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≫ロックマン7 宿命の対決!
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 スーパーファミコン版:9800円(税別)
バーチャルコンソール版:823円(税込)
■公式サイト ≫VC版:(WiiU) / (New3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人(※ある条件を果たした時:1〜2人)
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー形式)
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 3〜5時間
西暦20XX年。ロックマンの活躍により、ドクター・ワイリーは遂に逮捕され、世界に平和が戻った。
だが、無人のはずのワイリーの秘密研究所は未だに活動を続けていた。彼は万が一、自分が捕まった時の為に、自らを救出するようにプログラムしてあった4体の戦闘ロボットを秘密裏に隠していたのである。

そして数ヵ月後、戦闘ロボット達はワイリーが捕まっている刑務所の襲撃と付近一帯の制圧を開始した。
丁度その頃、コサック博士に依頼したビートのオーバーホールが完了した連絡を受け、ラッシュと一緒に街に訪れていたDr.ライトは、街を襲撃するロボット達に遭遇。ライトは、このロボット達がワイリーのものである事を確信し、受け取ったビートをワイリーの捕まっている研究所へと向かわせた。

程なくしてライトから連絡を受けたロックマンも街に到着し、現場へ急行。だが時既に遅く、ワイリーは4体のロボット達に救出され、嘲笑と共に大空の彼方に消え去ってしまった…。

遂にワイリーの野望が達成する時が来てしまったのか?
ロックマンはワイリーの野望を阻止する為、その後を追う。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆『ロックマンX』の「オープニングステージ」、ロックマンワールドシリーズの前半後半の仕組みと「中間ステージ」が持ち込まれ、過去六作とは異なる展開を見せるようになった本編構成
◆最初から全員とは戦えないが、多彩な攻撃パターンと躍動感溢れる動きは健在の全八体のボス達
◆弱点の特殊武器を当てた際に大きく怯むようになり、一方的に攻め込む爽快感を高めた戦闘バランス
◆ハード移行に伴ってギミック全般が仰々しくなったほか、特殊武器を使って新たな道を切り開き、隠されたアイテムを見つける探索要素も加わったステージ構成(ロケーションは割と王道)
◆ロックマンワールドシリーズより逆輸入されたアイテム購入システムにより、いつになく大きな力押しの余地が作られた難易度設定(お金となるアイテム「ネジ」も集めやすい)
◆ステージ探索、攻略時の御供として活躍してくれるだけでなく、ショップ以外に道中で入手できる選択肢を用意する配慮が光るアップグレード系アイテム
◆四作目以降の冗長化の流れに歯止めがかかり、個々の密度を高める路線でまとめ切った本編のボリューム
◆メニュー画面を介さない武器切り替えが可能となり、より快適さの増した操作性
◆会話イベント増加で、これまで以上に強化されたストーリー性(一部、ギャグ要素も…)
◆サポートキャラクターの立ち位置に戻され、一部形態も使い易い作りに回帰した「ラッシュ」
◆攻撃用から落下ミス救済用へと役割を大きく改めたサポートキャラクターの「ビート」
◆機動性アップとボス戦の立ち回り変化を演出すると言った活躍を見せてくれる新要素にして新変身形態「スーパーロックマン」(前作の合体システムを緩和したかのような作り)
◆ハード移行に伴ってより美しくなり、アニメっぽさが強化されたグラフィック
◆全体的に明るいノリの曲中心で構成された音楽(印象に残る曲は今回も充実)
◆ハード移行の恩恵を存分に実感させられる演出周り(特に大型ボスの爆発エフェクト)
◆あるステージで『魔界村』の曲が流れるのを始めとする、凝りに凝った隠し要素の数々

