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≫サムライエボリューション 桜国ガイスト
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 ティーセット、タムタム
■ジャンル 育成RPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイアドバンス専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 46ページ
■推定クリア時間 11〜14時間(エンディング目的)、40〜80時間(完全攻略目的)
時は星歴12年。
『東桜都(とうおうと)』に住む少年「マサムネ」は、不思議な夢を見続けていた。
それは暗い闇の中…桜の木の下で、何かに怯え悲しむ少女の夢だった。
主人公と少女は夢の中で出会い、再会の約束をする。

その夢から3年後のある朝。
夢に出て来た少女「サクラ」は、マサムネの前に本当に姿を見せた。
そして、運命は大きく動き出す。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆モンスターを武器(ヤイバ)に見立てて相手と戦う、独創性に富んだ戦闘システム
◆モンスターを武器に見立てる『抜刀』そのもののアイディア(設定的に面白い)
◆主人公参加型ならではの「武器の持ち手死亡」の敗北条件が醸し出す、奥深い戦略性
◆全部で100体以上、ヤイバごとのデザインも個性豊かなものに仕上げられた『エクス』達
◆歌を歌って仲間にするという、無茶苦茶且つ、爆笑必至のエクス捕獲法(ほぼギャグ)
◆見た目のみならず、種類も100以上と盛り沢山且つ、個性豊かなヤイバごとの攻撃技
◆サクサク上がっていくのが気持ち良い、短めに設定されたレベルアップスパン
◆レベルは上がり易くとも、急激な難易度低下は起きぬよう徹底して調整された、職人技の光るゲームバランス
◆プレイヤーだけのオリジナルコンボが作り出せるのが大変魅力的な、必殺技作成システムこと『奥義システム』
◆メインは短めだが、クリア後のやり込みなどのおまけは充実した総計ボリューム
◆二転三転する展開など、基本的に短めながらも綺麗にまとめられたストーリー
◆イベントを集めて解決するという、やや特殊な設定が光るサブイベント『ヒミツ』(全部で130個とそのイベント量も膨大)
◆丁寧に描き込まれたドット絵グラフィック(カットインのグラフィックもなかなか)
◆各種イベントや戦闘を大いに盛り上げる、名曲揃いの音楽
◆ひたすらに「熱い」演出(特にラストバトルの演出は必見)
◆戦闘システムとストーリー展開の状況を最大限に活かした戦略が試されるラスボス戦

--- Bad Point ---
◆遅めの戦闘テンポ(特にエフェクトやアニメーション絡みがやや冗長。)
◆戦闘時のエフェクトなどをカットするオプションの未搭載(あるべきだった)
◆戦闘内容は大変魅力的だが、普通に戦うとバッドエンディングになる初見殺し要素が多過ぎるラスボス戦(グッドエンディングの条件も基本ノーヒント。)
◆ややキーレスポンスの悪い、戦闘画面のコマンドインターフェース
◆癖の強過ぎるキャラクターデザイン(エクスは悪くないが…)
◆基本はお使いで、内容的にもくだらないものも多いサブイベント『ヒミツ』
◆やや物足りなさもある総計ボリューム(メインストーリー部分)
◆少々、突っ込み所の多い世界観設定(特に舞台とか…気になる人は気になるかも)
▼Review ≪Last Update : 4/4/2010≫
其は超越の道也!然り!覚醒の刻は今!!

汝の全てを信じる友の命を預かる勇気・愛する者を護る覚悟は在るか!?


『桜国(おうこく)』と名を改めた未来の日本を舞台とした、完全新作の育成ロールプレイングゲーム。企画はティーセット、開発はスーパーファミコンの『魔法陣グルグル2』などを手掛けてきたタムタムが担当。

