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≫カドゥケウス NEW BLOOD(Wii)


■対応機種:Wii
■発売日:2008年1月17日発売
■価格:5800円(税別)
≫メインレビュー

© ATLUS CO.,LTD. 2007 ALL RIGHTS RESERVED.
▼Introduction ≪Last Update : 5/17/2020≫
■日本からアメリカへ。海外医療ドラマ風のカドゥケウス新作

Wii本体のローンチタイトルの1本として発売され、高く評価されたSF外科手術アクションゲーム『カドゥケウスZ 2つの超執刀』。海外では日本以上の支持を集め、40万本強のセールスを記録するに至った。そんな同作をベースにした完全新作として発売されたのが『カドゥケウスNEW BLOOD(ニューブラッド)』である。



今作の最大の特徴にして、前作からの変更点は世界観。初代DS版も含め、アニメっぽさのあった過去作とは異なる、『ER 緊急救命室』に代表される海外医療ドラマを髣髴とさせるものへと大きく一新された。合わせて主人公もアメリカ人のマーカス・ヴォーンに交代。さらに前作で第二の主人公を務めたミラ・キミシマのポジションに、マーカスの相棒の女性外科医・ヴァレリー・ブレイロックが当てられた。関連して手術(オペ)中の指示全般を担当する看護師も新キャラクターのエレナ・サラザールに変更されている。

ストーリーは北アメリカ・アラスカの「モンゴメリ記念病院」に勤務するマーカス、ヴァレリー2人の医師が、ある事件をきっかけに医療機関「カドゥケウス」へと入局。「スティグマ」と名付けられた謎の病の脅威に立ち向かうというものである。ちなみに舞台が日本からアメリカへと変更されているものの、基本的な設定と時間軸は前作から続くものになっている。「カドゥケウス」の存在が何よりもその証拠だ。ちなみに正確には前作から10年後の未来である。例によって、前作の主人公である月森孝介、利根川アンジュの2人も本編終盤にゲストの形で登場する。10年後ということで、それなりに年齢を重ねた姿になっている(さらに立ち位置も変わっている)のだが、これ以上は本編を見てのお楽しみ。

世界観が一新されたのとは対照的に、ゲームの作りは前作『カドゥケウスZ』を踏襲。リモコンとヌンチャクを活用する独特、且つ直感的な操作スタイル、難易度選択機能、リトライ機能などの各種フィーチャーも続投している。
ただ、今回はメインストーリーがマーカス、ヴァレリー2人とも共通の構成に。前作のように月森、キミシマごとに用意された個別のエピソードをプレイする形式ではなくなった。それに関連して「キャラクターチェンジ」のシステムが新規に追加。オペごとにマーカス、ヴァレリーのいずれかを選択してプレイする形になった。ただ、全てのオペで選択可能という訳ではなく、一部、どちらか1人を強制的に選択して挑むオペも幾つか用意されている。
また、マーカス、ヴァレリーそれぞれの基本性能は前作の月森、キミシマと共通している。唯一、一定時間、画面を特殊な状況下に変貌させる「超執刀」の効果が異なる(※マーカスは時間が遅くなる、ヴァレリーは傷を治す度に患者のバイタルが回復する)程度だ。選んだキャラクターごとに扱える器具が変わるなどの差別化はされていない。仕組みとしてはなかなか魅力的な新要素になっているが、その割には若干、味気ない作りに終始してしまっている。

しかしながら、各オペの評価が個別扱いになる関係で、全体のボリュームは前作の倍以上に増強。全オペ最高評価クリアを目指すとなると、2人分攻略しなければならないので、やり込むとなるとかなり大変。また、今回は「スコアアタック」なるチャレンジステージも追加され、そちらもやり込むなら2人分攻略しなければならないなど、まさに試練。ゲーム周りの変化は少ないものの、やり込み周りはまさに「玄人向け」と言わんばかりの変化を遂げている。