--- Bad Point ---
◆異常なまでに強い最終ボス(「E缶」無しでの勝利は無理に等しいほどの強敵。そして、このボスの所為でそれ以前の安定感のあるゲームバランスが台無しにされてしまっている)
◆ワールドシリーズに準拠して半減された「E缶」最大所持数(九つ持てたのが四つになってしまった。これは別にワールドシリーズをなぞらなくても良かったのでは…?)
◆最初に選べるにしては道中が難しく、ボス自身も強くて不釣り合いなバーストマンステージ
◆操作可能になるまでの待ちが長い「オープニングステージ」(そこまでのデモが長い)
◆全体的に他のロックマン作品に頼り気味なゲームデザイン
◆過去作のギミックが再登場するなど、若干の焼き増し感も否めないステージギミック
◆悪く言えば、特殊武器を使った際だと手強さも何も感じられなくなった戦闘バランス
◆数字入力方式に改められ、メモ必須なレベルで複雑になったパスワード
◆発動するまでに僅かな間を挟むなど、ややレスポンスが悪くなった「スライディング」
▼Review ≪Last Update : 12/17/2017≫
もう、逃げも隠れもせんぞ!真っ向勝負じゃ!

だからと言って、本気出し過ぎじゃありませんかね…。


スーパーファミコン発売後も対象プレイヤーの年齢層を考慮してか、ファミリーコンピュータ向けにシリーズを展開し続けてきたカプコンの看板タイトル、ロックマンシリーズの同ハード初進出作にして七作目。

