≫脱出アドベンチャーシリーズ
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■発売元 |
アークシステムワークス |
■開発元 |
インテンス、クオリア(シナリオ)、サラマンダーファクトリー(音楽) |
■ジャンル |
脱出アドベンチャー |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
1つ(※全作共通) |
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七阜市大継町(ななふし・おおつぎちょう)。
古くから霊山として有名な緑豊かな大和日本有数の面積を誇る湖を展望できる古都。
美しく、ノスタルジックな情景を残すこの地域には多くの伝承や噂話が存在しており、時に怪談、都市伝説と知った恐ろしげなものは異常なほどあった。
そして、この町にある私立回逢魔学園高校。歴史あるこの高校では、古くから伝説の類が多く存在していたが、最近、生徒達の間である噂が広まりつつあった。
これはそんな噂の数々に飛び込み、やがて七阜市大継町全体に隠された謎と大きな事件に巻き込まれて行く事になった少女、時野若留(ときの わかる)とその仲間達の物語である。
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▼Review ≪Last Update : 11/23/2014≫
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3DSのダウンロード配信専用タイトルを販売しているメーカーの中でも、非常に多くの意欲的且つ、チャレンジングなタイトルを輩出し続けているアークシステムワークスが放つ、完全新規の脱出アドベンチャーゲーム。開発は『THE脱出ゲーム』シリーズ等、数多くの脱出ゲームの製作に携わってきたインテンス。音楽をスーパーロボット大戦シリーズで知られるサラマンダーファクトリー、シナリオを『チェインクロニクル』、『未来日記 -13人目の日記所有者』等の作品に携わったクオリアが担当。更にキャラクターデザインを『ぷよぷよ』シリーズイラストレーターとして知られる壱氏が手掛けている。(※但し、三作目のみ異なる。詳しくは後述)
■ライトな作りの脱出アドベンチャー
ゲーム内容は、脱出ゲームとテキストアドベンチャーゲームを組み合わせた『脱出アドベンチャーゲーム』。ストーリーを進めつつ、その行く先々で発生する密室からの脱出イベントを攻略しながら、物語の真相に迫っていくというものだ。
この脱出ゲーム+アドベンチャーというゲームデザイン自体は、既にチュンソフト(現:スパイク・チュンソフト)の『極限脱出』シリーズ、今作と同じインテンスが開発を担当した『密室のサクリファイス』等、幾つかの作品での例があるが、今作も平たく言ってしまえばそれらと一緒。極端に言ってしまえば、その二作の系譜に沿う形で誕生した作品も同然な格好になっている。なので、それらの二作品を経験した事のあるプレイヤーから見ると、結構な既視感を覚える内容だ。とは言え、その詳細な作りに関しては全く持って異なる。また、例に挙げた二作とは異なる強みを持った作りになっている。
その強みとは、シンプルでライトな作りに徹しているという事だ。
特にその強みが現れた部分がストーリーの構成。簡潔に言うと、一本道。近年流行りの選択肢による分岐要素も何もない、往年のアドベンチャーゲームを髣髴とさせるストレート且つ、シンプルな作りを基本としている。全てのエンディングを見ると言った周回要素、やり込み要素もそんな設計故に存在せず。純粋に一つのストーリーを楽しみたい、往年のアドベンチャーゲームのスタイルが好きだったプレイヤーには懐かしさを覚える作りとなっているのだ。また、ストーリーが繰り広げられるパートでは舞台となる場所の探索、移動と言った要素も無く、流れに身を任せるまま、物語を楽しめる作りとなっているのも特色の一つ。ストーリーはストーリーだけと、かなりはっきりとした切り分けが実施されているのである。これもこれで、往年のアドベンチャーチックな作り。脱出ゲームでその手の要素があるから、他のストーリーの所まで変にゲーム性を入れ込んで、プレイヤーに過度な負担を与えないという配慮が光る仕上がりになっている。
ただ、ここまで語って来たのはシリーズ一作目『旧校舎の少女』に限っての話。次なる二作目『魔女の住む館』以降ではストーリー上、舞台となる街や施設の探索、調査と言った要素が追加され、ゲーム要素が全体的に強化されている。また、ストーリーも二作目以降、とあるイベント、或いは条件を達成する事でもう一つのエンディングが出現すると言った分岐要素が追加され、やや複雑さを含んだ作りへと変貌を遂げている。それでも、先に挙げた二作ほど複雑では無く、再プレイするに当たっても今作は一度クリアした章を何度も楽しめるチャプターセレクト機能が実装されているので、そこまで負担は増していない。何より、探索、分岐と言った要素が加わっても一本道且つ、シンプルのスタンスに変わりは無く、いずれも最小限に留めているのもあり、苦も無く気楽に楽しめるのは結構な強みだ。まさに適度にストーリーと脱出ゲームの双方を楽しめる作り。シンプルでライトというスタンスにこの上なく適した仕上がりになっている。
