画面を駆使した画面構成、タッチペン操作、一発逆転の必殺技『ブレイク』と『ショーグンシステム』は今作にも継承されている。一方で、上下別途のマップ攻略を目指す『デュアルマップ』、ショーグン二人で連携して戦う『タッグシステム』とその状態時限定の必殺技『タッグブレイク』は廃止。更に『ブレイク』の上位技『スペシャルブレイク』も廃止された。それにより、ゲーム性はシステム上の初代に当たる『ゲームボーイウォーズアドバンス1』に近いものへと回帰。無難な作りへと一転している。
そして、ゲームモードも一新。タッチペンで遊ぶシューティングゲーム『コンバット』、追加マップの購入などが行える『ウォーズショップ』の二つは削除。メインモードに当たる『キャンペーン』は『ストーリー』に名称変更し、やり込みモードの『トライアル』は『ストーリー』のサブマップとして組み込まれる形で消滅した。残る『フリープレイ(対戦プレイ)』、『エディット』は健在だが、そんな変更が行われた影響もあり、ラインナップ的には前作よりも寂しくなってしまっている。
だがその分、密度が強化。特に旧キャンペーンことストーリーは、トライアルがサブマップとして組み込まれた事で、ボリュームが倍増。また、肝心の本編もストーリー性を強化。『ファイアーエムブレム』シリーズのような会話イベントがマップ攻略中に挿入されるようになり、これまで以上にストーリーの存在を感じ取れる作りへと一新されている。マップデザイン、勝利条件もストーリーと深く関連付けられたものになり、脱出、巨大兵器上での戦いと言った特別なマップも新規に追加され、バラエティ豊かな展開と戦略の妙味を堪能できる仕上がりになっている。細かい所でもマップセレクト画面が追加され、一度クリア済みのストーリー用マップが何度もプレイ可能になる嬉しい改善点も。総じてファイアーエムブレムの要素を逆輸入した格好だが、それがどれもゲーム性をより魅力溢れるものへと昇華させており、これまでのシリーズにない新しさを演出している。おまけ程度でなく、もう少し本格的なストーリーが描かれた内容であればと願っていた方には嬉しい進化。現代風の試みが綺麗な形で活かされた仕上がりとなっている。
無論、モードの作りばかりでなく、メインの戦闘全般もシステムの刷新などを行い、劇的に進化。その中でも特にインパクトがあるのは、ショーグンシステムとブレイクの仕様変更だ。ゲームボーイウォーズアドバンス1以降からの定番的システムが、まさかのフルモデルチェンジ。任意のユニットに『ショーグン』を搭乗させる事で、能力が発揮される発揮される仕様に改められたのである。しかも、効果範囲はマップ全体ではなく、ショーグン搭乗ユニットの周囲に表示された薄暗いマス目の範囲内だけ。ブレイクもその範囲内にいるユニットにしか影響が及ばなくなり、威力が急激に弱まった。更にブレイクも、二回行動などのぶっ飛んだものが減少し、付加効果を及ぼす程度のものに抑えられている。発動条件も、今回はショーグン搭乗ユニットが居ないと駄目になったほか、そのユニットが破壊されると、発動に必要なゲージがリセットされるようになったので、乱発合戦も起き難い作りに。それにより、駆け引きの奥深さも強化し、相手に逆転のチャンスを与えないよう、ショーグン搭乗ユニットを集中砲火すると言った緊張感に富んだ戦闘が展開されるようにもなった。純粋に戦略を楽しみたい、特殊能力合戦は嫌と感じていたプレイヤーにとっては、非常にナイスな仕様変更。ブレイク自体もぶっ飛んだものが減ったのも、戦略シミュレーションとしての見事な原点回帰と言える。そういう意味では、まさに正当進化系と言える作り。純粋なシミュレーションを求めてたプレイヤーにとっては、まさに涙モノの進化と言っても過言ではないだろう。
他にも新要素として、『スーパーファミコンウォーズ』で試験導入されていた『ユニットのレベルアップ』が装いも新たに復活。敵を連続して倒す事でユニットが三段階まで強化されるようになり、これまでとは異なる戦略が組めるようになっている。更にバイク兵を始めとする新ユニット、敵専用ショーグンとブレイクを持たないショーグン、ユニット生産の資金変更などの意欲的な要素の導入、システムの刷新も行われており、懐かしくも新しいプレイ感覚を演出している。
