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≫ナイトメアパズル クラッシュ3D
■発売元 セガ
■開発元 Zoe Mode
■ジャンル パズルアクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、殺傷描写あり
■定価 4179円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ
■3D表示 あり
■総説明書ページ数 23ページ
■推定クリア時間 12〜18時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
精神科学を専門とするルーベンス博士の助手ダニーは、ある日、博士が新たに発明した深層心理分析治療機『CRUSH(クラッシュ)』の実験台にされる。
自分の心を夢の世界として見せられたダニーは、3次元の夢を2次元に単純化(クラッシュ)し、自らの心にある問題を解決していく。ところが、ダニーの心理データを蓄積していくにつれ、『CRUSH』は人格を持つようになってしまう。
果たして、実験台にされたダニーの運命は?!
そして、『CRUSH』が人格を持ち始めた原因とは?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆「見え方の違い」をパズルアクションへと昇華させた、独自色溢れるゲームシステム&デザイン
◆カメラシステムを有効活用した作りと「不可能を可能にする」とも言うべき見た目のインパクトで魅せる、次元切り替え技こと『クラッシュ』
◆数こそ少なめだが、次元切り替えを駆使して難所と突破する独自の体験が楽しめるよう、細部まで丁寧に作り込まれたステージ
◆パズル主体ながら、多彩な仕掛けと差別化で楽しませる作り込みが成されたレベルデザイン
◆次元切り替えのコンセプトを最大限に反映させた、個性溢れるパズルネタの数々
◆同じく、次元切り替えのコンセプトを最大限に反映させた、奇天烈な仕掛け&トラップ
◆いつでも呼び出せるヒント機能を始めとする、豊富で気の利いた救済処置の数々
◆エンディングまでは短めながら、完全攻略を目指すと急激に底が増す、極端ながらもやり応えに富んだ総計ボリューム
◆丁寧且つ、セガならではのセンスが炸裂したローカライズ(特に台詞周りは必見)
◆挙動の重さがネックだが、違和感のないボタン配置など、秀逸な仕上がりの操作性
◆ヒント機能を多用すればサクサク進めていける反面、使わなければ骨のあるパズルが楽しめる、あらゆる層をカバーした難易度設定
◆精神世界の舞台設定と見事にマッチした、不安定で狂ったテイストの音楽
◆地味ながらも、時々「ドキッ」ともさせる演出周り

--- Bad Point ---
◆良くも悪くも、実際の人間の重々しさを再現した操作性(その為、挙動がやや重い)
◆虫嫌いには応える事間違いなしの敵撃破時の演出(地味にグロい)
◆工夫こそされているが、中盤以降にはダレてくるパズル終始のレベルデザイン
◆一部、人によっては不快な印象を抱きかねない用語が使われたストーリーイベントの存在
◆やや曖昧な落下ミス時の判定(どの距離からならセーフなのかが分かり難い)
◆イマイチ魅力に欠ける隠し要素群(全体的に衣装系の要素多めで地味)
▼Review ≪Last Update : 9/8/2013≫
潰せば「ブッチャリ♪」と行きます。

ソフトな感じには一切してません。


2007年に海外でプレイステーションポータブル用ソフトとして発売され、独創的なシステムとゲーム性で高い評価を得たパズルアクション『CRUSH』を3DS向けにアレンジした作品。開発はオリジナル版『CRUSH』に引き続き、Zoe Mode。日本語ローカライズはセガが担当した。