■さらなる手応えを求めるプレイヤーに向けた”玄人向け”仕様

そんな「玄人向け」が今作最大の特徴にしてセールスポイントである。
ボリュームだけでなく、以下の部分も前作以上に玄人向け仕様に変貌している。

◇難易度
前作同様、難易度はイージー、ノーマル、ハードの3段階を選べ、本編攻略中も自由に切り替えられるようになっている。だが、今回はイージーが事実上のノーマルとも言えるほど、全体の難易度が上昇。特に中盤以降は初心者殺しのオンパレード。DS版と前作(Z)を難なくクリアできたプレイヤーすら心にヒビが入りかねないほど、苛烈なバランスになっている。しかも、今回は患者のバイタル(体力)最大値も気持ち低め。
なので、ほんの僅かな手違いがそのまま致命傷に繋がってしまうことも……。

◇「ギルス」改め「スティグマ」
前作に謎の寄生虫「ギルス」の亜種に当たる存在。序盤終わりから登場する。
全体的にギルス以上に厄介な能力を持つ種類が多く、非常に手ごわい。しかも恐るべきことに、本編には臓器移植をこなしながら、2種類のスティグマを相手にする修羅場に等しいオペまで用意されている。
しかも、最も低い「イージー」ですら苦戦必至。ノーマル以上は……お察しください。

◇複数名担当オペ
前作にも複数名の患者を診るオペがあったが、今回はその量が増えている。
そもそも、まだゲームが始まって間もない序盤から出てくる。
しかも、例によって2人目から厳しい展開に陥るという構成である。慈悲なし。

◇最高評価獲得条件とその難易度
全体的な難易度上昇も相まって、最高評価(XS)獲得も非常に難しくなっている。
どう考えても超執刀なしではクリア困難なオペで「超執刀を使っちゃダメ」など、その条件も鬼畜としか言い様のないものが多数。よくも悪くも、高難易度に定評のあるアトラスの性癖(?)が発揮されたものにまとまっている。



■ある意味、アトラスらしい難易度へ?

カドゥケウスシリーズはDS版の初代より、ゲームとしての手応えもさることながら、人の命に触れる医療ゲーム特有の「命の重み」をダイレクトに感じやすくするため、意図的に難易度を高くしている所があった。それは難易度選択機能を新規に設けた前作においても変わらず徹底。さすがに「イージー」でプレイした時は優しくなるものの、僅かな手違いが致命傷を招くスリリングな手応えは健在だった。今作もその路線は踏襲しているのだが、全体的にはゲームとしての手応えを重視する意図が感じられるバランス。先にも触れたアトラスの性癖”ドS”な一面が露わになったまとめ方になっている。

何故、このようなバランスになったのか。
その背景には前作の海外での大ヒットが起因していると考えられる。基本的に海外では難易度の高いゲームが好まれやすい。また、セールスの面でも倍近い差を付けている。となれば、販売戦略的に見て、海外に寄ったバランスにするのが適している……と判断し、今回の「イージー」ですら難しい難易度を追求するに至ったと思われる。憶測でしかないが、現に世界観が海外寄りになっていることからして、何らかの影響があったのは明らかだろう。そしてこの結果、前作で確立された”誰もが遊べる”バランスは消え失せ、ハードルの高い仕上がりになってしまった。インターフェース周りは前作を踏襲しているので快適ではあるのだが、それがあったとしても厳しさに変化はない。

そんな訳で、今作は初心者に間違ってもお薦めできない内容になってしまっている。序盤はまだ落ち着いているものの、その終わり辺りから高度なテクニックが求められてくるので、アクションゲームをどれだけ遊んでいるかの経験値が物を言う。「ノーマル」以上の難易度であればなおさらだ。
正直、前作の「ハード」を攻略できたプレイヤーでも、今回は悲鳴をあげてしまうかもしれない。

とは言え、救済措置周りは万全だ。特に今回もうひとつの新要素「二人同時プレイ(協力プレイ)」は、只でさえ困難な手術を乗り越えたい際のお助け機能として、大いに活躍してくれる。同時プレイにより、一人では厳しいオペも軟化するので、周りに協力者がいるのなら、この手を使ってプレイを進めれば涙を流すことなくゲームを楽しめるかもしれない。