また、ストーリーに関してはもう一つ、登場人物が少ないのも特色の一つ。基本的にメインを張るキャラクター以外、モブキャラクター達には専用グラフィックが用意されてないのに加え、逆にそれが用意されているキャラクターも最小限に留められているので、人物相関が分かり易い。これはシリーズ一作目『旧校舎の少女』のみならず、以降の作品でも徹底されていて、いずれの作品でも物語の流れ、全容がすんなり頭に入ってくる作りになっている。さすがに後発の作品では、モブキャラクターでも結構な数が出てくるのに加え、グラフィックも新規に追加されたりする訳でも無いので、そこそこの想像力を求められたりもするが。それに、そのキャラクターはグラフィックを用意しても良かったんじゃないの?…と突っ込みたくなる箇所もある。ただ、それでも雰囲気作りは十分且つ、主軸がはっきりしている故の分かり易さは傑出したものがある。如何にもダウンロード配信専用タイトルならではの制限的な側面も否めないが、地味に侮り難い見所だ。
この他、全体的なボリュームも短め。どのシリーズ作も基本、早ければ4〜5時間程度で決着できるほか、先に挙げた複雑な分岐によるエンディング変化と言ったやり込み要素も無いので、サッパリ終える事ができる。気軽に遊べるアドベンチャーゲームとしてはこの上なく、また、そのサッパリさ故の往年のアドベンチャーゲームらしさも、その手のゲームに慣れ親しんできた年齢層のプレイヤーなら、懐かしさを覚えること請け合いだ。逆に言えば、物足りない内容と言えなくもない。近年、エンディングまで最低20時間強が当たり前のアドベチャー、ノベルゲームの風潮からすると、逆行している内容なのは否定しようがないだろう。
しかし、あえて言おう。今作、短いとは言え、その密度とやり応えは相当なものである。それこそが、次に挙げる今作の売り、本格的な作り込みが成された脱出ゲームのパートだ。
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■独自の謎解きも光る、遊び応え十分の脱出パート
先の通り、ストーリーは比較的、分かり易さを全面に出した作りに徹しているが、脱出ゲームは別。さすがはこれまで、数多くの脱出ゲームの製作に携わって来たインテンス、と言わんばかりの本格派の作りになっている。基本的な仕組み自体は、舞台となる場所の隅々に触れ、怪しいものが無いかをチェックし、目的地たる出口へと繋がるカギを探っていくというもの。脱出ゲームとしては王道中の王道に則った作りだ。また、一連の脱出ゲームは全てタッチペン操作で行う為、ボタンはほとんど使用せず。少し話が逸れるが、ストーリーにしても二作目以降から追加された街の探索、移動等もタッチペン操作で行う仕様で、DSならではの直感的なプレイスタイルを貫き通した仕上がりになっている。(※台詞送りなど、一部の操作はボタンにも対応)
そう王道且つ、シンプルな操作スタイルを起用していながら、肝心の中身はかなりの本格派。一回の手順で難なく解けてしまう簡単な謎解きはほとんど無く、周囲に散らばるアイテム、一部の壁等に記された怪しい暗号など、ありとあらゆる要素を繋げ合わせたりしながら解いていく、ディープな謎解きばかりがプレイヤーに襲い掛かる構成になっている。謎解きのネタもバリエーションに富んでおり、使い回しのネタがほとんど見受けられないというのは地味ながら圧巻。基本、どの脱出パートにおいても、毎回新たなネタが登場し、プレイヤーの洞察力、推理力を試してくる。また、そのネタにしても暗号解読ばかりでなく、絵合わせパズル、機械を操作して行う軽いアクション的なものまであったりと、実に多彩。そして、今作独自の謎解きとして、舞台となる場所に配置された怪しい物の『分解』、『修理』というものがある。