外伝作品と派生作品から多くの要素を逆輸入し、シリーズ屈指の懐の広い(そして、プレイヤーを不意打ちする側面も持つ)ゲームバランスを実現させた良作だ。

内容は過去六作と変わらない。横スクロールで展開されるステージクリア型アクションゲームで、ロックマンを操作し、脱獄したワイリーを捕らえるべく彼の配下である八体のロボット達を撃退し、身を潜めた本拠地を目指すというものだ。
システム周りも主に三作目以降のものを踏襲。スライディング、サポートキャラクターの「ラッシュ」、チャージ攻撃などは今作にも引き続き採用されている。ただ、ラッシュは前作の「パーツ」の役割から一転、五作目以前のサポートキャラクターの立場に戻された。また、通常のジャンプでは届かない足場に移る際に活躍する変身形態「ラッシュコイル」も四作目以前の「ジャンプ台」へと回帰。五作目のようにラッシュ自身が跳ねるのではない、正統派のものに戻されている。更に、前作で名前とは裏腹のエフェクト変更と下方修正が図られたチャージ攻撃、「ハイパーロックバスター」も五作目の「スーパーロックバスター」の呼称に回帰。威力周りは前作を踏襲しつつも、エフェクトはそれ相応のものに改めるという措置が取られている。ラッシュに比べたら大した変更点ではないが、いずれも少し捻りを加えていた前作ではなく、五作目以前の従来路線を踏襲した格好。いつものロックマンとしての手触り感、安心感を大事にした設計になっている。
しかし、本編構成に関してはいつものロックマンとは異なるものにされた。過去六作はゲームスタートと同時にステージセレクト画面へと移り、いずれかのステージを選ぶと本番開始というのが定番だった。今回はこれを廃止。シリーズお馴染みの宿敵で、前作のエンディングで刑務所に収監されたワイリーが脱獄するまでの過程を描いた「オープニングステージ」から始まり、それをクリアすることでお馴染みのステージセレクト画面へと移るようになった。本作の前に発売された、ほとんどのロックマン作品を遊んできたプレイヤーならばお分かりの通り、『ロックマンX』と同じ方式。派生作品の構成を逆輸入したのだ。更にセレクト画面で選べるステージの数も従来の八つではなく、半分の四体に減少。今回もシリーズのお約束に倣い、八体のボスが登場するのだが、オープニングステージ攻略後に選べるのはその内の四体。残る四体は最初の四体を全て倒した後に挿入される「中間ステージ」をクリアするとセレクト画面内に追加され、選べるようになるのだ。その為、今回はある程度ながら、攻略ルート構築の幅が狭まっている。そして、これまた本作の前に出たロックマン作品ほぼ全てを遊んできたプレイヤーなら分かるように、ゲームボーイで展開された『ロックマンワールド』シリーズと同じ方式。派生作品だけでなく、外伝作品の構成まで逆輸入したのだ。しかも、同シリーズのオリジナルボス「ロックマンキラー」のオマージュか、本作にもロックマンを付け狙う「フォルテ」なるライバルキャラクターも登場し、彼にちなんだイベントが随所で繰り広げられる。こんな作りだけに、ワールドシリーズを経験したプレイヤーなら、本編のロックマンというよりはそちらの続編としての手応えを感じること請け合い。なんとも不思議な変更が図られたものになっている。
更にワールドシリーズから逆輸入されたのは本編構成だけではない。同シリーズの四作目『ロックマンワールド4』にて初登場したアイテム購入システムまでもが実装。ステージセレクト画面でセレクトボタンを押すことで、本作からの新キャラクター「ライトット」が活動の場としている移動型研究所「ビッグエディ」に移り、「E缶」を始めとするサポートアイテムを購入できるようになっている。購入に当たり、お金に当たるアイテムが必要となるところも共通。ワールドシリーズでは「Pチップ」というアイテムだったが、本作では「ネジ」がその役割に当てられている。入手経路が敵を倒す、道中に配置されたものを拾う点にしても一緒。ただ、元のワールドシリーズよりも敵を倒した時に落とす頻度(ドロップ率)が高めにされていて、比較的集め易い調整にされている。その為、やり方次第では稼ぎプレイを決め込むことも可能。それによってサポートアイテムをフル装填してから挑む戦略も取り易くなるなど、ワールドシリーズよりもプレイヤーによる意図的な難易度調整を実施し易い作りになっている。ただ、サポートアイテムの中でも一際便利な「E缶」の最大所持数はシステムの元に準拠してか、これまでの九つから四つに減少。お金(というよりはネジ)の力に任せた力押しには一定の制限を課した調整が図られている。ただ、こう言った方法で本編攻略に挑めるようになったことで、過去六作にも増してゲームバランスの幅は拡張。オリジナルのワールドシリーズよりもお金のアイテムが入手し易く、積極的に使っていける改良も施されて、シリーズ未経験者にも門戸を開く魅力溢れるシステムとして発展を遂げたものになっている。
他にも新要素では「スーパーロックマン」。前半四つのステージに隠された「RUSH」のプレートを四枚集めることで、ラッシュとロックマンが合体した「スーパーロックマン」に変身できる機能が追加された。いわゆる『ロックマンX』のパワーアップパーツシステムを前作の「合体システム」と組み合わせてアレンジしたものだ。『ロックマンX』とは異なり、使えるようになるのはプレート四枚全てを集めた時だけ、攻撃力や防御力の上昇と言った恩恵は得られないが、ジャンプ時に飛距離を伸ばす「ブースト」が使えるのもあって、主にステージ攻略の奥の手として活躍。ボス戦でも、通常のロックマンだとある程度のテクニックが求められる攻撃を容易に回避できるようになるなど、戦術の幅が広がる。解禁は必須ではなく、通常のロックマンでも最後までクリア可能なバランスとされているが、あれば色々と得する変身形態。操作周りも前作の合体形態よりも直感的且つ、シンプルなものにされているなど、遊び易さへの配慮が光るものになっている。
それら以外にも、武器エネルギーだけを回復する「W缶」、体力と武器エネルギー全てを回復する「S缶」がサポートアイテムとして登場。更に前作もイベントで入手できた、装備していない特殊武器のエネルギーの回復が実施できるようになる「エネルギーバランサー」、クリア済みステージからの任意脱出を可能にする「エスケープユニット」と言ったアップグレード系のアイテムも初登場。一部は特定の行動を取ることで道中で入手することもできる。更に特殊武器を命中させる事で地形が変化したり、新たなルートが開かれると言った探索要素が強化されたステージ、攻撃用サポートキャラクターから穴に落ちたロックマンを引っ張り上げてくれる救出用サポートキャラクターに一新された「ビート」などの新要素、変更点も。
基本的な遊び心地こそ過去六作と変わらないが、『ロックマンワールド』、『ロックマンX』の要素を多く取り入れるゲームデザインが図られており、実質、これまで発売されたロックマンの集大成的な内容になっている。過去六作から本編構成も大きく改められ、マンネリ感が滲み出ていた前作とは異なる新鮮味が演出されていたりなど、新たな方向性を目指す試みも随所にて炸裂。そして、ハードをファミコンからスーパーファミコンへと移したなりにグラフィック、音楽もグレードアップするなど、新天地のロックマンを存分に痛感させられる続編に完成されている。