前作と比較すると、総じて地味になった印象はある。しかし、戦略シミュレーションとしての魅力は激増。既存のシステムがより美しい形に改められたほか、プレイ環境も洗練され、遊び易さは飛躍的に向上している。DSらしさは随分と薄れたが、戦略シミュレーションとしての面白さはより深いものに。これぞ正当進化系と言い張れる出来になっている。
しかし、今作の最大売りは意外にも、ストーリーと世界観であったりする。これがまた、とんでもない。隕石落下により、人類の9割が死滅した世界で、生き延びた人間達が極限状態下で殺し合うという、どす黒さ全開の内容。前作までのライトな雰囲気は微塵も無し。さながら『吸血鬼(I Am Legend)』、『サバイバル・オブ・ザ・デッド』、『北斗の拳』などの著名な小説、映画、漫画作品を髣髴とさせる、ショッキングな展開が画面いっぱいに繰り広げられるのだ。とは言え、別に出血描写があったりする訳ではない。表現面は基本、前作と同じだ。
ただ、その世界観を反映し、今回はユニットのグラフィックも初代ファミコンウォーズから脈々と受け継がれてきた『玩具っぽさ』を完全排除。リアルな作風に改められている。更にキャラクターデザインも、元SNKで『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズのイラストレーターとして知られるヒロアキ氏による渋く、シリアスなテイストに満ちたものになり、前作までのライトな雰囲気がゴッソリ取り除かれている。
ストーリー本編でも、これまで以上に戦争と極限状態下における人間の汚さ、傲慢さが描かれた展開が多い。自分が生き残る事しか考えず、主人公達を追放しようとする民間人(※今回は戦闘非参加のキャラクターも多数登場する)、絶望する人達の心に付け込む怪しい宗教の狂信者、血を血で洗う復讐劇など、これは本当にファミコンウォーズなのかと目を疑ってしまうようなシーンが次々と目に飛び込んでくる。戦争なのだから、なるべくシリアスなストーリーにして欲しいという声を受け、このような内容にしたのが今作発表当時の関係者の発言から明かされているが、それにしてもこれはやり過ぎである。同じく戦争を描いたファイアーエムブレムシリーズも血の気が引いて真っ青になってしまうほどの内容である。ただ、今までにない雰囲気と魅力があるのも事実で、見応えはかなりのもの。印象的な場面も多く、中でもステージ19『救われた村』のマップでの惨たらしい展開には誰もが度肝を抜く事、間違いなし。このストーリーを体験するだけでも、今作をプレイする価値は十分過ぎるほどにあると言っても良いだろう。
また、ストーリーで魅力的なのは内容だけではない。ゲーム部分、レベルデザインへの反映も非常に上手且つ自然で、先にも少し例を挙げたが、勝利条件、マップデザインのバリエーション強化にそれが如実に現れている。意表を付く展開も多く、あるマップでは同盟軍の説得工作を行わなければならなかったり、またあるマップでは前線から離脱しつつ、迎撃に転じていくと言った戦略が求められたりする。ストーリーに沿いつつ、難局を乗り越えていくプレイ感覚には、これまでのシリーズにない手応えと面白さがたっぷり。更に今作のストーリーはチュートリアルとしても自然且つ丁寧に作られていて、マップが進むにつれて新ユニット、ショーグンシステムと言った要素が一段階ずつ開放されていく仕組みなのも素晴らしい。中でもショーグンシステムの開放タイミングは絶妙過ぎるの一言で、ストーリーの展開も合わせ、非常に熱いものに仕上げられている。この仕組み自体は前作でも起用していたが、それが今回、より一層、魅力が増して初心者にも抵抗なく覚えられる作りになっている。前作でも起用していたスタイルを更に洗練させ、遊び易く、また感情移入できるものに仕立て上げる。この絶妙なバランスには本当、感服する限りである。正直、システム面で敷居の高いファイアーエムブレムもこれを逆輸入すべきだと言いたくなるほど。この完成度の高さもまた、ストーリー本編と同様に注目の部分だ。