次元を切り替えて不可能を可能にする、斬新なゲーム性とシステムが光る秀作だ。

ゲーム内容は3D視点で展開する、ステージクリア型パズルアクションゲーム。主人公の青年、ダニーを操作し、自らの心の中を基にした奇怪な精神世界からの脱出を目指すというものだ。
収録ゲームモードは3種類。ストーリーに沿ってステージをクリアしていく『ストーリーモード』、課題付きのストーリーモードのステージ攻略を目指す『トロフィーモード』、そして『ギフト』と呼ばれるアイテムをステージ内に配置し、すれちがい通信で相手に課題という形で提供する『ギフトモード』が用意されている。例によって、メインは『ストーリーモード』。精神世界からの脱出を目指し、4つのワールドごとに用意されたステージを攻略していくというものである。ステージのクリア条件は、フィールドに散らばった『マーブル』と呼ばれるアイテムを一定量回収し、出口を塞ぐ蓋を開放してその中に入るというもの。これと言って特に難しい事は考えず楽しめる、単純明快なルールとなっている。だが当然の如く、マーブルを集めるのはそう簡単なものではあらず。回収及び出口までの到達には、精神世界へやって来たダニーが見につけた特殊能力『クラッシュ』を駆使していかなければならない。
その『クラッシュ』こそが今作最大の特色。上記、ストーリー紹介で少し触れてるが、『クラッシュ』とは現在の次元を切り替える能力の事で、3次元であれば2次元に、2次元であれば3次元という具合に現在の視点構成を激変させる事ができる。3Dアクションを2Dアクションに、2Dアクションを3Dアクションに、というと想像し易いだろうか。今作ではそのような能力を駆使しながら、各ステージでのマーブル集め及び、出口への到達を目指していく事になる。
この『クラッシュ』で面白いのが、次元を変化させると地形に大きな変化が起きる事だ。例えば、3次元(3Dアクション視点)で、今、立っている足場から斜め奥の遠く離れた所に、もう一つの足場があったとする。言うまでもなく、その足場にジャンプして渡る事は不可能。どう見ても打つ手無しな状況だ。だが、そんな状況も『クラッシュ』で2次元(2Dアクション)にして、奥行きを無くしてしまえば一瞬で解決。奥行きが無くなる事で、遠く離れた足場は今、立っている足場へと合体。そのまま合体した足場に渡り、再度『クラッシュ』を使って3次元に戻せば、渡る事もできない場所へと移動した事になるのだ。
正直、文章で説明すると少し分かり難くなってしまうので、公式サイトにあるFLASHによる体験版をプレイしてみれば、この能力の面白さがよく分かると思う。そんな個性的過ぎる能力を駆使し、プレイヤーは様々なステージを駆け抜けていく。まさに『2次元と3次元の物の見え方の違い』をテーマとした、奇想天外なパズルアクションゲームになっているのだ。
そんな特殊な能力を駆使して遊ぶ内容なのもあり、登場するギミックは奇抜なものばかり。2次元では壁だったものが3次元だと壁で無くなったり、3次元では壁の模様と思えたものが2次元では足場になるなど、数々のあり得ない光景とトリックが画面いっぱいに繰り広げられる。更にシーンによってはカメラの位置を変更し、足場を作り出す方法が求められる事も。より強烈なものでは次元を変更したら、新たなパズルが現れた!…なんても幾つかあったりと、徹底して見方が変わる事の面白さ、驚きを追求した作り込みが成されている。3Dアクションにおいてはどちらかと言うと、演出の為に使用され易い視点変更の操作。それを今作はそれをゲーム性へ昇華させてもおり、全く新しいパズルアクションを作り出している。また、ゲームに詳しい方ならば、この『クラッシュ』がWiiで発売された『スーパーペーパーマリオ』の『ジゲン技』のパロディと思うかもしれない。確かに次元を切り替えて世界を変える点は共通している。だが今作の場合、3次元では視点(カメラ)を自由に変更できるほか、その視点の位置によって次元を変更した際の変化が変わってくる為、実際の手応えは全くの別物。『スーパーペーパーマリオ』が2次元からのアプローチだったのに対し、こちらは3次元からアプローチしていると言ったところだ。そんな作り故、似ているところはあっても感じ方は別物。実際にプレイしてみれば、その同じようで違うがよく分かるだろう。もっと分かり易いのは、今作がパズルアクションである事だが、それは特に語るまでもないとして。
こんな具合に今作は不可能な状況を可能にする事が求められる、独特過ぎるパズルネタを持ち味とした内容に仕上げられている。乱暴に言えば、ナポレオン的な発想と考え方が求められてくるゲーム、と言ったところだろうか。3D視点を特徴とするゲームでプレイ環境の構築、派手な演出を実現させる際に活用されるカメラ位置、操作を遊びとしてちゃんと意義あるものへと仕立て上げた、説得力溢れるゲームデザイン。そんな魅力的で、ありそうで無かった遊び応えが光る、ユニークなパズルアクションゲームに仕上げられている。

