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≫新・電子立国第四回:ビデオゲーム巨富の攻防
■放送局 NHK総合
■放送日 1996年1月21日午後9時〜午後10時15分
■出演 三宅民夫、相田洋
▼番組概要:新・電子立国シリーズとは
1995年10月から1996年6月にかけ、NHK総合テレビの『NHKスペシャル』にて放送されたドキュメンタリー番組。全9回。
ハリウッドのモーションキャプチャー技術、マイクロソフトの設立とMS-DOS開発秘話、松下電器産業(現パナソニック)や日産自動車、東芝と言った大手企業の機器用ソフトウェア開発の現場紹介など、主にソフトウェアの開発に主眼を置いた特集を放送した。
出演はNHKアナウンサー(現エグゼクティブアナウンサー)の三宅民夫、当時NHK職員で、2010年現在はフリーのテレビ番組ディレクターの相田洋の二名。三宅氏は出演のみならず、VTRの語り(ナレーター)も兼任した。

この新・電子立国シリーズで1996年1月21日に放送された第四回にて、ビデオゲーム(テレビゲーム)に関する特集が組まれた。正式名称は『ビデオゲーム 〜巨富の攻防〜』。
▼ビデオゲーム誕生から後の発展を記したドキュメンタリー
番組では、世界で初めて作られたビデオゲーム『スペースウォー』、ノーラン・ブッシュネル氏によるアタリの創業、『スペースインベーダー』を始めとするアーケードゲーム発展の歴史、世界で初めて発売された家庭用ゲーム機『Atari2600』の登場と1980年代初期に起きた市場崩壊『アタリショック』など、主にゲーム業界の誕生と発展・衰退の歴史を特集。ノーラン・ブッシュネル氏を始め、当時、業界の最前線にいたクリエイター達のインタビューを交えながら、その時の世間の情勢などを紹介した。
後半からは日本に視点を移し、『ボンバーマン』などで知られるハドソンの創業時代に関する特集、『Atari2600』誕生によって生まれた数々の家庭用ゲーム機とセガの裏話、アーケードゲーム『ドンキーコング』による任天堂のゲーム業界進出、アタリショックの経緯を踏まえて誕生したファミリーコンピュータ(ファミコン)の成功などを紹介。当時、街で配られていたチラシからテレビCM、会見模様まで、数々の現物から映像資料も登場し、当時の最前線にいた人物のインタビューを交えながら、産業の今後などが語られた。また、違法コピーにまつわる技術も紹介され、『アタリショック』を背景に始めた、任天堂の違法コピーに対する技術、対策などが終盤にて語られている。

一体、ビデオゲームはどう言ったきっかけで誕生し、そしてどんな歴史を辿り、今日に至るまでの産業へと発展したのか。それを知るにはまさに打って付けと言っても良いほど、濃い情報を詰め込んだ内容で構成されている。
特に映像資料の充実振りは群を抜いており、世界で初めて作られたビデオゲーム『スペースウォー』や『PONG(ポン)』など、基盤から台も含め、当時の現物そのままが紹介されているのはマニアにはたまらないものがある。有名な市場崩壊、『アタリショック』の模様も簡単ではあるが、当時のアメリカ国内の報道と合わせて紹介しているのも貴重だ。
更にゲーム好き…主に任天堂好きにはたまらないのが、まだゲーム産業に入ってない頃に任天堂がテレビで流したCMが数本、紹介されていること。『ラブテスター』に至っては、ほとんどフルで紹介されており、当時を知る人ならばノスタルジーを喚起させられる。ファミコンのCM、『スーパーマリオブラザーズ』のCMも同じくフルバージョンで紹介されており、そちらもまた任天堂好きには見逃せない見所である。
▼豪華なインタビュー出演者
また、この番組を語るにおいて、外せないのがインタビューVTRの出演者達。アタリの創業者であるノーラン・ブッシュネル、ハドソン創業者にして社長(当時)の工藤裕司と中本伸司、スペースインベーダー生みの親の西角友宏、任天堂の社長(当時)山内溥、ファミコンの開発総責任者であった上村雅之、マリオ生みの親でお馴染みの宮本茂、更にアメリカ任天堂からは当時の社長、荒川實にハワード・リンカーンと、とにかく顔ぶれがあまりに豪華。業界の大物中の大物と言うに相応しい人物達が、過去の裏話や現在のゲームに対する思いなどを熱く語っている。

更に『スペースインベーダー』のインタビューでは、プログラムソースを記述した資料を西角氏自ら紹介、アーケード版『ドンキーコング』のインタビューでは、宮本氏が開発中に描いたイメージスケッチ、初めて描いたマリオの絵がインタビューと同時に紹介されるなど、マニアにはたまらないサービスシーンも多々流れた。2010年現在で考えれば、これらの出演者の方々から話を聞くのは絶望的と言っても良いほど(特に任天堂の山内氏とハドソンの工藤氏のインタビュー映像は貴重)。よく、これほど大物から裏話を聞けたなと、NHKの底力を痛感させられるだろう。
▼こんな一幕も放送
その他、番組冒頭ではビデオゲームの歴史を語る前に1990年代のゲーム開発現場の模様を紹介。そこでハドソンが1995年にリリースしたスーパーファミコンソフト、『スーパーボンバーマン3』の開発現場、デバッグ模様、クリエイター達へのインタビューが行われた。
このVTRでは、『スーパーボンバーマン3』のディレクターであり、ボンバーマンシリーズの制作総責任者である藤原茂樹氏も登場。ボンバーマンはどう言った発想を元に生まれたのか、その裏話を簡単ではあるが、語っている。

更に番組では、『スーパーボンバーマン3』がROMカセット構造の一例として挙げられた。しかも、その紹介の際にボンバーマン3のROMカセットが「パカッ」と解体された。


冒頭より。
この後にソフトが解体された。

スーパーボンバーマン3ではその他にも、ルーイのドット絵作成工程も紹介。簡単ではあるが、ゲームのキャラクターがどのようにして作られるのかが語られている。


ルーイのドット絵作成中の画面。
三宅氏と相田氏は『カンガルー』と呼んでいた。

ちなみにこの当時は既にスーパーファミコンが末期であり、プレイステーションやセガサターンなどの次世代機が台頭してきていた。そのプレイステーション、セガサターンも登場したが、あくまでも当時の主力ハードに絞るスタンスがあってか、番組内ではスーパーファミコンを中心に、ハード構造の分析などが行われている。
▼アーカイブズ化されてないのが不思議な傑作ドキュメンタリー
ゲーム業界の歴史、製作現場の模様、著名なクリエイターへのインタビュー映像から貴重な資料まで、ゲーム好きにはたまらないシーンが満載のこの番組。残念ながら映像ソフトは発売されてなく、2010年現在『NHKアーカイブズ』でもこの回を見ることはできない。既にテープが無くなってしまっているのか、事情は定かではないが、これほど見所満載の番組がアーカイブズ化されてないのは何とも残念な限りである。

しかし、いずれアーカイブズ化する可能性も無きにしも非ず。もし、そんな機会が将来訪れたら、ゲームが好きで仕方がない人は是非、ご覧になって欲しいと思う。
ゲームはどんなところから生まれ、そして発展して行ったのか。
ゲームの歴史を知る資料として、この番組ほど優れたものは他にない。
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