このシリーズの主人公を務める時野若留及びトキノは、『クロノテクト』なる変わった腕時計を装備している。このクロノテクトにはプラス&マイナスドライバー、アーミーナイフ、ルーペと言った工具が内蔵されており、これ一つでネジから蓋と言った、あらゆるものをサラッと取り外したり、分解したりする事ができてしまうのだ。何処の007だよ、という突っ込みは分からなくもない。とういう、鉄を焼き切るレーザーに磁石、ボウガン、回転ノコギリ等が仕込まれた腕時計を装備していた彼に比べたら、こちらは遥かに大人しい方だ。…って、話を戻して。そんな万能にも程があるのに加え、どんな仕組みになっているかサッパリな腕時計を用いて、様々な物の分解、時にはその修理を行うという謎解きが今作では挟まれてくるのだ。基本的にこの謎解きは脱出ゲームを進めて行く最中で自然に発生する仕組みで、任意でプレイできるようなものにはなっていない。また、対象物の分解という点に特定のプレイヤーはニンテンドーDSでアトラスより発売された手術アクション、カドゥケウスシリーズみたいなものを連想するかもしれないが、アクション要素は皆無。主に怪しいところをタッチ操作でチェックし、時にはそれを動かしながら謎を解いていく、メインの脱出ゲームとは変わらぬ作りのものになっている。しかしながら、一つの対象物を眺め、それを分解して謎を解明していくという流れは地味に新鮮且つ、好奇心をくすぐる。分解対象となるものも多種多様で、時計や何かが入った箱と言ったものは勿論、ある程度進むとピアノにパソコン、映写機と言った、それはその手のプロが分解するものなのでは…と突っ込みたくなる大きなものまで登場。無論、分解する際にはしっかりと対象物のグラフィックも変化していくようになっており、普段、その内部構造が分からないものの中身が見れてしまうというのも、子供心を大いにくすぐる。やる事自体にそんなに真新しさはないものの、一つの対象物をじっくり観察し、真相を突き詰めていくという一極集中型の構成、普段、お目にかかれない物の中身を知ることができる、発見の楽しさとワクワク感はなかなかに魅力的。難易度もそれなりに高めでやり応えも申し分無しで、先に挙げた謎解きの一部とは異なる強み、見所を併せ持った仕上がりになっている。今作屈指の見所と言っても良いだろう。
ただ、ここまで謎解きが本格的と度々主張してきた事に対し、その手の要素が苦手なプレイヤーにはしんどいゲームじゃないのかとイメージしてしまうのかもしれない。この脱出パートのボリュームも、謎解きの難易度が高いから結構、時間が喰われるのではないのかとも。実際、その辺に関しては否定するまでも無く、シンプルに解ける謎解きがあまりないので、人によっては楽しさ以上にしんどさが勝るかもしれない。
とは言え、その辺も今作、しっかりと対策されており、メニュー画面を開けば常にヒントを教えてくれるようになっている。また、脱出パート自体の流れも基本、フラグ立てで進んでいく仕組みなので、どれだけ状況に変化があったか、その辺の配慮も徹底的に成されている。逆にフラグの管理で進んでいく都合上、ショートカットができなく、自由度に欠ける点は賛否が分かれるかもしれないが、このおかげで複雑な謎解きであってもテンポよく進めて行ける事ができるのは結構な強みである。更にヒントを使っても、解くのに手を焼くタイプの謎解きも幾つか存在するので、やり応えがイマイチとか、そういう所がほとんど無い辺りも実に見事だ。苦手なプレイヤーへの配慮も行いつつ、それを入れる事に伴うゲームとしてのやり応え、充実感に対しても神経を配って調整するなど、その丁寧な作り込みとゲームのやり応えに対するこだわりの強さはなかなかのもの。そのバランスの良さも含め、総じて非常に完成度の高い内容に仕上げられている。ライトな作りのストーリーも含めて、まさにこれぞ絶妙なバランスで成り立ったゲームというに相応しい綺麗なまとめ具合になっている。
なお、この優れたバランスは一作目『旧校舎の少女』から健在であり、以降のシリーズでもその作風は失われていない。また、謎解きのネタにしても、シリーズを重ねる度にエスカレートして行っているのも見逃せないところだ。特に後述するが、シリーズ四作目『シアワセの赤い石』は予想外にも程がある謎解きが登場するので必見だ。
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■シリーズごとの特色
今作、脱出アドベンチャーシリーズは全部で五作がリリースされている。
基本的なシステム等は全作共通。
しかし、先も少し触れたが、そのシリーズにしかない特色もある。
◆脱出アドベンチャー 旧校舎の少女
◇配信日:2012年8月1日
◇定価:710円(税込)
◇CERO:B(12歳以上対象)≪※犯罪描写あり≫
◇消費ブロック数:898ブロック
シリーズ一作目。逢魔学園の旧校舎にまつわるストーリーが展開。
ストーリーパートと脱出パートを交互に繰り返していくストーリー展開、分解の謎解き等、基本的な仕組みと特色はこの時点で完成されている。また、ストーリーも完全な一本道で、後発のシリーズにある街の探索、エンディング分岐等の要素は一切実装していない、ストレートな内容に仕上げられている。
一応、単独で解決するストーリーになっているが、所々に今後のシリーズ展開を匂わす要素と回収されない伏線が多数散見されるのが特色(或いは欠点?)。また、とある便利機能にちょっとしたギミックが仕込まれているのも大きな見所。貴方はその仕掛けに気付けるか…?
