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  4. カルドセプト
≫カルドセプト
■発売元 任天堂
■開発元 大宮ソフト
■ジャンル カードゲーム+ボードゲーム
■CERO B(12歳以上対象) ※セクシャル描写あり
■定価 パッケージ版:4571円(税別)、ダウンロード版:4571円(税別)
■公式サイト ≫任天堂 / ≫スペシャルサイト
▼Information
■プレイ人数 1人(通信プレイ時:2〜4人)
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■その他 インターネット対応、ローカルプレイ対応、ダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 18ページ(※電子説明書)≫Web版はこちら(※PDF注意)
■推定クリア時間 27〜40時間(エンディング目的)、150〜300時間以上(完全攻略目的)
カルドセプト、それは絶対神カルドラが宇宙を司る為に創り出した『創世の書』。
カルドセプトの力を制した者は、新たなる世界の創造主という。
太古の時代、この書を巡り神々の戦いが起こり、カルドセプトは世界中に砕け散った。

やがてカルドセプトの破片より、その力を引き出せる『セプター』が出現。カルドセプトの頂点を極めた『セプター』は神となり、新たな世界を創造していった。新たな世界が創造されると、カルドセプトは再び四散し、新たな神が生まれて行った。
こうしてカルドセプトの輪廻は続き、幾多の世界が生まれて行った。

そんなある時、カルドラはこの世界を破壊せんとするセプター『ジェミナイ』の出現を予言する。カルドラは抑制神『ゴリガン』をジェミナイが出現されると預言された地、『ソルタリア』へと向かわせる。果たして、ジェミナイとは何者なのか…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆カードゲームとボードゲームを違和感なく融合させた、独自色の強いゲームシステム
◆領地の拡大に励むも良し、周回攻略に特化するも良しの驚異的な幅の広さが異彩を放つ戦略性(今回もカードをまとめるブックの編集が熱くて奥深い)
◆カードゲームとボードゲーム特有の先の読み難さと戦略の幅広さが醸し出す、圧倒的な中毒性
◆秒間60フレームのヌルヌルとしたスピード感とレスポンスの良さが光る、良好且つ快適な操作性
◆実に480種類以上の圧倒的な物量、能力全般の職人的なバランス調整が光るカード
◆シリーズ初心者にシステムの魅力等を徹底的に教え込む秀逸な新機能『アドバイスカーソル』
◆序盤は『アドバイスカーソル』が頼りになるが、中盤以降は次第に頼りにならなくなっていくという、プレイヤーの成長を自然と促す秀逸なバランス調整が成された『ストーリーモード』の構成
◆カード性能の確認と戦略を練る時間を作れる利便性の高さが秀逸な新機能『ドローポーズ』
◆短いテキスト、そこに描かれた可愛いくてユルいキャラクターイラストでゲームの仕組みがパッと理解できるインパクトの大きさが見事な新要素『スライドデモ』
◆要らないカードの一部を整理でき、新カードをゲットできるチャンスもあるのが嬉しい新要素『マーケット』
◆ボイスチャット機能が実装された対戦プレイにブック、カードの配信など、豪華になったネットワーク要素全般
◆布教用のツールとして大いに活躍する新要素、ダウンロードプレイによる協力戦
◆エンディングまで実に20時間以上と、前作にも増してやり応え、密度共にパワーアップした総計ボリューム(例によって、対人戦もプレイし始めるとほぼ無限に等しい感じに)
◆前作とは打って変わった、アップテンポで熱い作風でまとめられた印象深い音楽
◆前作同様に控え目ながら、多少ながら派手な場面も増えた演出全般(特にストーリーデモ関連)

--- Bad Point ---
◆サポート機能が強化された反面、何故か一切の解説が成されていないブック編集、属性の相性に関する事柄(このゲームにおける最もコアな部分でありながら、何故かまるでフォローが無い)