そんな本作の魅力は、アイテム購入システムの実装によって演出された懐の広いゲームバランスである。先の通り、元々はロックマンワールドシリーズにて初登場したもので新鮮味はない。悪く言えば、使い回し。或いはネタに詰まったが故の苦肉の策とも言える。しかし、同シリーズにて特に評価されていたシステムを引っ張ってきたことによって、過去六作にも増してシリーズ初心者にも遊び易いゲームバランスが実現したのは特筆に値する。
中でも「ネジ」を稼ぎ易くした設計が秀逸。アイテム購入システムの発祥であるワールドシリーズは、敵を倒した際に落とすドロップ率の設定が渋く、どちらかというとステージ内に配置された大型の「Pチップ」の回収に尽力するのが推奨される形となっていた。また、稼ぎ目的にクリア済みのステージを訪れた後、セレクト画面へと戻るにはゴールに当たるボスの部屋に到達する、或いはわざとゲームオーバーになるしか選択肢はなく、途中離脱はできない仕様とされていた。その為、稼ぎを狙うとなれば、結構手間がかかる。同時に効率的に稼ごうにも、途中離脱の選択肢がない故にテンポよく実施できず、プレイヤー側に負担を与える側面があった。そこを本作はドロップ率の上方修正と「エスケープユニット」なる新アイテム導入で改善し、テンポ良く、効率的にネジを集めていけるように一新。併せて購入システムの恩恵を手軽に得られるようにもして、十分な保険をかけ、本編攻略に挑む戦略も取り易い作りにした。元々のシステムが持っていた魅力と可能性をより引き上げ、遊び易くする為の措置を取ったのだ。これにより、手詰まりが起きたとしても早急にシステムを活用した打開策が打てるように。今までテクニック勝負としてきた過去六作とも一線を画したバランスも実現させ、アクションゲームが苦手なプレイヤーからシリーズ初心者に門戸を開くなど、マンネリの流れにも終止符を打っている。外伝作品のシステムを逆輸入し、それを絶った点には正直、ネタに詰まった感があるのも否定はしないが、シリーズを長く続けてきたなりの先鋭化の道に踏み込まず、門戸を開く道を選んだのは適切な判断。既に五作目の時点で、シリーズ独特の硬派なゲームバランスは転換期を迎えていたが、それを外伝作品から逆輸入したシステムと組み合わせて新たな方向性を打ち出し、優しくするのも難しくするのもプレイヤー次第なものに改めたところには、よりロックマンを幅広いプレイヤーに楽しんでもらいたいとする制作スタッフの配慮と、長く付いてきてくれたファンに対する思いやりを実感させられるところだ。
システムを一切活用せずともクリア可能にしているのも素晴らしい。何気にショップ側で買えるアップグレード系アイテムは道中でも入手できるようになっていて、ネジを一切支払う必要もなく個々の恩恵が得られるのだ。勿論、入手に当たっては相応の困難が待ち構えるが、それを避けたいのならショップ側で買えば済むことなので、できないと思ったら甘えてもよい。逆に意地でもやってやるというのなら、辛抱強く挑めばよい。そう言った一定のこだわりを持つプレイヤーの欲求にも応えられる余地を残しているのも上手い。あくまでも救済措置であって、絶対に使わなければならないものじゃないとまとめているところにもまた、純粋にアクションだけを楽しみたいシリーズファンへの思いやりが現れている。
ステージ構成、ボス戦の二つにもシリーズ初心者と経験者の棲み分けを図る作り込みが光る。前者は今回も個性的なギミック満載の構成だが、先のアイテム購入システムを活用することで多少ながら力押しが効くなど、過去作にも増して攻略の選択肢が多く用意された作りになっている。更に先も少し触れたが、手に入れた特殊武器を活用することで隠されたルートが解禁されたり、時に難易度を下げる効果まで及ぼす仕掛けが凝らされている。これまでのシリーズにも特殊武器を活用して行く手を阻む仕掛けを取り除くシチュエーションはあったが、それがより大胆な形に昇華された格好だ。特に隠しルートはアップグレードアイテムの発見に繋がったり、時には新種の敵と遭遇したりと多くの発見がある。併せて背景まで変化したりと、見た目でも楽しませてくれる作りになっているのも面白い。まさにハードをスーパーファミコンへと移したなりの進化を感じられる作りになっているので、過去六作を中心に遊んできたプレイヤーならば要チェックも要チェックだ。
後者も過去作に倣って多彩な攻撃で攻めてくる面子揃いだが、弱点となる特殊武器で攻めた時に難易度が劇的に低下するなど、バランス周りを一新。大きく仰け反り、攻撃パターンも単調化するなど、過去作にも増して一方的な流れに持ち込み易くなった。これにより、過去作にも増して属性相関を突くことによる難易度の低下、一方的に攻め込む爽快感が向上。シリーズ初心者、アクションゲームが苦手なプレイヤーがよりその醍醐味を堪能できるバランスに改められている。勿論、武器を用いずに勝負した時は終始、一進一退の攻防が繰り広げられるなど、手応えを求めるプレイヤーへの配慮も万全。シリーズ一作目から続いてきた伝統的なものだが、今回は使った時と使わなかった時との差を顕著に出し、明確に棲み分けたバランスとしている。やや過剰にし過ぎなきらいもあるが、露骨なぐらいに大胆なリアクションをしてくれるのは気持ちよく、何よりシリーズ初心者などにもロックマン独特の極端に変化する難易度が体験し易い。こう言った露骨な変化を描いたのもまた、棲み分け策としては適切。シリーズの魅力をより露骨にし、楽しく感じてもらうようにした作りにもまた、門戸を開いたロックマンを作るというスタッフの志の高さを実感させられるところだ。
他にも前半と後半に本編を分けたことで、最初は緩やか、中盤以降から手強さ重視でと言った難易度の上昇曲線が明確に描かれた点にしてもバランス周りでは大きな進歩。アクションの基本が学べるオープニングステージも抑えた難易度になっているほか、いきなり本番から始まって痛い目に遭わないようにとする配慮が感じられるのも好感触だ。
だが、幾つか加減を誤った所も。特に前半で選べる四つのステージの内、「バーストマン」のステージだけは一発アウトのトゲトラップが多く登場するほか、ボス自身も部屋の天井にトゲが配置されていて、そこにロックマン自身が持って行かれる攻撃を仕掛けてくるようになっているなど、極端に難易度が高い。このボスに限り、弱点武器で攻めても一方的にならない…やり方によってはこちらが追い詰められるようになっているのも疑問を感じるところだ。彼だけはその性質からして後半に回すのが適切だったのではないだろうか。実際、後半には前半に回すべきだったのでは、と思えるボスが二体ほど存在するだけに、もう少し検証を行って入れ替えを考えて頂きたかったところだ。