仲間のモンスターと一体化して戦う戦闘システムが光る、育成RPGの隠れた名作だ。

ゲーム内容はモンスターの収集・育成要素を取り入れた、イベントクリア型のロールプレイングゲーム(RPG)。男性、または女性の主人公いずれかを操作し、秘密結社『ムラクモ』の総統・アキラにさらわれた眠り姫・サクラを救出する為、舞台となる未来の日本各地を転戦していくというものだ。単刀直入に言ってしまえば、任天堂の『ポケットモンスター(ポケモン)』の亜種。モンスター(今作では『エクス』)の育成・収集をメインとしたRPGである。故にポケモンに準拠した要素も、そこかしこに導入。通信ケーブルを使ったエクスの交換、育成途上におけるエクスの進化(今作では『超越』)など、亜種っぽさ全開となっている。しかし、ソフトごとに登場モンスターのラインナップ、出現率が異なる2バージョン制は不採用。そして当然ながら、主たるゲーム性も今作独自のもの。育成・収集・交換・対戦の基本を抑えつつ、育成RPGに一石を投じる革新的な試みが成されたものに仕上げられている。
その試みが戦闘システムだ。これがまた、他の育成RPGに無い、斬新なアイディアを取り入れたものとなっている。モンスターことエクスを『武器』として扱い、相手と戦うのである。
実は今作、育成型RPGとしては珍しく、主人公が戦闘に参加する。ポケモンなどの育成RPGでは主人公は戦えない存在で、モンスターが代わりで戦闘に参加するのが基本とされているが、今作にそんな基本など無し。主人公とモンスターが協調して相手と戦う、非常に珍しい戦闘システムとなっているのだ。
更にモンスターの概念も新しい。先の通りだが、モンスターことエクスは戦闘中、『武器』にその姿を変え、主人公と共に攻撃・防御などの行動を取るのである。(ちなみにこの仲間のエクスの事を『ヤイバ』と言う。)
勿論、ヤイバごとに攻撃技は異なり、その個体だけしか繰り出せない特殊な技もあるので、扱うヤイバによって戦術も大きく変化。故に戦う相手との相性を考慮した、効率的なヤイバの編成が求められてくる。そして例によって、ヤイバには体力の概念があり、これがゼロになると使用不能に。待機中のヤイバがいれば戦闘に復帰できるが(なお、ヤイバは最大6体まで持てる)、待機中のヤイバが全滅してしまうと敗北となる。
だが、今作の場合はヤイバの全滅だけではない。主人公の死亡も敗北条件となっている。体力の概念があるのはヤイバだけでない。当然だが主人公にも体力はあり、基本的にヤイバを貫通する攻撃を受けるとダメージを受ける。そして、これがゼロになってしまうと、例えヤイバが残っているに構わず、その時点で強制的に負けとなってしまうのだ。ヤイバの持ち手たる主人公自体が倒れてはどうしようもない、如何にもな制約が取り入れられているのである。なので、今作の戦闘ではヤイバだけでなく、主人公自身の体力管理も重要。モンスターだけに気を取られ易い育成RPGとは一線を欠く、また共闘するシステムならではの仕組みとなっている。裏を返せば、同じヤイバを扱う相手との戦いで、持ち手だけを狙って戦えば、戦闘を素早く終えられる訳でもある。ヤイバの全滅を狙うか、それとも持ち手を狙うか。こんな選択の幅の広さもまた、このシステムならではの魅力である。
その他、エクスを仲間にするのが「歌を歌う」という奇抜なものだったり、攻撃技にプレイヤーオリジナルのコンボを追加できる意欲的なシステムが組まれてたりなど、目を見張る独自性の強いアイディアは充実している。
育成RPGの基本はポケモンを踏襲しつつ、戦闘システムにおいて「共闘」という新たな概念を導入し、独自の戦略性とスリルを演出。テーマがポケモンと似通ってる故、パッと見、典型的な亜種として捉えられてしまうのは避けられない。志の低い作品に見えてしまうだろう。だが、その中身は実に独創性豊か。ポケモン以降、固められた育成RPGのテンプレートに真っ向から反発する、志の高い育成RPGとなっているのだ。これを二番煎じと言うのは、おこがましいと言っても良いほど。強烈なオリジナリティに秀でているのである。

そして、今作最大の売りも言うまでも無く、戦闘システムの強烈なオリジナリティの高さとその面白さだ。主人公とモンスターが共闘するアイディア、一つに限らぬ敗北条件が演出する多様な戦略性と、全てが高いレベルでまとめられており、育成RPGの歴史に一石を投じる、魅力溢れるシステムとして完成されている。
特に戦略性の多様さは見事だ。ヤイバの全滅を図るか、それとも持ち手だけを狙うかと、主人公とモンスターが共闘する今作の戦闘システムだからこそできた考える面白さに秀でている。相手側のモンスターが全滅するまで戦闘が続くという、育成RPGの戦闘システム特有の欠点もカバーしており、戦略次第でスピーディな展開が作れるのも大変魅力的且つ画期的である。ポケモンを始めとする育成RPGの何が面白く、何が問題かという事を多角的な視点で見事に研究していると言っても良いだろう。一体ずつモンスターを倒すのは手間がかかるし、面倒臭い。だが、持ち手を狙えば全部倒さず済む。じっくり遊びたいプレイヤー、素早く済ませたいプレイヤー双方に応えたこのゲームデザインは、ポケモンを超える懐の広さを作り出したと言っても過言ではない。亜種タイトルも含め、「戦闘はじっくり」という一種の常識に真っ向から反発し、新たな可能性を提示したその行いは大きな評価に値する。
また、戦略性と並行してゲームバランスにも、そんな既存の育成RPGに対するアンチテーゼが込められている。中でも目を見張るのが、エクス(ヤイバ)の育て易さ。レベルアップまでのスパンが絶妙に短い。育成系に限らず、普通のRPGなら何十回も戦闘をこなさないとレベルアップしなかったりするものだが、今作の場合は基本的に5〜7回ほどの戦闘をこなすだけでレベルアップする。しかも、レベルが上昇してもそのスパンに変化無し。終始、そのテンポで、ヤイバを育てて行けるのである。なので、レベル上げの作業でストレスを感じることは皆無。サクサク上がるので、逆に気持ちよさすら覚えるほどなのだ。レベル上げが肝とされる育成RPGで、このスパンの短さは革新的。同時に育成するにも手間がかかってダレ易いという、従来の育成RPGが持つ特有の欠点を見事にカバーしている。育つことに楽しみがあるのだから、その成果がすぐに体感できないと、面白さもあったものじゃないだろうと、この育て易さにもまた、他の育成RPGを研究した成果が現れていると言っても良いだろう。レベルアップまでのスパンも、下手に短くし過ぎず、5〜7回ほどの適量に留めたのも絶妙。育成の楽しみ、成長する喜びがじっくりと感じ取れるようにしたその調整術は、まさに職人技だ。
テンポ良くレベルアップできるからと言って、戦闘を総じて力押し上等のバランスにしてないのも見事。相手の属性を考慮したヤイバの編成などが問われてくるよう調整されているので、終始、緊張感のある戦闘が楽しめる。レベルアップし易いと、返ってヌルゲーなのではと思ってしまうかもしれないが、その辺も今作はカバーする徹底振り。ストレスをできるだけ緩和させつつ、手応えはきちんと出すように仕上げたその手腕は、繰り返しになるが職人技以外の何者でもないと言っても良いだろう。戦略性の広さ、遊び易さ、そして手応えと隙無くまとめ上げてるのには素直に驚かされる次第である。
でも、全てが完璧という訳でなく、戦闘のテンポが少し遅かったりなど、育成RPG特有の欠点をカバーできてないところもある。やはりエフェクトをきちんと表現する柵だけは無視できないのか、そこだけは残念な仕上がりとなってしまっている。エフェクトオフのオプションが実装されてない辺りも、さすがに不備と言わざるを得ない。しかしテンポはまだしも、戦闘の冗長化、強化までの過程の長さと言ったデメリットを気持ちよく楽しめるようにした工夫と調整の数々は、育成RPGのゲーム性に更なる広がりを見せた。育てる面白さも大事だが、それ以上にプレイヤーが気持ちよく遊べる為の環境を整えるのが重要だと提示した今作は、あらゆる意味で育成RPGの歴史に一石を投じる行いをしたと言っても良いだろう。多彩な方法で戦え、尚且つモンスターを育てるストレスも弱い。冗談とか無しに今作は、多くのポケモンの亜種タイトルの中で唯一、ポケモンを超える資質を持った作品と言っても良いかもしれない。