◆前作同様、定石紹介イベント未実装の内容(これもサポート強化と同時に入れるべきだった)
◆もはや遊びとして完全に崩壊しているも同然なストーリーモードの同盟戦(相棒となるCPUがこちらの戦術を破壊する行動を取ってきたりなど、非常にストレスが溜まる)
◆同盟戦が大半を占める所為で、難易度的に壁と化してしまっているストーリーモードの後半
◆同盟戦に代表されるように、全体的に前作以上に賢くなくなったCPUの思考ルーチン
◆相変わらずの1プレイ時間の長さ(今回は2〜3時間かかるケースも…)
◆プレイヤーが有利な状況になるほど小さな数値しか出なくなる、奇怪な調整が成されたダイスの確率計算(前作ではここまで露骨では無かったのに、今回はやたら露骨)
◆相手側が有利になるハンデを付けるだけという、極めて雑な設定と理不尽極まりない難しさでストレス溜まりまくりのクリア後要素『レベルアップステージ』
◆音割れし易いのがタマにキズなボイスチャット機能(正直、スカイプを使った方が良い)
◆幾ら何でも無機質になり過ぎな感が否めないメインメニューのインターフェースデザイン
▼Review ≪Last Update : 12/14/2014≫
ガッ…ポリ、稼いでいきましょう。

そこまでが大変だったりするのだけど。


独創的なゲームシステムと高い戦略性で根強いファンを生み出した『カルドセプト』シリーズ最新作にして、ニンテンドーDSで2008年に発売された『カルドセプトDS』の続編的な作品。2002年にプレイステーション2用ソフトとして発売された『カルドセプト セカンド エキスパンション』をベースとしたリメイク作品でもある。開発は過去のカルドセプトシリーズ全般を手掛けて来た大宮ソフト。販売は前作のセガに代わり、任天堂が担当した。

強化された初心者対策要素とバランス面の歪みが交錯する、残念な出来の新作だ。

ゲーム内容は『カルドセプトDS』と変わらない。トレーディングカードゲームと双六を融合させた(何故か、この呼称が今回は用いられていないが、あえて)『トレーディングカード・ボードゲーム』で、プレイヤーは『セプター』と呼ばれる魔術師になり、ダイス(サイコロ)を振ってマップを移動して領地(マス目)に到達した後、魔力『マナ』と『ブック』(いわゆるデッキ)にまとめられた各種カードを使ってクリーチャーを召喚し、領地を占領。その数を徐々に拡大しながらマナを溜めていき、最終的に一定の量を溜めてスタート地点に到達するか、制限ラウンド(ターン)までの間に最もマナを溜めたセプターが勝利、という独自のルールを特色とするゲームである。
ルールの詳細、ゲームの流れ等については、前作『カルドセプトDS』のレビューにて一通り解説しているので、そちらを参照頂きたい。基本的に前作から目立った変化は無し。前作経験者及びオリジナル版に当たる『カルドセプトセカンド エキスパンション』を経験した事のあるプレイヤーならば、難なく入っていける作りになっている。ただ、今回は任天堂が発売元を担当。任天堂と言えば、マリオ等に代表されるように万人が楽しめるゲーム作りを得意とするメーカーだ。そんな任天堂が関与したという事で、今作ではシリーズ未経験のプレイヤーに向けた機能全般を全面的に強化。前作にもルール解説と言ったチュートリアルは実装されていたが、それを軽く上回るものが新規に実装されている。
特に象徴的なものが『アドバイスカーソル』。基本的に本編(戦闘)では、各ラウンド(ターン)でダイスを振って移動を始める前とその移動後に領地に到達した後の二つにおいて、手持ちのカードを選択・使用するインターフェースが表示される場面がある。前作も含め、カルドセプトシリーズではお馴染みの光景だが、ここに今回、新たに一部のカードに対して黄色い大きな矢印が表示されるようになった。それこそがアドバイスカーソル。この機能は何と、現在の戦況において、選べばその後の戦いが有利に進んでいくと推測されるカードをプレイヤーに対して教えてくれる。乱暴に言ってしまえば、戦況ごとの答えに近いものを教えてくれるというある種、反則技。そんな驚愕のサポート機能が今回、実装されたのである。