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≫超執刀カドゥケウス(NDS)


■対応機種:ニンテンドーDS
■発売日:2005年6月16日
■価格:5040円(税込)<Best版:2980円(税込)>
≫メインレビュー

©ATLUS 2005
▼Introduction ≪Last Update : 1/19/2020≫
■全てはここから始まった…。アトラス医療ゲームシリーズ第一弾
2004年12月2日、二つの画面とタッチスクリーン、マイクによる音声入力など、特殊なインターフェースを採用した任天堂の新しい携帯ゲーム機『ニンテンドーDS』が発売。付属のタッチペン、指などで画面に直接触れ、各種操作が行える独自性で話題を呼び、好調な売上を記録した。そして、ハード特性を活かしたタイトルも任天堂・サードパーティを問わず豊富にリリースされ、それまでの携帯向けゲームにはない、独自の魅力を持つタイトルが世に輩出されていった。
そんなニンテンドーDSの発売から約半年が経過した2005年6月16日。真・女神転生シリーズ、ペルソナシリーズなどで知られるアトラスから、ニンテンドーDS向け完全新作タイトルが発売された。その名も『超執刀カドゥケウス』。

西暦2018年、死に至る奇病『ギルス』が蔓延。医療の裏の歴史を支え、あらゆる病の殲滅を目的に活動してきた医療機関「カドゥケウス」は、この脅威に屹然と立ち向かっていた。
北里病院に勤める新米外科医で主人公の月森孝介は、ある患者の手術がきっかけとなり、カドゥケウスへ入局。仲間達と共に、ギルスの脅威に立ち向かっていことになる……というのが、大まかなストーリーである。

手塚治虫の『ブラック・ジャック』、永井明原案・吉沼美恵医療監修・乃木坂太郎作画の『医龍 Team Medical Dragon』など、今日様々な『医療』(手術)をテーマとした漫画(アニメ)、ドラマは数多く作られているが、ゲームに関しては、あまりそのような作品が発売されずにあった。「人の命」を取り扱う、極めて特殊な題材であるがため、インタラクティブ性なる独自の特徴を持つゲームとは相性が宜しくなかったからと思われる。それに、実際に手術をプレイヤーに体験できるゲームを作ろうにも、これまでのゲームコントローラではゲームデザイン、操作性の自由度などの点で様々な制約が生じる。幾ら本当に手術をしている環境を作ろうとも、自分の手で動かすのでなく、コントローラを介して操作する事になるので、どうしても嘘っぽくなってしまう。またプレイアビリティの面でも、操作が煩わしくなるなどの問題が生じるのもあり、コントローラ操作で手術を体験させるにも無理があった。

そう言った問題が解決し難かったのもあってか、医療をテーマにするゲームはそれほど積極的に作られなかった。だが、一本も出なかった訳ではない。歴史を辿れば、PC98で発売された伝説的な手術ゲーム『life and death(ライフアンドデス)』、『ポケットモンスター』シリーズで知られるゲームフリークが開発したプレイステーション用ソフト『クリックメディック』など、独自の工夫を凝らしたゲームが発売されている。
しかし、いずれも大きな人気を博すには至らず、知る人ぞ知る名作として扱われているのが実状である。

結局のところ、ゲームにおける医療は『Dr.マリオ』のような「ばい菌退治」が一種の限界だったのだ。だが、そんな限界もニンテンドーDSの誕生によって打破された。タッチペンで操作性の自由度は格段に向上し、さらにタッチスクリーンの登場で患者そのものに「触る」ことも可能となり、本物の手術がゲームで表現できるようになったのである。

それに目を付けた、ペルソナシリーズで知られるアトラスのプロデューサー・橋野桂氏は、「タッチペンをメスに見立てて遊ぶ手術ゲーム」の企画を立案。手術アクションゲームなる新たな一ジャンルを築き上げることに挑んだのである。さらにそこにアトラスで中途入社してきた、実家が病院という経歴を持つ新納一哉氏が参加。橋野氏はその経歴を買って氏をディレクター・プランナーとして起用し、本作『超執刀カドゥケウス』の開発に着手したのだ。

■タッチペン一本による、本格的な手術アクション
最大の特徴は操作性だ。メス、ピッセット、注射器など、あらゆる手術器具がタッチペン一本の簡単操作で行える。そして、実際にその器具を持つような手応えで、本物の手術さながらの雰囲気が味わえる。メスで皮膚を切る、ピンセットで物を摘むなど、ありとあらゆるアクションが「スライド」、「タッチ」、「こする」の簡単操作でできてしまうのである。この驚異的な「ハードルの低さ」こそ、本作の大きな魅力の一つだ。一般にアクションゲームというと、十字キーでキャラクターを動かし、ボタンでジャンプするなどの操作が求められてくるものだ。しかし、本作は立ち止まった状態で行う手術をテーマにしている事から、キャラクター自身を動かす要素を導入する必然性が無い。立ち止まって行うもの故、動かす対象は手だけで十分事足りる。そんな独自の特徴を持つからこそ、本作では片手だけで、ほとんどの操作ができる。まさに「手術」なくして無し得なかった、新たな快感を示したのである。

■「命は尊い。」…その現実を克明に現した高難易度
また本作はそんな操作の単純さに反し、難易度を高めに設定。
少しの判断ミスが大失敗へと繋がる、シビアなバランスとなっている。

しかし、難しいからと言って、じゃあアクションゲーム初心者には向かないゲームなんだなと思いきや、そうでもない。難しいと言っても先の通り、本作の操作自体は非常に簡単である。それすなわち、失敗した際の対処法の組み立てが容易だということ。そして、その対処法を行うのにも単純な操作で事足りるということ。
アクションが下手、上手を問わず、少しの操作テクニックと判断で難局を突破できる、敷居の低い難しさを実現しているのである。なので、初心者でも少しの努力と正確な判断を心掛ければ、十分に攻略可能。ボタン以上に直感的な操作が可能なので、手軽に難しさの醍醐味を味わえるよう設計されている。