また、ボスに関してはもう一つ、ラスボスがあり得ないほど強い。今回もラスボスは連戦構成になっているのだが、その最後に戦う形態が異常なまでに強く、「E缶」が四つと「S缶」が一つあっても足りないぐらいの死闘になるのだ。しかも、弱点武器で攻めても相手は怯まないし、与えられるダメージも少ない。勝つ為には綿密なパターン化とアドリブによる対応が必須となる。率直に言って、やり過ぎの一言。確かに最後の相手なのだから強くするのは理に適っているが、それにしたって常軌を逸している。同じくらいの実力を持つ人間を相手にしていたのが、急に師範代の人間を相手にするようなものだ。こんなにも急な変化はプレイヤーに対して不快感を助長するだけ。アイテム購入システムによって描かれた懐の広いゲームバランスも台無しにされているし、このボスまでそれを通したのなら最後もそれに倣って欲しかった。最後の最後で制作者の陰湿さが滲み出た格好になってしまったのは残念でならない。
他に地味な所で「スライディング」を出すまでのレスポンスが鈍くなっている、ジャンプの挙動が重くなっているというのがあるのだが、これ自体はプレイしていく内に慣れてくるので、それほど大きな問題ではない。むしろ、操作性自体は良好で、『ロックマンX』由来のLRボタンによる武器切り替え機能が実装されたことで、よりテンポ良くロックマンを動かせる作りに進歩している。キーアサインも適切で、スーパーファミコンのコントローラに違和感なく収まった設計。特に『ロックマンX』の操作に手慣れたプレイヤーならば比較的すんなりと手になじむだろう。
ボリュームも特に四作目以降は最終ステージが長めに設定され、水増し感が出ていたが、そこも二作目以前の物量に回帰。反動でステージ総数は減ったが、「オープニングステージ」と「中間ステージ」のおかげで物足りなさは一切感じさせない密度にまとまっている。何より数が減らされたことで、周回プレイがし易くなったのは大きな改善点と言えるだろう。
密度を高める点ではストーリー性の強化も見所。ステージクリア時など、多くの会話イベントが追加され、個々のキャラクターの掘り下げが行われている。ストレートに今回の敵がワイリーただ一人と明確に示されているのにも安心感がある。ただ、所々にギャグ要素(しかも寒い)が散りばめられているのはシリーズ経験者には賛否が分かれるところ。特にアイテム購入システムと絡んだ「ライトット」の会話にはその手のものが散見されるので、ある意味で注意…かもしれない。