これにより、ゲームのルールをはっきりと覚えきれていない等、理解が浅いプレイヤーでも、サクサクと各戦闘を進めていけるようになった。個々のターンごとに戦略を考えるのが苦手、という方でも気楽に楽しめる作りへと一変したのだ。しかしながら、駆け引きが醍醐味とも言えるカードゲームで、このような機能を導入するのは暴挙も暴挙。戦況ごとの答えを教えるなど、よくもそんなゲーム性を破綻させるような機能を!…と、概略を聞く限りでは、カードゲームとしての遊びを真っ向から否定しているも同然な機能に見えてしまうので、コアなプレイヤーほど強烈な嫌悪感を覚えるかもしれない。だが、このアドバイスカーソルはそんなに万能な機能では無い。先の解説に含めたが、「戦いが有利に進んでいくと推測される」「答えに近い」というのがミソ。つまり、選出されるアドバイスは絶対的な回答では無い。「これを選べば有利に戦えるかもしれないですよ?」というものなのだ。なので、あらゆる場面にてこのアドバイスが活きてくる訳では無い。状況によっては、そのアドバイス自体が戦況を余計に悪化させる引き金となり得る事もあるのだ。実際に今作のメインモードたる『ストーリー』では、中盤を越えるとそのアドバイスカーソルの読みに対して疑問を抱く場面が増えてくる。終盤は更に顕著で、むしろアドバイスカーソルとは逆のカードを選ぶ事を考えないと、窮地に追い込まれて敗北一直線…なんて事もあるほどで、もはやアドバイスとして成立し難くなってくるのである。そんな作りなので、頼り過ぎればそれ相応のしっぺ返しを喰らう。一見、初心者対策向けの機能ではあるが、その実はプレイヤーに考えて対応しない事の拙さ、愚かさまでも教える厳しさも含めたシステム。露骨ながらも、意外と緻密な計算が成された作りになっているのだ。そんな仕組みなので、コアなプレイヤーに対しても、そこまで不快感は与えるほどのものではあらず。むしろ、逆に用いる事で戦略の可能性を広げていけるメリットを持つものになっていたりする。実際にシングルプレイは、このカーソルが如何に効果的に活かされているかを体験できる調整が成されている。プレイすれば、このカーソルが単なる救済処置では無い、新たなセプターを生み出すシステムとして仕上がっているかがよく分かるだろう。
また、アドバイスカーソル以外に『ドローポーズ』という機能も実装されている。これは自分及び相手が引いた時にカードをじっくり確認できるというもの。先のアドバイスカーソルほど派手なサポート機能ではないのだが、実に500種類以上ものカードが登場する今作において、個々のカードの性能をいつでも確認できるのは地味に便利。ポーズ時にはカードごとの特徴を紹介する『カードアドバイス』も表示されるようになっており、初めて目撃するカードに対してもどんな性能を特徴としているのか、その能力を使役して来た際に考え得る対策はどうするのか、と言った戦略も組み易くなっている。その練り易さたるや、過去のシリーズをやり込んできたプレイヤーも何故、今までなかったのかと思ってしまうほど。派手さこそはないものの、なかなか侮り難い機能になっている。
他に象徴的なもので、『スライドデモ』がある。いわゆる、ゲームルールに関して短いコメントとイラストで紹介してくれる簡易デモなのだが、新規の要素が解放されたり、新しいゲームモードを初めてプレイした時など、とにかくその量が多い。また、イラストも本編の硬派な雰囲気から逸脱した、可愛くてユルいものになっているなど、カードゲーム+ボードゲームという特異な組み合わせから生じる敷居の高さを緩和する施策が凝らされているのも見所だ。
無論、ゲーム部分にも前作、過去作からの変更が幾つか実施されている。シングルプレイの同盟戦でCPU側が領地コマンドを実施できるようになったり、不要になったカードの整理、新カードの入手ができる『マーケット』の追加、ソフト一本で協力戦が楽しめるダウンロードプレイ、そしてボイスチャット機能を実装して大幅にパワーアップしたインターネット対戦など、続編作品ならではの進化も盛り沢山。リメイク作品である故の変化も多々あり、その中でもキャラクターデザイン全般には経験者ほど、結構な衝撃を覚えること請け合い。そんなシリーズの新作としての作りも今作、抜かりは無しだ。