また、今作は育成RPGにしては珍しく、きちんとしたストーリーに沿った展開が繰り広げられていく点も大きな魅力だ。内容自体も世界観の設定など、突っ込み所も多いのだがよく出来ており、短い話でありながら綺麗にまとめられている。二転三転する展開もあり、特にラストは必見。正統派RPGに勝るとも劣らぬ「熱さ」を感じるかもしれない。
その他、全体のボリュームも先の通り、メインストーリーは短め。しかし、不思議と短さは感じ難い作りとなっている。また、育成RPGではお約束とも言えるクリア後のおまけシナリオを始めとしたやり込みも充実しており、それなりに長く楽しめる設計となっている。エンディングまでは短めとは言え、それなりの満足感を得ることができるだろう。ただ、お使いばかりのサブイベント『秘密』は賛否が分かれるかもしれない。
グラフィックもドット絵からカットインの一枚絵まで気合いの入った仕上がりで、デザイナーの職人芸が炸裂している。音楽も名曲揃いで、オープニングデモ、戦闘曲全般が素晴らしい出来。曲数は少なめで、使い回される場面も一部あるのだが、使い方が非常に上手く、全く違和感を感じる事無く仕上げられているのにも驚かされる。中でも、最終ボス戦はその真骨頂。曲が使い回しでも、見せ方次第で熱いものは作れる!…という事を痛感させられるだろう。
また、最終ボス戦は演出のみならず、ストーリー展開の状況と戦闘システムを最大限に活かしたアイディア、そしてそれに似合った戦術が試されてくる内容になっているのも見逃せない。詳細はネタバレに抵触する為、避けさせて頂くが…正直、これほど印象に残るラスボス戦もなかなか無いと言っても良いだろう。ここは是非とも要チェックである。

しかし如何せん、ストーリーと演出はよく出来てても、キャラクターデザインが総じて「オタク層に媚び過ぎてる」のはタマにキズ。折角、出来は悪くないのに、そこで客層を限ってしまってるのは勿体無さ過ぎる。少年漫画風にするなど、無難なデザインであれば良かったものの、結果としてそんなのを選んでしまったのは大損だとしか言い様が無い。デザイナーの人を否定しはしないが、もうちょっと幅広い客層に受けるデザインにして欲しかったところである。
そんなデザインの癖の強さなど、残念な所もあるが、ゲーム全体の完成度は総じて高く、数ある育成RPGでも屈指の面白さを誇る。独自の戦闘システムに絶妙なバランス、ポケモンなどの育成RPGの盲点を付いた工夫の数々は、筆舌に尽くし難いものがある。デザインの癖の強さがタマにキズだが、それを気にしたら大損も良い所の価値を持つ、この『サムライエボリューション 桜国ガイスト』。ゲームボーイアドバンスを持つプレイヤーなら、これは是非ともプレイしておくべき名作だ。かなりオススメ。これはポケモンを超える素質を持った、埋もらせてはならぬ偉大な作品である。
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