例によって、今作の魅力は次元切り替えこと『クラッシュ』が演出する、類を見ないゲーム性とギミックの数々だ。
特に3次元から2次元へと切り替え、バラバラの地形が一つに融合する構図には、確かにそうだと納得してしまう説得力の高さ、そんな無茶なと突っ込みたくなる馬鹿馬鹿しさが満載。本来、あり得ない現象なのにその通りだと思ってしまう世界の変わりっぷり、それによって道が開かれていくのおかしさは、まさに今作でしか味わえない衝撃と笑いに溢れている。
更にこの『クラッシュ』に関しては、3D空間を舞台としたゲームという基本形とその強みを最大限に活かした作りになっているのも見逃せない。様々な角度から眺められる視野の広さ、視点の方向の多さと見方によって同じ地形でも違う絵になるという特色。それらの3Dならではのものがあるからこその魅力が『クラッシュ』には詰め込まれており、2Dのゲームでは到底不可能とも言える映像表現、ゲーム性を確立させている。更にカメラ変更という、3Dアクション系のゲームではどちらかと言うと、プレイ環境を安定させる為に用意され易い操作をパズルを解く為のカギとして位置付けているのも新鮮。どの方向に視点を合わせ、クラッシュで次元を切り替えて謎やパズルを解くか、と言った新しい考える面白さと手強さを演出している。単に今風の見た目にする狙いの為ではなく、新しいゲームにする為、3Dを使う。その高い説得力と新たなパズルアクションを創造する為という意気込みに溢れた作りには、執念すら感じさせる。その隙のない作り込み具合、必然性の要求と言った辺りは、まさに職人技の結晶と言ってもいいほど。この視点でなければ成り立たないと思わせる完成度の高さは本当、圧巻の一言に尽きるばかりだ。
また、ステージ構成ことレベルデザインも秀逸。多少、ネタバレになるが、基本的には今作、全編に渡ってマーブルを集めてゴールへの道を切り開いていく事に終始する。それもあってか展開は全体的に地味で、派手さに欠けるのだが、淡々とし過ぎない為の工夫は万全。ステージが進む度に新たな仕掛け、能力が解禁されていくなど、程好くダレさせない作りになっている。パズルネタ、仕掛けもユニークで、次元切り替えという特殊なテーマを取り扱っている今作ならではの個性的に富んだものが満載。ボールを次元切り替えを使いつつ、指定の位置まで運んだり、時には次元切り替え時の地形変化を狙って進路を塞ぐ敵を潰したりなど、新鮮なネタの数々で楽しませてくれる。そのパズルの難易度も、行き先が分かり難くなった際に地形の形を見た上でのクラッシュを心掛けていけば、大抵のステージは攻略可能な理に適ったバランス。更に単にステージをクリアするだけではなく、隠された『トロフィー』を集める収集要素など、リプレイ性を高めるおまけも多数実装。それを狙ってプレイすると、途端に難易度が跳ね上がり、頭をフル回転させて挑まなければならなくなるのも面白いところだ。
淡々として、同じことの繰り返しになるとは言え、ステージ上での違いを出す為の作り込みは隙無し。それでいて、次元切り替えを特色とするゲームならではのギミックを設けると言った工夫も申し分なく、確かな遊び応えと満足感を提供する抜かりのなさ。それでももう少し、派手な展開(敵と戦う事に特化したステージなど)があっても良かったが、新しさだけに力を注がず、基本部分もしっかり抑える作り込みの深さは秀逸の一言。新しさばかりでなく、ゲームとしての面白さも抜かりなく突き詰める辺りにも、職人の技を痛感させられる。
それでも、基本がパズル攻略に集中する為、中盤以降に腰を据えないと拙いステージがあるのはタマにキズ。だが、パズルが苦手な人の為にヒント機能を用意する救済処置も設けられているので、ワリと適当なプレイでもエンディングまで確実に到達できる。ヒント機能に頼り過ぎると、自らのプレイレコードに汚点が付くという辺りも完全クリアを目指したいコアなプレイヤーの挑戦意欲を刺激するものとして完成されているだけでなく、何処となく最近の任天堂のゲームっぽい味が満ち溢れているのも面白い。
3D視点である強みとそれ故の手応えを上手く演出しているクラッシュ、隙無く作り込まれたステージ構成ことレベルデザイン。その丁寧な作りと新たなパズルアクションを世に放ち、前例の無い体験をプレイヤーに提供しようとする意気込みの熱さは特筆すべきものがある。地味なゲームなのは否定できないが、その遊び応えは申し分のないレベル。まさに地味だけど、新鮮で楽しいパズルアクションを地で行った一品言ったところか。売りから細かい部分に至るまで、こだわりと熱意がそこかしこに込められたゲームに仕上げられている。パッケージの見た目からは想像し難いが、実は結構、侮り難いものを持った内容なのだ。