◆脱出アドベンチャー 魔女の住む館
◇配信日:2012年12月19日
◇定価:820円(税込)
◇CERO:B(12歳以上対象)≪※犯罪描写あり≫
◇消費ブロック数:894ブロック
シリーズ二作目。大継町北にある『帰らずの森』の奥深くに佇む『妖冥館』に潜むと噂される、『人喰い魔女』にまつわるストーリーを描いた内容。
新要素として、舞台となる場所の移動、探索要素が追加。大継町のマップも登場し、前作でははっきりと描かれなかった舞台の全体像が確認できるようになった。また、移動には制限時間が設定されており、その時間内を終えると強制的に次のストーリーが進む仕様になっている。これに伴うエンディングの分岐も追加され、僅かながら全体的なボリュームもアップしている。(しかし、さりげなくソフト単体の容量は全作より気持ち、少なくなっていたりする。)
◆脱出アドベンチャー 悪夢の死神列車
◇配信日:2013年12月4日
◇定価:820円(税込)
◇CERO:A(全年齢対象)
◇消費ブロック数:1083ブロック
シリーズ三作目。夢でありながらやたらと現実味のある、『死神列車』なる謎の列車からの脱出を目指す少女、トキノとその仲間達の姿を追ったストーリーが描かれる。
この作品は先の二作とは決定的に異なる点が存在する。まず第一にメインビジュアルが別物。この作品に限り、キャラクターデザインを『つくものがたり』、『拡散性ミリオンアーサー』、『限界凸騎モンスターモンピース』等に携わったイラストレーターのフカヒレ氏が手掛けている。また、登場人物も前二作から完全に一新され、それまで主人公を務めていた若留達は一切登場しない。だが、主人公の名前が若留の苗字と同じ『トキノ』であること、『クロノテクト』も登場するなど、前二作との何らかの関係を匂わす要素が幾つか。これらの真相は実際にゲームを遊んでお確かめください。
基本システムは前作を踏襲。新たに物語の途中で手に入る『日記』にまつわる謎解きが追加され、これがエンディングの分岐に絡んでくるようになった。この要素追加に伴い、バッドエンディングまで登場。また、街の移動、探索パートにおける制限時間制が廃止となり、関連するイベントが進むと進行する王道スタイルに改められている。
地味ながら演出面も強化。特に音楽面も含め、非常に盛り上がる最終局面は必見。
◆脱出アドベンチャー シアワセの赤い石
◇配信日:2014年4月30日
◇定価:820円(税込)
◇CERO:A(全年齢対象)
◇消費ブロック数:1180ブロック
シリーズ四作目。大継町で突如流行し始めた謎の『赤い石』にまつわるストーリーが展開。
再び若留達が主人公の内容へと回帰。システムは前作を踏襲し、一部において、驚愕の謎解きが新規に収録された。その詳細は伏せるが、見れば誰もが「いきなりゲームが変わり過ぎだろ!」と突っ込みたくなること請け合い。
また、今作は前三作以上にストーリー上の繋がりが強く、所々で『旧校舎の少女』と『魔女の住む館』で触れられた謎と伏線の詳細が明らかになって行く。更に、思いも寄らぬキャラクターが登場する。極め付け、最終局面を乗り越えた末に辿り着くエンディングでは衝撃的な展開が。その先の真のエンディングではそれを遥かに超えるショッキングすぎる展開も待ち受けており、見れば誰もが次の続編、『終焉の黒い霧』を遊ばざるを得なくなるだろう…。
◆脱出アドベンチャー 終焉の黒い霧
◇配信日:2014年8月27日
◇定価:820円(税込)
◇CERO:B(12歳以上対象)≪※犯罪描写あり≫
◇消費ブロック数:1209ブロック
シリーズ五作目にして最終作。前作のエンディングの続きを描いた内容で、謎の災害に見舞われた大継町を舞台に行方不明になったとあるキャラクター、災害で無人と化した街に現れた謎の少女にまつわるストーリーが展開される。