■曲がりなりにも続編。前作からの改善が図られた箇所も多数

それに今作は曲がりなりにも続編である。
前作から改善された箇所も多数ある。

◇オペのバリエーション増強
DS版、前作ではゲーム中盤辺りから『ギルス』のオペが中心となり、展開がワンパターン化してしまう問題があったが、今回は序盤から終盤にかけ、オペが一つに偏りらないよう、全体の構成を大きく見直し。一度経験済みのオペでも、周囲の環境を変えたりするなどの工夫が加えられ、飽きの来ない展開が楽しめるようになった。

◇新しいオペの追加
臓器移植、ペースメーカー設置、堪能摘出などの新しいオペが大量に追加。
先のバリエーションに富んだゲーム展開に華を添える。

◇一部、医療器具の性能向上
エコーの操作が簡略化。Aボタンを連打せず、リモコンをポイントするだけで、患部の異変を確認できるようになった。また、ヒールゼリーの効果範囲も拡大している。

◇音楽の強化
前作以上に楽曲の数が増え、オペの臨場感がパワーアップ。
曲自体もやや単調さのあった前作から一転し、メロディアスなものになっている。

◇フルボイス化
前作では掛け声だったボイスが全編フルボイス仕様へと進化。イベントデモのみならず、オペ中もキャラクターがバリバリ喋るようになった。さらに各種病気の処置法も喋りながら説明してくれるのもあって、遊びやすさも向上している。

声優陣も豪華だ。主人公のマーカス役には、海外ドラマ『24 TWENTY FOUR』のジャック・バウワーの吹き替え、またアニメ『名探偵コナン』の毛利小五郎(※二代目)役で知られる小山力也、相棒のヴァレリーには同じく海外ドラマ『ダーク・エンジェル』のマックス役などで知られる冬馬由美を起用。看護師のエレナにはアニメ『武装錬金』の津村斗貴子役、アニメ『しずくちゃん』シリーズのうるおいちゃん役などを代表作とする柚木涼香が演じている。脇を固めるキャラクター達にも飯塚昭三、茶風林、大塚芳忠、小杉十郎太など海外ドラマへの出演も多いベテラン勢を起用。



■シリーズ随一の歯応え、達成感を秘めた秀作

全体的に初代DS版に並ぶか、それ以上とも言える程度にハードな仕上がりになっている今作。しかしながら、システム周りにおいては続編ならではの正統進化を遂げた部分が多数あり、オペのバリエーションも増し、フルボイスの導入が実施されたことにより、シリーズの完成形が誕生したと言わんばかりの仕上がりになっている。

ただ、難易度の上昇で間口が狭まってしまった感は否めない。
特に標準難易度の「ノーマル」は、もはや「鬼ですら泣く」と言ってもいいぐらいだ。
海外でヒットしたから、そちらに合わせた難易度にするのは商業的に見て適切な判断だが、さすがにイージーまで苛烈にするのはやり過ぎだったとしか言い様がない。結果的に”玄人向け”の名が現す通りの出来になってしまった。

ただ、結果的に海外でのセールスは前作に並ぶ30万本強のヒットを記録。高難易度路線は間違っていなかったことが証明される形になった。なお、日本国内は『大乱闘スマッシュブラザーズX』の発売一週間前と、非常にタイミングの悪い時期の発売になってしまったのもあり、厳しい結果に。
状況が状況ゆえに単純比較はできないが、日本と海外の差が決定的に現れた形だ。

色々と厳しいことを書き連ねてしまったが、それでもゲームとしての出来は水準以上。何より、難易度の高さもあってシリーズ随一の歯ごたえと達成感がある。これまでの初代カドゥケウス、前作カドゥケウスZの難易度が「物足りない!」と感じた人は是非、チャレンジしてみていただきたい秀作だ。
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