その他、操作性に関してはやや重め。特にジャンプが実際の人間とほぼ変わらない跳躍力である為、要所要所で微妙な位置調整が求められてくる。如何にも海外製ゲームらしい仕様だ。ただ、ボタン配置自体はシンプルで、これと言って複雑なアクションなども無いので、取っ付き易さは上々。それなりに触り心地の良いものに完成されている。
ボリュームも『ストーリーモード』をエンディングまでクリアするだけなら、大体10時間以内と短め。ただ、先に挙げた『トロフィー』集め、ノーヒントクリアなどのやり込み要素は充実しており、それを極めるとなると倍以上の時間が費やされること必至の手応え。クリアするだけなら短め、極めたい人には試練の道が待つ、何ともニクい内容には、人によって任天堂のゲームを髣髴とさせるだろう。意外とやり応えありだ。
グラフィックに関しては並。これと言って特筆すべきところは無い。ただ、立体視は概ね良好な上、次元を切り替えるという基本的なゲーム性との相性も宜しく、このゲームにしてこの表現アリと言えるものに仕上がっている。
音楽に関しては精神世界が舞台というだけに、何処か不安定で狂ったテイストの曲が多いのがユニーク。曲自体も基本的には雰囲気重視で印象は薄めなのだが、何処と無く癖になる魅力がある。また、不安定で狂っているというテイスト故、何処と無くスーパーファミコンの『サイコドリーム』的な味わいがあるのも面白いところ。あの作品の音楽が好きという方なら、今作の曲はチェックしてみる価値があるかもしれない。

演出周りもパズルを解いている際は地味だが、ロード画面の映像、敵を倒した際のエフェクトなど、押さえるべき所はしっかり押さえた仕上がりになっている。ただ、敵撃破のエフェクトは人によっては吐き気を催しかねない。何せ、今作の敵は虫。しかも、倒すと「ブッチャリ♪」と緑色の体液を撒き散らすのだ。今作が12歳以上対象である理由は恐らくこれである。なので、今作をプレイしたい方で、虫が大の苦手という方は悪いことは言わない。止めた方が良いだろう。このパッケージなら軽いでしょと甘く見てはならない。ワリと凄いので、しつこいが虫嫌いの方は本当に要注意だ。
その他、ストーリーも翻訳が丁寧で、センス溢れる仕上がりになっているが、肝心の内容がぶっ飛んでいる上、一部、人によっては不愉快極まりない単語が使われている場面が幾つか。この辺もまた、好みが分かれるかもしれない。
そんな演出上の問題点、ストーリー、地味さなど、色々と褒められない所もあるのだが、ゲーム自体は良作レベルと言い切れるクオリティ。斬新なアイディアと丁寧な作り込みが光る新作として見事に完成されている。3D視点特有の強みなどを活かしたクラッシュ、丁寧に作り込まれたステージ構成と、個々の部分の気合いの入れ方は秀逸なものがある今作。
パズルアクションが好き、少し変わったゲームをプレイしたいという方なら、是非ともお試し頂きたい一品だ。パッケージからして怪しい雰囲気を醸し出しているが、中身の手応えは本物。虫嫌いで無ければ、迷わずゴーだ。
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