システムはこれまでの総決算だが、前作終盤に登場した驚愕の謎解きは無くなった。ただ、それにすり替わる形でマップ機能を駆使した変わった謎解きが追加。これに伴い、今作には新たにゲームオーバーの概念が足されている。
ストーリーは前作以上に関連が強く、明かされなかった謎が全て明らかになる。また、シリーズ一作目から度々触れられていた人物も衝撃的な形で登場する。これまでのシリーズを全て遊んできた人なら絶対に見逃せない一本。
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■連作ストーリーとその結末は賛否が分かれる
先のシリーズ別紹介の通り、このシリーズのストーリーは連作構成になっており、作中で語られる謎を全て解き明かし、スッキリ終わらせたいという思いが強いのであれば、全作のプレイは必須となる。一見、ビジュアル的に無関係過ぎる三作目も、ここで言ってしまった通りだが、しっかりと関連している。詳細は例によって、ゲームを遊ぶまでのお楽しみだが。
ただ、肝心のストーリーの出来はどうなのかというと正直、賛否が分かれる感じだ。特にシリーズ最終作となる『終焉の黒い霧』が顕著。個人的な意見を言わせてもらうと、凄く嫌いなタイプの締め方だった。詳細は伏せるが、そういう締め方に行くのならば、可能な限り溜め込んでからやるようにして頂きたい。また、作中では強引な伏線の回収、必要以上に風呂敷を広げ過ぎてしまっているところもあり、最後の締め方としては消化不良にして、綺麗とは言い難いまとめ方になってしまっているのも褒められたものでは無い。ある意味、ダウンロード配信専用タイトルとしての限界があったのかもしれないが、五作目が発売された2014年は『青き雷霆(アームドブルー) ガンヴォルト』のような大型のダウンロード配信専用タイトルが展開されるようにもなって来た時期。それに倣い、最後ぐらい、大胆に大ボリュームで決めるのも一興では無かったのだろうか。逆にいつも通り出した事でシリーズらしさが出て、それらしく終わったのも事実だが、ならば初っ端からクライマックス全開で行くなど、大胆に攻めて頂きたかったところだ。
逆に四作目までのストーリーはそれなり。特に初代『旧校舎の少女』はエンディングを含め、意表を突いたネタが仕込まれている。詳細は伏せるが、気付けば「そう来たか!」と思わず唸ること請け合い。実際にプレイし、エンディングまで到達した暁には是非、あらゆる場所を調べ尽してみて頂きたいところだ。また、それまでの三作と強く関連付いた四作目『シアワセの赤い石』も大変興味深い内容で、特にエンディングは嫌でも次回作への期待を高めるものになっている。その分、五作目での締め方が勿体ない限りなのだが、その見せ方の上手さは実にユニーク。真のエンディングに到達した後、一作目から遊び直すと、それまでとは違った視点で一連の物語が楽しめるようになるので要チェックだ。
これらのストーリー展開を盛り上げる、グラフィックとサウンドの質も上々。グラフィックは基本、2Dではあるが、キャラクターのイラストから背景に至るまで、非常にクオリティが高い。また、立体視の奥行き感も非常に素晴らしく、さながら飛び出す絵本も同然なビジュアルは圧巻の一言。特に脱出パートではその醍醐味を存分に味わえるので、是非とも立体視ONでそのビジュアルを眺めて頂きたい。2Dでもここまでやれる!…という凄味を実感させられるだろう。
音楽も数こそ少なめながら、印象的な楽曲が揃っている。特にシリーズ二作目『魔女の住む館』のテーマ曲、三作目の『悪夢の死神列車』の最終局面で流れる二曲は要チェックだ。また、謎解きの際に流れるジングル音もなかなか。このシリーズの代名詞と言わんばかりのそのシンプルながら迫力十分の楽曲もまた、先の二曲と併せて要チェックだ。
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■サクッと遊べるアドベンチャーゲームの良作