ストーリー以外でも注目すべき部分は多い。特に最新型ショーグンシステムの自己主張し過ぎない作りと各種ショーグンの能力バランス、駆け引きの面白さを演出する気配りの数々は秀逸の一言に尽きる。レベルアップ導入により、戦略面でもこれまでとは違うテクニックが求められるようになり、新たなウォーズの遊び方を提示しているのも面白いところだ。
シリアスに転じ、吹っ切れたのが今回の進化へと繋がったのか?そう疑問を抱くほどに、今回はゲーム部分とストーリーの作りにおける細かな調整が傑出している。正統進化をしつつ、異端なノリも演出するこの徹底振り。今作が続編としての出来もよく、単体の作品としてもとてつもない個性を持ったものになっているのかは、ここまで読むだけでも明らかだろう。王道の進化と異端な進化。その二つが非常にバランスよく絡み合ったものに完成されている。
プレイ環境部分の完成度も、今作は傑出している。操作性はタッチペン操作を考慮したコマンド決定の手順を減らす配慮を施した新しいものへと一新。慣れてしまうと、もう前作に戻れなくなってしまうほど、とんでもなく快適なものになっている。更に前作で実装された戦闘シーンのスキップ機能も実装するなど、ストレスを感じさせない気配りも完璧。操作性、レスポンスの快適さに関してはシリーズ最高クラスの出来栄えと言ってもいいだろう。
また、タッチペン操作を考慮し、グラフィックも全て新規のものに描き直し。サイズが大きくなり、見栄えが良くなったほか、タッチペンでも操作し易い作りへと大きく一転している。また、前作の小さなデザインで遊びたいプレイヤーに対し、拡大・縮小の機能も追加。そんな痒い所に手の届く気配りまで凝らされている。しかも、拡大縮小時共にグラフィックは別物という徹底振り。そんなこだわりの作り込みが成されている点も見逃せない。
音楽も退廃的な世界観を反映させた、ハードで重めな作風の曲が大半を占めるなど、これまでのウォーズとは全く異なる味わいに富んだものに仕上げられている。無論、曲の完成度は申し分無し。印象的で耳に残る曲が豊富に用意されている。特に主人公であるエドのテーマ、敵のショーグンであるローミィのテーマの二曲は要チェックだ。
更に音楽はイベント曲の大幅な増加で、演出周りを強化するのにも一役買っている。追い詰められた状況下では専用の曲を流すなど、徹底して空気を読むその使い方の上手さは必見だ。
一方で全体のボリューム、マップ総数はモード削減の影響もあり、前作より減少。ただ、それでも100面以上はあるので遊び応えは十分だ。勲章集めなどのやり込み要素もバッチリ。また、新たにネットワークを介した対戦も新規に実装されている。だが、2014年5月20日にニンテンドーWi-Fiコネクションがサービス終了となった為、2014年6月1日現在、プレイする事はできない。それ故、メニュー画面での『Wi-Fi』の項目はただの看板も同然であるので、注意されたし。その他、ヒント解説で展開される寒いコント、終盤の唐突な展開、一人、能力的の突出したショーグンが存在するなど、残念に感じてしまうところも少しある。しかし、続編としては確実に進化している上、ウォーズシリーズとしても新鮮な味わいに満ちた内容で、完成度は非常に高い。洗練されたシステム、ウォーズシリーズ原点の面白さを追求したゲームバランス、そしてどす黒いストーリーなど、唯一無二の魅力を持ち合わせた今作。
前作をやり込んだ方は言うまでも無く、シリーズ初心者の方にもお薦めできる傑作だ。
しかしながら、今作はクラブニンテンドーの会員特典としての供給形態である為、一般のお店及び『ニンテンドーeショップ』で購入する事はできない。どうしても遊びたい方は会員ポイントを800ほど集めてゲットしよう。正直、相当数のゲームを購入する必要があるが、そのポイントに恥じぬ濃くてやり応え十分のゲーム体験が貴方を待っている。
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