最初に『Xenogunner』を知ったのは2018年の1月。
Twitterでそのような名前のゲームが現れたとの報せを見かけ、その迸るトレジャー作品の匂いに魅了され、流れるがままにitch.io経由でダウンロードした。
ただ、被ダメージの大きさ、自機当たり判定の広さ、ダメージ後無敵時間の短さ、ゲームパッド非対応(キーボード+マウス)の点が引っかかり、微妙なゲームとの感想に終わった。爆発系の演出の物足りなさも一因している。
しかし、ボスバトル特化のステージ構成、回復アイテムの出現率を設定できるオプション、発動中無敵の「ワープダッシュ」を活用した弾幕の回避など、色々光る要素があったのも事実。
そんな『Xenogunner』が2020年の4月、多数の新要素を加えたパワーアップ版になってSteamに参上するとは誰が予想したか。肝心の中身もその特徴に恥じぬ密度で、やり応え抜群だった。フリーゲーム版と違い、Xbox 360コントローラを始めとするゲームパッドをサポートしているのも嬉しい変更点……
……と思いきや。最適化が不十分。結局、キーボード+マウス操作推奨の作りで、ズッコケるしかなかった。メニュー周りが特に度し難い。マウスカーソルをスティックで動かし、項目選択を行うのが煩わしすぎる。なぜ、ゲームパッドに対応させながら、こんな強引に割り当てた仕組みにしてしまったのか。
もっと度し難いのが、パッド設定で操作している時にキーボード側の何らかのキーを押せば、強制的にキーボード+マウス操作へと切り替わること。こうなるとオプション経由で再度、ゲームパッド操作に設定し直す羽目になる。
さすがにこれはない。というか、完全に不具合の類なのに放置されたままとはいかに。
(※現時点でもアップデートによる修正は行われていない)
肝心のアクションステージの操作は、Steamで配信されているラン&ガンの傑作『Bleed』2作に準拠した設定(Xbox 360コントローラだと右スティックを倒すと射撃)。特に不満はない。キーコンフィグも備わっているので、自分好みの配置にもできるなど、結構痒い所に手が届く仕上がりだった。
それだけにこの不具合がいかんともしがたく。これで「フルコントローラサポート」を謳わないでよ。メニュー周りの操作にしても、この煩わしさはダメでしょと言いたくなるほど使い勝手が悪いし。
フリーゲーム版の難点が解消されたと思ったら、新たな難点が加わるとか、あんまりすぎる。今からでも遅くないから、この問題は直してくれないものかと思う。(というか、直接サポートで投げたのに対応されないのが……)
これじゃ、パスワードコンティニュー時にパスワードを入力するのも怖くてできない。
(※本作はパスワードコンティニュー形式で、特殊なワードをキーボードで直接入力する形式になっている。当然、その時にキーボードを使えば操作設定は……以下、お察しください)
操作の問題を除けば、後は細かい不満がある程度。フリーゲーム版当時より特徴としていた、ボス戦特化のステージ構成とハイテンポな展開は、新ステージの追加も相まってより魅力が深まっている。具体的には意表を突く展開(※ボス戦と道中が並行、分岐、シューティングなど)が登場し、起伏が増した。
3つ+αのエピソードごとに用意されたステージ兼ボス戦を攻略する構成になったのも大きい。この形式になったことで可能になったアイディアもふんだんに盛り込まれている。当然、ステージにもボスにも使い回しはほぼ無し。後者は特にその点が強調されており、ボスバトルにこだわった本作の個性が強く滲み出ていた。
プレイヤーキャラクターが2人になり、1粒で2度おいしい作りになったのも大きな進化。これにより、全体のボリュームも倍増し、パワーアップ版に恥じぬ遊び応えが実現されている。(本当に)地味ながら、キャラクターデザインが可愛らしくなったのも進化のひとつ。これに関連し、デモシーンも挿入されるようになってストーリー性も強化されている。残念ながら、日本語には非対応だが。
ただ、デモはエピソードの始めと終わりだけで、ステージ攻略中には挿入されない。
なので、全く読めなくてもほぼ支障なしなのが救い。
他にメガドライブ作品を強く意識したグラフィック、音楽はフリーゲーム版から変わらぬ魅力に富んでいる。新曲や新たな背景パターンも追加され、パワーアップ版特有の違いを感じられるのもイイ。回復アイテムの出現率を調整できるオプションも充実。戦闘後に体力が全回復するかまで決められるのには「そこまでやるか」の一言だ。
反面、自機の当たり判定、被ダメージの量、軽すぎる爆発音などのフリーゲーム版から引き継がれてしまった難点も。爆発音と被ダメージ量は我慢するとして(※後者はオプションにあるダメージ後の無敵時間設定で緩和できる)、当たり判定はもう少し縮めて欲しかった。また、前述のパスワードによるコンティニューも煩わしさが勝る。そもそも、キーボードを使わないと入力できず、ゲームパッド操作が切り替わる問題から、気軽に使えないのが問題だ。キーボード+マウス操作を受け入れたなら、黙って見過ごせる点かもしれないけど、そうでもない人の場合は……。
まだまだ粗いと感じる部分があるので、手放しに良作とは言いにくい。だが、文字通り手に汗握るボス戦が沢山楽しめる作りは唯一無二。そこに散りばめられたアイディアの数々も圧巻だ。難易度も高めながら、複数形態に渡るボスは敗北しても撃破後から再開できるなど(※オプションで無効化させることも可能)、意外に突破口が作りやすいバランスになっているので、ハマれば延々と戦い続けたくなる魅力がある。
『ガンスターヒーローズ』の多彩な武器を使い分けて強敵を打ち倒す快感、『エイリアンソルジャー』の熾烈なボスバトルが好きな人なら間違いなく刺さる1本。
興味があればぜひ、Steam経由でどうぞ。