その他、操作性も基本、タッチペンと一部のボタンのみしか使用しないので取っ付き易さは上々。ヒント機能のほか、操作ガイドなどのチュートリアルも充実しているほか、導入部となる序章の構成が各作品共に極めて優秀(※但し、四作目は除く)なのもあり、初めて間もない頃に今作全体の特色を飲み込めてしまうという見事な仕上がりになっている。そのヒント機能にしても、シリーズを重ねる度に良くなって行っており、四作目から五作目は丁寧にも程があると突っ込みを入れたくなってしまうほど。初代から順にシリーズを追っていくと、その優れた進化っぷりがよく分かるので必見だ。
難易度にしても、優れたヒント機能の恩恵もあり、基本高めながらも遊び易いという秀逸なバランスを維持している。ただ、後発のシリーズにおける軽めのアクションが絡む謎解きの難易度設定はややシビアにし過ぎな感も否めず。具体的には四作目の電動のこぎり、五作目のクレーンがそれなのだが、もう少し判定を緩くするなり、或いはボタンを押す瞬間になって何かしらのサインを表示するなど、その手の操作を苦手とするプレイヤーへのフォローを敷いて頂きたかったところだ。とは言え、後者のクレーンに関しては速度を遅くする救済処置が入っているので、一応のフォローは成されているので、そこまで責めたてるものではないのだが。
他に演出周りも総じて良好ではあるのだが、脱出ゲームクリアの演出及び達成感が弱い点は目に余るところ。先に挙げた『極限脱出』では脱出パートをクリアした際、専用のメッセージと音楽が流れる演出が仕込まれていたが、何故か今作はクリアしたらそのままストーリーへと直行して行ってしまうのだ。これはこれでテンポの良さを出す狙いとして、悪くない処置と言えなくもないが、苦労して出口に辿り着いても、何の特別な演出無しというのはさすがに寂し過ぎる。結局、これは五作全てで共通してしまっている事からして、各作品を遊んだプレイヤーからはそんなに不満として上がらなかったのかもしれないが、だとしてもこの辺はもう少し達成感を感じ取れそうなものを入れ込んで頂きたかったところだ。他の謎を発見した際、不気味な情報全般の描写などは総じて悪くない出来なだけに、勿体ない限りである。
そんな欠点も持つ今作だが、手軽に遊べる脱出アドベンチャーゲームとしての完成度は素晴らしく、ライトながらも歯応え十分の脱出パートの難易度、練りに練られた謎解きネタ、豊富な救済処置、そして結末に賛否あれど、目が離せない内容のストーリーと、多くの魅力を兼ね備えた作品に完成されている。分岐要素の乏しさにストーリー上の描写の制限など、ダウンロード配信専用タイトルならではの縛り、近年のアドベンチャーゲームとしては時代に逆行する部分があるのも事実だが、一プレイの満足感は結構なもので、古き良き時代のアドベンチャーゲームの香りと味わいに富んだ内容に仕上げられている。ゲームデザイン的に既存の作品はあれど、ライトな作りとお手軽さ、そして『分解』に『修理』と言った個性的なネタも取り入れた謎解きなど、唯一無二の売りにも富んだ今作。まさにサクッと遊べてお腹いっぱいに慣れる、秀作脱出アドベンチャーゲームだ。最近のボリューム満点なアドベンチャー、ノベルゲームにお疲れ気味な方ならば要プレイの一本。内容自体、これと言って人を選ぶ要素とかも何も無いので、3DS本体をお持ちの方も是非、その手触り感とお手軽さを存分に堪能してみて抱きたい。なお、今作は全五作ともにニンテンドーeショップにて、体感版を配信している。興味のある方は一度、お試しください。そして、興味を抱いたら先ずは初代『旧校舎の少女』から行ってみましょう。何故に一から順でなければならないのかは四作目をプレイすれは絶対に若留…否、分かるはずだ。お薦めです。
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