大まかなルール自体はすぐに理解できるものになっているとは言え、カードゲームを謳うが故に細かい要素を掘り下げていくと、複雑な世界が広がっていく。その世界に対する抵抗感を少しでも和らげたい、もっと気持ちよく遊べるものにしたい、そんな思いと考えに考えた結果が今作の初心者対策の大半に現れており、それにより今作は前作以上の間口の広さ、遊び易さを特色とした内容に仕上げられている。まさに間口の広いカルドセプト。初めて遊ぶ人から、これまでのシリーズを遊び込んだ人まで全方位で対応した作品になっている。

例によって、今作の魅力は初心者プレイヤーに対する充実したフォローの数々。特に『アドバイスカーソル』はその仕組みに調整具合と実に秀逸な出来。今作がターンごとに戦略を練りながら遊ぶ思考型のゲームであるという事、そしてそこに面白さの全てがある事をプレイヤーに叩き込む機能として、非常によく出来ている。
そのカルドセプトというゲームの魅力を知らしめるメインモード、『ストーリー』の構成も見事。具体的には難易度の上昇曲線だが、アドバイスカーソルに頼りっきりですんなり勝ててしまう序盤、少しずつ頼りにならなくなってくる中盤、そしてもはや頼る事自体が危険行為に等しくなる終盤と、ゲームを覚えたての初心者プレイヤーの実力と経験に応じた理に適った調整が成されている。このバランスに関しては実の所、前作においても健在だったが、今作ではアドバイスカーソルという強力なサポート機能が実装された事に伴い、より一層、その魅力と絶妙な調整が際立つようになっている。そんな、前作でパッと見では気付き難かった部分が露骨になったのも、今作における進化点の一つとして言えるかもしれない。また、そのような調整が施されているからと言って、絶対にその結果が保障されないのも上手い所。アドバイスカーソル頼りきりで勝てる序盤でも、カードを入れたブックの中身次第では頼ってても勝てない事があるし、元より今作は双六の要素も持ったゲーム。故にターンごとに振るダイスの目によっては寸での所で勝利を逃す、なんて逆転劇が起きたりもするので、どんな戦闘においても緊張感が持続する展開が繰り広げられるようになっているのだ。強力なサポート機能があるからと言っても、結果的に勝利するに当たっては自らの戦況を読む力と運に頼るしかない。同時に、そこにこのゲーム特有の面白さが詰まっている。難易度設定機能に序盤は絶対に相手の戦闘に勝てるという裏の仕込み等の絶対的な保障を設けず、遊ぶという事に注力を注いだその調整具合はまさにゲームとしての形を貫き通そうとしたこだわりの賜物。初心者に遊び易い環境は作るけど、そうサクサク勝ててしまうような難易度にはしないしズルも仕込まない、本腰を入れて挑んで欲しいとも言わんばかりのその練りに練られた作りには、製作スタッフの職人的な意地を痛感させられるばかりだ。イタズラな温さ以上にしっかりとした遊び応えを追求したそのゲームバランスとゲームデザインは、さすがは前作のDS版に連なる新作。サポート機能が増えたとは言え、DS版から何も変わっていないなと、前作経験者ならその分かっているっぷりに安心感を覚えるかもしれない。
だが、何故そこにサポートが成されていないのか?と首を傾げてしまう箇所も。先に挙げたデッキこと、ブック編集がまさにそれなのだが、詳細な解説、編集方針と言ったフォローが何ら成されていない、要は前作と全く変わりがないのだ。一応、ネットワーク機能を用いる事で、特定のコンセプトの元に内容を編集するブックを入手する事ができるというフォローこそ成されているのだが、基本的にプレイヤー任せ。他に属性の相性と言った事についても詳細な解説が無く、序盤からほぼ全ての要素が揃ってしまう辺りにも、フォローを入れるべきだったのでは?と感じてしまうところだ。確かにアドバイスカーソル、ドローストップなどの機能は遊び易さを高める意味でもその効果を発揮している。しかし、それだけで十分と言うのは厳しく、中でもブック編集にフォローが何もないのは重大な見落としと言わざるを得ない。コアな部分でもあるが故、フォローを加えれば更に遊び易く、面白さが理解され易いゲームになっていたはず。何故、そう言った肝の部分はいつも通りなのか。どうもこの点は、意図が分からない感じだ。