さらに難易度の高さは医療ゲームならではの高い説得力を兼ね備えているのも大きな魅力の一つだ。そもそも本作の敵は、人類永遠の敵「病魔」。彼の者たちが巣食うのは、人間の命を司る心臓などの重要な機関だ。
そんな機関が舞台だ、仮にメスなどの器具で雑に切ったらどうなる?
病魔が増殖してしまったらどうなる?
普通に考えて、患者は死に至ってしまうだろう。
メスで雑に切ったりするミスを犯しても、平気な人間なんているか?
病魔が体内のあちこちを蝕んでも、人間は元気でいられるか?
いられるはずがないだろう。それは、現代社会で起きる医療ミスと言ったニュースなどが現している。
本作は、そう言った人の最も脆いところをいじらねばならない。
そうなれば、難しい難易度になるのも必然だろう。
本作ではそんな人の脆い部分を扱うからこそ、難易度を高くしている。
ちょっとの腕でクリアさせないぞという安易な目的でやってるのではない。
人が脆いこと、そして命が如何に尊いかを教える為、そうしているのだ。
とは言え、あくまでもゲーム。そんな僅かなミスを犯すだけであっさり患者が死んでしまうようなことはなく、そこそこ病魔の進行には耐えられるようになっている。
さらに本編では現実的な手術だけに留まらず、ゲームならではの非現実性を活かした、『ギルス』と呼ばれる寄生虫を相手にするなんて手術も。人の体内で裂傷を発生させたりなど、容赦なく暴れ回る彼らとの戦いはまさにゲームならではの嘘っぽさが全開。命の面でリアリティも出しつつ、フィクションな表現も盛り込むなど、そう言った多様的な側面を持っているのも、本作独自の売りである。
地味な所かもしれないが、アクションゲームでは敵を「倒す」事が主とされていたのに対し、本作では患者を「救う」のが主とされている。なので、難しい手術を攻略できた際には「やっと倒せた」でなく、「やっと救えた」という不思議な達成感を得られる。命を奪うのでなく、人を救う。そんな手応えが堪能できるのも、手術さまさまと言った感じだ。
ユーザーを選びかねない難易度の高さというデメリット。そんな問題点を手術のコンセプトを元にして自然なものとした、説得力の高いゲームデザインもまた、本作のアクションゲームとして思い切った試みだったと言える。

■さらなる魅力的な要素の数々
操作性、ゲームシステム、難易度以外にも本作には数多くの魅力がある。

◇グロくないグラフィック
人間の体内が舞台だけに、臓器が本編では大きく描かれるが、生々しさは皆無。CGテイストのディフォルメされたものとなっている。 出血表現も当然の如くあるが、煙も同然。グロい表現が苦手な方でも問題なく遊べる。

◇多彩な手術
病魔の除去、ギルスとの戦いの他に爆弾の解体という、ぶっ飛んだオペも…。

◇痛みを感じさせる効果音
メスで皮膚を切ったり、針と糸で裂傷を縫ったりする効果音は非常に「痛々しい」。
勿論、失敗した際の音ももの凄く「痛い」。
人の命に触れるゲームならではのこだわりである。

◇指示を受けながら進む手術
慎重な行動が求められる手術という事で、本編は助手の看護師、利根川アンジュの指示に従って病魔の処置に当たっていく。アクションゲームで指示を受けながら行動するというと、自由に動けず縛られている感じだが、本作は自由行動を取ると危ない手術をテーマとしているという事で、縛られてる感じはほとんど無い。
これが当然とも言うべき、不思議な遊び易さを表現している。
また、アンジュ自身のキャラクター性も非常に魅力的だ。

◇やり込み甲斐の深さ
各手術はクリアと同時にプレイヤーランクが表示される。プレイヤーランクは「C⇒B⇒A⇒S」の最高四段階評価。各手術はストーリーを進める度、オペレーションモード(フリーモード)で自由にプレイ可能になる。
全手術Sを目指してチャレンジするとなると大変。極めるとなると、ほぼ一生モノに等しいほど遊べてしまう。また、ゲームをクリアすると、激ムズの手術も追加されるというおまけも。骨の髄まで徹底的にしゃぶり尽くさせてくれる。

■ここに”手術アクションゲーム”が定義された
とは言え、さすがに初期の作品だけあって、荒削りな部分も散見される。手術中の会話シーンを早送りできない(特に二回目以降のチャレンジではストレスになる)、リトライ機能が無い為にやり込みでミスをして最初からやり直そうにもやり直せない、器具の処置判定が精密であるなどだ。また手術の内容がゲーム中盤辺りより、ギルス一つに偏ってしまうレベルデザインも、リアルな手術を楽しみたいと思う人には賛否が分かれる。
また難易度も命の重みという説得力はあれど、それなりの忍耐力がなければ厳しいのが実際の所だ。

そんな具合に課題も多く残されたが、手術アクションゲームならではのゲーム性、シンプルな操作性と言った部分は本作においてほぼ完成の域。新ジャンルとしての基礎を固めたと言っても良いだろう。
そして発売後、プレイしたユーザーからは好評の声が相次ぎ、国内の後に発売された海外ではE3にて『Best NINTENDO DS GAME』を獲得し、様々な方面からも高い評価を得るに至った。
国内では初回出荷が少なかったのもあり、一部のユーザーにしか知れ渡らなかったが、医療ゲーム独自の魅力というものは、本作で大いに示されたと言っても良いだろう。
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