スーパーファミコンに移行したなりの進化を遂げたグラフィックも素晴らしい出来。特にドット絵の質が高く、大型の中ボスやボスの芸術的な描き込み具合は必見だ。音楽もスーパーファミコンへの移行に伴って明るいものからシリアスなものまで、作風が顕著に表れた楽曲が充実。いずれも過去のシリーズ譲りの耳に残る楽曲ばかりで、「フリーズマン」、「スラッシュマン」、「中間ステージ」の曲は要チェックだ。更に「シェードマン」のステージでは、とある特殊な操作を行う事で、カプコンを代表する高難易度アクションゲームである『魔界村』の曲が流れる仕掛けもある。後半ステージが解禁された後、真っ先にBボタンを押しながらシェードマンを選べば解禁されるので、ぜひ試してみて欲しい。
他に演出周りもハード移行に伴って大きく進歩し、特に最終ステージのボスを撃破した際の爆発は、前作の地味さを吹き飛ばすぐらいに派手なものになったりと言った進化も見受けられる。更に本作には驚くべき隠し要素が収録されているのだが、それについて語ると長くなってしまうのでこの辺で割愛。
総合的には派生作品、外伝作品の要素をミックスさせ、懐の広いゲームバランスを実現させた続編に完成されている。それに泥を塗る異常に強いラスボスと言った欠点も少なからずあるが、ややマンネリが目立っていた前作から大きく進化したこと感じられる内容で、シリーズ入門編にも一定ながら適した作りになっている。最後の最後の難しさもあって、あまり大きな声でそうだと言えないのがもどかしくもあるのだが、出来自体は盤石の良作。これまでのシリーズ六作を遊んできたプレイヤーならばプレイ必須の一本だ。満を持してのスーパーファミコン進出で、大きな進化を遂げたロックマンの世界を体験してみて欲しい。ただ、しつこいがラスボスは本当に強い。そのことを念頭に入れておきましょう。
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