また、アドバイス要素とは別にゲームバランスにおいても、強い違和感を覚える箇所が多数。マップ移動時に用いるダイスの目の出方がプレイヤー側が有利になればなるほど低い値しか出なくなり、不利な状況に陥り易くなったり、ストーリーモードの同盟戦において相棒となるCPUキャラクターがプレイヤーを貶める行動を連発してくると言った所が該当する。
特に後者、同盟戦のCPUキャラクターの動きはどうしたらこんな風になるのか、と大きな疑問符が浮かぶほど酷い。解説が遅れたが、今作にも2対2以上のプレイヤー同士が争う『同盟戦』という対戦があり、ストーリーモードにおいてはこの仕様が今回から少し変わり、プレイヤーと相棒それぞれの土地に対して、領地の価値を底上げしたり、クリーチャーを隣のマスへと移動させるコマンドが実行できるようになるなど、より共闘感の強まったものへとリニューアルした。だが、このCPU側プレイヤーのAIが壊滅的に酷く、守りに徹している領地を勝手に売り飛ばしたり、時には最高レベルにある土地から最低レベルの土地へと勝手にクリーチャーを移動させるなど、プレイヤーの反感を誘う行動を次々と展開していくのである。そして、このような行動を取った結果、勝利確定だった流れが負け確定の流れになってしまったり、状況によっては1ターンからやり直しも同然な事態になってしまい、怒涛の延長戦に突入してしまうなんて事がしばしば。そんなまさか…と思うかもしれないが、実際、本当にあり得ないほどの頻度でこれらの展開が今回の同盟戦で起こる。完全に遊びそのものを否定したかのようなものに出来上がってしまっているのだ。その完成度の低さたるや、テストプレイをしたのかと問い詰めたくなるほど。相棒であるのなら、味方側のキャラクターのフォローを務める為に動くのがごく自然なものだと思うのだが、それが全く意味を成さず、それどころか本当の相棒はプレイヤー自身なので、戦闘時は積極的に参加しなくてもいいと言わんばかりの調整になっているのは理不尽の極みだ。しかも、そんな戦闘がストーリーの後半の半分を占めているというのだから洒落になっていない。一応、CPU側のサポートに徹すれば理不尽さを緩和できるのだが、それにしてもこの調整には違和感しかない。数ある今作の欠点の中でも傑出したものと言っても過言では無いだろう。この為にストーリーの後半が異様な高難易度になってしまっているのも酷い。折角、初心者に対するフォローが万全な内容で、こんな欠陥を残してしまったのは致命傷だ。前作はこんな崩壊など無かったのに何故、こうなってしまったのか。
他にも、ストーリークリア後にはレベルアップステージなる難易度の高い戦闘が楽しめるようになるのだが、これもプレイヤー側のハンデで難しくしているだけの雑な調整で、面白味は皆無。むしろ、理不尽さすら覚えるものになってしまっている。カードバランスは一部強力なカードはあれど、前作と同水準を保っており、丁寧な仕事が光る仕上がりになっているのだが、先の同盟戦のバランスの悪さのほか、カードにしても『マーケット』とオンラインを駆使しても、手に入る数が片手で数えられる程度しかないなど、オンライン対戦に挑むにも挑めない調整になってしまっているのが痛い。
実際、『アドバイスカーソル』などのサポート要素導入で、前作以上に遊び易いゲームに進化しているのは間違いなく、豊富なサポート機能の恩恵で非常に入り込め易くなっている。間口の広いカルドセプトという事に偽りはない。だが、肝心な要素の解説が抜けている不手際にメインのゲーム本編におけるあからまさな調整の不足とミスなど、お世辞にも総合的な出来栄えは前作を遥かに劣る。ゲーム自体の独創性の高さに変わりはなく、戦略性の高さからくる中毒性も相変わらずなのだが、調整不足が目につく所為で、途中で冷め易いのも厳しい。発売前、今作のスタッフはこれまで以上にバランス調整に時間をかける事ができたとやり切ったという気持ちを全面に現したコメントを発していたが、本当にこれでやり切ったのだろうか?正直、強い疑問を覚えるばかりだ。それ位、今回は肝心な部分における粗が目立つ。折角、間口が広くなったのに他の所が足を引っ張ってしまっているも同然な有様なのだ。

ボリュームも物量こそ、前作のDS版に迫るほどのものではあるのだが、先のレベルアップステージの理不尽なバランスの所為で、水増し感が強く出てしまっているのが目に付く。シングルプレイだけで考えれば、やり込みの面白さは前作以下と言っても過言では無いだろう。
マルチプレイ、インターネット対戦絡みにしても前作の完成されたシステムを継承してはいるのだが、新規に追加されたボイスチャットが非常に音切れし易く、むしろスカイプを使った方が遥かにマシという残念感溢れる粗もチラホラ。後に更新データ配信で改善されたものの、突然操作を受け付けなくなる不具合があると、致命的なものが幾つか残ってるのも厳しい。とは言え、対人戦の面白さは前作と変わらぬ熱中度。一度始めれば、軽く数時間が吹っ飛んでしまうのみならず、公式でも大会が頻繁に展開されているなど、長く遊べる施策が豊富に成されている辺りはさすがの一言に尽きる。
操作性も前作基準の適切なボタン配置と軽快なレスポンスを継承。地味ながら今作、秒間60フレームで動作する為、スクロールからレスポンスに至るまで、ビックリするほどヌルヌルしているのも見所だ。ただ、その一方でメニューインターフェースのデザインがやたら無機質なものになってしまっている点に関しては、人によっては気になるかもしれない。
グラフィックもDS版のドット絵スタイルを継承している上、作りもあまり改められてないので新鮮味に欠ける。アバターのデザインも基本、ゲーム側で用意されたものが中心の為、Miiが使えると言った3DSらしい試みが成されていないのも寂しいところだ。些細な部分ではあるし、ドット絵故の仕方なさもあるが。反面、音楽は非常に良い出来で、前作とは打って変わったアップテンポで熱い楽曲が揃っている。作曲担当も古代祐三氏から、サガシリーズや聖剣伝説シリーズで知られる伊藤賢治氏に変更されており、主に戦闘系の曲は氏の真骨頂が炸裂した仕上がりとなっているので要チェックだ。

演出周りも前作と変わらず控え目。ただ、ストーリーの会話シーンが少し豪華になっていたりなど、多少進化したところもある。また、スライドデモが追加されたのに伴い、硬派な場面と可愛らしい場面が交互に繰り広げられるようになったのも、ある意味、進化と言えるかもしれない。他にも、ストーリーはオリジナル版に当たる『セカンドエキスパンション』をなぞったものなのだが、キャラクター全般が別人になっており、中には男から女に変更と言った大胆なアレンジも成されているなど、経験者も驚くこと請け合いのネタが仕込まれているのも見逃せない部分だ。
とは言え、魅力的な部分はあっても肝心な所が抜け落ちてるサポート機能、シングルプレイの同盟戦とクリア後の戦闘における致命的に等しいバランス調整のミスとAIのダメダメっぷり、露骨な目の出し方をするダイスなど、総合的な出来は傑作というには厳しく、ギリギリ良作と言った範疇。相変わらず基本的なゲームシステム自体の独自性は高いし、戦略を練る面白さ、そして秀逸な調整を施した初心者向け機能の数々等、優れた部分も多々あるのだが、ゲームの面白さのカギを握るとも言えるバランスの不備がデカ過ぎて、それらの魅力を食ってしまっているのが辛い。初心者プレイヤーに対する遊び易さは間違いなく屈指の域でありながら、そこを引っ張るバランスの不備の数々がもどかしくてならない今作。
決して駄作では無いのだが、薦め難い一本である。初心者向けの作品としては間違いなく適しているのだが、バランスが良くないので遊べば遊ぶほど、このゲームに対して悪質な印象を持ってしまう恐れがある。少々、負担はかかるが、今作を遊ぶのであれば前作の『カルドセプトDS』と一緒に行くのがベストかもしれない。経験者に関してはその必要はないが、それでもバランスに関しては過度な期待は禁物だ。前作はDS本体を持っている方なら遊ぶべきと言わせてくれるほどの出来だったのに、どうしてこうなったのか。いずれにせよ、次回作でのリベンジを待ちたいところである。
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